ビアンエッセイ♪

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■11160 / inTopicNo.1)  I'm so into you
  
□投稿者/ ハチャル 一般♪(1回)-(2005/07/21(Thu) 23:33:55)

    照りつける太陽と
    空の青。




    高まった感情を、
    抑えることは出来ません。






    季節は、夏。






    それは汐梨に
    恋をした、季節でした。







    (携帯)
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■11161 / inTopicNo.2)  I'm so into you 1
□投稿者/ ハチャル 一般♪(2回)-(2005/07/21(Thu) 23:36:03)

    「あっつ〜」


    何なんだ、この暑さは。
    好きな暑さじゃない。7月なのに何かこう、じジメジメしている。


    生徒に頼まれた資料を取ろうと、私は準備室の前に立ち鍵を開けた。
    瞬間、ムシッとした空気が流れ出る。


    開かれた窓からダラダラとした風が入り込みカーテンをフワッと揺らしていたのだ。


    閉め忘れ‥不用心だな。
    そんなコトを思っていたら



    「‥んあっ!?」


    揺れたカーテンの隙間、蒼白い足が見えた気がした。
    驚き、思わず声が出る。


    ‥いや、今は授業中だし。それに鍵は閉まっていたから人はいない筈だ。



    そう自分に言い聞かせながら恐る恐る窓に近づいた。
    非現実的なコトは嫌いだ。



    「あ〜」

    「‥はっ!?」


    やっぱり足だ!と思ったのと同時。確かに、気の抜けたような声が耳に入った。無意識にまた声が上がる。


    驚いて勝手に腰が引けてしまい、足が後ろに下がる。
    そのまま声のした方、ユラユラと揺れるカーテンを見つめた。


    「‥あー?先生?」


    そこから現われたのは‥見たことのある顔。


    襟足だけを伸ばし自然に立ってしまう程短くした天辺と、シルバーのピアスに飾られた耳がチラチラと見えるサイド。一際目立つように染められた、髪。
    そこから続く、綺麗なフェイスライン。



    長谷山汐梨。


    そう、彼女の名前。



    「‥今授業中なんだけど?何してるの?」


    人間だと解ったからいつもの冷静さが戻ってきた。
    だからその調子で私は聞いた。


    「や、別に。ココ涼しいから、ちょっと休憩してた。」


    薄い唇をニッとあげると、彼女は言った。
    しかし切れ長の目が、笑っていない。


    「鍵、どうしたの?」


    嫌でも目立つ生徒だった。職員会議でしょっちゅう名前が上がっていたから。


    「簡単〜♪」


    そう言うと彼女はご丁寧に、ヒラヒラと手にある針金を見せてくれた。





    (携帯)
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■11162 / inTopicNo.3)  I'm so into you 2
□投稿者/ ハチャル 一般♪(3回)-(2005/07/21(Thu) 23:38:00)

