| "カイト"は。
高校時代、女子バレー部でセッターだったわたしと強力タッグを組んでいた
アタッカーのコートネーム(コートの中で呼び合うニックネームみたいなものだ)で。
彼女は高校時代からのわたしの想い人だった。
高校時代からわたしは、大人しそうなお嬢風の外見に似合わず、
恋愛に関してはかなり積極的なアプローチを試みていたほうだった。
当時の高校生だったわりには、自分の武器が何なのか知っていたし、
それを使う術も心得ていた。
今思うと、ちょっとやな女子高生だなと思う。
若気の至りで、ツマミグイみたいなことも、何回かしてしまった。
ただ、わたしは一見優等生のお嬢さま風だから。
悪い噂が立つことだけは避けられていたけれど。
けれど、そんなわたしでも、彼女の鈍いんだか疎いんだかよく分からない、
とにかく脈のなさそうな誰にでも分け隔てない対応の壁を崩して、
彼女の心を射止めることができなかった。
…いいところまでは、持っていけたと思っていたんだけどね。
それが気のせいじゃなかったと分かるまで、実に8年の年月を要したことを考えると、
実質彼女が、わたしにとって一番の難攻不落の城だったんでしょう。
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