| 彼女の指は、とても的確だ。
欲しいところを、欲しいと思う前に弾いてくれる。
「ねぇ。どうしてそんなに上手なの?」
そう聞いてみたことがあるが、彼女はその涼しげな目を細めて唇に軽いキスを落としただけだった。
気怠い真夏の午後。
ベッドの上でいつまでも起きあがろうとしない私の髪を撫でると、
ユラは窓を少しだけ開け、細い煙草に火をつけた。
エアコンの効いた室内に一陣の生温い風が舞い込む。
閉め切られたカーテンがはためく度、薄暗い室内に差し込んだ光が彼女を照らす。
…綺麗だ。
いつも、そう思う。
煙草は自分では吸わないしどちらかというと苦手だが、
彼女がふうっと煙を吐き出すのを見るのは好きだった。
「サツキはいくつになったんだっけ?」
突然の問いに、ぼうっと煙の行方を見ていた私は妙な間を作ってしまう。
「……32、だよ。」
そう、彼女と出会ってからもう3年も経つのだ。
当時29歳だった私の年に、3つ下のユラはやっと追いついた。
「今日も暑いね。」
窓を閉めて立ち上がった彼女は、その美しい身体を隠すことなく私の前までやってくる。
「…これからしばらく、来られないかも。」
「え…。」
どうして?と聞く前に、キスで言葉を封じられる。
…そうでなくとも、理由は聞けないのだけれど。
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