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■20650
/ 親記事)
天使の恋愛事情
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□投稿者/ K
一般♪(1回)-(2008/02/28(Thu) 17:38:35)
こんにちは(^O^)
私は一応病院で看護師として働いているKといいます(笑)
今まではここにある素敵なエッセイを読んでいるだけでしたが、ふと自分も書いてみたいと思うようになり…現在書き込みをしていますm(__)m
文才も全くないですし、下手くそですが、頑張って書きたいです(^_-)
これから、様々な看護師が出てくる短編のお話を書いて行こうと思います!
ではでは…、興味がある方は暇つぶし程度な気持ちで読んでみて下さいね(笑)
(携帯)
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■20651
/ ResNo.1)
1・最期のお願い(1)
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□投稿者/ K
一般♪(2回)-(2008/02/28(Thu) 18:28:58)
私がこのホスピスで働くようになってから、もう5年が経った。
当然の事であるが、ホスピスを退院していく者はいない。
最近になって、私は5年間も笑顔で退院していく患者を見ていない事に気が付いた。
そんな気付きたくなかった事に気が付いてしまった矢先…
「多村さん、あそこの大学病院からまた『新入りさん』が来るんだってさ。」
同僚の看護師にそんな事を聞かされて、私は眉を潜める。
「…その『新入りさん』が、大学病院で働く事に飽きて、これからこのホスピスの勤務員として働くっていうなら、嬉しいんだけど。」
「残念ながら、大学病院に飽きた『新入りさん』ではないんだけどね〜…」
そういう事ならまた一人、ここのホスピスで生涯を終える人が増えたということだ。
ホスピスで働く事を決めたのは他の誰でもない自分なのに、『新入りさん』の報告をうける事に未だ慣れられないのは、ここで働いている勤務員の中で私だけだろうか?
今では何故自分がホスピスで働こうと思ったのかさえ思い出せない。それなのにズルズルとここにいつづける自分が、たまによく分からなくなる。
あー…ナースコールが鳴ってる、と独り言を言いながら席を立った同僚をちらりと一瞥すると、私は聞こえないように小さくため息をついた。
数日後…
新入りさんこと三国夏希さん(27)を受け持つ事になったのは、私だった。
「こんにちは三国さん。本日から三国さんを受け持つ事になりました、看護師の多村瑛子です。よろしくお願いします。」
「看護師の多村さんですね?よろしくお願いします。」
三国さんは丁寧に深々と頭を下げる。
「今どこか具合が悪いところとか、ないですか?お願いしたい事があるとか…何かないですか?」
「体調の方は落ち着いてます。…お願いしたい事、ですか?うーん…何でもいいんですか?」
「何でもいいですが、私が出来る事にして下さい(笑)」
私が微笑むと、彼女も肩に入っていた力が抜けたのか表情を和らげた。
「じゃあ看護師さん、私を毎日散歩に連れていって下さい。」
それが、彼女が私にした1番最初のお願いだった。
(携帯)
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■20652
/ ResNo.2)
1・最期のお願い(2)
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□投稿者/ K
一般♪(3回)-(2008/02/28(Thu) 20:20:31)
2008/02/28(Thu) 22:01:32 編集(投稿者)
「三国夏希さん27歳、末期の膵臓癌。1ヶ月前に職場で背部とみぞおちの痛みを訴えた後に意識を失い、搬送先の大学病院で検査を受けて余命3ヶ月の宣告を受ける。
延命治療は希望せずに、残された3ヶ月の人生をうちのホスピスで過ごす事を望み、本日から入院…か。」
入院時患者記録を読みながら、私は溜め息をつく。
「多村?すっごい溜め息ついちゃってどうしたの。…ん?三国さんの入院時患者記録?」
「うん。私とあんま歳変わらないのになーってさ」
同僚に話かけられるが、長々と会話をする気分にはなれない。
