ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

[ 最新記事及び返信フォームをトピックトップへ ]

■20214 / inTopicNo.41)  【Stop motion〜coming-out〜】
  
□投稿者/ 映美 ベテラン(228回)-(2007/10/19(Fri) 02:09:53)


    カーテンの隙間から射す微かな光に
    目を開けると自分の部屋とは違う天井が見えた


    …えっ ここは…?


    半身を起こした時 ずれた毛布から
    なにも身につけていない肩や胸があらわになった


    えっ わたしったら…何も着てない?


    慌てて毛布で胸を覆い薄暗い部屋を見回した



    隣で眠るミサオの横顔を見たとき
    私は はっきりと目が醒めた


    そうだった…ここはホテルの部屋なんだ


    昨晩 偶然会った ミサオと閉店までお酒を飲んで

    すっかり酔った
    ミサオと私は千鳥足で店を出た…


    そこまでは憶えていたのだが…









    ―頭の中で巻き戻しボタンを押した


    BARカウンターの場面…でまず停止釦を押した




    二人で選んだハートのジャケットのCDをマスターに頼んでかけてもらった


    アップテンポなダンス・コンテンポラリーな曲
    スローなソウルフルなラブバラードが順に流れている 

    そのメロディーをミサオが目を閉じて聴いていた
    時折 テーブルの上で指先でリズムをとっているのは 
    頭の中でフリをイメージをしているのだろう


    ステージで踊るミサオのセクシーな肢体が脳裏をかすめた



    「ミサオさん ダンスはいくつからされてたんですか?」



    『う〜ん 本格的に始めたのは高校出てからかな…。私ね5才から小6までバレエ習ってたんだ…。
    いや 習わされてたっていうのが正しいかな〜。  母は私をバレリーナにしたかったらしいけどね(笑) 
    私 プリエだの!パッセだの! 決まったポーズとるのが苦手でどうも好きになれなくて いやいやレッスンに通ってたんだ。 
    そーいえば わざと無理な運動して足傷めて発表会でれませんってこともしたわ〜
    悪い子だったんだ 私(笑)おかげで柔軟な身体になれたことだけは感謝してるけどね(苦笑)形にとらわれない自由な表現できるダンスに出会ったとき 
    私の求めてたものはこれだ! 自分の夢 ダンスで叶えようって強く思ったんだ…』


    「そうですね たしかにミサオさんはバレリーナってイメージじゃありません…(笑)」


    『そうでしょ…(笑)』



    「この前のステージでのミサオさん とてもカッコよかったです(赤面)私 夢中で…見てました」



    『そうなんだ 夢中になってくれて…ありがと(微笑)』


    ミサオの見つめる瞳とハスキーな声に耳朶まで熱くなっていた


    「あ、あの そ、それで…ミサオさんの夢って? どんな夢なんですか…?」


    『う〜ん それはね…
    叶ったら教えてあげる だから今はひ・み・つ(笑)』

     

    私が一杯のカクテルをもてあましてるのに ミサオは既に3杯目の水割りをオーダーしていた



    「ミサオさん ピッチ上がってますけど 大丈夫ですか?」



    『あはっ 大丈夫よ 自慢じゃないけどお酒は強いからね〜!…って…思い切り自慢してるね(笑)』


    ミサオの吐き出す煙草の煙が鼻先をかすめても平気だった
    (…苦手なはずなのに…)
    その横顔にもっと近づきたいと思った





    『ね、エミは恋人いるの?』



    「えっ いいえ いません…」



    『そっか〜!』



    グラスを見つめながらミサオは更に質問をする


    『あのさ〜エミ エミは…男と女どっちが好き?』


    「えっ…どっちって…それはどういう意味ですか?」


    ミサオは意味には答えず続けた



    『わたしはね 男女どちらでも恋愛対象…って考えだよ 
    あっ これって〜coming-out〜してるってことかな?(苦笑)』



    「じゃあ私も…〜coming-out〜します…ミサオさんだけに…(微笑)」


    ふたりの視線が 
    見つめあうから…
    絡みあうに…かわった瞬間だった





引用返信/返信 削除キー/
■20250 / inTopicNo.42)  NO TITLE
□投稿者/ ジュン 一般♪(1回)-(2007/10/31(Wed) 16:14:45)
    はじめまして!いつも読んでます。

    ミサオのセクシーさに読む度にドキドキしてます(#^.^#)
    この続きがとっても気になり毎日更新チェックしてる私です!!

    いま、ハタと気付きましたが、このお話はパートVなんですね〜??
    TもUも すんません読んでませんです(汗)では最初からじっくり読んできまーす!!

    次回更新を楽しみに待っています!


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20291 / inTopicNo.43)  ジュンさんへ^^
□投稿者/ 映美 ベテラン(229回)-(2007/11/12(Mon) 15:27:43)
    2007/11/12(Mon) 17:02:12 編集(投稿者)


    ジュンさん^^

    いつもお読みいただきありがとうございます^^
    毎日更新チェックしていただいてるんですねm(__)m

    こんなスローペースな展開に…更新と(苦笑)
    本当に怠慢な筆者ですね 申し訳ないですm(__)m

    ここ最近 仕事が忙しくて時間ゆっくりが取れなくて…
    私のいくつかの書き途中の物語はすべて止った状態なんです^^;

    ジュンさん 
    パートI、Uをお読みいただけたのでしょうか^^?

    そうなんです この物語はパートVなんです^^
    途中からお読み頂いたジュンさんは、ミサオとエミの恋物語だと
    思われたかもしれませんね?(苦笑)

    実は もう1年以上ここで書かせていただいてます^^;
    長い物語に完結の道のりはまだ先のようです…

    これからは、時間にすこし余裕ができそうなので
    執筆 頑張りますので 引き続きお付き合い下されば嬉しいです。

    寒い季節です お体ご自愛ください 

    コメントありがとうございましたm(__)m


                映美
引用返信/返信 削除キー/
■20292 / inTopicNo.44)  【Stop motion〜I want to hug you〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(230回)-(2007/11/12(Mon) 17:32:05)



    絡み合った瞳のなかで赤いカクテルが揺れた


    流れていたメロディーが途切れて
    ほどなくマスターが手にしたCDを持ってきてミサオに差出した


    『はい ミサオちゃん 12曲終了〜♪』


    『あっ マスター サンキュー♪ 無理言ってごめんね』


    『どういたしまして〜! と・こ・ろで…お二人がリピートしてほしいLove message
    …じゃないや 訂正(笑)Love songは見つかったかい?』


    マスターは髭をたくわえた顎を撫でながらミサオと私に交互に微笑んだ


    戸惑い顔の私にミサオが耳打ちする


    『マスターはね、実はゲイなの…。 だから気のしないでいいよ…エミ(苦笑)』


    ミサオの息がかかった時、私の思考はショートし始めていた







    途切れたメロデイーが再び奏ではじめた
    ハートのCDジャケットの中のタイトルをミサオがなぞり示す


    『この曲…リピートしてもらおうかな〜♪』


    〜I want to hug you〜♪


    そしてそのタイトルを声に出してミサオは読んだ


    『I want to hug……Emi…』


    (わたしはエミを抱きたい…)
    心の中で訳してみた…



    …本気なの?ミサオさん 酔った勢いで誘ってるの


    答えを聞くのが怖くて口に出せなかった


    こんなスマートな誘い方するなんて
    きっと私だけじゃないはずね…


    恋愛上手なのは引き込まれる話術の中にも窺える


    …でも そんな ミサオさんが好き たまらなく好き


    (わたしはエミを抱きたい…)

