| 小学6年の冬、俺は初めて自分より上手い小学生に出会ったのだ。これは事実だった。
名前も知らない。学校名すら覚えていない。だけど俺がその姿を忘れることはなかった。そいつより上手くなる。俺はいつも考えていた。所詮小学生の頃の記憶だが、あまりに衝撃的だったのだろう。想像の中でさえ、俺は一度もそいつに勝ったことがない。
『おい!』
『え?』
『決勝まで残れよ。俺と勝負だ。』
『うん。』
俺の無礼な態度に、そいつはなんだか嬉しそうだった。
『君は、きっと強くなるよ。』
最後にそいつが言ったのは、そんな屈辱的な言葉だった。忘れるわけがない。同じ小学生にそんなことを言われるなんて、馬鹿にされたようで腹が立った。このこともそいつを忘れられない原因の一つなのだろう。
夢には続きがあった。決勝でそいつのチームと戦っていた。実際は俺もそいつも決勝には出られなかったのだけれど。
決勝戦は俺たちの負けだった。
やっぱり。なぜかそう思ったところで、目が覚めた。
(携帯)
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