私はもう一度深い溜め息をつくと記録をパタンと閉じて、先程彼女とした会話の内容を思い出す。
「毎日って言われても、体調が悪い時は無理ですよ?無理して散歩に出たりして何かあったら困りますから。」
「どうしてですか?もうそんなに長くないわけですし、私は何があっても構いませんが…」
「…いや、そんな風にいわないで下さいよ。ホスピスは患者様に最期まで有意義に過ごして貰う場所です。無理をさせて死を早める場所ではありませんから。」
彼女の発言に対して私が驚きもせず冷静に答えると、彼女はくっきり二重の大きな瞳をスッと細く細める。
「多村さん、私にはあなたしかいません」
「…はい?」
間を置いて彼女が発した言葉に、態度には出さないにしたけれど私は今度こそ驚いた。
「両親には恋人と駆け落ち同然で家を出てから会っていません。その恋人とは、余命が分かった時に別れました。」
「…」
彼女の話を聞いていくうちに、私は本当に何も言えなくなった。
会ったばかりの彼女からそのような話を聞いても、どんな言葉をかけていいのか、分からなかったからだと思う。
それに、その時に思った言葉を簡単に口にしてはいけない気がしたからだ。
「とにかく私の最期まで傍にいてくれるのは、私を受け持つ事になったあなただけなんですよ。だから私が最期まで幸せで有意義に過ごせるかは、多村さん次第で決まるんです」
こんな事を言った患者に出会うのは、初めてだった。
「…私に何ができるっていうんだろ。ただの看護師なのに」
昔から困っている人や辛いそうな人をほって置く事ができない性格だった私は、三国夏希の最期の瞬間まで自分が彼女に何が出来るのか悩み続ける事になるのだった。
(携帯)
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■20653
/ ResNo.3)
NO TITLE
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□投稿者/ ミキ
一般♪(2回)-(2008/02/28(Thu) 21:10:35)
初めまして(≧ω≦)
続き、すごく気になります♪♪
更新されるの待ってます☆頑張ってください(≧ω≦)
(携帯)
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■20658
/ ResNo.4)
ミキさん☆
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□投稿者/ K
一般♪(4回)-(2008/02/29(Fri) 07:07:49)
感想ありがとうございます♪
まさか書いてすぐに感想を貰えるとは思ってなかったので、嬉しいです(>ω<)
こんな駄作を気になると言ってくれる方がいると、私も頑張って書いてみようという気持ちになりますよ☆
よかったら、これからも読んでみて下さい♪
(携帯)
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■20663
/ ResNo.5)
1・最期のお願い(3)
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□投稿者/ K
一般♪(5回)-(2008/02/29(Fri) 21:27:27)
2008/02/29(Fri) 21:45:54 編集(投稿者)
「で?私を毎日散歩に連れて行く事、決めてくれましたか??♪」
次の日の朝、三国さんは私が病室へ行くとすぐに飛び付いてきた。
そんな彼女の様子が、何だか飼い主を待っていた犬のようで、私は思わず微笑んだ。
しかし例え彼女を可愛いと思っても、言わなくてはならない事をきちんと伝えるのが看護師である。
「昨日色々と考えてみたのですが、やっぱり三国さんの体調優先ですから、毎日は無理です。」
きっぱりと断った瞬間、彼女はシュンと肩を落とす。
「えーっ…もう、多村さんってケチだなぁ」
「可愛く言ってもダメなものはダメなんです(笑)」
「ちぇっ、ケチケチー。」
「…な、なんかキャラ変わってませんか三国さんυ」
「多村さんが言う事聞いてくれないからキャラが変わっちゃうんですよ!もう今日からご飯食べませんし、言う事聞きません!」
まるで子供みたいに駄々をこねる三国さんを、私は不思議に思った。
彼女は何故そこまで毎日の散歩にこだわるのか?
