| 2006/07/21(Fri) 01:36:50 編集(投稿者)
『優しい音。』 「なんの音だっけ?」あっ。そうそうピアノだ。
只今の時効。午後6時。
部活が終わり家に帰ろうと靴箱から靴を取っていたら聞こえてきたんだ。
「こんな時間に誰がひいてるんだ?」
辺りは真っ暗で音楽室の光をたどって歩いていった。
「えっ!?先生…」
今にも消えてしまいそうで寂しいんだけど優しい音。
いつもは元気一杯の先生。あの先生からは想像もつかないような切ない演奏だった。
ガタッ! 「げっ!」
「誰!?」
「すいません。僕です。」
「あら?加嶋さん?どうしたの?」
僕は焦った。なんだか見てはいけない物に思えて… 「お…音楽室からピアノが聞こえてきたから…」
「そう…もう遅いから帰りなさい。」
「あっ。はい。先生ピアノひくんですね。体育の先生だし、そういうの嫌いかと…(笑)」
先生は黙ってた…
やばい…冗談まじりだったのになぁ…沈黙っちゃったよ…
先生は真っ直ぐ僕を見ていた。
「えっ…」 先生の目には何も写っていなかった。無気力な目。何も語られることない寂しい目だったんだ。 でもどこか懐かしい。
「先生この曲知ってる?僕が小学校の時にピアノを始めたキッカケになった曲なんだ。先生にプレゼントするよ。」
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