| 『じゃあ、お母さんに電話してくるね!』
幸い明日から土日で学校は休みだし
来週の月〜火曜日の二日間は球技大会なので、この土日はその準備で体育館も使えない
よって、部活も休みだ。
ベランダに出ていたまなみが、電話を終えて戻ってきた
『ご家族の方、心配してはりませんでしたか?』
「大丈夫よ、もう子供じゃないっちゃけん。(笑)」
『それはどうでしょうね?』
「今何か言った〜?」
『いえ、特に。』
「あ、そうそう、妹が颯によろしく伝えてって言いよったよ。」
『ゆう先輩っていう人ですよね?』
「あれ?結希の事知っとったん?」
『見た事も喋った事もないですけど、噂は。』
「噂?」
『剣道、すごいんですよね?』
「あぁ!あいつは剣道しか脳がないけんね(笑)」
『それも…聞きました。』
「どんな噂よ(笑)」
『あとは… 亜也先輩がゆう先輩を好きだった事も。』
「……うん、そうやね。
もう今は颯しか見てないけん話せるんやけど、颯には全部知ってもらっときたいけん、聞いてくれる?」
『はい。』
それから、まなみはゆっくりと思い出すように話してくれた。
三回目の留年で、周りは年下ばかりの状況の中、上手く打ち解けられなかったまなみに初めて声をかけてくれたのが、妹と仲良くなった亜也だった事。
同じバスケ部だった事もあり、仲はどんどん深まって行って、気付いたら初めて女の子に恋をしていた事。
だけど亜也は、妹の結希の事が好きだと知った時の事。
その結希が、亜也ともう一人の別の女性にどっちつかずの態度を取って、両方を苦しめていた事。
二年生になって、亜也が結希に告白したんだけど、結希は結局もう一人の女性を選んだ事。
亜也と付き合った時、最初の頃は結希を忘れられない亜也を慰める毎日だった事。
やっと解り合えた頃、一度だけ亜也が結希と浮気をしたのを知ってしまったけど、それを亜也には言えなかった事。
それから亜也を信じられなくなったけど、好きだったから離れる勇気がなかった苦しい恋愛だった事。
最近、結希が彼女と別れた事。
それが、結希は亜也が好きだからという理由だと聞いてしまった事。
時を同じくして 余命を、宣告された事。
全てから逃げたくなった事。
(携帯)
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