| 葉月はいったん、家へ帰ってシャワーを浴びた。
扉の外から声がする。
「葉月ちゃん。また出かけるの?」
葉月は、気がつかないふりをして、そのままシャワーを浴びた。
「テーブルに夕飯用意してあるから。」
その声は遠ざかっていった。
葉月はため息をついた。
シャワーを浴びて、部屋へ戻った。
そのまま、ベッドに横になって、あの子の事を考えていた。
家の事情・・
何かあったのかな?
葉月は、数年前の自分のことを考えていた。
思い出したくない過去・・。
今でも憤りを感じてくる・・。
葉月は時計を見た。
10時まで、あと3時間・・。
少し早いけど、用意して家を出よう。
玄関で、また呼び止められた。
「葉月ちゃん、ご飯は、いいの?少し食べたら?」
「いらない。友達と約束してるから。」
「外泊する時は、連絡して・・。心配するから。」
葉月は、返事もせずそのまま家を出た。
葉月は、彼女のいる楽器屋へと車を走らせた。
午後8時半・・。あと1時間半か・・。
駅前に行く少し手前の交差点付近でハザードをたいた1台の車。
あれ?あれは・・。
その車には、橋岡教授と助手席には、あの子の姿があった。
何で・・・。
葉月は、そのままその交差点を通り過ぎた。
二人は、葉月に気づかなかった。
葉月は、色々な妄想が頭を過ぎった。
でも、事実は、わからない・・。
その妄想に葉月は苛立ちを感じた。
葉月は、店の前で車を止めた。
店のシャッターは閉じられていた。
葉月は、シートを倒して、目を閉じた。
コンコン
車のガラスを叩く音。
そこには、あの子の姿があった。
葉月は、シートを起こし、窓をあけた。
「早かったのね。ちょっと待ってて。」
その子は、シャッターの横にある扉から中へ入っていった。
暫くすると慌てて、その子は鍵をしめて出てきた。
「お待たせ。」
葉月は、黙ったまま、車を走らせた。
助手席に乗ったその子は、
「どうかした?」
葉月は、少し考えていた。
何で一緒にいたのか聞きたかった。
「あのさ・・。」
葉月は、少し口ごもった・・。
「さっき見ちゃったんだ・・。交差点で」
その子は、少し驚いた様子だった。
沈黙の時間・・・。
その子は何も答えなかった。ただ黙っていた。
何で何も答えてくれないの?
葉月は、いきなり国道沿いの、ホテルに入った。
何してんだ・・私。
(つづく)
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