「…毎日散歩に行きたい理由、何かあるんですか?」
私が聞いた途端彼女は表情を一瞬曇らせたが、すぐに明るく笑った。
「…アハハ☆急にマジメにならないで下さいよ、多村さん。…ごめんなさい、我が儘言い過ぎましたね(笑)」
「三国さん、…貴女の返事によっては、もしかしたら何か考えられるかもしれないですから。どうしてそんなに毎日の散歩にこだわるのか、教えて下さい」
私が本当に真剣に質問していると気がついたようだ。
三国さんは笑うのをやめると、少しの間を空けてから口を開いた。
「だって、…多村さんに看護師としてのケアばかりされてたらなんか寂しいなぁーって思ったから。わがままだって分かってますけど、散歩ってあんまり看護ケアって感じしないから…毎日散歩して、最期くらい病人だって忘れて楽しみたかったんです。」
寂しそうに話す彼女の姿をみて、ふと昨日の彼女の言葉を思い出した。
「多村さん、私にはあなたしかいません」
恋人との別れだって苦しかっただろう。
できる事なら、両親にも会いたいのかもしれない。
それでも彼女は、独りで自分の死と向き合おうとしているのだ。
三国さんの若さで自分の死に独りで向き合う事は、どう考えてみても簡単な事ではない。
本当に彼女が望んでいる事は、毎日の散歩ではない。
残りの時間を、少しでも多く誰かと一緒に楽しく過ごしたいのだ。
「…分かりました。毎日の散歩はできないですが…休日もあなたに会いに来ます。それと、出来るだけ多くあなたのところに来ます。散歩が出来なかった日は、必ずあなたといるために2時間、時間を作ります」
意を決して、私は彼女に伝えた。
「…本当に?」
「…これでも満足ではないですか?」
私がそう聞くと、彼女は心から嬉しそうに微笑んで首を横に振った。
「いいえ、嬉しいです。
…約束、守って下さいね?」
「はい、分かりました。」
こうして、私と三国さんの約束が交わされたのだった。
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■20664
/ ResNo.6)
1・最期のお願い(4)
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□投稿者/ K
一般♪(6回)-(2008/03/01(Sat) 14:54:09)
2008/03/02(Sun) 00:39:19 編集(投稿者)
あの約束の日から今日で1ヶ月が経った。
私は今までの1ヶ月、毎日彼女との約束を守り続けている。
三国さんの病状は比較的落ち着いていて、熱が出るか天気が悪いかしないかぎり、私たちは毎日庭を散歩していた。
散歩に出られない日は、最初は勤務中の手のあいた時に時間を作っていた。それが時間がたつにつれて仕事が終わっても家に帰らず泊まったりするようになっていった。
休日だってどんなに疲れていようが、彼女に会いにきた。
そんな毎日を過ごしていく中、彼女が私にとって特別な存在になるまで、そんなに時間がかからなかった。
同情とか、そんな感情からそうなった訳ではない…と思う。
彼女が私を心の底から必要としてくれているのが痛いぐらいに伝わってきて、気が付くと何をする時も私は彼女の事を考えるようになっていったのだった。
「多村さん、今日も天気がいいですね」
「…寒く、ないですか?」
散歩中に立ち止まって、車椅子に座る彼女を後ろから抱きしめると、彼女はくすぐったそうにクスクスと笑う。
「多村さんがこうしてくれてるから、暖かいです(笑)」
「お役に立つ事ができて光栄です(笑)」
しばらく二人で笑いあって、それから沈黙が訪れる。
「…多村さん、私ここのホスピスに入院してよかったです」
沈黙を破ったのは三国さんからで、先程と違った深刻な空気が流れだすのを感じると、私は怖くなった。
「余命を告知されるまでは、私…ずっと恋人のマンションで過ごしていました。彼女は海外で仕事をしてるから、毎日一緒にいれたわけじゃなかったですけど。たまに会えるだけでもすっごく幸せでした。」
「…彼、女?」
「私の恋人は、女性だったんです。だから親にも反対されて…それでも彼女を愛してたから、私は彼女と生きる事を決めたんです。」
ビックリしました?と明るく聞いてくる彼女に対して、私は首を横に振る。
寂しそうに話す彼女が痛々しいのに、気が利いた言葉一つ言えない自分が情けない。
