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■20747 / inTopicNo.61)  【〜Past love〜回想E〜】
  
□投稿者/ 映美 ベテラン(246回)-(2008/03/22(Sat) 23:18:46)
    2008/03/23(Sun) 00:06:24 編集(投稿者)




    締め切り間近な原稿を書いていた 日曜の午後 
    テーブルの端っこで携帯が振動した

    画面に表示されたのはマユの番号だった

    いま近くまで来てるの すぐ帰るからというマユに
    1時間だけの訪問を許したのだった。




    インスタントの薄いコーヒーを入れたカップを手に
    マユは部屋をぐるりと見回した


    「ルナの部屋って…なんだか落ち着くわ〜」


    『こんなに散らかってるのに、どこが落ち着く部屋なのよ(苦笑)』


    私はテーブルと床に…乱雑に散らばった書類たちを目で示した


    「ううん〜そうじゃなくて(笑)きっと…ルナがいるから落ち着くのよね」


    コーヒーカップをテーブルに置き
    なにかふっきれた表情でマユはエクボをみせた


    「ルナ…、実は 私 彼(トオル)と別れたの」


    『えっ 別れたっ…て どうして?』

     
    「…う…うん」


    そういえば…先日 マユにきついこと言ったことを思い出した



    数日前 いつもの「聞いてよ〜ルナ」から始まった 酔ったマユからの電話 
    彼(トオル)には、やはり女性の影が絶えないだの…約束した曲もつくれないと言われただの
    他の人に交際を申し込まれて 気持が揺れてるだの…
    いい加減な話ばかりに 連日の仕事の疲れで苛立っていたのだろう


    『だから どうしたいわけなの?本気じゃないなら つまんない恋なら もう別れたら!
    それと酔っての電話は今夜限りでお断りだからね!』

    …と一方的に電話を切ったのだった
    あとで言い過ぎたかなって反省したのだったが…


    『もしかして あのとき 私が別れろっていったから?』


    「ううん…そうじゃない…。気付いたの…自分の気持ちに嘘ついちゃだめだってこと」


    『嘘…?』


    「きっと私…ルナに気にかけてもらいたくて 彼と付き合ってたのかもしれない
    なんだかね…彼もそうだけど どの人といても楽しくないの〜」


    マユがあの夜と同じ縋るような目をして私を見詰めた


    「ねえ・・・ルナ ルナがサオリさんのこと忘れるまで待つわ」


    『……』


    「……」



    (心が空っぽになったからって恋なんて すぐできるわけじゃない
    私はね そんなに、簡単に誰かを好きにはなれないのよ…)


    心で呟き…マユを見詰めた


    ぎこちない沈黙の中…俯いたマユに ゆっくり答えた


    『マユ…。私は彼女(サオリ)を忘れない。それと恋はしばらくしない。ううん できないのよ…。ごめんね マユ…。貴女の気持には応えられない』


    「…」



    「わかった じゃあ 私はずっとルナに片思いしてる」



    マユは、立ち上がりコーヒーカップをキッチンに運び
    バックを持ち帰るわと告げ玄関ドアに向かった







    あれから…2年



    あの日 エミに出会っていなければ


    しばらく恋しないは…
    継続しているはずだったのに


    「ルナ…、もしかしてエミさんに私とのこと話したんじゃないの?」


    マユのその台詞で…
    一気に現在(いま)に引き戻された





引用返信/返信 削除キー/
■20765 / inTopicNo.62)  せつない…
□投稿者/ レオ 一般♪(1回)-(2008/04/01(Tue) 00:52:31)
    こんばんは 映美さん^^
    お久しぶりです

    ルナとマユの回想シーン
    う〜ん、胸が痛いです…
    なんだか色々とダブっちゃいます(笑
    これから、どんな展開になっていくんでしょう
    ハラハラしますねー^^:

    続いて、更新楽しみにしております^^

    暖かくなりました
    あちらこちらで、桜満開!
    お花見、夜桜、楽しみですね

    では、身体に気を付けて
    無理せず、ガンバってください^^
引用返信/返信 削除キー/
■20781 / inTopicNo.63)  レオさんへ^^
□投稿者/ 映美 ベテラン(248回)-(2008/04/08(Tue) 22:58:43)
    こんばんは
    お久しぶりですね レオさん^^

    忙しい日々が続いてまして…^^;
    更新もまた間が開いてしまいました

    春本番 桜満開ですね〜^^ 
    レオさんは お花見 夜桜は楽しみましたか?

    私も、出かけの通り道 桜の木を毎日眺めています^^
    ピンクの花弁が舞うと散らないでと切なくなりながら

    回想シーンに胸痛くなって…だなんて
    それはきっと、レオさん自身のリアル恋物語に重なるシーンがあったからですね^^
    レオさんのステキな恋物語 どこかに書いてほしいなって思います(^^)

    この先の展開…取り合えず すれ違ったままのルナとエミを逢わせて
    そのあとは…どうでしょう
    ちょっとまた波乱が…起きるかも?かな(*^_^*)お楽しみに

    相変わらずマイペース更新ですが気長にお付き合いくださいね

    いつもコメント有難う御座いますm(__)m


               映美

引用返信/返信 削除キー/
■20782 / inTopicNo.64)  【〜Her Lingering scent〜@】
□投稿者/ 映美 ベテラン(249回)-(2008/04/09(Wed) 03:59:48)