    …YESといったら軽い女だと思われちゃうかな…
    ううん それでも構わない


    わざと目の前の熱い視線を逸らし…俯いた


    「…」


    『ふふっ エミは可愛いね〜』


    俯いたままの私の髪を指先でかき上げながらミサオが囁く


    『エミ〜 今夜は帰らない?』


    「…」


    『…返事聞けるまであと何分待てばいい?(苦笑)』


    私は、残りのカクテルを飲み干し
    ミサオの目をまっすぐ見つめて頷いた







    rendez-vous
    愛の場所を求める恋人達がさまよう週末の夜の街


    すっかり酔った私はミサオの腕にまきついていた


    『あ〜ちょっとエミ〜 STOP〜!』


    急に立ち止まったミサオが
    バックして転がったヒールを拾いそしてかざした


    『ほら〜エミ 大丈夫〜?ヒール脱げちゃったのも 気付かないの〜(苦笑)』


    「あ…、ごめんなさい なんだか体が宙に浮いてるみたいで…感覚がないの〜どうしょう〜」


    ミサオが笑いながら私の頬を撫でた


    『(笑)私のペースに合わせて飲んじゃだめだっていったのに〜
    ほら〜 片方脱げたガラスの靴 履かせてあげるよ 酔っ払いのシンデレラさん(笑)』



    私はひどく酔ってるのに、まるで素面顔のミサオ
    …ほんと ミサオさんってお酒強い(苦笑)
    でもね 酔ってるのは お酒じゃなく ホントはミサオさんによ…










    ーたどりついた先は…シティホテル


    ツインルームに入りロックをかけて

    次のドアを開けようとした時

    「あ…」


    足がもつれとっさにミサオの腕を掴んだ
    そして二人してフロアに転がった


    『大丈夫〜 エミ〜?』


    抱き起こそうとするミサオの首に大胆にも私は手を廻した
    今なら、どんな言葉を発しても酔いのせいにできるだろう


    「すっかり…酔っちゃっいました…。 …ミサオさん…に…」


    『そうか〜エミをすっかり酔わせちゃったんだ〜』


    苦笑いするミサオの黒い瞳が目の前にあった


    今夜はこの瞳がたまらなく欲しかった…
    いま私を支えてるこの腕…

    この腕の中で溶けてしまいたい…





    冷えたミネラルウオーターを飲み干すと一気に
    お酒の酔いだけが…醒めたように感じた



    グラスを置きベットサイトのミサオの隣に座ると
    華奢な腕が強く私を引き寄せた



    『私 エミにどうやら惚れちゃった みたいだ…』


    ハスキーな声が熱い吐息にかわった


    耳元に這う唇を感じた


    耳朶を甘く噛まれた時 お酒の酔いは溶かされた





    そんな場面の最中…



    …頭の中のスクリーンが突然 ザァーっとノイズ音と共に砂嵐になった




    誰かが停止釦を押した



    『エミ…』






引用返信/返信 削除キー/
■20323 / inTopicNo.45)  【Stop motion〜Solve magic〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(231回)-(2007/11/28(Wed) 02:39:29)


    『エミ?』


    目の前で黒い瞳が揺れていた


    そう…
    映像をSTOPさせた声はミサオだった
    (今 目の前にいるのは現在(い・ま)のミサオさんなんだ…)


    『エミ…ぼんやりしちゃって どうしたの?』


    「思い出してたんです」


    『ん? なにを…』


    「…前にもこんなシーンがあったなって…」


    『…こんなシーン…?』


    「お酒に酔って…それからふたりでホテルに辿りついた夜のこと…」


    『う〜ん…(苦笑)』
    ミサオは頬に手をあて天井を見上げた


    「もう 忘れちゃったんですね?」


    『……』


    ミサオは笑みを浮かべながら目を閉じた


    BGMから流れてる歌はサビを繰り返していた


    ♪〜わたしは貴女の瞳に夢中になり 
    あなたの瞳のなかで私は〜♪



    やがてメロディーが途切れて…
    ミサオの唇が動いた


    『忘れるわけないじゃない…』


    そのハスキーボイスは
    途切れた映像をふたたび再生させる






    3年前…ミサオとのあの夜のこと





    シャワーを浴びようかと腕を解こうとするミサオに私はわざと寄りかかる


    『エミ〜大丈夫?…まだ酔いが抜けてないの?』


    「ええ そうかも…」


    (私のウソつき…酔いなんか とっくに醒めてるくせに…)


    一時も離れたくなかった


    このままずっとミサオの腕の中に収まっていたかった


    『…ちょっと窓あけて風にあたる?』


    窓際に立つ二人のシルエットは
    一つになっていた


    ミサオの熱い吐息が耳元に感じ…
    そして唇を捉われた瞬間 全身が震えた…


    それから… 
    どれくらいの時間

     
    互いの唇を貪りあっていただろう



    濃厚なくちづけを交わしながら
    夢中で互いの衣服を剥ぎ取っていた

    ミサオのしなやかな指先が
    身体のラインを滑り…舌先が全身を這う…

    ふたりの吐息と…
    切なく喘ぎ響く声は部屋中の雑音をすべて掻き消す…

    …とめどなく押し寄せる快感の波のなか
    ミサオの褐色の肌に爪をたて夢中でしがみついていた

    やがて…真っ白な海が見えたとき
    私は意識を失い そのまま夢の中に落ちていった…




    その夜から…

    1年後にミサオがロスに旅立つまで
    そんな夜を幾度 過ごしただろう




    ―3年前の映像はそこでSTOPされた







    『私も思い出してたよ…』


    ミサオが肩に手を回し私を抱き寄せる


    『ねっエミ…。今夜だけこのまま魔法にかかったままでいてほしい
    大丈夫 ちゃんと彼女のところには帰してあげるから…』


    抱き寄せる力はあの日より強く感じた


    懐かしい腕のぬくもりが私を包む
    懐かしい声が…耳元に響く


    私は動けずにいた…

    ううん 
    きっと動きたくなかったのかもしれない


    ふたりは瞳を探りあった

    そして唇が重なるまで…あと数センチ



    ミサオの黒い瞳のなかに…
    ルナの潤んだ瞳が映った気がした

    (ルナ…)

    そしてルナの声が聞えた気がした


    (エミィ…)