「余命を宣告された時、私は彼女との別れを決めました。彼女が私の身体の状態を知ったら、自分を責めると分かるから。
私も彼女がどれだけ仕事を楽しんでるかも知ってたし、これから先も一緒にいれないのに仕事の邪魔をするのも嫌だったし。」
「……。」
「延命治療すると自分が病人だって思いしらされるし、死ぬ事が分かってるのに治療を受け続けて死ぬのは嫌だった。
残された時間を自由に生きたかったからホスピスに入院する事に決めたのに…いざホスピスに来たら、一人で死ぬのが急に怖くなって、多村さんに縋っちゃって。
…今まで色々、わがまま言ってすみませんでした」
何だか急に三国さんが遠ざかって行くような気がして、私は三国さんを抱きしめる腕の力を強めた。
「そんな…謝らないで下さい。私だって好きであなたのために時間を作ってたのに。あなたのわがままに付き合ってたんじゃなくて、私が望んであなたにしてきた事ですから、謝られたら逆に残念です。」
「それでも、看護師さんてやっぱり仕事はハードだし休日休ませてあげなかった事は、本当にごめ…」
「だから謝らないで下さい。私はあなたに残された時間の中で、あなたに出来る限りの事をしたかった」
私は謝りそうな彼女の言葉を遮って、今まで一緒に過ごした中でも言わなかった自分の気持ちを彼女に伝える。
「同情なんかじゃないと自分では思ってます。今まで5年、ホスピスで残りの人生を送るたくさんの人達を受け持ってきましたが、私があなた程必死で何かしてあげたいと思う人はいませんでした。」
「それは私みたいにわがままを言う方がいなかったからじゃなくて?」
「断る事だって出来ましたし、休日も会いにくるって言ったのも私です。それに…仕事が終わってホスピスを出ても、私はあなたの事ばかり考えていました。それは私があなたを…」
「もう言わないで下さい。」
今回は私が彼女に言葉を遮られた。
「それ以上あなたに言われたら、私は死ぬ事が辛くなりますから…だから、言わないで下さい。」
あなたの気持ちをこれ以上言わないで欲しい。
…これが、彼女の2つ目のお願いだった。
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■20669
/ ResNo.7)
1・最期のお願い(5)
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□投稿者/ K
一般♪(7回)-(2008/03/02(Sun) 00:35:14)
それから…
2つ目のお願いをした数日後、三国さんは高熱を出して起き上がる事ができなくなった。
看護経過記録にも
“「食べたくない」と言っている。食欲なし。
腹痛を訴える。
ベッド上でも身体を動かす事がやっとで、辛そう。”
などという内容を記録する事が増えてきた。
まだ余命の3ヶ月は経たないのに、目に見えて衰弱してきた三国さんの様子を見る事は、本当に辛かった。
病院で泣く訳にもいかず、私は家に帰るといつも泣いていたように思う。
2つ目のお願いをして以来、三国さんは私が部屋に泊まる事を拒むようになった。
夜勤の日さえ、部屋にいっても彼女が寝ている事が多くなり、今までのように関わる事が出来なくなった。
どんなに傍にいたくても、彼女が拒む事によってそれは不可能になり、私は心配で不安な日を過ごす事が続いた。
そして彼女が入院して2ヶ月経たないうちに、運命の日は予定よりも早く訪れた。
「三国さん、辛いですか?」
意識が朦朧としているであろう彼女に、私は話し掛ける。
彼女は私の問い掛けにやっと頷いている様子だった。
「…最後の最後に何もできなくて、…すみません」
言葉を詰まらせながら言う私に、彼女は言った。
「ありがとうございました…」
それは、口元に耳を寄せなければ聞き取れないぐらいの小さな声で、彼女が精一杯出した言葉だった。
心電図モニターの波形が直線になり、音がリズムを打つのをやめた。
その後モニターに波形が戻る事はなく、彼女は27年という短い生涯の幕を閉じた。
「三国夏希さん、残念ですが19時33分死亡を確認致しました。ご臨終です」
医師が死亡を確認してから立ち去ると、私はエンジェルセットで三国さんの身体を綺麗にし始める。
「…思ったよりも、早く逝っちゃったんですね」
私以外の人間が部屋からちょうどいなくなった時、私は三国さんの唇にそっと口付けた。