    床に座り込んだままマユは
    二つのワイングラスをじっと見詰めた


    「やっぱ 話したんだ それでエミさん出て行ったんだね…」


    『…隠し事したくなかったからね ただ、話すタイミングを誤ったなと後悔してる…』


    「エミさんにサオリさんのことは話してないの?」


    『・・・うん 話しそびれた…っていうか 聞きたくないって耳を塞いで出て行ったからね…』


    ショックだと悲しみに歪んだエミの顔が浮かんだ


    「そうなんだ… エミさん傷ついてるでしょうね…」


    『私が悪いのよ…。 でもね エミと出会う前の過去のこと
    そんなに責められることなのかなって思ったりもしたわ・・・』


    「過去のことだと許してても・・・その相手が身近な人だと知って複雑な気持ちだったのよ
    とってもルナを愛してるのよ わかるわエミさんの気持ち」


    『私だって、エミを愛してるからこそ 全てを話したいと思ったのよ…』


    「愛してるからこそか・・・」


    はぁ〜っとマユが溜息を床に落としたとき

    ピー♪

    テーブルの上の携帯が充電切れを知らせた
    切れた携帯を手にしたとき  ふっと思い出した


    『そういえば マユ さっき電話で エミに謝ってほしいって言ってたけど 何のこと?』


    「あっ…う…うん…このまえね トオルのライブでエミさんに会ったとき
    睨んじゃったから きっと不快に思ってるだろうなって…」


    『何も言ってなかったけど・・・どうだろう 気にしてないと思うけど…』


    「私 エミさんに嫉妬してた ルナに愛されてるのが羨ましくて…。それにあの日
    トオルまでがエミさんを好きでLOVESONGまで書いてたって知って
    とても悔しかったの…私の欲しいもの望んだものを全部手にいれてると思うとね・・・」






    壁掛け時計が午前1時を指していた


    『もうこんな時間 マユ もう寝ましょう 
    さっきも言ったけど お説教はほんとに今日限りだからね…。』


    ワイングラスとボトルを持ち立ち上がった時 マユが言った


    「ねぇ ルナ・・・  私 もうお酒やめる〜!」


    『ホントに? やめられるの?(苦笑)』 


    「…そっ…そうね いっきには無理かもしれないけど…量を減らして…いくわ」


    マユの声は自信なさげにだんだん小さくなっていく
    勢いで言ったことに慌ててるのが分かる
    マユの禁酒宣言を聞いたのは今回が初めてではない 以前だって2週間で挫折したのを知ってる


    私はワザと明るく言った


    『じゃあ 酔っ払いからの電話はもうなくなるってことね(笑)』


    「う…うん・・・(苦笑)ねぇ ルナ 」


    『ん…?』


    「このまま友達…でいてくれるよね?」


    『勿論よ(微笑)  …マユも早くいい恋しなきゃ』


    「いい恋か〜ルナに言われるとやっぱチクッって胸が痛くなる〜(苦笑)」







    マユがベットで寝息を立ててからも 私はソファで眠れずに朝を迎えた


    考えてた・・


    リツコのときも…マユのときも…
    私はなんて虚しい短絡的な行動をしたのだろう

    あの頃…身体中に沁みついたサオリの消えない残り香が
    いつまでも私を苦しめていた 
    燻り続けるサオリを消し去りたいばかりに
    目の前の温もりに思わず手を伸ばしてしまった
    どうかしてたんだ 私…

    ちゃんと話そう 過去の恋のことも
    エミには私の全てを知って欲しい
    誰よりも深く愛してるから…


    ブランケットに微かにエミの香りがした…

    〜Her Lingering scent〜
    彼女の残香

    ずっと消えないでほしい


    エミィ…
    早く戻ってきて



引用返信/返信 削除キー/
■20794 / inTopicNo.65)  映美さん♪
□投稿者/ 昴 大御所(430回)-(2008/04/15(Tue) 23:59:46)
http://id34.fm-p.jp/44/subarunchi/
    一足早く【おめでとうございます】
    次回はいよいよ250投稿目、大御所入りですね♪

    コツコツと書き続けていらしたのを
    最初から拝読させて頂けて昴はラッキーでした

    エミサイドとルナサイドの回想シーンも終わり
    ルナとエミは無事仲直り出来るのでしょうか?
    続きを楽しみにしていますネ♪

    お互いに完結目指して頑張りましょうネ♪
引用返信/返信 削除キー/
■20807 / inTopicNo.66)  昴さんへ^^
□投稿者/ 映美 大御所(250回)-(2008/04/25(Fri) 01:42:20)
    昴さん お久しぶりです^^

    えっそうなんですか〜^^;
    250投稿目で大御所なんですね

    いつもながら投稿数なんて全然見ていない私です^^;
    毎回 昴さんに教えていただいてますね
    それにしても私が大御所だなんて…
    相応しくなさすぎでとても恐縮しています

    このレスが記念すべき250投稿目^^
    ずっと最初から見て頂いてる昴さんには
    いつも励ましのお言葉も含めて感謝しています
    本当にありがとうございますm(__)m

    私の中で『ルナエミ』はとっくに完結してるはずなんですが
    物語りは立ち止まってばかりです…^^;
    ここにいるルナとエミは終わりたくないのかな…(苦笑)

    早く完結しないと、私も次に進めませんから
    夜更かし覚悟で執筆に拍車かけなきゃと思ってます

    どうか 最後まで見守っていてくださいね^^

             映美


引用返信/返信 削除キー/
■20808 / inTopicNo.67)  【〜Her Lingering scent〜A】
□投稿者/ 映美 大御所(251回)-(2008/04/25(Fri) 02:30:18)


    『エミ〜 ロスに帰国する前に電話するね』


    軽くハグしたミサオから懐かしい海の香りが漂った


    〜Her Lingering scent〜


    鼻先を霞めるミサオの残り香に…消えないでと言葉が追いかけた


    「…あ、あの ミサオさん 空港に見送りいってもいいですか?」


    ミサオは答えずじゃあね…と手を振るとくるりと背中を向け改札を通り抜けた

    (…聞こえなかったのかしら…?)


