ビアンエッセイ♪
HOME
HELP
新規作成
新着記事
ツリー表示
スレッド表示
トピック表示
発言ランク
ファイル一覧
検索
過去ログ
[ スレッド内全33レス(10-19 表示) ]
<<
0
|
1
|
2
|
3
>>
■19687
/ ResNo.10)
spring 10
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(11回)-(2007/08/08(Wed) 00:20:45)
「っていうかさ」
「ん?」
「食べ過ぎじゃない?」
同じバスケ部の紗帆に突っ込まれたのは、学食で日替わり定食(ライス大盛り)を食べ終わり、菓子パンの袋を開けたときだった。
「ああ、今日朝食べて来なかったから。」
それだけ答えると、俺は大好きなチョコチップメロンパンにかじりついた。そんな食生活でよくバスケやってられるね、と紗帆は嘲笑するかのように言った。
「あ!!鮎沢せんぱーい!!」
「おう。」
「今日もカッコイイですね!!」
「そんなことねーよ!!それよりお前髪切った?」
「はい!!よくわかりましたね!!さっきの空きコマに美容室行って、ちょっとすいたんですよ〜!!」
香奈美というこの後輩は、嬉しそうに笑った。白い歯が見えたとき、子犬みたいだな、と思った。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19688
/ ResNo.11)
spring 11
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(12回)-(2007/08/08(Wed) 00:22:43)
2007/08/08(Wed) 00:23:30 編集(投稿者)
俺が香奈美と雑談しているとき、紗帆の視線が痛かったが気付かないフリをした。
「よく分かったね。」
香奈美が去った後で紗帆が言う。嫌味な奴。
「まあね。」
「さすがモテる男は違いますね。」
「だってあいつ、肩んとこに何本か毛がついてたから。」
「…逆にすごいよ。」
俺は笑った。気分は名探偵。
「ところで紗帆さん。」
「何、改まって。」
「世間じゃ俺はお前と付き合ってるって専ら噂してるみたいだが。」
「げっ、マジで!?」
「なんだよ“げっ”て。」
「泉のファンが絡むとろくなことない。」
「確かにな。でさ、だからってわけじゃねーけど、お前そろそろ彼氏でも作れば?」
「彼氏ねぇ…まあ私は、」「バスケットボールが恋人、とかつまんねーこと言うなよ。」
やっぱり。紗帆の目が泳いだ。俺はため息をつく。紗帆だったら可愛いししっかりしてるし、彼氏の一人や二人できてもおかしくないんだが。
「次、ウェルネスでしょ。」
「そだ。行こうか。」
席を立ち、食器を片付けに下膳口に向かう。紗帆の背中をぼんやりと見ながら、思った。
やっぱりこいつ、俺のこと好きだよな…。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19689
/ ResNo.12)
spring 12
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(13回)-(2007/08/08(Wed) 00:26:09)
この日の部活が終わったときには、もう9時を過ぎていた。熱気がまとわりつくようで、気持ちの悪い夜だった。何かもやもやしたものが渦巻いている気がして、それを振り払うかのように俺はペダルを踏んだ。アパートから最も近いコンビニの前を通り過ぎるが、これから自炊することを考えると気持ちが萎えた。思い直してUターンする。
俺は多少の引け目を感じながら、コンビニの前に自転車を停めた。自動ドアが開く。
いらっしゃいませー!!
元気のいいバイト君の声と同時に、キンキンに冷えた空気が身体を包む。生き返る。
店内にはキャップを深く被った小柄な男が一人と、子連れの若い母親。そして俺だけだ。
適当な弁当を手に取り、そうだサラダも、と思った。紗帆の顔が頭に浮かんだのだ。俺は“たっぷり野菜のバランスサラダ”に手を伸ばす。ったく、なんでドレッシングは別売りなんだよ。こいつは家のやつよりうまそうに見えてくるから厄介だ。そうしてしばらく、ドレッシングを買うか買わないか悩んでいた。
そのときだった。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19690
/ ResNo.13)
spring 13
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(14回)-(2007/08/08(Wed) 00:27:33)
「あなた!!何してるの!!」
耳をつんざくようなパートのおばさんの声。俺は何も、そう言おうとして息を飲んだ。右手から走り出す小柄な男。俺の背中を通り過ぎ、左に曲がる。「待ちなさい!!」おばさんが叫ぶ。正面にはレジから飛び出してきたバイト君。これまでか。そう思ったとき
小柄な男が、飛んだ。着地と同時に身体をひねる。くるりと回転する。両手を広げたバイト君に触れるか触れないかの距離で、一瞬にして脇の下をすり抜ける。ちょうど新たな客が来て、自動ドアが開く。小柄な男はそのまま店を飛び出す。
あっという間だった。
誰もが呆然と立ち尽くした。あまりにも鮮やかな逃走だった。新しく入ってきた客だけは、状況が飲み込めずに不思議そうな顔をしていたが。
だがその場にいた人間の中で、俺ほど驚いた奴はいるまい。小柄な男が走り抜けたときに残った香りに、確かな覚えがあったからだ。
『これ、神戸で作ってもらったの。世界にひとつだけの香りなんだよ。』
『別にどうでもいいけど。割と気に入ってる。』
春の香水だった。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19691
/ ResNo.14)
spring 14
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(15回)-(2007/08/08(Wed) 00:28:52)
春が、万引き?
