| 「どうぞ、好きに座って。」
「お邪魔しまぁーす‥」
駐車場に車を停めてから、汐梨をマンションの部屋へと招いた。 ドアを開けた途端、ムワっとした空気が外の空気と入れ替わる。
時計に目をやると。 途中、買い物をしてきたためか時間は7時を過ぎていた。
「ん?座っていいよ?」
妙にソワソワしている汐梨に気付いた。
玄関で何やら固まっている。
「テレビでも見てて。 ‥オムライス、作っちゃうから(笑)」
「‥何で笑うのよー!」
和ませようとからかうと、汐梨は照れたように頬を膨らませた。 ソワソワした雰囲気が徐々に穏やかな空気へと変わる。
先程車内でした、夕食の話。 「何が食べたい?」って聞いたら 「オムライス!!」だって。
大人ぶってるくせに、素直な部分に笑顔がこぼれた。
「別に(笑) あ、ご飯食べたら髪黒くするからね。」
言いながら私はエプロンを身につけ、腰紐を結ぶ。 本当は着替えたかったけど、まぁいっか。
「‥へっ!?」
何気なく放った一言に、汐梨は面白いくらいに驚いて。
「さっきついでに買ってきたんだ。 美容院でやるより、私がやった方が安上がりでしょ?」
そう、いろいろ買い出したついでに。 黒染も買ってきた。
「え‥先生がやるの!?」
「うん。嫌って言ってもダメだよ?汐梨から言いだしたんだからね。」
でしょ?と振り向き様に彼女を見やると、
「‥うぅ〜‥イキナリなんてずるい!」
うつむきながら悔しそうにそう言った。
「そう?いつやっても一緒じゃない。」
言いながら、ソファの前で立ったまま話していた汐梨の肩をトンッと押してソファに座らせる。
「大丈夫。あたし染めるの上手だから。たぶん。」
そう言ってニコリと笑ってやると、汐梨は観念したような顔を見せた。
「たぶんって‥もう!‥早くオムライス作って!」
イジけているような汐梨のその表情は、やはり高校生そのものだった。
「はいはい(笑)」
可愛いな、なんて思いながら。 久しぶりに作る二人分の食事に、いつも以上に手をかけた。
(携帯)
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