    歩くミサオの背中を見つめた

    (…またあらためて電話で出発の時間を訊こう) 

    ホームに下りる階段前でミサオはふり向くと大きく手を振った
    笑顔が寂しく感じたのは気のせいなのだろうか…





    コンコースを歩きながら
    ルナに向かう電車に乗ろうか迷った

    どうしたんだろう…ルナ
    メールの返信もこずCALLしても繋がらない


    疲れて寝てるのかな…
    それともまた急な仕事で出かけたのかもしれない
    時計に目をやりながらも…
    迷っているはずの足は自然にルナに向かっていた

    …ルナに会いたい



    電車に乗り込んだとき メールが届いた
    ルナからかもしれないと慌てて開く

    そのメールは、ミサオからだった


    件名:見送り拒否(笑)

    本文:エミ〜空港に見送りになんかきたら 
    今度こそ強引にロスに連れていっちゃうからね(笑)
    早く彼女んとこ行って仲直りしなさい〜。
    また電話するね  サンキュー エミ〜!

     
    ミサオさんったら…やっぱ聞こえてたんだ


    いつものハスキーボイスが聞こえた気がして
    思わず胸がアツくなった
      
    ミサオさん…ありがとう…。


    ルナの最寄り駅まであと3駅
    …もう一度ルナにメールした




    .....





    その頃 ルナの部屋では…
    目覚めたマユがベランダで空を眺めていた


    「ルナ〜 雨降りそうだよ」

    マユの声に、窓の外に目をやると灰色の空が重く広がっていた

    雨か…

    昨夜は眠れず…重ねてこの空模様 
    どうりで頭痛がするわけだ こめかみに手をあてた

    帰り支度を整えたマユが心配顔で窺う


    「ルナ 大丈夫? 私のせいで眠れなかったんじゃない?」


    『大丈夫よ それよかマユはよく眠れた?二日酔いは?(苦笑)』


    両腕を伸ばしてストレッチポーズをしながらマユは言った


    「このとおり気分爽快〜♪ルナのベットで眠れて幸せな夢見てたわ』


    『そっか…(苦笑)』


    「さ〜て 私はそろそろ帰るね!またエミさんと鉢合わせしちゃ大変だし〜」


    マユが携帯を開いたのを見て思い出した

     
    …そうだった

    昨夜 切れた携帯を充電したままだった


    エミからのメールを読んだのはマユを
    エントランスまで送り部屋に戻ってからだった


    メールと時間を見て…ため息をついた


    エミィ タイミング良過ぎるよ…(苦笑)


    でも大丈夫
    誤解なんてもうさせないから…






引用返信/返信 削除キー/
■20809 / inTopicNo.68)  【〜Her Lingering scent〜B】
□投稿者/ 映美 大御所(252回)-(2008/04/26(Sat) 02:06:07)

    駅を出ていつものコンビニの前で足が止まった


    …ルナ 寝てるかな?
    なにか軽く食べられものでも買って行こう


    自動ドアの前に立ったとき名前を呼ばれた


    「エミさん〜」


    ふり向くとマユがにっこりとエクボをみせて立っていた


    『マユさん…』


    驚いた…。
    こんなところでマユに会うなんて
    でも ここで会うってことは もしかして…


    『あのう マユさん…。 ルナのところに?』


    「そうなの…。 昨日ね ルナの部屋に泊めてもらったの〜」


    (え…泊めてもらった?って)


    一瞬 耳を疑った…と同時に頭の中で色んな場面(シーン)が重なった


    『…あ、あの…マユさん… ……あの…』


    次の言葉が出てこない
    私は何を訊こうとしているんだろう… 


    詰まる私にマユが首を傾げたとき 携帯が鳴った


    「はい もしもし〜♪ うん〜!いま駅に向かうところよ…」



    誰かと話すマユの隣で…呆然と立つ私の頬にポツリと冷たい雫が落ちた


    …雨


    手のひらを開き 灰色の空を仰いだ


    …ルナ 私も泣きそうよ



    携帯を閉じて振り返ったマユから
    ルナの部屋の香りが微かに漂った気がした

    「エミさん ルナのところに早く行ってあげてね」

    マユは私を促すと小走りに駅に向かっていった




    コンビニの軒先で雨を避けしばらく佇んでいた
    雨足はだんだんひどくなりサンダルのつま先を跳ねる雨粒が濡らす


    (ルナの部屋に泊めてもらったの〜)
    頭の中でリピートするマユのセリフ

    私が部屋を出てから…何があったんだろう

    きっと何か事情があったに違いない
    ルナを信じてる 信じなきゃ…

    そう思う心と、過去にあった二人の関係を知っただけに
    また、なにかがあったのかもと不安が押し寄せる

    私だって昨夜は、ミサオと過したんじゃない
    ルナを責めることはできない…

    いいたいこと素直にぶつければいいのに
    どうしていえないの…

    自問自答を繰り返す 
    そんな自分の優柔不断さが嫌いだった



     
    こんな気持でルナに会わないほうがいいかもしれない


    雨に濡れるのを覚悟で駅に向かって歩き出した時


    ふいに腕を掴まれた…


    「え…」


    ふり向くと…


    ルナが私の手を引き傘を差しかけた 


    『エミィ 何してるの…遅いじゃない(微笑)』


    「ルナ…」





引用返信/返信 削除キー/
■20840 / inTopicNo.69)  【〜Her Lingering scent〜C】
□投稿者/ 映美 大御所(253回)-(2008/05/24(Sat) 00:08:15)

    『エミィ 帰るつもりだったの?』


    傘を差しかけ濡れた肩をルナは抱きしめた…
    額を流れる雨の雫を拭う指先に切なさが込み上げてくる


    「ごめんね ルナ…」


    『なんで謝るの…エミィ なんか悪いことした?(微笑)』


    顔を上げるとルナの黒い瞳のなかに私が映っていた





    降りしきる雨の中
    ひとつの傘でルナのマンションに向かい
    ドアを閉めた玄関でくちびるを探りあい長いKISSを交わし
    雨に濡れた服を脱がしあった…
    シャワーの雨の下で狂おしく抱き合い
    ベットで溶けあい…何度も何度もルナの名を呼んだ…
    ルナの魔法で痺れた体のまま 私は夢の中に落ちていった