    「ルナ…」


    私は無意識にルナの名を呼んでいた…



    ミサオは腕をゆっくり解く


    『そっか…やっぱ 彼女の魔法には敵わないんだね・・・(苦笑)』





引用返信/返信 削除キー/
■20340 / inTopicNo.46)  【〜Back in love with you 〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(232回)-(2007/12/06(Thu) 17:11:12)



    肩を抱いていた腕が離れ小さな溜息がもれた


    『彼女…ルナって名前なんだ・・・』

    「…」

    黙って頷く私にミサオは苦笑いをした


    『彼女の名前 あえて聞かないでいたのにさ〜!あ〜あ しっかり憶えちゃったじゃない〜』 


    「・・ごめんなさい」



    『きっと…彼女…今、エミのことを想ってるんだよ…。 
    やれやれ やっぱ負けちゃったか〜 私のかけた魔法も解かれちゃったしね…』


    『私ったらどうかしてるね 彼女いる人を誘惑しちゃダメだよね
    今夜は酔っ払ったかな〜!あ〜私ったら お酒弱くなっちゃったのかな〜(笑)』


    ミサオの笑う瞳が寂しげで
    思わず華奢なその腕にもう一度寄りかかりたくなる衝動を抑えた



    〜Back in love, back in touch〜♪
    〜Back in love with you  I wanna be…〜♪


    部屋の中 二人の沈黙の間に
    静かに流れてるメロディーが切ない




    ふたりは赤いソファに深く座りなおした
    テーブルの飲みかけの缶コーヒーにミサオが手を伸ばす


    『ずっと…後悔してた エミを置いてロス行った事… 
    エミに恋人が出来たって聞いた時 "よかったね〜”なんて笑顔で言ったけどね 内心辛かった…』

    「…」

    私に話す間を与えずにミサオはしゃべり続けた…

    『今夜 一緒にお酒飲もうって誘ったら エミが彼女とケンカしてっていうから…
    もしかして今夜は…復活愛ありの予感ありかも〜ちょっと期待した自分がいたよ(笑)』


    私も、予感してたのかもしれない…そのハスキーな声と見つめる瞳に触れられることを


    『知ってるでしょ〜エミ ちょっと強引な私の性格〜(笑)』


    強引・・
    そのセリフでふっと脳裏に浮かんだのは空港でのミサオとの別れの場面だった


    「強引なら…あの時・・」

    『…ん?…』

    「あの時 どうして…強引に連れて行ってくれなかったの・・」


    あの日 ミサオは自分の夢に向かって飛び立とうとしていた 

    “エミも連れて行きたい…”ドラマチックな台詞を残すミサオに“もう遅いわ…”と涙で責めた
    返事を待つ…沈黙の間に搭乗アナウンスが流れた時
    ミサオは 私の手を哀しく振りほどいた
    そして涙の粒を拭い“さよなら・・・エミ”と頬に最後のkissをした

    ゲートに向かうミサオの背中に心で叫んだ

    "あなたは私より…ダンスと夢が大事なんでしょう…”





    遠い日に望んだ強引な腕は今夜また・・・私から離れた


    『・・ごめんね エミ…』


    目を伏せたその横顔が哀しげだった


    「ミサオさん ごめんなさい…私」


    ミサオはソファから立ち上がり窓のカーテンを開けた 
    隙間から見えた空は夜明け色だった


    『夜明けだね…』



    「…ほんとですね…少し眠りましょうか…」


    私もミサオの立つ窓に近づいた


    『エミ…彼女のところへお帰り・・・』


    窓から空を見上げ呟いた ミサオの背中が震えていた…




引用返信/返信 削除キー/
■20414 / inTopicNo.47)  【〜 Sleep slowly tonight〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(233回)-(2007/12/16(Sun) 22:58:37)
    2007/12/17(Mon) 01:05:36 編集(投稿者)





    ミサオの背中にわたしはそっと寄り添い
    明けていく空を肩越しに眺めた


    『今回も強引になれなかったね ダメだな〜わたし(苦笑)』


    「…昔のことを責めたりして ごめんなさい…ミサオさん…」


    『ううん…わたしこそ謝らなきゃ…。一杯泣かせたね…ごめんねエミ…』


    ミサオは肩に置いた私の手に自分の手を重ねた


    『あの時 エミを一緒に連れて行きたいって本気で思った エミを愛していたから…。
    でもね…やっぱできなかった…。まだ私は夢を叶える途中だったから 
    でも…もし…私がオトコだったらね きっとさらってた…』


    ミサオの気持は痛いほどわかっていた。
    女同士であるが故に…
    感情だけに走れない現実が待っていること…。

    あの時 未来なんて考えていなかった
    只 一緒にいたいという願望だけだった

    泣いてばかりいた

    ミサオが選択した答えは
    今となって思えば 正しかったんだ

    ロスに行き夢を叶えられた ミサオ
    新しい恋に出逢えた 私

    お互いが幸せを掴んだんだから

    ミサオさん…あなたに出会えてよかった
    一生に一度の恋をしたって思ってた
    呼吸もままならぬ位 何度も肌を重ね過した夜
    愛してた とても…。
    愛してくれて ありがとう


    ミサオの背中の温もりを感じながら涙があふれた







    『もう朝だけど…少しだけ眠ろうね』



    ミサオが洗面所に向かったとき
    バックから電源Offになったままの携帯を取り出した


    メールが1通ルナから届いていた

    戻っておいでの文字はなくちょっと寂しかったけど
    ルナのクールな優しさが伝わった 

    目が醒めたら帰るね 
    待ってて ルナ…

    あっ こんな時間に返信したら
    夢のなかにいるルナを起しちゃう…


    書きかけたメールを削除して携帯を閉じた

     



    ベットサイトのアラームをAM9:00にSETして

    『これでOK〜♪』


    ミサオがダブルベットに転がった


    私も服のままミサオの隣に横になった


    思い出話の途中…
    ウトウトと眠りに落ちる寸前の私に
    ミサオは頬にそっとくちづけをした 



    “〜Sleep slowly tonight〜おやすみ エミ”









    ―その頃 ルナの部屋では…


    マユがベットで眠っていた


    ソファでウトウトしていたルナはふっと目が覚めた


    時計を見ると午前6:00
    ロールカーテンの隙間からの朝の光が微かに射していた


    テーブルの上の携帯を手に取り開いた


    エミからは何の連絡もはいってなかった


    戻っておいでって言わなかったから きっと拗ねてるのだろう(苦笑)



    う〜ん…

    ベットで眠るマユが寝返りをうった


    ルナは、ベットのマユに呟いた


    やれやれ こっちの彼女も困ったもんだ(苦笑)





引用返信/返信 削除キー/
■20418 / inTopicNo.48)  映美さん
□投稿者/ レオ 一般♪(1回)-(2007/12/17(Mon) 21:09:03)
    こんばんは 映美さん^^