    「‥どいて。窓閉めるから。」


    呆れてものも言えなかった。
    窓枠に座る彼女にそう言い、その視線を受けながら窓を閉めようと。


    「あれ?」


    窓から中庭に向かって走っていく女の子が見えた。
    辛うじて見えた上履きのラインから、1年生だというのが解る。


    「‥何してたの?」


    馬鹿な質問か。
    しかし、明らかに今ココから立ち去ったというのが解ったから。
    後ろでテーブルに寄り掛かり足をクロスさせている彼女に聞く。


    「あ〜見つかっちゃった〜」


    彼女はこちらを見てニヤニヤと笑うと、ふざけたようにそう言った。
    私が見つけるコトを楽しみにしていたような、そんな口調で。


    「何って‥チューしてただけだよ?」


    黙っている私に彼女は、まるで反応を伺うかのようにサラッと言った。


    生温い風が、二人の髪を揺らす。


    「‥そう。満足したなら早く授業に戻りなさい。」


    馬鹿にされている、そう感じた。
    ‥生徒に馬鹿にされて教師が勤まるものか。二十年以上続けたクールフェイスはこんなコトでは崩れない。


    ‥少し驚いたけど。



    窓を閉めた私は、彼女の隣に移動し促す。
    こんな時にコツコツと響く自分のヒールの音は、何だか心地よく感じる。


    「はいは〜い」


    彼女は適当に返事をすると、ジッと私を見つめた。


    「早くしなさい。」


    その視線は‥何かを射抜いてしまいそうな程強く、一瞬たじろぐ。
    だから先程より強い口調で言った。


    「先生ってさぁ‥本当、噂通りクールなんだね。」


    彼女は感心したように言うと、そのまま私の肩に手を置く。



    「でも‥」
    「?」
    「恐がりなんだ、意外に。」



    そう言うとまた口の端だけあげてニヤッと笑った。

    どうやら、先程の間抜けな声をばっちり聞かれたらしい。


    「それがどうしたの?」


    本当はすごく恥ずかしかった。しかし声の調子は変えない。
    ナメられたら堪ったもんじゃないから。



    「ううん‥別に。ただ‥」


    ただ‥何?と思った瞬間、勢い良く体を引き付けられ。




    「‥すごく可愛い。」




    甘過ぎる、と言う程に甘い声で。
    耳元に、囁かれた。



    「じゃあ、またね。ちょっと学校に来るの、楽しみになっちゃった♪」


    と、勝手にソレだけを言うと彼女は準備室を後にした。





    (携帯)
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■11164 / inTopicNo.4)  NO TITLE
□投稿者/ ちょぺ 一般♪(1回)-(2005/07/22(Fri) 00:02:18)

    続きが…

    すごく
    すごーく気になります(^^)笑

    頑張って下さい(●'∀'●)ノ


    (携帯)
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■11188 / inTopicNo.5)  ちょぺさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(4回)-(2005/07/22(Fri) 19:57:49)
    続き、気にしてくださってありがとうございます。遅い更新となりそうですが、お付き合い頂けたら嬉しいです☆

    夏をテーマにしちゃったりしたので、夏中には終わらせたいなぁ‥(笑)と思っている次第であります。

    お早い感想、ありがとうございました(^O^)

    (携帯)
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■11189 / inTopicNo.6)  I'm so into you 3
□投稿者/ ハチャル 一般♪(5回)-(2005/07/22(Fri) 19:58:44)

    「やばっ‥」


    残されたそこで一人呟く。
    顔に血が昇っていくのが手にとるように解った。


    やばい、気付かれてないよね‥?本当はすぐに顔が赤くなってしまうこと。


    クールフェイスは、不意打ちにとても弱いんだ。
    彼女に、いとも簡単に崩されてしまった。



    自分に冷静さを取り戻させる。キャビネットからファイルを取出し、求めていた資料を手に取った。


    そのまま彼女が出ていった戸から廊下へ出る。



    蒸し暑い準備室。
    全てはこの、熱さのせいなのだろうか。




    長谷山汐梨。


    彼女はこの女子校の3年生で。
    私は彼女のクラスの数学を受け持っている。



    しかし、言葉を交わしたのは今日が初めてだった。
    彼女はあまり学校に来ないから。



    「あんな子だったのか‥」


    職員室までの道程を、下を向きながら歩いた。
    彼女の存在を改めて感じる。



    『チューしてただけだよ?』


    彼女の一言。チューって‥。

    そんな当たり前のように言われたら、

    今は授業中なのよ!とか
    相手は女の子じゃない!とか、他にも。

    たくさんの疑問点に突っ込むコトすら出来なかった。



    それと同時に、あの囁きを思い出してしまった。



    『‥すごく可愛い。』



    こんなクールを作っている自分だ。可愛いなんて久しく言われていない。



    『‥可愛い』



    耳元から足の爪先までその声が響いていく。


    私は廊下の途中で立ち止まり、身震いしてしまいそうな程‥その声を感じてしまっていた。






    (携帯)
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■11199 / inTopicNo.7)  …素敵です♪
□投稿者/ はなこ 一般♪(1回)-(2005/07/22(Fri) 22:14:09)
    これからシオリちゃんが動いていくのか、とても楽しみですo(^-^)o 頑張ってくださいねん(*>∀<)ノ"