「あなたが生きてる時、言いたかったです。短い時間しか一緒にいられなかったですけど、…私はあなたが好きでした」
思わず涙が溢れそうになったけれど、看護師が一人戻ってきた事によってそれがその場で溢れる事はなかった。
「はぁああっ…」
「多村さん、本当によく溜め息付くよね(笑)そんなんじゃ、幸せ逃げるよ?」
三国さんが亡くなってから、今日でちょうど1週間。
屋上で溜め息を付きながらタバコを吸っていると、三国さんが入院した頃と同じように同僚に突っ込まれる。
「幸せなんか元々私のトコにないんだから、溜め息付いたって減るもんじゃないよ(笑)」
「またまたぁ(笑)…三国さん亡くなってから大分凹んでたから、もしかしたら辞めちゃうかなって心配してたけど、大丈夫そうだからよかった。」
「まさか、辞めるわけがないよ。私が受け持ってる患者さんは三国さん一人じゃないしね。」
三国さんの死後、私は彼女が使用していた床頭台の引き出しから手紙を見つけたのだった。
その手紙は彼女から私宛ての手紙で、こんな事が書かれていた。
“最期までの時間を多村さんと一緒に過ごせて幸せでした。
これからもホスピスで看護師として働き続けていて下さい。
…でも、もう患者さんを好きにはならないで下さい。
多村さんが患者さんを好きになるのは、私が最後ですからね?(笑)今後一切、患者さんを好きにならない事を約束して下さい。
そして、絶対にずっと幸せでいて下さい。”
彼女の手紙には、私に対して送る好きという文字は書かれていなかった。
それでも、彼女も私を想っていてくれた事は何となくだが分かった。
文字で残さなかったのは、彼女なりの気遣いだろう。
「へぇー(笑)辞めるわけがない、かぁ。よく言い切ったね?」
同僚の言葉に、私はしっかりと頷く。
「まぁね。これからも、自分の生涯が短いって分かってる患者さんの手助けしたいなーって思ってるからさ。それに…ホスピスの看護師を続ける事、お願いされてる上に約束しちゃったしね♪」
三国さんと関われた事で、一度は忘れていたホスピスに就職した理由を思い出せた。
だからこそ、私はこれからもホスピスの勤務員を続けるだろう。
「あ、多村いたいた!まったく…そんなにタバコ吸ってると、肺癌になるよ?」
勢いよく屋上の扉が開いて、先輩看護師が顔を覗かせる。
「あーあっ、口煩いのに見つかっちゃった。今吸うのはやめますよ(笑)…で、なんで私の事見つけてたんですか?」
まだまだ吸える長さのあるタバコの火を消すと、私は先輩の方に体を向ける。
「人が心配してやってんのに何よその態度は(笑)…まぁ、それはいいとして多村、新たな『新入りさん』をよろしくね」
「…また、ですか。」
三国さんに関わってからも、『新入りさん』の報告を受ける事には相変わらず慣れないで、やはり気分は落ち込む。
これからもホスピスで働き続けるとしても、私がこの瞬間に慣れる事はないだろう。
「…おっし。頑張ってナイチンゲールするぞ」
それでも…その度に気合いを入れて、私は患者さんと向き合っていくのだ。
1・最期のお願い END
(携帯)
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■20682
/ ResNo.8)
こんにちは(・∀・)ノ
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□投稿者/ ミキ
一般♪(3回)-(2008/03/02(Sun) 11:30:03)
すっごくいいですね!
なんか読みながら少し泣けてきちゃいました(>_<)
1‥ってことは、この話はまだまだ続くんですか??
そしたらかなり嬉しいです(*^□^*)
続きがあるのなら、頑張ってくださいね♪♪
楽しみに待ってます♪♪
(携帯)
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■20683
/ ResNo.9)
あ!ミキさん(*・∀・*)ノ
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□投稿者/ K
一般♪(8回)-(2008/03/02(Sun) 14:18:49)
こんにちは!
また感想の書き込みをして下さったんですね♪
ありがとうございます!