    いつも楽しく拝見しております
    何だか ほっとしてる反面、すこしせつなくなってしまいました
    優しいな… ミサオさん
    思い返し気づくことって、ありますよね。。
    つづき、楽しみにしております 
    無理しないで、映美さんのペースでがんばってください☆

    とっても寒くなりました〜 冬本番です^^;
    そうそう、ちゃんと厚着してくださいね(笑 
    年末、忙しい日々が続きそうですが
    体調崩さないよう、気をつけて下さいね^^
引用返信/返信 削除キー/
■20423 / inTopicNo.49)  レオさんへ^^
□投稿者/ 映美 ベテラン(234回)-(2007/12/21(Fri) 02:35:36)
    レオさん こんばんは^^

    おひさしぶりですね^^

    コメントありがとうございます

    毎度の事ながらのスロー更新
    ほんとに申し訳ないですm(__)m

    優しい大人のミサオに…
    またもエミの心が揺れるシーンが?!
    あるかも…ないかもで…(苦笑)
    そんな予告でレオさんをヤキモキさせておきますね^^

    さて、長〜いミサオとエミのシーンから
    今度はルナにスポットをあて物語を展開していきます。

    ルナの元恋人も登場します…お楽しみに〜♪

    星の輝く場所で書かれた レオさんのお話拝見しました
    ステキなお話ですね^^
    続き書いてくださいね 待っています^^


    ほんとに、寒くなりましたね(>_<)

    この大事な時期に風邪の菌の侵入を許してはいけません^^
    温かくして過してくださいね

    もうすぐX'masですね
    素敵なX'mas nightをお過ごし下さい^^


                 映美

引用返信/返信 削除キー/
■20424 / inTopicNo.50)  【〜Two wineglasses〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(235回)-(2007/12/21(Fri) 03:03:05)


    メンソールシガレットに火を点け
    ベットで眠るマユと時計を見ながら呟いた…


    …とうとう 眠れなかったよ エミィ


    煙草を燻らしながら
    エミが部屋を飛び出してからの数時間を思い出していた




    エミを呼び戻そうと開いた携帯にはマユからの着信履歴が…


    …マユから?なんの用だろう…


    今夜の諍いの原因がマユだけに気になり コールバックした


    「ルナ〜、かけてくれたんだ〜♪」


    マユの弾んだ声に酔ってる様子が分かる
    声の向こうでは賑やかな雑音が響いる きっとバーか居酒屋にでもいるのだろう
    酔っ払うと…電話かけるのはマユの癖だった
    要領を得ない会話に…酔っ払いの相手はごめんだからと切りかけた時
     
    「切らないで! ルナ!」 「エミさんに謝ってほしいの…」

    『謝るって何を?何のこと?』

    そんな会話の途中 受話器の向こうでオトコの声が聞こえた
    "マユ〜今夜も泊まるんだろう〜♪”


    電話を切ろうとするマユを今度は私が引きとめた


    「マユ…うちにおいで!」


    電話を切ってからハッと思った
    私ったら、エミを呼び戻すつもりだったのに…


    携帯をもう一度開き 思案したが…


    やっぱり 酔った勢いでオトコの部屋に
    泊まろうとするマユを今夜は放っておけなかった…。


    仕方ない 今夜はエミにはクールでいるよ 許してね



    TO…エミ

    エミィ ちゃんと電車に乗ったのかな?
    家に着いたら今夜はゆっくり眠ってね

    明日ゆっくり話そう

    おやすみ エミィ

              ルナ




    それから数十分後…チャイムが鳴った
    ドアスコープにはマユの姿が映っていた





    「ルナ ありがとう〜!嬉しかった〜」


    部屋に入るなり マユは腕を絡ませてきた


    「すぐ タクシーに飛び乗ってきたの〜(笑)」
    ルナがおいでって誘ってくれるなんて〜夢みたい〜」


    しゃべり続けるマユの腕をほどき ソファに座らせた


    『誤解しないでマユ 誘ってるわけじゃないし 優しくしてるわけでもないよ』


    「相変わらず冷たいな〜(苦笑) でもそんなルナのクールなとこがね やっぱ好き」


    『マユ 今夜はお説教されるの覚悟できたんでしょうね』


    「分かってるわ… 私 ルナの言うことしか素直に聞けないもん(苦笑)」


    『素直に聞いてるんだったら、どうしておなじ事繰り返すんだろうね…』


    「う〜ん…(苦笑)」


    首を傾げ誤魔化し笑いをするマユに…
    溜息をつきながらキッチンに入った







    『酔いを少し醒ましなさい〜!お説教はそれからね』


    ミネラルウオーターを入れたグラスをマユの前に置いた


    「…エミさん 来てたんだね…」


    テーブルに並んだ ふたつのワイングラスにマユは気付いたらしい


    『…うん 来てたよ』


    「帰っちゃったんだ…。もしかしてケンカでもしたの?」


    『…まあね』


    「もしかして また私のせいで?」


    『ううん…』

    本当はマユのことが原因だった
    …があえてこの時点では言わなかった


    マユはテーブルの脇に置いていたワインボトルを手にとり
    ふたつのワイングラスにワインを注いだ


    「ねえ〜ルナ 私とも飲んでほしい 乾杯しよ〜♪」



    『まだ 酔いたいのマユ?』



    「ええ 酔いたいわよ…ルナも酔わせたい…」



    マユはグラスのワインを一気に飲み干し
    潤んだ瞳で腕を絡ませてきた…



    「ねぇ ルナ お説教なら…べットのなかでして…」







引用返信/返信 削除キー/
■20430 / inTopicNo.51)  ちょっと早いけど・・
□投稿者/ 昴 大御所(419回)-(2007/12/23(Sun) 23:41:13)
http://id34.fm-p.jp/44/subarunchi/

    昨年の『何日か早いけど・・』って言う感想を書いてから
    もう1年が経ったんですね

    お久しぶりですね

    この週末も土曜日は休日出勤で
    今日と明日が久しぶりの連休です

    素敵な聖夜をお過ごし下さいネ♪

    ちょっと早いけど・・
    ルナとエミと映美さんに

    Merry Christmas

    年の瀬の慌しい季節になりましたので
    ご無理をなさらずに ご自愛下さいネ♪
引用返信/返信 削除キー/
■20438 / inTopicNo.52)  昴さんへ^^
□投稿者/ 映美 ベテラン(236回)-(2007/12/31(Mon) 04:28:25)
    こんばんは^^昴さん

    お久しぶりです
    メッセージありがとうございますm(__)m

    クリスマスも過ぎ…
    気付けば 今日は大晦日です^^

    こんな時間に起きてちゃ…お肌によくないですよ
    …ってまた言われちゃいますね(苦笑)