    (携帯)
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■11238 / inTopicNo.8)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(1回)-(2005/07/24(Sun) 01:52:53)
    先生視点のお話、新鮮で面白いです!!
    是非、続きをお願いします♪

    (携帯)
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■11275 / inTopicNo.9)  はなこさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(6回)-(2005/07/24(Sun) 22:42:23)
    素敵だなんて‥ありがとうございます。嬉しいです(^O^)
    汐梨、どう動いていくのか‥是非是非お楽しみにしていてくださいね。
    期待に応えられるよう頑張りますので☆

    それでは‥感想ありがとうございました♪

    (携帯)
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■11276 / inTopicNo.10)  えりかさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(7回)-(2005/07/24(Sun) 22:47:48)
    新鮮‥ですか?
    嬉しいな(^O^)


    先生視点って、書いていて何だかドキドキしてします(>_<)どうしてだろ‥(笑)

    ご期待に応えられるよう頑張りたいと思います。
    完結までお付き合い願えたら嬉しいです☆
    それでは‥感想ありがとうございました♪

    (携帯)
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■11277 / inTopicNo.11)  I'm so into you 4
□投稿者/ ハチャル 一般♪(8回)-(2005/07/24(Sun) 22:48:59)

    生徒名簿。
    いつもは、"/"がついている長谷山汐梨の欄。


    今日は、ついていない。



    「それでは授業を始めます。」


    3Bの授業。



    汐梨の出席に、心臓が高鳴った。




    「でさ〜」
    「えっ!まぢ!?」
    「ありえね〜」



    授業開始をはっきりと告げているにも関わらず、相変わらずのうるささに嫌気がさす。
    特に6時間目の授業は、寝てるかおしゃべりかで。
    チョークの音も無意味にかき消されてしまう。


    悪い子達ではない。
    ただ、あまり頭の良いクラスではないから、"数学"と聞いただけで始めからあきらめてしまっているのだ。
    それをどうにかするのも私の仕事なんだけど。



    「ですから、x=は‥」


    努力はしているのに報われない事が多い。
    優しくすればケジメが無くなるし、恐くすれば文句を言われて無視される。



    「ってか何で長谷山さん来てるの?」
    「知らな〜い。」
    「確か長谷山さんってさ‥」
    「え、何なに!?」



    いつしか話題は長谷山汐梨のものとなっていた。
    私に聞こえてるのだ、汐梨にも聞こえているだろう。


    彼女達にはxが何であろうと関係ないのだろう。まぁそんなもんだ。
    ‥けれど、その話題は気に入らないな。



    「なんかね、結構ヤバいことしてるらしいよ〜!」
    「え、どんな?」
    「聞いた話なん‥」




    バン――ッ!!


    教卓を力一杯叩いた。
    それ以上は聞きたくなかったから。



    「いい加減にしなさい。今は授業中よ、わかってる?
    そんなに喋りたいのなら出ていきなさい。」



    勢いのまま喋り続ける自分がいた。
    何故かこんな時も、口調は冷静なまま。
    癖って、恐いね。



    「・・・」



    静まり返ったクラス中を見渡す。


    顔を上げているのは数人。
    その中でも一際は熱い視線を感じた。



    『‥すごく可愛い。』



    汐梨だ。



    その視線に思わず昨日のコトを思い出してしまう。


    いや、ダメだ。忘れろ、と。
    そう自分に言い聞かせ、その視線から目を逸らした。


    そのまま授業の終わりを告げるチャイムが鳴るまで、教科書通りのつまらない授業を続けていった。
    私なりの、精一杯の強がりで。







    (携帯)
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■11283 / inTopicNo.12)  NO TITLE
□投稿者/ ャマ 一般♪(1回)-(2005/07/24(Sun) 23:51:48)
    ぁたしは先生…
    好きになった事があるのですが
    このぉ話を読んでいると、なんだかその時のあたたかい気持ちを思い出しました(*'∀')ノ
    幸せな気持ちになりました♪
    続きよろしくです♪

