| 可南子がなんだかおかしいとは思っていた。
でも、まさか、そうくるとは。
その発言に対して、私はどう反応していいのかすらわからなかった。
今日の私の恋愛運は絶好調とでもいうべきか。
それともトラブル注意とでも出ていたのだろうか。
「あなた、だって…彼氏は?」
「え…?」
彼女の驚いたような反応に、苛立ちを覚えた。
「え、じゃないでしょう。マサヤ、だっけ」
怒りがこみ上げてきて、口の端が曲がりそうになる。
彼女は私があの時どれだけ傷つけられたのか、全く分かっていないに違いない。
彼女は、そんなに軽い気持ちで私と付き合っていたというのか。
しかし、その私の言葉に彼女が傷ついたように反応を示した。
「そんなの…嘘だよ。淳子さん、あたしがビアンだって知ってるでしょう」
可南子のその反応は、あまりに意外で、
私は頭の中がいっぱいになるような錯覚を覚えた。
ちょっと待って。
よく分からない。彼女の発する言葉の意味が。
なんで彼女は私に嘘をつく必要があったのだろう。
「…どういうこと?あなただって確かに私にそう言って…」
「……」
可南子は手元の在庫表に視線を落としたまま、何も言わずにじっとしていた。
何か、あるというのだろうか。彼女に。
「じゃあ、この話の続きは、夜に」
「うん」
仕事中にエキサイトするわけにも行かない。
もやもやしたものを抱えつつ、私は彼女との話し合いを夜に持ち越した。
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