    お掃除などをして気がつけばこんな時間でした^^;
    今年最後のご挨拶をしたくてここに立ち寄りました

    とうとう物語も年を越してしまいますが…(苦笑)
    焦らずマイペースで執筆して行きます

    今年1年『ルナエミ』を
    見守ってくださり本当にありがとうございましたm(__)m

    引き続き来年もよろしくお願いします

    全国的にとても寒いお正月になりそうですね^^;
    風邪など召されませんよう お身体ご自愛くださいね

    では…
    良いお年をお迎え下さい^^


           映美



引用返信/返信 削除キー/
■20439 / inTopicNo.53)  【〜Lost love talk〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(237回)-(2007/12/31(Mon) 04:54:52)
    ワインの酔いでマユの言動は更に大胆になる


    「ルナを酔わせたい…理性失くすくらいにね
    そしたらあの時みたいに…抱いてくれるかもしれないから…」


    再びワインを注ごうとする腕を掴みグラスを取り上げた


    『マユ いい加減にしなよ!』


    「・・・」


    強い口調に絡んだ腕は力なく離れ…
    ソファから絨毯の床に滑るようにマユは座り込んだ


    『あなたは何を求めてさまようの…? 夜毎 お酒を煽って身を持ち崩して 
    自分をそんなに追い込んでどうするの?』


    「自分でも…どうしてだか…わかんないの…」

    消え入りそうな声で
    うなだれたマユの背中が震えていた


    『お説教も今夜限り…! わたしはもうあなたには何も言わない!』


    こんな台詞 もう何度目だろう…

    もうひとつのワイングラスに注がれた
    ワインを揺らしながらためいきをついた


    揺らすグラスにエミの顔が浮かんだ



    「ルナ…聞きたいの…。マユさんとはどういう関係だったの ルナの元恋人?」


    『恋人じゃなかった…けどね……一度だけ…マユを抱いたわ』


    「愛していないのに…抱いたの? なんだか悲しい…ルナってそんな人なの…」


    今夜のエミとの諍いはそんな会話から始まった…








    マユとの出会ったのは2年前
    担当してる雑誌の企画で、あるアマチュアバンドを取材した
    そのグループの紅一点でキーボード奏者だったのがマユだった。


    インタビューに答えるマユは、ポニーテールがよく似合う
    笑うと頬にエクボができる 小柄な可愛い女性だった

    "私、人の心に響くようなそんな曲をたくさん弾きたいです”


    明るく夢を語ったあの時のマユは瞳は輝いてた


    取材から1ヶ月後…ルナ宛にライブのチケットが送られてきた


    【私の最後のライブになります ルナさんをご招待します 
    ご都合よければ 是非来てください  by マユ】

    最後? どうしたんだろう?
    気になった私は、入っていた予定の都合をつけてその日ライブに駆けつけた


    ライブが跳ね、他のメンバーが楽屋に戻っていく中 マユがステージから降り駆け寄ってきた


    「ルナさん 来てくれてありがとうございます。あの…このあとお時間空いてますか?」


    『ええ、時間はいいけど…?マユさんは打ち上げとかあるんでしょ?』


    「大丈夫です!また後日 送別会があるし… だから今夜は断りました〜」





    会場近くのCAFEでマユを待っている間
    私は長いメールを書いていた…相手は…当時の恋人…サオリ


    書いたメールを読み直し削除した
    (…やっぱり 直接話そう…)
    溜息まじりのひとりごとをコーヒーと一緒に飲み込んだ


    コーヒーカップをテーブルに置いた時
    息を切らせてマユがやってきた


    「…ルナさん 遅くなってごめんなさい〜」







    『今日のライブ よかったわよ…でも 最後って…どうして?』


    カフェオレを一口流しこんでから…マユが深呼吸した


    「実は…私 失恋しちゃったんです…。だから…もうキーボード弾きたくなくて…」


    マユの話によると 同じバンドのドラマーがマユの恋人だったらしい
    実はその彼に他に付き合ってる女性がいたと知り…ショックでバンドを辞めると決心したらしい
    う〜ん よくある話だなと思いながらも…この手の話の聞き役も慰め役も私はとても苦手だった


    『大丈夫 またいい人きっと現われるよ…』


    そんなありきたりの言葉しか出てこない


    「…うん…」


    しばらく俯いていたマユが顔をあげた


    「あの…ルナさんには いま 恋人いるんですか?」


    『う〜ん…まあ いないといえば嘘になるかな…』


    「そうですよね いるに決まってますよね〜ルナさんすてきだもん!
    どんな彼なのかな〜ルナさんの恋人って」


    『でもね 私も…まもなく失恋組みになるかもしれない(苦笑)』


    「え〜どうしてですか?」


    どうして…って どんな彼って
    いえるわけないじゃない…

    実は恋人は彼じゃなくて 彼女だということ


    そして…その彼女が人妻だということも…




引用返信/返信 削除キー/
■20450 / inTopicNo.54)  【〜Past love〜回想@〜ルナとマユ〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(238回)-(2008/01/09(Wed) 00:15:20)
    2008/01/30(Wed) 04:41:10 編集(投稿者)




    どうして?と
    何度も質問するマユにとっさに取り繕った


    『う〜ん どうしてって…実は 片思いだからね
    それに そのひと既婚者だし だから…もうあきらめるつもり(苦笑)』


    「それは辛いですね〜……。でも、大丈夫 ルナさんなら
    またきっといいひと現れますよ〜」


    さっき私がマユにかけた言葉がそのまま返ってきた


    『あれっ いつの間にか私が慰められてるね(笑)』


    「ほんとですね〜(笑)」


    そんなことで笑いあってから マユは、なにか吹っ切れたのか
    さっきまでの落ち込んだ様子が一変して…明るく喋りはじめる


    マユの話に相槌をうちながら、頭の中ではサオリとの今後のことばかり考えていた。
    最近は、すれ違いばかり 会えない日が続いていた…

    彼女の今の生活環境を考えると…やはり私が離れなきゃいけないのかな
    ちゃんと話し合いしなきゃ・・・そんなことばかりが頭の中巡っていた



    ・・・途中 会社から電話が入り
    急遽はいった仕事で打合わせに向かうことになった


    『マユさん ごめんね ゆっくりできなくて』


    そう言いながら胸の内ではこの場を
    抜けられることに少しホッとしていた


    CAFEを出たところで それじゃあと手を振ると
    マユがなにか言いたげに目で私を引き止めた


    『どうかした マユさん?』


    「あの〜ルナさん またお話できますか?
     私の相談相手になってほしいんです」


    『ええ 勿論 いいですよ 私でよければ』






    そんな返事をしてから2週間後
    偶然…マユと再会することになる


    あるBARのカウンターで
    ひとり水割りを飲んでいた夜の事

    今はひとり…だが 1時間前 隣にサオリが座っていた

    【もう 私たち別れましょう……こんな繰り返しは辛くなるだけ
    迷ってても答えは一緒だもの…】

    サオリは落ち着いた口調でルナを見詰め告げた
    そして…静かに席を立ち店から出て行った


    引き止める言葉はもう出てこなかった
    今度こそ…もう戻れないと思った


    必死に涙を堪えながら水割りを流し込んだ



    店のドアが開く音がするたび
    もしや…サオリが戻ってきたのかもとふり向いた


    何度目かのドアが開く音
    男女のグループが店内に入ってきた


    「あれっ ルナさん?ルナさんじゃないですか〜」


    名前を呼ぶ方に振り返ったが…
    その女性が誰だかすぐにわからなかった


    声の主が近づき 真横に立った時にマユだとようやくわかった


    酔いのせいなのか マユの顔がすこしダブって見えた


    『あ〜、マユさん(笑)』


    「ルナさん おひとりなんですか?」


    左右の空いた席を目で示し苦笑いをした


    『ええ ご覧の通り ひとり〜』

    酔いがかなり回っていたのにちがいない
    挨拶をし仲間のもとへ戻ろうとするマユの手を引き、一緒に飲もうと誘った
    少し困惑顔のマユだったが、少し待っててくださいと仲間の座る席に
    何か告げに行き すぐまた戻ってきた・・・