    あれから何時間経ったのだろう…



    目を閉じたまま
    快適な温度の中で私は微睡んでいた


    『雨…よく降るね…』


    ルナの声に、ブランケットをずらし雨の音を聞いた
    雨はまだまだ止みそうにないリズムで窓を叩いていた


    「今日は一日雨模様ね… でもこんな雨の日もいい感じ(微笑)」


    『エミィは雨の日がお気に入り?』

    「うん…。ルナとはじめて出逢った日が雨だったから
    だから あの日から雨の日が好きになったの…」


    『そう…』

    ルナは笑みを浮かべブランケットを私にかけなおして
    ベットを下りた…

    『エミィ 何か飲む?』

    「うん…じゃあ アメリカンコーヒーで…」

    『はいはい じゃあ少しお待ちくださいませ』

    キッチンに向かうルナの背中を見詰めながら
    こんな幸せな時間がずっと続くこと信じて疑わなかった




    コーヒーをふたつテーブルに置き
    BGMの音を絞ってルナは
    じゃあゆっくり話そうかと私をソファに促した

     
    ルナの好みのタバコの煙が部屋に漂う…



    『エミィ マユに会ったよね?なにか言ってた?』


    「ルナの部屋に昨夜泊まったって…」


    『そうなんだ…。それきいたから帰ろうとしたの エミィ(苦笑)』


    「……」


    ルナは煙を吐きながら窓に視線を移した


    『ねっ エミィ 今度はちゃんと最後まで話を聞いてね 
    聞きたくないっていわないでほしい…』


    「うん…」


    まず昨夜のマユの訪問の経緯をルナは話し始めた


    時折 私の表情を窺うのは 言葉を選んでるのだろう
    クールなルナの優しさが伝わる


    マユの話から過去の恋人の話になったとき
    ルナの瞳のなかにひろがる雲が見えた気がした
    過去の恋 過去になったひとなのに…


    まだルナの中でその彼女の残り香…が消えずにいるのかもしれない
    そう思うと胸が締め付けられた…


    「ルナはその人を深く愛していたんだね…」


    タバコを灰皿でもみ消すルナの指先を見詰めながら
    今はエミのことその人以上に愛してるってそんな台詞を聞けると思っていた


    …なのにルナの口から出たのはまったく予想外の台詞だった


    『…実はね この前 サオリに会ったんだ…』




引用返信/返信 削除キー/
■20888 / inTopicNo.70)  【〜Her Lingering scent〜D】
□投稿者/ 映美 大御所(254回)-(2008/06/06(Fri) 01:38:49)


    カップを持つ手が思わず揺れた


    「…会ったって…どうして?」


    彼女との出逢いは仕事を通じてだった・・・とルナが話し始めた
    いまは同じ企画には携わっていないが彼女の勤める会社とは
    たまに取引があるからすれ違う事だってあるという


    それなら会ったじゃなく…すれ違ったでいいのに
    よけいな気を揉ませないで…と心の中でルナを責めた


    おまけに彼女の名前(サオリ)まで さらりと口に出すから
    頭ン中にインプットされてしまったじゃない…



    『エミィが言うように 彼女(サオリ)の事 深く愛していたよ…』


    深く愛してた…


    たとえ過去形でもルナの言葉に胸が締め付けられた


    「そんなに愛してたのに…なぜ別れたの?…」


    『……』


    ひと呼吸おいてルナは長い煙を吐いた…


    『彼女はね 既婚者だったんだ…。それが別れた理由のすべてじゃないけどね』


    『私はひとりだから…寂しい…逢いたいと毎日 彼女に無理を言い…。 
    彼女は今の状況を分かってくれないと私を責め…そんな繰り返しばかりで
    いつしか 心がね かみ合わなくなってしまったんだ…』


    遠い目をするルナの脳裏のスクリーンには
    いま彼女(サオリ)を映し出しているのだろう…



    ルナの表情を見るのが辛くて私は目を伏せた


    「…」



    部屋に響くミディアムスローなメロディーが切なく
    ふたりの沈黙の合間を流れる


    二本目の煙草に火をつけるルナの横顔を見詰めた


    「ねぇ ルナ…。サオリさんとは話したの?」


    『話したよ…』


    「どんなこと?」


    『主に仕事の話・・・。 あと…プライベートは充実してるの?って聞かれて…』


    「うん…」


    『いまとても充実してる とても愛する人がいるから…。って答えたよ』


    まっすぐ私を見詰めるルナの瞳に愛を強く感じた


    『エミィ あとはなにが聞きたい?』


    髪を撫でるルナの胸に顔を埋めた


    「ルナのハートの音…」




引用返信/返信 削除キー/
■20917 / inTopicNo.71)  【〜Her Lingering scent〜E】
□投稿者/ 映美 大御所(255回)-(2008/06/09(Mon) 17:50:56)


