| 「はぁ…」
夜のオープンカフェ。 テーブルを挟んだ彼女が深いため息をひとつ。
「メールしても返事は滅多にないし。電話は週1あるかないか。すごい素っ気ないの…」
「寂しいんだ?」
私の問いかけに。
「うん…」
彼女はベソかき顔で枝毛の先を見つめた。
私と彼女と、彼女の彼女。 ─トモダチ同士。
こうして彼女の恋愛相談を聴くのは、もう何度目だろう。
「何だかんだ言って好きなんでしょ?」
自分がイラ立った声を発したことに驚き。 その後で。
「うん。好き…」
彼女の答えに胸がチクリと痛む。
……ったく。
「じゃあ頑張るしかないよ。信じて待つの。寂しい時は私に電話してくれたらいいから」
……ったく。
人の気も知らないで─
「優しいね。タカちゃんは」
涙目で、 彼女がやっと笑った。
…………。
私の気持ちに。 私の優しさの理由に。
彼女は気付くはずもない。
「タカちゃんと付き合えばよかったかなー。ハハ」
なんて無神経に、 なんて悪戯に彼女が笑うから。
「…………」
私の。
私の悪戯心にも、 火がついた。
「…ねぇ」
「なに?タカちゃん」
「今からうち来ない?」
「うん?いいよー」
同性。
トモダチ。 恋人。
曖昧なボーダーライン。
曖昧だからこそ─
「行こっか」
飛び越えるのは簡単だ。
私が彼女に上げられるのは。
「………っ」
寂しさを埋める為の温もりだけ。
「アイツ…今香港に出張なんだっけ?」
「…やっ…ん…」
背徳心で濡れる身体。 抱いていても。
本当に溢れてくるのは。
哀しさだけだね?─
本当は知ってる。
アイツがコイツを、 深く深く想ってる事。
アイツとコイツの間に、 私が入り込む隙なんてない事。
知ってる。 だから。
…もどかしい。
誰か、 誰か伝えてよ。
海の向こうに伝えてよ。
あなたに恋焦がれるふたりが今。
寂しさと背徳心ともどかしさに心を焦がし。
身を寄せ合っているよ。
fin.
あいあーい(笑)
次は…「愛してる」
(携帯)
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