    「ルナさん…なにかあったんですか?」


    心配顔で覗き込むマユにグラスを掲げた


    『とうとう失恋組の仲間入り〜(苦笑)乾杯しましょ マユさん』



引用返信/返信 削除キー/
■20454 / inTopicNo.55)  【〜Past love〜回想A〜ルナとマユ〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(240回)-(2008/01/13(Sun) 02:49:57)
    2008/01/30(Wed) 04:42:36 編集(投稿者)





    マユはグラスを持って仲間の輪から抜けてきた


    「ルナさんは 片思いで自分からその人をあきらめたんですよね?」


    『ええ そうよ どうして?』


    「なんだか〜とっても落ち込み度が深く感じるんですが〜 もう何年も付き合った人と別れたような…」


    マユの言葉にちょっと慌てた…
    痛いとこを突かれた
    傷心度が表情に出ていたのだろうか…


    『そうかな〜…でもね 片思いでも 私の場合は落ち込み度は深〜いよ(苦笑)』


    マユが次の質問をする間を与えず続けた


    『ねえ マユさん 失恋話ばかりじゃお酒も不味くなるから
    振られて乾杯〜にしておきましょうよ そうそう この前のライブのね……』


    サオリの話題に触れられないように音楽の話に切り替えた






    「ルナさんとなら…安心してとことん飲めそう」


    部屋でまた飲みなおそうとマユを誘ったのは
    酔いのせいもあった…が…
    今夜はひとりになりたくなかった
    誰でもいいから傍にいて欲しかったからだった


    酔いのせいだろう
    部屋に入ると軽い眩暈がしてベットに倒れこむように転がった


    「ルナさん 大丈夫?」


    『サオリ…』


    見下ろすマユが…サオリの顔に映ったのだろう
    無意識に名を呼んでしまった

    首を傾げたマユの顔に気付きハッと身体を起こした


    『ごめん 何いってんだろう私… かなり酔っ払いだね(苦笑)』


    ベットから下り 少しふらつきながらベランダに向かった


    『ちょっと…外の風にあたってくるね』

    「私も…」

    マユもあとをついてベランダに出てきた


    空に浮かんだ月を眺めていると…
    このベランダでサオリとよく月を仰いだことを思い出した

    BARを出て行くサオリの背中を思い出し胸が締め付けられた
    ふいに込み上げる涙を堪えながら自分に言い聞かせた

    私は泣いたりしない…


    しばらく外の空気にふれてると酔いもだんだんと醒めてきた


    『さっ マユさん 部屋に入って飲みなおしましょ』




    ブランデーをグラスに注いで、煙草を取り出した時マユが聞いた


    「ルナさん 気付いてないんですね…?」

    『えっ 何を?』

    「さっき BARでも…私に サオリ…って言ってましたよ」



    BARで呼んだのはまったく記憶になかった
     

    不覚だった…


    『…』


    「サオリさんが…恋人だったんですね?」


    マユの窺う瞳に…煙草のけむりを吐きながら冷静に答えた


    『2度も訊かれたんなら ごまかせないね 参ったな(苦笑)』


    煙草の灰が落ちそうなのに気付き灰皿を慌てて寄せる


    「実は 私も女性に恋したことあるんです。
    どことなくルナさんに似てる人だったな〜」


    自分は異性愛者…だが、女性にも恋心を抱いたことが何度かあるんだという
    いわゆるマユはバイセクシャルだった


    「私 サオリさんに似てるんですか?」


    『う〜ん…全然 似てないね(笑)』


    「なんだ〜そうですか…似てるから呼ばれちゃったんだと思ったのに〜(笑)」





    ぎこちない空気が流れてた
    気分を変えようとコンポをオンにしFMにチャンネルを合わせた

    流れる音楽が気分をほぐしてくれたのか 
    グラスの氷がなくなると
    それじゃあ…ストレートでとふたりで競うように飲んだ

    さすがにボトルも軽くなると酔いもまわる




    ふとFMから流れるメロディーに
    グラスを持つ手がとまった


    サオリが好きでよく聴いていた曲が流れていた


    マユがそのメロディーを口ずさむ


    「この曲 私 弾いたことあります」


    『そ…そうなの…なんてタイトルだったっけ?』


    「え〜と…」


    答えるマユの唇を見つめた…


    どうしたんだろう…私


    なんだかとても切なくも寂しい気分になった


    そんな気持がマユにも伝わったのか…


    「酔えば 酔うほど寂しくなりませんか ルナさん…」


    マユの潤んだ瞳が目の前に接近したとき…私の中で理性が弾けた




引用返信/返信 削除キー/
■20529 / inTopicNo.56)  【〜Past love〜回想B〜ルナとマユ〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(241回)-(2008/01/30(Wed) 03:43:31)
    2008/01/30(Wed) 04:44:34 編集(投稿者)






    「私も寂しい…ルナさん」


    マユはテーブルにグラスを置くと甘えるように肩に頭をのせた


    柔らかな髪が頬に触れたとき…
    小柄なマユをそのまま腕の中に包み込んだ


    酔いも紛れさせてくれない この虚しい寂しさ
    分かり合えるのは…ここにいるお互いしかいない


    今夜はただ…抱きしめあう温もりだけが
    心の痛みを癒してくれる そう思った


    熱い吐息が絡みあい
    …ベットの上で重なるふたりを
    カーテンの隙間から月がみていた



    翌朝…



    目覚めると香ばしい匂いが部屋に漂い キッチンから鼻歌が聞こえた



    テーブルの上のグラスと空になったブランデーのボトルが
    昨夜の出来事を鮮明に思い出させた



    (そうだった…昨夜はマユと…)



