| ‘露天風呂って癒されるな〜… ’ なんだか今日は、一人暮らしのあの小さなワンルームに真っ直ぐ帰るのが躊躇われ、 自分にご褒美と称し、ちょっとお高めの女性専用スパにやってきた。 平日だけに人の入りも混みいってなく、この場所柄とこのお値段だけに客層も落ち着いている。
露天風呂には誰もいなかった。 お湯の中で伸びをして,澄んだ夜空を見上げると、 なんだか寂しかったこの気持ちを、 優しく包み込むように忘れさせてくれた。
穏やかな静寂の中、足先を浴槽からそっと持ち上げた。 そのまま足先を小さく動かすと、ぴちゃぴちゃとお湯が飛び跳ねる。 それを見てたら、何だか今までの悩みがチッポケでくだらなく思えて、気持ちが明るくなった。
そんな時、他のお客さんが露天風呂に入ってきた。
私は慌てて行儀の良い体勢に変え、そちらの方に背を向ける。 ぽちゃん と彼女も湯船につかる音がする。
しばらく経った時、何となく体勢を変え、ちらっと彼女を見た。
‘綺麗な背中… ’
スッと伸びた背中には程よく筋肉がついていて、凛として、… かっこいい。 ‘いくつぐらい年上なんだろう ’ 理想の上司って感じだな、なぁーんて考えながら、さりげなさを装って彼女の後姿を見つめ続けた。
ミディくらいの髪の長さかな、無造作に結わえた黒髪の先から僅かにおちる滴。 長い首筋。 肩へと続くなだらかな曲線。
多分ジムでも行って鍛えてるんだろうと思う。
‘ こんな人に甘えてみたい… ’
静かな月に照らされた彼女の後姿は神神しく私の目に映った。
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