| 『海行きたいな…』 会社帰りに2人で飲みに行った時にサクラが小さい声で言った。
「いいね。行こう!」きっと独り言のつもりだったのかもしれない。私の返事に、 『本当?約束だよ!』とサクラがはしゃいだ。 すごくかわいくて、とても愛しくて私はビールを飲み干し立ちあがった。
キョトンとしているサクラの手を取り、 「まだ間に合う」 と駅まで2人で駆け出した。 あの時の¨まだ間に合う¨は電車のことか私の関係か自分でも分からない。
ただ酔った勢いで映画のワンシーンみたいにサクラの手を握ってしまった。 お酒の力は怖すぎる…
海に着く頃には終電なんてなくてただ海を見つめながらぼーっとしていた。
このままでいたい気持ちと現実との狭間で私はサクラを見る事は出来なかった。
海で一晩過ごしたスーツはとても潮臭いこと。 帰ってから同棲している彼女に連絡しなかったことで怒られたこと。 これこそ今の私にとっての現実なのだ。
(携帯)
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