    胸に顔を埋めた私の背中をルナは抱きしめた


    『エミィ 聞えた?』


    「うん…ア・イ・シ・テ・ルって聞えた…」


    やわらかな感触のなか耳に伝わるルナのハートの囁き…。


    『…ハートで愛を囁いたのはエミィだけよ…(微笑)』


    ルナの黒い潤んだ瞳の中に至福の笑みの私が映っていた…。


    幸せよ…ルナ 
    このままずっとこうしていたい







    雨のリズムが弱くなってきたねと窓のロールカーテンを引いたとき
    思い出したようにルナが訊いた


    『ねっ エミィ もしかして昨夜は家に帰ってないの?』


    そうだった…昨夜のこと
    今度は私がミサオとの事をルナに話す番だ
    コーヒーカップをテーブルに置きなおして深呼吸した


    「ごめんね ルナ 私…」


    『また謝るの? エミィ(苦笑)』


    「…昨夜、私も昔の恋人に会ったの…。でもね 誤解しないで ルナ…」


    『まだ何も訊いてないのに 誤解しようもないじゃない(苦笑)』


    ミサオとの出会い…と別れ
    そしてトオルのライブに急いでた日の偶然の再会から…
    昨夜を一緒に過した経緯まで全て話した


    ルナは、ただ頷いて最後まで話を訊いてくれていた


    『…エミィの恋した人 素敵な人だったんだね(微笑)』


    「そのひとの名前は?って訊かないのね」


    『昔の恋人の名前なんか 別に知る必要ないでしょ…』


    「そうだね…」


    『名前よりか訊きたいことひとつある』


    「何?」


    『エミィも その彼女を深く愛してた?』


    「…うん…愛してた」


    ルナは私から視線を逸らしクールな笑みを浮かべた


    『エミィ…私は過去には嫉妬しないよ』






    朝から降り続いていた雨が上がったのは
    夜になってからだった…


    『やっと雨が上がったね…』


    ルナが、窓を開けた


    涼しい風が部屋の湿った空気のなかを抜けたとき
    気のせいなのだろうか…
    ふっと…甘い香りが鼻先を霞めた気がした


    そうだ…あのコロン


    いつか洗面台の下で見つけたピンクの小瓶を思い出した 


    あの時、答えてくれなかった質問をもう一度してみよう


    「ねぇ ルナ…訊いていい?
    あのピンクの瓶のコロンは、誰のなの?」


    『…コロン?』


    「洗面台の下にあったでしょう…」


    ルナは一瞬、首をかしげた


    『洗面台?…。あ〜…あのコロンね』


    「…うん」


    『まだ気になるの?』


    私の頬に触れてルナは笑った


    『…あのコロンはサオリへのプレゼントにと選んで買ったコロンだった。
    でも 渡す前に別れた(苦笑)それで…当時ルームシェアしてたリッコに使う?
    って訊いたら  喜んで貰ってくれたの…。だから あれはリッコの忘れ物…』


    「そうだったの…」


    『もう 捨てなきゃね…』


    「リツコさんの忘れ物なんでしょう 捨てちゃっていいの?」


    『…いいでしょう 保管期間はとっくに過ぎてるもの(笑)』



    『この部屋の 〜Lingering scent〜残り香は エミィの香りだけ…ずっとね 』


    ルナの腕のなかに再び包まれたとき
    私の中で悶々と燻っていたすべての事が消え去った




引用返信/返信 削除キー/
■20921 / inTopicNo.72)  【〜believe in love〜@】
□投稿者/ 映美 大御所(256回)-(2008/06/10(Tue) 03:35:04)
    2008/06/10(Tue) 04:28:51 編集(投稿者)




    ミサオから電話があったのは、ロスに帰国する日の朝だった


    『今日、午後の便で発つね〜。エミ ほんと会えて嬉しかったよ
    いろんな話もできたし
    なによりも…エミがいま幸せだって確認できたから 安心してロスに帰れるよ』


    電話の向こうのハスキーボイスはだんだん遠ざかっていく


    「ミサオさん ありがとう…。…見送り拒否は寂しかったけど…」


    『あっ いいよ エミ 今から見送りきてくれてもさ〜』


    「えっ いいんですか?」


    『うん そのかわりパスポートを持って 覚悟してきなさいよ(笑)』


    「ミサオさん…」


    冗談よと受話器の向こうで笑うミサオの懐かしい声の響きに
    ミサオさんもどうか幸せになって…と心から願った 
     
    あなたの夢と活躍を遠くから見守っています
    いつまでも輝いていてください

    ミサオさん 
    私を愛してくれてありがとう…。


    見上げた空には…ひこうき雲がきれいな直線を描いていた…。









    ルナと出会ってから三つの季節が過ぎ…


    ふたりで迎えた四つ目の季節は桜が咲く…春になっていた


    夜桜を見に行こうかと仕事帰りにいつものターミナル駅で
    ルナと待ち合わせをした

    前を歩くカップルが立ち止まりながら桜並木をカメラに収める姿に
    私たちも撮ろうとルナが携帯の画面をカメラにした

    やっぱ写真撮るの下手だな〜とルナが画面を見て笑った


    『あっ そうだ 写真で思い出した! リッコが今度の日曜一緒に食事に行こうって エミィの予定はどう?』


    「ええ、もちろん大丈夫よ」


    『じゃあ OKの返事しておくよ、なんでも今月末にはニューヨークに行くらしいから、来週しか空いてないって言ってたからね』


    「ニューヨーク?」


    ルナの話によるとリツコの恋人がニューヨークに転勤になり引越しやらの手伝いにいくのと
    リツコの父もいまニューヨークでカメラマンで活躍していて どうやらリツコも向こうに住み
    父の仕事を手伝うらしいとのこと…ようするに彼と同じ地に住みたいのだろうということだった


    「そうなんだ 恋人が出来たんだね リツコさん…」

    (恋人ってあの時の人なのかな…?)
    BARで、スーツ姿の男性と親しそうにお酒を飲み話し込んでいた
    リツコの顔が浮かんだ


    『またニューヨークなの?って言ったらリッコは偶然よって笑ってた』


    「また?って」

    『エミィ リッコから訊いたでしょう?以前好きな彼を追ってニューヨークまで行って実は彼がゲイだったから振られたって話』 


    「あ…うん…」


    あの時 ルナとの思い出を語るリツコの大きな瞳のなかに
    紛れもなく嫉妬の炎が見えた気がした


    『今度の彼はゲイじゃないらしいから安心したけどね(苦笑)』


    ルナの寂しい表情は、親友が遠くにいくからだろう
    ただそれだけ…なのだろうか
    胸がざわめくのは何故だろう
    なにかが起きる予感がするのは…気のせいだろうか


    ううん 何も起きるわけないじゃない
    ルナの愛を信じてるもの


    『あ…この桜の木…綺麗だね』


    ルナが立ち止まった


    ふたりの間を花弁がハラハラと舞う
    その桜の木にアングルを合わせながらルナが言った


    『ねっ エミィ…。一緒に暮らさない』


引用返信/返信 削除キー/
■20922 / inTopicNo.73)  【〜believe in love〜A】
□投稿者/ 映美 大御所(257回)-(2008/06/12(Thu) 02:50:10)