うーんと、『最期のお願い』はあれで終わりです。
人が亡くなる話でしたが、あの話はあっさりと完結させようと思ってましたので…。
ホスピスに入院してきた時点でもう長くない事が分かってるのに、患者さんを好きになってしまった看護師の多村だからこそ、悲しいけど次を見れているんです。
亡くなった人は帰ってこない訳ですから、泣く事よりも彼女のお願いを受け入れる事を優先とした訳ですね。
だから多村が前向きになったところで、この話は終了なんです☆
これからは違う短編のお話をアップしますよ♪
ではミキさん、改めて…感想ありがとうございました☆
嬉しかったです(>∪<)
(携帯)
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■No20664に返信(Kさんの記事) > 2008/03/02(Sun) 00:39:19 編集(投稿者) > > > > > > あの約束の日から今日で1ヶ月が経った。 > > 私は今までの1ヶ月、毎日彼女との約束を守り続けている。 > > > 三国さんの病状は比較的落ち着いていて、熱が出るか天気が悪いかしないかぎり、私たちは毎日庭を散歩していた。 > 散歩に出られない日は、最初は勤務中の手のあいた時に時間を作っていた。それが時間がたつにつれて仕事が終わっても家に帰らず泊まったりするようになっていった。 > 休日だってどんなに疲れていようが、彼女に会いにきた。 > > > > そんな毎日を過ごしていく中、彼女が私にとって特別な存在になるまで、そんなに時間がかからなかった。 > 同情とか、そんな感情からそうなった訳ではない…と思う。 > 彼女が私を心の底から必要としてくれているのが痛いぐらいに伝わってきて、気が付くと何をする時も私は彼女の事を考えるようになっていったのだった。 > > > > > > 「多村さん、今日も天気がいいですね」 > > 「…寒く、ないですか?」 > > 散歩中に立ち止まって、車椅子に座る彼女を後ろから抱きしめると、彼女はくすぐったそうにクスクスと笑う。 > > 「多村さんがこうしてくれてるから、暖かいです(笑)」 > > 「お役に立つ事ができて光栄です(笑)」 > > > しばらく二人で笑いあって、それから沈黙が訪れる。 > > > > > > > 「…多村さん、私ここのホスピスに入院してよかったです」 > > 沈黙を破ったのは三国さんからで、先程と違った深刻な空気が流れだすのを感じると、私は怖くなった。 > > 「余命を告知されるまでは、私…ずっと恋人のマンションで過ごしていました。彼女は海外で仕事をしてるから、毎日一緒にいれたわけじゃなかったですけど。たまに会えるだけでもすっごく幸せでした。」 > > 「…彼、女?」 > > 「私の恋人は、女性だったんです。だから親にも反対されて…それでも彼女を愛してたから、私は彼女と生きる事を決めたんです。」 > > ビックリしました?と明るく聞いてくる彼女に対して、私は首を横に振る。 > > > > > > 寂しそうに話す彼女が痛々しいのに、気が利いた言葉一つ言えない自分が情けない。 > > 「余命を宣告された時、私は彼女との別れを決めました。彼女が私の身体の状態を知ったら、自分を責めると分かるから。 > 私も彼女がどれだけ仕事を楽しんでるかも知ってたし、これから先も一緒にいれないのに仕事の邪魔をするのも嫌だったし。」 > > 「……。」 > > 「延命治療すると自分が病人だって思いしらされるし、死ぬ事が分かってるのに治療を受け続けて死ぬのは嫌だった。 > 残された時間を自由に生きたかったからホスピスに入院する事に決めたのに…いざホスピスに来たら、一人で死ぬのが急に怖くなって、多村さんに縋っちゃって。 > …今まで色々、わがまま言ってすみませんでした」 > > > > > > > > > 何だか急に三国さんが遠ざかって行くような気がして、私は三国さんを抱きしめる腕の力を強めた。 > > 「そんな…謝らないで下さい。私だって好きであなたのために時間を作ってたのに。あなたのわがままに付き合ってたんじゃなくて、私が望んであなたにしてきた事ですから、謝られたら逆に残念です。」 > > 「それでも、看護師さんてやっぱり仕事はハードだし休日休ませてあげなかった事は、本当にごめ…」 > > 「だから謝らないで下さい。私はあなたに残された時間の中で、あなたに出来る限りの事をしたかった」 > > 私は謝りそうな彼女の言葉を遮って、今まで一緒に過ごした中でも言わなかった自分の気持ちを彼女に伝える。 > > 「同情なんかじゃないと自分では思ってます。今まで5年、ホスピスで残りの人生を送るたくさんの人達を受け持ってきましたが、私があなた程必死で何かしてあげたいと思う人はいませんでした。」 > > 「それは私みたいにわがままを言う方がいなかったからじゃなくて?」 > > 「断る事だって出来ましたし、休日も会いにくるって言ったのも私です。それに…仕事が終わってホスピスを出ても、私はあなたの事ばかり考えていました。それは私があなたを…」 > > 「もう言わないで下さい。」 > > 今回は私が彼女に言葉を遮られた。 > > > 「それ以上あなたに言われたら、私は死ぬ事が辛くなりますから…だから、言わないで下さい。」 > > > あなたの気持ちをこれ以上言わないで欲しい。 > > …これが、彼女の2つ目のお願いだった。
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