    (携帯)
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■11309 / inTopicNo.13)  ャマさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(9回)-(2005/07/25(Mon) 18:46:48)
    初めまして☆
    あたたかい気持ちに、なって頂けたんですか?
    とても光栄です(^O^)ありがとうございます。
    先生って、憧れますよね。ハチャルもよくキャーキャー騒いで‥ときめいていました(笑)

    宜しければ最後までお付き合いくださいね☆
    感想、ありがとうございました(^^)

    (携帯)
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■11310 / inTopicNo.14)  I'm so into you 5
□投稿者/ ハチャル 一般♪(10回)-(2005/07/25(Mon) 18:47:50)

    あー疲れた。
    何だかすごく力を使った気分。


    6時間目の授業が終わっても、まだまだ仕事はたくさんあるのに。



    めんどくさい。





    「ねぇ!」


    下りようとした階段の一歩手前。いきなり、後ろから腕を強く引っ張られた。


    慌てて振り向くと。



    あっ!!!



    「何で目合ったのに無視したの?」



    汐梨だ。
    ちょっと怒ってるみたいだけど。


    相変わらずその耳元にはキラキラとシルバーのピアスが光っている。


    って、それより‥



    「無視?」

    したつもりはない。


    「そう、無視したでしょ。せっかく目が合ったのに。」


    汐梨はそのままジッと私を見つめると、口の端を微妙にあげた。


    また、からかわれているのか。


    「別に、授業中に目が合うのは特別だとは思わないけど。」


    そうでしょ?と私は掴まれていた腕を、そっと振り払う。


    馬鹿にされて堪るものか。



    「うそ。目合った時、ドキドキしてたくせに。」


    何だその自信。
    そりゃ少しはドキドキしたよ。でもソレは昨日の不意打ちのせいだし、特別なコトじゃない、はず。



    「いいわ、勝手に言ってなさい。」


    話していてもどうにもならないと思ったから、その切れ長の目を睨んで去ろうとした。


    「気付いてないの?顔、赤くなってたよ。
    ‥昨日みたいに。」


    そう言って彼女は小さく笑った。


    その言葉に思わず私は振り返る。
    やっぱり見られていたんだ‥。


    振り返った私を見て、汐梨は無邪気に笑った。
    そりゃあもう、満足そうな笑顔で‥。


    「馬鹿にしてるの?」


    何だかその笑顔で一気に気が抜けた。
    この子はこんな顔もできるのか‥と少し感心。


    だから少しため息交じりで笑いながらそう言う。


    「してないよ。
    あっ!それが言いたかったわけじゃないの。」

    「何?」

    「今日の夜、暇ありませんか?」



    改まって汐梨はそう言うと、やはりまた。
    口の端だけを上げて、微笑んだ。






    (携帯)
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■11356 / inTopicNo.15)  I'm so into you 6
□投稿者/ ハチャル 一般♪(11回)-(2005/07/26(Tue) 23:35:11)

    「‥どうして?」


    突然の質問に驚いた。
    何だろ、一体。


    すると汐梨は、少し私に近付き、周りの生徒に聞こえないような小さく。


    「一緒にご飯食べに行こ?」

    笑みを帯びた声でそっと言った。



    や、待って。
    生徒に食事誘われちゃったよ。



    「どうして私が行かなきゃならないの?」


    もう6年教師をやっているけど。この性格でしょ?
    卒業生にすら誘われた事もなかった。
    別に、仲良くする気もないし‥と、生徒との交流は勉強以外に全くしていかなった。


    それなのに突然の展開。
    少し焦る。



    「いいじゃん、行こうよ!」


    わざと冷たく言っているにも関わらず、汐梨は引こうとしない。
    逆に‥はしゃいでいるみたい。


    「だから何で‥」

    私なのよ。昨日初めてしゃべったばかりじゃない。



    ため息混じりにそう言うと、汐梨は困ったように笑ってから。


    「先生と仲良くなりたいの。」


    照れたようにそう言った。




    見たことないようなその表情に。
    何故か胸が高鳴った。



    だって今まで。
    お説教されてキレてるか、ダルそうにしている汐梨しか見たことがなかったから。


    「やっぱりダメ、ですか?」

    改めて私に問うその瞳は、少しだけ不安の色が混ざっていた。




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■11423 / inTopicNo.16)  I'm so into you 7
□投稿者/ ハチャル 一般♪(12回)-(2005/07/28(Thu) 12:50:31)

