| 真夜中に鳴り響く携帯。耳に馴染んだ指定音。 恋人ユウヤからの着信だった。眠い目で、電話に出る。
「ごめん。また切った。」
それだけの電話に全てを悟り、合鍵と携帯を握り締め、着の身着のまま。 コートだけを羽織って肌寒い4月の夜の下を走り出す。
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ユウヤのいるアパート。インターホンは鳴らさずに、合鍵で、室内に入る。 ドアを開けると、ザーという水音が耳に押し入ってきた。 急いでバスルームに駆け込む。 服を着たままのユウヤはシャワーで全身びしょ濡れで。ただ放心したように歌っていた。 床のタイルは一部、赤く染まっていた。 あたしはシャワーを止め、彼女をバスルームから引きずり出す。相変わらずユウヤは歌い続けている。
とりあえずユウヤの体を拭き、傷口の様子を確認した。 白く細い腕に、ひしめき合うケロイドと、赤くぱっくり開いた新しい傷。けれど、思った程は深くないようでほっとする。 「ハルカ…。」 あたしを見て、ユウヤが呟く。彼女の大きな瞳は、悲しい程に虚ろだった。 「オハヨ。ユウヤったらまた無茶したね?」 無理に笑ってみせる。そんなあたしを見てユウヤは苦笑した。 「ごめん…。」
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