    翌週の日曜の午後


    ルナと向かったのは欧風レストラン
    リツコとの待ち合わせの時間5分前に到着した


    重いドアを押して入ると、すぐ目の前に立つ女性が振り向いた


    リツコだった


    「あっ…ルナ〜♪ グッドタイミングね 私もいま来たとこなのよ」


    大きな瞳を輝かせリツコはひさしぶりねとルナの腕に腕を絡ませた
    その何気ないスキンシップにふたりの長年の仲を垣間見た気がした


    「…リツコさん お久しぶりです」


    私の声にハッとしてリツコはルナの腕を離した


    「あ、エミさん こんにちは〜(微笑)さっ…席に行きましょう」


    先に歩き出したリツコの後ろで、そっとルナの手を握った
    妬いてるの?とルナの瞳が笑っていた






    席に着いてすぐにルナとリツコは互いの仕事の話を始めた
    私はふたりの会話には入っていけなくて ただ、メニューを眺めていた


    ルナがそんな私の様子に話題を変えた


    『ねっ リッコ 彼はあとからくるの?』


    「ううん 彼はこないわよ〜。一応 誘ったんだけどね 
    どうやら女性ばっかりに、囲まれるのが苦手らしいわ(苦笑)」


    『えっ 女性が苦手って ねえ リッコ その彼は大丈夫なの?(笑)』


    「ルナったら〜、今度は大丈夫よ ご心配なく(笑)」


    リツコと笑い合うルナが…まるで別人のように明るく感じた
    どうしてそんな屈託のない笑顔が自然にできるの…

    ルナの横顔を見詰めた
    (私にはそんな顔 見せないよね…)


    私の視線に気づかずにルナは二人の馴れ初めを訊いている
    待ってましたとばかりにリツコはお惚気話を始めた


    「彼はね 今まで出会った人のなかで一番私を愛してくれてるって感じた人なの」


    『リッコは恋すると熱くなりすぎるから、心配よ 』


    「あら よく言うわ ルナだってすぐ燃え上がっちゃうじゃない(笑)
    私がよく知ってるわ だってあの人の時だって…」


    リツコは…ハっと口を押えてルナに目で詫びた


    きっと…あの人とはサオリのことだろう…
    私は聞こえなかったふりをして料理を口に運んだ


    もう何を聞いたって平気…
    一番愛されてるって自信あるから…
    ルナの愛を信じてるから…





    食事をしながら他愛もない話を
    3人でしながら時間は過ぎていった

    ふと思い出したようにリツコがミチコの名前を出した

    ミチコと私が従姉だということを訊き世の中狭いねと
    言うと同じく仕事でミチコと関わったルナも大きく頷いた
    (そういえば…最近 ミチネエに会ってないな…また連絡してみよう)




    コース料理の締めくくりのデザートが運ばれた


    季節のフルーツがトッピングされた
    小さなケーキがお洒落な大皿のなかで品よく並んでいた


    ケーキを食べ終わり…
    リツコが向かいに座る私とルナを交互に見詰めた


    「ねぇ ルナとエミさんは一緒に暮らさないの?」


    私たちは思わず顔を見合わせた


    それは…先週ルナと話し合ったばかりのことだった
    桜の木の下で一緒に暮らそうと言ってくれたルナに私は首を縦に振れなかった

    家を出ることができない
    私の家庭事情があったからだった。

    視線を落とす私の横でルナが笑って答えた


    『勿論、近いうちに一緒に住むつもりでいるよ…』


    「そっか〜、よかった 安心したわ! エミさん…私ね、ルナとこんな遠くに離れるのは初めてなの…」


    リツコは大きな瞳を潤ませた


    「ねぇ エミさん…ルナのことお願いね…」




引用返信/返信 削除キー/
■20924 / inTopicNo.74)  【〜believe in love〜B】
□投稿者/ 映美 大御所(258回)-(2008/06/13(Fri) 13:10:07)

    4月最後の週の木曜日…


    リツコがニューヨークに出発する日
    空港まで見送りにいってくるねとルナからメールがあった


    私は、その頃 オフィスの窓から空を眺めていた


    "ルナのことお願いね"…と潤んだ瞳で言ったリツコと
    "今度の彼はゲイじゃないから安心したよ”と笑ったルナの寂しい瞳


    今頃 二人はどんな会話をし別れを惜しんでるんだろうか


    リツコの大きな瞳から毀れる涙をルナが拭ってる場面が浮かんだ

    ねぇ ルナ…
    ふたりの間には私の知らない何かがあるの…?