    「うーん‥でもねぇ」


    すごく嬉しかった。
    だってこの子が、だよ?
    汐梨が他の先生にこんな風に話かけているのなんて、見たことがないし。


    好かれるのは、悪くないから。


    だから、嬉しかった。



    「‥無理?」

    「まずいと思うのよね。こう‥」


    特定の生徒と必要以上に仲良くするのは。
    他の生徒に見られたら、問題になりそうだし。



    「あ、そうだ。うち来ない?それならいいよ。」


    あっ!と思いついた。問題は、他の人にバレなきゃいいだけなのだから。
    うん。我ながらナイスアイディア。



    私の答えを聞いた汐梨は何故かキョトンとしている。


    そのまましばらく沈黙が続いて。



    「え、本当に!?」

    驚いたようにそう言った。


    「嫌?なら別にいいけど。」

    「ううん、行く!行きます!」


    汐梨の顔がパッと明るくなる。それは高校生の笑顔だった。
    思わず私も小さく微笑む。



    「あっ‥でも条件付きだよ。」


    ちょっと意地悪してみようか。
    何だか気分が上がってきたから。


    そう言いながら私は、汐梨お得意の笑顔で笑ってみせた。





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■11657 / inTopicNo.17)  I'm so into you 8
□投稿者/ ハチャル 一般♪(13回)-(2005/08/03(Wed) 00:37:59)

    「え、何?」

    「もう学校にピアスつけてきちゃダメ。それ守ってくれるなら、いいよ。」


    そう言いながら、耳元のそのピアスに触れる。
    高そうなピアスだな‥。


    「‥ピアスは無理‥」


    くすぐったそうな素振りを見せてから汐梨は少し悩むと、うつむきながらそう言った。


    「じゃあ化粧。」

    「うっ‥それも無理ぃ。」


    分かり切っている答えだけどちょっと期待していた。
    私が言えば‥直してくれるかなって。


    「じゃ、今の話は無し。」


    キッパリと言ってみた。
    そのまま方向転換して階段を降りる。


    「‥はっ?え、まじ!?」


    慌てる汐梨の声をバックに、軽快に歩く。
    そりゃあもう、ルンルンと。


    歩く、歩く。


    歩く、あ‥?



    いつのまにか走ってきた汐梨が、私の前へと立ちはだかった。


    「何?」

    「髪‥黒くする。」


    ポツリ、とそう聞こえた。


    「え?聞こえないけど?」

    ほんとはばっちり聞こえていた。


    「もぉ!髪、黒くします!それならいいでしょ!!」


    汐梨は拳を握り締めて、一際大きな声で。
    どうにでもなれ!みたいな勢い。



    「よし、いいよ。」


    だから素直に。
    そのヒヨコみたいな天辺の髪を撫でながら、誉めてあげた。






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■11911 / inTopicNo.18)  I'm so into you 9
□投稿者/ ハチャル 一般♪(14回)-(2005/08/08(Mon) 22:59:10)

    「高橋先生、何かいい事ありました?」

    「え?」

    「顔、ニヤけてますよ(笑)」


    放課後の職員室。
    となりの席の佐伯先生に絡まれた。


    「んあッ!?本当ですか。」


    思わず両手で自分の頬を触る。
    言われるまで気付かなかった。すぐにいつもの表情を取り戻そうと、意識を集中させた。


    「‥あはははは!それじゃ逆に恐いですって!」


    一分くらい、そんな私を見ていた佐伯先生は我慢が切れたように笑い出した。
    失礼なくらいに大笑い‥。


    「‥そんなに笑わないでくださいよ。」

    少し冷めた視線を彼女に送る。


    けれど。
    自分でもわかるくらいに、顔の筋肉が弛んでしまっていて。なかなかいつもの表情が戻ってこない。


    「はは、すみません。
    けど、そんな高橋先生見るの初めてだったから‥つい。」


    言いながら彼女はまだ笑っている。
    確かに、佐伯先生と席が隣になってから3ヵ月程たつが、今までは事務的にしか話したことがなかった。
    と言うより私は、学校で笑うことは少ない。