その日俺は眠ることができなかった。手術で腹をかっ開いて中に石を投げられたみたいな衝撃と、居心地の悪さだった。
万引きも勿論衝撃的だったが、それ以上にあの軽やかなステップが脳裏に焼き付いて離れない。春は、運動は苦手なの、とよく言っていたではないか。なんで、どうして。そればかりが頭の中でぐるぐる回っていた。
人違いではないかという考えは、何故か浮かばなかった。
明け方に一眠りしたのが間違いだった。時刻は9時半。朝練遅刻どころか1限すら始まっている。慌てて跳ね起きるが、思い直す。あの授業は出席を取らないし、2限は空きコマだから、もう一眠りして午後から行こう。扇風機をつけて、自分の方に向ける。窓の外でこうこうと太陽が照っている。
どれくらい寝ただろう。チャイムの音で目が覚めた。
居留守を使おうと思ったが、あまりにしつこいから根負けした。ぼさぼさの頭でドアを開ける。睡眠を中断されたことへの精一杯の反抗心を込めて、乱暴に。
そこには、紗帆が立っていた。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19692
/ ResNo.15)
spring 15
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(16回)-(2007/08/08(Wed) 00:30:10)
「1限出なかったんでしょ?泉が今日サボらないように迎えにきてあげた!!」
にっ、と紗帆は笑う。うん、いい笑顔だ。
「俺は午後から出勤の予定だったんだよ。」
「そうですかー。上がるよ。」
「おう。汚いけど。」
「知ってる。」
こいつは、たまに春と似てるな。そんなことを思いながら2つのグラスに麦茶を注ぐ。氷がカラカラと涼しげな音をたてる。
麦茶を持って部屋に行く。
「おい、そんなとこにつっ立ってねーで…」
「あ。」
紗帆が、明らかに俺のではない可愛らしいキャミソールを見つめていた。
見てはいけないものを見た、そんな顔だった。
春の、片付けとくんだった。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19693
/ ResNo.16)
spring 16
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(17回)-(2007/08/08(Wed) 00:31:47)
「うん、だから…さ。そういうことだって。」
薄ら笑いで説明にならない説明をするが、紗帆には通用しないようだ。
「つまり…彼女がいるってこと?」
「そういうことになりますか。」
馬鹿だ。友達のだとかお母さんのだとか、言い訳はいくらでもできたはずなのに。俺はため息をついた。
と、同時に紗帆も大きく息を吐いた。
「やっぱりねー。」
「え?」
「だって泉が男と付き合ってるのって、想像つかないし。」
「ああ、そうかもね。」
でも残念ながら、俺は男とも付き合うんだよ。とは言えなかった。
それからしばらく俺のことを話していたが、ふと気になって聞いた。
「紗帆ってさ、俺のこと好き?」
「泉は。」
「最高のチームメイトだよ。」
その言葉に嘘は無い気がした。最高のチームメイト、か。思わず笑みがこぼれる。
「何笑ってんの?キモーッ!!」
「うるせえよ!!」
風が通り抜けた気がした。こいつとは、仲良くやっていけそうだ。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19694
/ ResNo.17)
spring 17
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(18回)-(2007/08/08(Wed) 00:33:17)
あのコンビニでの一件以来、春とは会っていなかった。元々春の方から誘ってくることはほとんどなかったし、俺の方も実習が重なって、いっぱいいっぱいだったというのもある。ただそれが言い訳に過ぎないことは、自分が一番よく分かっていた。単に、どんな顔をして春に会えば良いのかわからなかったのだ。
久しぶりに早く部活が終わった木曜日、俺は一人でレンタルDVD屋でも行こうと校門をくぐりぬけた。まだ日が落ちていないことが嬉しい。と、そこで見慣れた姿が目に飛び込んできて慌ててブレーキをかける。春だった。
「ちょうど通りかかったの。今日早いんだね?」
「おう。乗れば?」
少し声が上擦ったのに、春は気付いただろうか。
ともかく、春を乗せてDVDショップに向かった。途中、ぽつりぽつりと他愛もない会話をしながら。
春は、驚くほど自然だった。俺がうだうだ考えていたことが全部無駄だったように思われて、なんともみじめな気分になった。同時に、あの日のことは触れないでおくのが最善だとも思った。このまま、なかったことにするのが礼儀であるような気がしたのだ。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19695
/ ResNo.18)
spring 18