    私は首を振った

    ううん…二人は仲のいい大親友 それだけよ…



    「ちょっと〜エミ 大丈夫?」


    隣のデスクの同僚が肩を叩きパソコンの画面を指差した

    ぼんやりしてて無意識にキーボードに指が触れてたのだろう
    意味不明な文字が画面いっぱいに並んでいた…

    「あ〜ほんとだわ〜、私ったら〜(苦笑)」






    終業のベルとともに亜紀子が私のデスクに飛んできた


    「ねっ エミ〜、帰り予定ある?」


    『ううん 別にないけど どうしたの〜?』


    「エミに渡したいものがあるんだ〜 ねっ 帰り、駅前のカフェにシフォンケーキ食べにいこう〜♪」


    『OK いいわよ〜、その嬉しそうな顔はきっといい話ね』


    「そう いい話だよん〜。 でもエミにとってはどうかな〜(笑)
    さっ 早くいかなきゃ シフォンケーキ品切れになっちゃうよ〜」


    せっかちな亜紀子は私の腕をとりロッカールームに引っ張っていく






    向かいに座った亜紀子が、メニューを閉じて座りなおした


    「エミにはね 郵送じゃなく 直々に渡したかったんだ〜 ハイ!」


    なにやら白い封筒のようなものを両手で渡された



    受取った白い封筒には金の箔押し寿シールが貼られていた
    それは結婚式の招待状だった

    日時 6月○日 土曜日
    挙 式 午後12時より
    披露宴 午後13時より

    と書かれていた


    「エミ〜 もちろん出席してくれるよね♪」


    『あたりまえじゃない〜、亜紀子おめでとう(微笑)
    そっか…2ヶ月後には亜紀子は奥さんになっちゃうんだね』


    「やだ〜エミ 奥さんだなんて 照れちゃうよ〜」


    幸せそうに笑う亜紀子を羨ましく思った
    6月の花嫁〜ジューンブライド〜なんだ…


    2ヶ月前は同僚のあゆみの披露宴に亜紀子と出席した


    みんなどんどん結婚していくんだ…
    寂しさじゃない 言い知れぬ虚しさが胸に広がった


    私とルナはこれからどうなるのかなとふっと思った



    勿論 いまだって十分 幸せ…
    だけど、いま以上 二人を結ぶ絆ってなんだろう
    ずっと一緒にいることは当たり前だけど
    見えない未来…
    それは…本当に叶うのだろうか
    頭の中でいろんなことが過ぎった



    シフォンケーキを口に運びながら亜紀子が私の顔を窺った


    「どうしたの〜エミ? 急に黙り込んじゃってさ〜、もしかして焦ってる?(笑)」


    『えっ…』


    「大丈夫よ 次はエミ〜の番だよ 私の投げたブーケちゃんとキャッチしなさいよ〜♪」


    『そ、そうだね…がんばってキャッチするわ・・・(苦笑)』


    心の中で呟いた…
    (そのブーケを受取ってもね わたしは結婚なんてできないのよ…亜紀子)





引用返信/返信 削除キー/
■20930 / inTopicNo.75)  【〜believe in love〜C】
□投稿者/ 映美 大御所(259回)-(2008/06/18(Wed) 17:15:23)

    スクランブル交差点が黄色の点滅から赤に変わった


    後ろから足早に私を追い越そうとした人が
    信号の赤にあきらめて立ち止まった


    すぐ前に立ったベリーショートの女性に
    思わず あっと声が出た


    『もしかして…ミチネエ〜?』


    「えっ…」


    私の声に振り向いたのは間違いなく従姉のミチコだった


    「お〜!エミ〜じゃん ひさしぶり〜♪」


    ミチコは両手を広げておどけたポーズをした


    信号が青に変わり周りの人波が動き出した 
    互いの近況を話しながら交差点を渡った


    『ミチネエはもしかして仕事?』


    「ううん 今日は友人とデートだったんだ〜(笑)まったく色気ないよな〜」


    相変わらずさばけた口調のミチコは私に、エミはデートかと聞いた


    『うん デートでした…友人とね(笑)今 帰るとこなの』


    予定がないなら夕飯でも食べに行こうかとミチコが誘った
    ルナは、今日 仕事で忙しいから会えないといっていたから
    もちろんOKのふたつ返事をした


    ミチネエと会うのは何ヶ月ぶりだろう
    色々聞いてみたいことも聞いて貰いたい事もあった…


    駅までの通りにある和食の店に入った
    席に座り 何から先に話そう…思案してると
    先にミチコがきりだした


    「あ、そうそう エミ 勿論知ってるよね? リツコがニューヨークにいったこと」


    『うん…』


    ミチコとリツコは仕事仲間だった 知ったときは意外な繋がりで驚いた
    ルナとも数年前にブライダル特集の記事を通じてミチコと会っている


    不思議なものだと思った…
    私がルナと出逢うずっと前から3人は関わり合っていたなんて


    「もう、向こうに行って2週間か〜、リツコ 大丈夫かな?」


    煙草に火をつけながらミチコがちょっと心配顔をした



    『大丈夫って?』



    「うん リツコの今の彼 ちょっと知ってるんだ あまりいい噂 聞かないからさ
    ちょっと心配だなって思ってさ〜」



    ミチコの話によると、その彼はバツ一で離婚の原因も同時にふたりの女性と
    付き合っていたことだとかで結構問題多い人らしかった
    リツコには一応忠告はしたものの、私は大丈夫だからときっぱり言われれば
    それ以上、他人の恋愛事に口は挟めないでしょうと苦笑いをした


    ふっとルナの顔が浮かんだ


    きっと、知らないはずよね
    リツコが言うわけないだろう
     
    ルナが訊いたらどう思うだろう…
    一番の親友のリツコのこと きっと心配するに違いないだろう…



    「そういえばさ、ルナさんは元気?」



    ミチコがタイミングよく質問する

    たぶんルナと私の仲をミチコは気づいているはず
    この機会にちゃんと話しておかなきゃ…


    『ミチネエ…、実はルナと私は…ね…』

    神妙な表情に何かを察したのだろう
    私の告白を最後まで聞かずにミチコは言った


    「知ってるよ エミ(微笑)私はちゃんと理解してるからさ…」


    そしてふ〜っとタバコの煙を吐きながら
    やっぱ血は争えないねと笑った


    この日、何年も聞けずにいた
    ミチコの本当を知った夜でもあった







    その頃ルナは…






    いつものように次の企画の打ち合わせが終わり
    帰り支度をしていると、上司に呼ばれた


    社長が話しがあるからと
    近くの割烹料理店に連れていかれた



    「ルナくん…実はな私の友人がニューヨークで日本人向けのコミニュティ情報誌など
    手がけてる出版社と取引があって、今、ライターを探してるということなんだ」


    「それでだ・・・単刀直入に言うが、向こうで仕事をしてみないか?」


    『えっ…あの…ニューヨークでですか?』


    あまりの突然のことに言葉に詰まった


    「入社時 面接で君は将来は海外で活躍するフリーライターを目指してるといってたね。
    うちにいても小さな仕事しか回ってこない。君は優秀だ、他からの評判だっていい 
    君の才能をもっと伸ばしてやりたいと思ってる」