    起きた気配に気づいたマユがキッチンから はにかんだ笑顔を見せた。



    「おはようございます♪ 泊めてもらったお礼に朝食でも作ろうって
    頑張って早起きしちゃいました〜♪ あっ勝手にキッチン入ってすみません」



    『ありがとう いいわよ 気にしなくても… あっ 私はコーヒーだけでいいよ」



    ベットから下り 洗面所に向いながら私は痛みを感じた
    それは…二日酔いの頭痛と一夜の過ちを悔む胸の痛みだった。



    向かいでコーヒーを飲む マユの顔に再びサオリが重なった 
    私は首を振った (しっかりしなきゃ…)
    まだまだ彼女(サオリ)が消えないんだ 消えてくれないんだ
    愛しい人が胸を締め付ける…。




    コーヒーカップを持ったままボンヤリする私を見詰めるマユ
    その視線が熱く感じた



    「ルナさん 大丈夫ですか?まだ酔い抜けませんか?」



    心配そうに覗き込む目の前の瞳に詫びた
    酔って寂しいからと軽率な行動をした自分を心の中で叱責した。


    『あ、…あの マユさん 昨夜は酔いに任せて自分を見失ってしまってた。 
    ごめんなさいね…謝ってすむことじゃないけど…』


    カップを置きマユに頭を下げた


    「そんな…謝らないでください ルナさん。私だって同じ気持なんですから 
    でも 不思議なことに失恋の痛みなくなったみたい なんだかとてもすっきりしてるんです」


    恥らいながらマユは続けた


    「あの…ルナさん こんなときに、こんなこと言うとおかしい女だと思われるかもしれませんが…言います!
    私を、ルナさんの彼女にしてもらえませんか?」


    マユのあまりに唐突な告白に戸惑った


    『えっ…まさか 冗談でしょう?もしかしてまだ酔ってるマユさん(苦笑)』


    左右に首を振る縋るようなその瞳は…新しい恋をしたいと訴えていた。



    『…ごめんね マユさん 恋はしばらく封印(苦笑)彼女も当分つくる気ないから…』


    戯れだけの恋などはしたくない
    きっと相手を傷つけてしまうことになるだろう



    「…そ…そうですよね…、予想通りの答えだったから なんだか変に安心しちゃいました〜」


    それじゃあ、とマユが望んだ関係は良き相談相手で友達でいてほしいということだった。
    私もマユを友達イコール可愛い妹のような存在で側で支えよう そう思った
    それは一夜の過ちを犯した 私の自分のなかでのせめてもの償いでもあった





    それから暫くたったある日


    マユがひどく酔って涙声で電話を掛けてきた夜があった


    「もしもし ルナ…、今から会えない?会って話したいの…」


    『どうしたの マユ?』





引用返信/返信 削除キー/
■20544 / inTopicNo.57)  映美さん♪
□投稿者/ 昴 大御所(426回)-(2008/02/04(Mon) 02:17:18)
http://id34.fm-p.jp/44/subarunchi/
    あ〜あ
    ルナ駄目じゃん
    エミがいるのに・・・ってエミに逢う前でしたね
    このことをエミが知って大変なことになるんでしょうね

    2月になっちゃいましたが
    今年もお互いに完結目指して頑張りましょうね

    あっ、もう少しで大御所ですね
    また、その時にお祝いにお邪魔します

引用返信/返信 削除キー/
■20557 / inTopicNo.58)  昴さん^^
□投稿者/ 映美 ベテラン(242回)-(2008/02/11(Mon) 03:05:45)
    こんばんは 昴さん^^

    久しぶりにコメント頂いて嬉しく思っています
    ありがとうございます^^

    早いですねもう2月ですね…
    物語は一体いくつ季節を越すと
    完結を迎えられるのでしょうか^^;

    回想シーンがルナサイドとエミサイド
    それぞれが長くなっていて
    最近 このツリーで終れるのかちょっと自信なくなってます(苦笑)

    「RUNA&EMIPartW」なんてことにならないよう^^;
    頑張ってstoryの展開upしていきます

    昴さんもマイペースで頑張って下さいね
    見守っていますから…


    寒い日々続いてますので
    お風邪など引かれないよう お体ご自愛下さい^^


      映美


引用返信/返信 削除キー/
■20558 / inTopicNo.59)  【〜Past love〜回想C〜ルナとマユ〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(243回)-(2008/02/11(Mon) 03:59:23)


    酔って電話するマユの癖を知ったのはこの夜からだった…


    『マユ いまどこにいるの?』


    「ねっ いまから ルナの部屋にいってもいい?」


    『質問の答えになってないじゃない…。電話で話せないことなの?』


    マユは問いかけに答えず最寄駅と横文字の店の名前を告げ場所を説明している 
    その声を聞きながら、空いてる右手でテーブルの上に広げた原稿を整えた

    溜息まじりに時計見ると午後9時を回っていた
    明日の仕事の準備があるから 到底 今夜は出かけることなどできない


    『今夜はあいにく付き合えないわ ごめんね マユ』


    「え〜そんな〜…じゃあいいわ! ここで一人で酔ってる………」


    語尾がはっきりきこえないまま電話は切れた


    『えっ? もしもし…』


    …電波が悪くて切れたのかな?


    コールバックをしようとした指を止め ふと思った


    …いや きっとこれは作戦なんだろう


    切れた携帯の画面に呟いた


    …マユ 残念ね 作戦失敗よ(苦笑)


     


    翌日 



    夕方 仕事が終わり駅に向かう途中 携帯が鳴った…


    昨夜は酔っててごめんなさい…と詫びるマユからの電話だった

    電話しながら目に付いたイタリアンの店の看板に
    先週取材で訪ねたレストランを思い出した


    ちょうどいい 夕飯も兼ねて昨夜の話も聞こうとマユを誘った







    マリネのサラダをフォークで口に運び 美味しい〜とマユはエクボを見せた
    ここは有機野菜のサラダとトマトベースのパスタが美味しいと自慢の店だった 



    「あれからしばらく ルナの電話待ってたのよ〜」


    (…思ったとおり 突然切った電話は作戦だったんだ)


    『じゃあいいわって そっちが切ったんじゃない なんで私から掛けなおさなきゃいけないの』


    「そ…そうだね…。ルナってクールね なんだか余計惹かれちゃうわ〜」


    『昨夜は、ほんとに忙しかったのよ で…あれから ひとり酔ってたの?』


    「ううん〜、それがね 隣に座った2人組の男の子達と音楽の話で
    意気投合しちゃって 閉店まで一緒に飲んでたの〜♪」


    『まったく ちゃっかりしてるわね あの切羽詰まった声はなんだったの?』


    「違うのルナ  昨夜はほんとに悲しくって、ルナに聞いて欲しかったの」


    『だったら 今 聞くわ…何があったの どうしたの?』


    パスタをフォークに巻きつける私の手をじっと見つめてマユは頷いた


    聞けばマユは、新しい恋の相手を見つけたんだという
    失恋から日が経ってないのに、もう夢中になれる相手ができるなんて
    ちょっと羨ましく思った

    私はまだまだ彼女(サオリ)を忘れられそうになかった… 
    どんなキレイな素敵な人が現れても 心は動かない自信があった
    動かない いや…きっと動きたくないのだろう  
    いつまでも前に進めないネガティブな自分を情けなくも思った

