| 湧き上がるような、相手に襲いかかる感情。
人間の時には─
無かったものだ。
…違う。
「ウォウ!!」
人間の時にもあったけど。
表現の仕方が、 私には良く分からなかったんだと思う。
シズカに一気に飛びかかった私は。
砂煙を上げて。
取っ組み合いになる。
逆さまになったシズカの上に馬乗りになる。
はたから見たら、
子犬と子猫が。
じゃれ合ってるようにしか見えないだろうけど…。
「ウー…」
シズカを見下ろし、小さくても鋭い牙を向けた。
「……………。」
子猫のシズカは、 何も言わない。
どころか、 完全に力が抜けていて。
やる気は、無かった。
すると─
「…あの対象者は、あなたとはどういう関係?」
やっと口を開いたと思ったら…。
「それを言う必要がある?」
そんな事聞いてどうする。
シズカは何かを探るように私の目を覗いていた。
「無いわ。でもあなた、本音は別にあるんじゃない?」
「…………どういう意味?」
ドキリとした。
「対象者の結婚、私がぶち壊す事をよ。」
「……………。」
「そうなればいい、って。」
どこかで思ってない?
「……うるさい。」
違う。
「どうして私を置いて幸せになるんだ、って。少しも思わなかったの?」
違う。
「うるさい!アンタに何が分かるの?」
違う。
違う。
違う。
「……分からない。けど、今のあなたは、」
結構惨めよ。
「………………。」
「好きだったんでしょ、あの女の事。」
「うるさい…」
うるさい!
私はシズカの喉を目掛けて、
思いっきり、
噛み付いた。
(携帯)
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