    『あの…でも私…』


    社長は喋り続けた


    「君の夢の一歩になるきっかけができるチャンスかもしれないと思ってね
    なんでも君はニューヨークに友人もいるらしいじゃないか
    向こうで知り合いもいれば心強いだろうしね」


    リツコのことは、カメラの仕事を依頼したりされたりで何度か上司に紹介もしたことがあった
    最近、ニューヨークにいったことも上司に報告してたから社長も耳にしたんだろう


    頭の中でいろんなことが駆け巡った
    たしかに私には夢があった

    あきらめているわけじゃないけど
    でもいますぐには…


    エミィ…


    一番に頭に浮かんだのは愛しい人だった



引用返信/返信 削除キー/
■20934 / inTopicNo.76)  【〜believe in love〜D】
□投稿者/ 映美 大御所(260回)-(2008/06/19(Thu) 03:19:23)
    2008/06/19(Thu) 07:58:18 編集(投稿者)






    いつものようにルナの部屋で過ごす週末の夜


    窓に月が見える頃に
    今夜もそろそろ、帰らなきゃ…と交わすさよならのkiss


    「ねぇ ルナ…」


    『あのさ…、エミィ…』


    離れた唇が…同時に動いて顔を見合わせた



    「あ…何?…ルナから先に話して…」


    『……』


    ふたりの躊躇う瞳が交差する…


    もう少し話そうかと…ルナが私の手を引く
    ふたりでソファに座りなおした


    テーブルに置かれたシガレットケースから
    ルナは一本タバコをとりだす
    スマートに火を点けるその指先を見詰めた


    『エミィの話を先に聞かせて…』


    ルナの瞳は窓の外の月を映していた



    私がルナに言いたかったのは
    ミチコから先日 聞いたリツコの恋人の噂だった

    黙っていようと思ったが、私も気になったことだし 
    一応ルナの耳に入れとかなきゃと思ったからだった



    「ねぇ ルナ…、あれからリツコさんから連絡あった?」


    『うん、メールがきたよ…どうして?』


    「リツコさん…元気にしてるのかなって思ってね(苦笑)」


    『巨大な街(ニューヨーク)に馴染むには大変ね
    時間はかかるけど頑張るわって…書いてた
    メールの文面からは 元気な様子だったよ』


    ルナは、立ち上がり窓を少しあけた…


    タバコの煙が窓の外に流れていく


    『エミィが聞きたいのは…それだけ?』


    「あのね…実は先週、ミチネエと会ったの…それでね…」


    ミチコから訊いたことを、そのまま話すとルナは
    一瞬 曇った表情をしたが、すぐにいつものクールな笑みを浮かべて答えた


    『エミィはおせっかいだね 人の彼氏の噂話なんかどうでもいいじゃない(苦笑)
    そんな彼でもリッコは愛してるんだからさ…。私達が心配することないよ』


    今度は私が話す番だねと
    ルナが手にしたタバコを灰皿にもみ消して…窓を閉めた



    『本当は 今日 言うつもりじゃなかった…。まだ迷ってたからね』


    「…何を迷ってたの?」


    『随分 一人で考えてた…エミィにも意見を訊かなきゃとかね 
    でもね いま…リッコの話を訊いて 自分の中ではっきり答えが出たよ』


    「答え…?」


    ルナが私の肩を抱きしめた


    『それは…エミィと離れたくないってことよ』



引用返信/返信 削除キー/
■20941 / inTopicNo.77)  NO TITLE
□投稿者/ m 一般♪(1回)-(2008/06/22(Sun) 21:58:33)
    はじめまして!(〃∇〃) 毎回 更新されるたびにドキドキしながら読んでます〜!
    更新楽しみに待ってま〜す!頑張ってください!! ちなみに私はルナファンで〜す(*^▽^*)ゞ

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20947 / inTopicNo.78)  こんばんは^^
□投稿者/ レオ 一般♪(1回)-(2008/06/23(Mon) 21:40:50)
    こんばんは 映美さん^^

    たくさん更新されてますね〜^o^
    ハラハラしながら、一気に読んじゃいました♪
    ルナとエミ 何だかイイ感じ…? なのかな←
    エミの不安が、少し気になるんですけど… こうご期待ですね(笑
    引き続き、更新楽しみにしてます^^

    梅雨時期です。随分憂鬱な日々が続いてますが
    お身体気をつけて、ガンバってください^^
引用返信/返信 削除キー/
■20952 / inTopicNo.79)  mさんへ^^
□投稿者/ 映美 大御所(261回)-(2008/06/26(Thu) 13:53:23)
    はじめましてmさん^^

    コメントありがとうございましたm(__)m
    読んでいただいてるというお声とても励みになります^^

    物語もいよいよ佳境に入ってきました
    引き続き更新 頑張りますので
    最後まで【ルナとエミ】に
    お付き合い下されば嬉しいです^^


      映美
引用返信/返信 削除キー/
■20953 / inTopicNo.80)  レオさんへ^^
□投稿者/ 映美 大御所(262回)-(2008/06/26(Thu) 14:05:26)
    レオさん お久しぶりですね^^

    ハイ 最近、更新頑張っています(苦笑)

    【ルナエミ】完結を急がなきゃと夜更かし
    多しで頑張っていますが…この頃は
    やはり睡魔には勝てなくて^^;

    レオさんにご感想を頂くようになってから
    はや1年ですね…
    こんな拙い物語にくれるレオさんの言葉が
    いつも励みになっています^^
    あらためて ありがとうございますm(__)m

    これから ルナとエミにはハラハラな
    展開が続きそう?な感じですが…
    どうか最後までお付き合い下さいねm(__)m

    梅雨時 憂鬱な気分の時は
    好きな音楽聴いて笑顔で乗り切りってます^^

    レオさんも どうかお身体気をつけてくださいね


         映美
引用返信/返信 削除キー/

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