     
    マユの恋の相手は今度入ったバンドのギタリストだという


    「彼ね 作詞作曲もするのよ 才能あるしそれにカッコイイの〜」


    『よかったじゃないの 悩み事じゃなくて お惚気話じゃないの?』


    昨夜が3度目のデートだったらしい
    マユはひとりであの店で飲んでたわけじゃなく その彼が一緒だったらしい


    「彼がね 途中で知らないひと(女性)と出て行ったのよ〜」


    『どういうこと?』


    「一緒に飲んでたら彼に声を掛けてきたひと(女性)がいたの 
    彼ったら慌てて席を外して そのひととドアの前でしばらく話してたのよね 
    それで席戻ってくるなり "ごめん〜ちょっと彼女を送って行かなきゃならないんだ”って私を残して出て行ったのよ〜ひどいでしょ〜!」

    30分後には戻るって彼からメールきたけど
    もう店を出て帰るところだと嘘ついたの


    その場面を思い出して悔しそうに、マユは涙を浮かべた


    「ねっ どう思うルナ〜?その女は彼とどういう関係なんだろう」


    『私に聞いたって知らないよ 本人に聞けば…』


    「きっと彼は他にも付き合ってるひとがいるんだわ〜」


    唇を噛むマユの顔を見ながら小さな溜息を吐き
    バックから煙草ケースを取り出した


    煙草に火を点けマユに言った


    『そんなオトコ やめちゃいな〜』


    「そうだよね ルナの言うとおりだよね よ〜し あんな奴 振ってやるわ〜」






    レストランを出てマユを電車のホームまで見送り
    じゃあねと上げかけた私の手をマユが不意に握りしめた…


    「ルナならいいのに…」


    『…え…何?』


    「ルナが……・…」


    ホームに滑り込んできた電車の音に言葉はかき消され…
    そして開いたドアにマユは慌てて手を離し乗り込んでいった





引用返信/返信 削除キー/
■20735 / inTopicNo.60)  【〜Past love〜回想D〜】
□投稿者/ 映美 ベテラン(245回)-(2008/03/17(Mon) 00:51:43)
    長引いた会議を終えて駅に急いでる夜だった
    懐かしいメロディーがバッグの中から聞こえた


    えっ…まさか…? 


    慌てて取り出した携帯にはメールマークが点滅していた


    メールを開こうとした時…


    クラクションの音と同時に名を呼ばれた

    車道の方にふり向くと数メートル先 徐行するステーションワゴンが見えた

    「ルナ〜♪」

    助手席の窓からマユが手を振っていた

    『マユ…』

    その声に立ち止まると…ワゴンもハザードランプを点滅させ停車する

    ほどなく助手席のドアが開き車を降りたマユが
    ガードレールの切れ目を抜け駆け寄ってくる

    「やっぱり ルナだったんだ〜♪…」


    『車道から名前呼ばれるから びっくりしたわ』


    「いまね スタジオで練習終えて帰るとこなの〜♪」


    数メートル先 マユの頭越しに見えるステーションワゴンに目が行く
    運転席にはハンドルを持つ長髪の青年が見えた
    私の視線を追うマユが…彼なのと言った

    『もしかして あのとき話してた彼?』

    「うん」

    『振ったんじゃないの?』

    マユは左右に首をふり笑みを浮かべた

    「それがね〜! この前、一緒に店を出て行ったひと(女性)は彼のファンのひとだったらしいの
    ひとりでかなり酔ってたから タクシーを拾える場所まで送っていっただけだって…」

    『なるほど…誤解も解けて元のさやに収まったわけね 』


    「うん まあ そんな感じ…」


    家まで送っていこうかと言うマユに
    仕事の途中だからと…手に持った携帯を握りしめた
    (わたしったら…仕事終わってるくせに…)

    はやく、ひとりになりたかった…
    その理由はさっきの未開封のメールが気になったからだ
    送り主が誰だか分かっているだけに…



    「あ、そうだルナ〜、ライブに招待するから 絶対に見に来てね〜♪」


    『わかったわ〜 楽しみにしてる』


    マユに手を振ると、運転席の長髪の青年が会釈するのが見えた








    あのメロディーを鳴らすのはサオリしかいない


    地下鉄の駅につながる階段を下り
    シャッターが閉まった店の端で携帯を開いた


    件名:久しぶりね

    本文:
    ルナはまだ仕事中なの?
    いま私は仕事帰り
    いつものBARでひとりマティーニ飲んでるの 
    トラブル続きでとても凹んでるわ
    なんだかルナの顔が見たくなって…


    メールを2度読んで携帯を閉じた…


    きっと仕事でなにかあったんだろう
    ひとりカウンターでカクテルをもつサオリの姿が頭を過ぎる

    すぐにでも飛んで行きたい衝動に駆られた


    逢いたい…
    逢いたくて堪らない

    でも…ダメ

    駆け出しそうになる気持ちを必死で抑えた


    冷静になろうと目を閉じ自分に言い聞かせた


    一呼吸して 


    もう一度メールを開いた



    サオリ…

    私たちは別れたんじゃないの

    これじゃあ まるで
    進行形の恋人に送るメールじゃないの

    あんなに辛い想いをして  幾夜も泣き明かして
    私達はもう2度と逢わないって…あの夜 決別したんじゃない


    私は…寂しさを紛らわす相手なの
    そんな慰めのお酒に酔って甘えられたら 
    また サオリを求めてしまうじゃない
    そしたら私たち
    また…同じこと繰り返すだけじゃない

    もう忘れましょう

    お願い 
    もう忘れて…私のこと

     
    文字の代わりに言葉を打ち込み
    携帯を閉じた


    地下鉄の駅の改札を抜け…ふっと思った
    やっぱり 車で送ってもらえばよかったかな…(苦笑)





    それから数週間後


    マユから招待されたライブの日に 
    彼だという例の長髪の青年を紹介された


    『ルナです よろしく』

    「はじめまして トオルといいます マユからいつもお聞きしてますよ」

    トオルという青年は整った輪郭に切れ長の涼しい目で笑みを浮かべた

    なるほど、モテそうだなと思った
    彼は挨拶だけ済ますと失礼しますと、急がしそうに楽屋の中に戻っていった


    トオルと言葉を交わしたのは…この一度だけだった


    『彼がね〜私のために曲つくってくれるんだって〜』


    トオルのうしろ姿を見送りながらマユは隣で幸せそうに目を輝かせた


    このときは想像もしなかった


    まさか…彼(トオル)がのちに出会う
    自分の恋人(エミ)に想いを寄せるなんて

    そしてLOVE SONGを贈るなんて… 

引用返信/返信 削除キー/

<前の20件 | 次の20件>

トピック内ページ移動 / << 0 | 1 | 2 | 3 | 4 >>

[このトピックに返信]
Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -