| 翌朝、早朝に目覚めた私は書き置きを残して
(泊めてもらったお礼とメールアドレス、そして電話番号)
重い体を押すようになんとか美春の家を出て
いったん家に帰り、シャワーを浴びた後、
冴えない顔をして職場に向かった。
こんなにだるいのは、久しぶりだ。
そして、最悪なことに二日酔いのためか、頭が割れるように痛い。
職場について、ユニフォームに着替え終わったころ、
携帯にメールが来た。見ると、美春からだった。
起きて、書置きを読んだらしかった。
「お仕事おつかれさま!もう始まるころかな。
昨日はありがとう。愉しかったです。また遊ぼうね。連絡します」
メールを一読し、携帯を閉じる。
彼女との一夜を思い出すと、それだけで体が疼く私がいた。
メールを見る限り、彼女との関係は、
遊びということになったみたいだった。
…うん。それくらいがいいのかもしれない。
ストライクだったけど、
いつもあのテンションで付き合うわけにはいかないだろう。
彼女も、私の体に興味を示しこそすれども、
私自身のことに関しては興味なかったらしい。
あのセックスは大変魅力的だったけれど、
そんな火遊びばかりしていられる歳でもないのは、自覚していた。
…あ、そういえば、スニーカー代。
そう思ったところでまた携帯が震えた。
「そうだ!スニーカー代!!(*◇*)忘れてた〜ごめんね(>_<)
今度お店に払いに行きます<(_ _)>」
そうだった。彼女は元々ここで知り合ったんだった。
あんな痴態を曝したあとに、仕事先で会うなんて。
羞恥プレイもいいところだと思う。
そんなことを考えているうちに、
「おはようございまーす…」
誰かが入ってくる声がした。ちょっと早めのこの時間に
来るのは、うちの店のスタッフくらいしかいないはずだ。
「おはようござ……!?」
ロッカールームに入ってくる女の声がしたので、
篠原だと思って目向けると、そこには可南子がいた。
「か、可南子…!?どうして…」
とっさのことに、上条さん、などと呼ぶ間もなく、
私の頭の中が、パニックに陥る。
昨晩のことがあるせいで、なんだか後ろめたい。
もう私と可南子は赤の他人なのだけれど。
「篠原さんから…昨日の夜遅くに体調を崩したとの連絡が入って…。
代理でこちらに出勤したんだけど。聞いてないの?」
私の反応に、可南子も普通通りに接してくれる。
かつて私が彼女と付き合っていた頃のように。
しかし篠原、聞いてないわよ…。
篠原のことだから、夜遊びが長引いたのだろう。
復帰したらまた彼女を叱らないといけないのか、と頭が痛くなる。
「…体調、大丈夫?」
可南子が、私の顔を覗き込んでくる。
明らかに体調の悪そうな私を気遣ってくれていた。
「うん、平気…ただの飲みすぎと睡眠不足だから…」
「淳子さんが仕事の日にそんなの引きずるなんて…
らしくないね。何かあった…?」
「いや、大丈夫。昨日、ちょっと眠れなくてさ」
可南子の鋭さにドキッとしながら、上手く言い逃れようとする。
「もしかして…あたしのせい…?じゃ、ないよね。さすがにそれは」
可南子の一言に、昨晩のいやらしい夢が甦る。
あんなにそのあと激しいセックスをしたというのに、
あの夢だけは色鮮やかに記憶に残っていて、
唐突に意識の上に甦っては私の行動を一時停止させていた。
「う、うん。可南子のせいじゃないから。大丈夫よ。
さ、仕事にいきましょう」
そう言って、その場を上手く切り抜けた。
|