    「やっぱ、何かいいことあったんですか?」


    左腕で頬杖をつきながら、私を見つめる瞳はまさに好奇心そのもの。


    佐伯先生は私より年上で、明るく気さくな女性だ。
    生徒からも絶大な人気を得ている。要するに、私とは真逆の"教師"。
    で、私は彼女が受け持っているクラスの副担任をしている。


    「や、別に何もないですよ。」

    「本当に?」


    言いながらパソコンに視線を戻した私に、彼女はなおも聞いてくる。


    「佐伯先生‥しつこいですよ。」


    何で今日はこんなに絡んでくるのだろう、と不思議に思いながら、再び視線だけを彼女に向けた。


    「はは!すみません。
    でも興味あるな。高橋先生ってクールだからさ、何考えてるのかなーって。」


    絶えず笑顔の彼女に。
    一瞬だけ、色気‥のような。
    射ぬかれる、そんな視線が見えた気がした。


    「いたって普通の人間ですよ。
    佐伯先生も授業プリント作らなくて大丈夫なんですか?来週はPTAもあるし‥帰れなくなっちゃいますよ?」


    その視線を振り払うように彼女に仕事を勧めた。


    だって、正直‥ドキッとしてしまったから。



    「あはは!はぁーい」


    なんて、返事はしてくれたものの。
    私の仕事が終わるまで、彼女の質問攻撃は止まなかった。






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■12503 / inTopicNo.19)  I'm so into you 10
□投稿者/ ハチャル 一般♪(15回)-(2005/08/29(Mon) 01:37:41)

    何とか今日中にやらなければならない仕事が終わり、すでに時計は午後六時を回っていた。


    帰り支度を整え、隣の佐伯先生に挨拶して職員室を出ると、真っ先に汐梨のクラスへと向かう。


    「‥お待たせ。」


    ドアのガラス越しに汐梨の姿を確認してから、ガラっと扉を開け。



    赤い光が差し込む放課後の教室。
    一番後ろの窓際に座る汐梨に声をかけた。




    ふと、外へ向けていた彼女の視線が私へと移り
    一瞬、表情が強ばった。
    なんて言うか‥驚いたような嬉しいような、いろんな感情が混ざった感じ。


    「遅いよー!待ちくたびれちゃった」


    でもそれは一瞬だけで、はにかんだ笑顔で彼女はそう言った。


    「ごめんね。思った以上に時間かかっちゃった。
    あたしの車、わかる?」


    「んーわかんないかも。」


    「駐車場の一番端にある、赤い車。確か赤はあたししかいないから、わかると思うよ。」


    「ん、わかった。」


    生徒玄関と職員玄関は別々だから、先に自分の車を伝えておく。
    まぁ、今の時間に帰る先生も少ないし、駐車場で誰かに見られることはないだろう。


    「じゃ、先に行ってるね。」

    「はーい」


    私はそう言い、教室を後にした。
    今夜の夕食、何にしようかな。なんて考えながら。





    先についた駐車場。
    車に乗り込み、エンジンをかける。



    ラジオでもつけようか?
    いや、音楽のほうがいいかな。



    なんて。
    何故か、妙に悩んでしまっていて。


    やっぱり今日の自分は変だ。調子がおかしい。





    だから


    「お待たせしました。」


    と、突然の汐梨の声に心底驚いた。


    私が悩んでいる間に、ちゃっかり助手席に腰をおろし、しっかりドアまで閉めていたらしい。



    気付かなかった‥。




    「じゃ、行こっか。」


    「はーい」


    いつもの調子を取り戻すかのように冷静さを保つ声で言ってから、私はアクセルを踏みこんだ。






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■12513 / inTopicNo.20)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(5回)-(2005/08/29(Mon) 10:38:18)
    待ってましたぁ〜(≧▽≦*)♪
    良い展開になってきましたね!!
    続き、ヨロシクお願いしまーす☆★

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