| 部室で昼寝をしていた。 意外にも、真夏でも電源の入っていないコタツの中は涼しい。 電源の入っていないコタツに入り寝転んでうつらうつらとしていた。 その時、いきなり人が入ってきた。声で成瀬と彩ちゃんだということがすぐに分かった。 昔…同じようなシチュエーションがあったような…
デジャヴ?
「どしたん?最近、なんか元気ないやん。歩も心配してたで?なんか悩んでんの?」 「別になんでもないよ…」 「どうしたん?ほんまに。なんでもないって言うてる側からなんでもないようには見えへんよ?」 「……。」 「あや?」 「……。」
長い沈黙の後、涙声の彩ちゃんの声がした。
「ほんとに山本さんと…付き合ってるの…?」
とうとうこの時がきたと思った。胸が痛くなる…
「私…さつきと付き合ってる時、ほんとは凄く不安だった。本当にさつきは私の事好きでいてくれてるのかなって…。さつきはいつもクールでかっこよくて…でも…全然スキがなくて、完璧で…気持ちが読めなかった。私はずっとさつきは本当は私の事好きじゃないって思ってたんだよ…」
…痛い
「そんなわけない!!私は本気で彩が好きだった!!」 「知ってる。私がそれに気付けなかっただけ…。さつきは私が思ってるよりもずっと深いところで私のこと愛してくれてたんだよね…。 私がそれに気がついたのは、さつきに別れ話をされた時だった。あんな…泣きそうな顔で他の人のとこに行けって…引き止めないように手を白くなるほど握り締めて…私はその時やっと自分は愛されていたんだってことに気が付いた。でも、私はもう、引き返すことが出来なくて…」
胸が…痛い…
「そうだよ」 「…っ!」 「もう引き返せん。もう終わったこと。そうやろ?」 「わたしは…やりなおしたい…。私は全然本当のあなたを見てこなかった気がする。別れてはじめて、私は本当のあなたを知ったの…」 「今さら…やめて」 「あなたが好き。今のあなたが好き。どうしようもないほど、さつきのことが好きなの」 「歩は…!どうなんの?私の親友なんやで?」 「でも私は…!」 「無理!私は無理やから!もう彩とのことは終わったことやから!」 「さつき…」 「歩を…傷つけんといて…。大事にしてあげて…」
胸が…痛い… 成瀬の痛みが身体の中に流れ込んでくる…
彩ちゃんは出て行った。
成瀬は泣いているだろう。
私は…身動き一つ取れなかった。
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