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(19回)-(2007/08/08(Wed) 00:34:37)
DVDショップで古い洋画を2本レンタルする。俺は春の好みで、抽象的で訳のわからない映画をよく借りさせられる。はっきり言って退屈だし、途中で寝てしまうこともしばしばだが、春はいつも最後まで真剣に観る。
この日、珍しく春は泊まってもいいか聞いてきた。断る理由はなかった。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
■19696
/ ResNo.19)
spring 19
▲
▼
■
□投稿者/ 春風
一般♪(20回)-(2007/08/08(Wed) 00:37:33)
その夜俺は春を抱いた。
俺が貸したスウェットを脱がすとき、春の膝に痣があるのを見つけて、どうしたのかと尋ねる。すると春は「転んだの。本当鈍いんだよね。」と笑った。そうか。と言って俺は笑おうとしたが、うまく笑うことが出来なかった。胸のあたりに微かな痛みを感じる。
──春は何かを隠している
そう思うとどうにももどかしくて、それなのに問いただせない自分自身に苛立って、ひたすら指を動かすしかなかった。余計なことを考えてしまわないように。クーラーのきいた部屋の中であるにも関わらず、俺は汗びっしょりだった。
春と抱き合って眠ったその夜、俺は奇妙な夢を見た。
小学生の頃の夢だ。
(携帯)
引用返信
/
返信
削除キー/
編集
削除
このスレッドをツリーで一括表示
<前のレス10件
|
次のレス10件>
スレッド内ページ移動 /
<<
0
|
1
|
2
|
3
>>
このスレッドに書きこむ
入力内容にタグは利用可能です。
他人を中傷する記事は管理者の判断で予告無く削除されます。
半角カナは使用しないでください。文字化けの原因になります。
名前、コメントは必須記入項目です。記入漏れはエラーになります。
入力内容の一部は、次回投稿時の手間を省くためブラウザに記録されます。
削除キーを覚えておくと、自分の記事の編集・削除ができます。
URLは自動的にリンクされます。
記事中に No*** のように書くとその記事にリンクされます(No は半角英字/*** は半角数字)。
使用例)
No123 → 記事No123の記事リンクになります(指定表示)。
No123,130,134 → 記事No123/130/134 の記事リンクになります(複数表示)。
No123-130 → 記事No123〜130 の記事リンクになります(連続表示)。
Name
/
E-Mail
/
Title
/
URL
/
Comment/ 通常モード->
図表モード->
(適当に改行して下さい/半角20000文字以内)
■No19693に返信(春風さんの記事) > 「うん、だから…さ。そういうことだって。」 > > 薄ら笑いで説明にならない説明をするが、紗帆には通用しないようだ。 > > 「つまり…彼女がいるってこと?」 > > 「そういうことになりますか。」 > > 馬鹿だ。友達のだとかお母さんのだとか、言い訳はいくらでもできたはずなのに。俺はため息をついた。 > と、同時に紗帆も大きく息を吐いた。 > > 「やっぱりねー。」 > > 「え?」 > > 「だって泉が男と付き合ってるのって、想像つかないし。」 > > 「ああ、そうかもね。」 > > でも残念ながら、俺は男とも付き合うんだよ。とは言えなかった。 > > > それからしばらく俺のことを話していたが、ふと気になって聞いた。 > > > 「紗帆ってさ、俺のこと好き?」 > > > > 「泉は。」 > > > > 「最高のチームメイトだよ。」 > > > その言葉に嘘は無い気がした。最高のチームメイト、か。思わず笑みがこぼれる。 > > > 「何笑ってんの?キモーッ!!」 > > 「うるせえよ!!」 > > > > 風が通り抜けた気がした。こいつとは、仲良くやっていけそうだ。 > > (携帯)
File
/
アップ可能拡張子=> /
.gif
/
.jpg
/
.jpeg
/
.png
/.txt/.lzh/.zip/.mid
1) 太字の拡張子は画像として認識されます。
2) 画像は初期状態で縮小サイズ250×250ピクセル以下で表示されます。
3) 同名ファイルがある、またはファイル名が不適切な場合、
ファイル名が自動変更されます。
4) アップ可能ファイルサイズは1回
200KB
(1KB=1024Bytes)までです。
5) ファイルアップ時はプレビューは利用できません。
6) スレッド内の合計ファイルサイズ:[0/500KB]
残り:[500KB]
削除キー
/
(半角8文字以内)
完結!
BOX/
お話が完結したらチェックしてください!
プレビュー/
Mode/
通常管理
表示許可
Pass/
HOME
HELP
新規作成
新着記事
ツリー表示
スレッド表示
トピック表示
発言ランク
ファイル一覧
検索
過去ログ
-
Child Tree
-