ビアンエッセイ♪

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■19561 / inTopicNo.21)  - 18 -
  
□投稿者/ Y 一般♪(20回)-(2007/08/03(Fri) 05:02:04)
    おやすみ、と言おうとした時にはもう電話は切れていた。




    時間にして、3分もない。




    まさに嵐……




    やっぱ変わってるよ、アイツ。




    まぁ…私も人の事言われへんけど。




    で、私何しようとしててんっけ?




    忘れた




    うん、眠い。




    まだ9時前…




    んー…ちょっとだけならいっか。




    どーせおかんが帰ってきたら起こされるやろうし。




    目を閉じる前に、とりあえず一度おかんに電話してみたけど出なかった。




    寝よ。




    少し肌寒くて起きた。




    それもそのはず。
    もう4月やけど、さすがにTシャツ一枚で布団もかけずに寝ていたから。




    今、何時やろ……




    つか、やば…
    寝過ぎたかも。




    携帯を見ると、朝の5時―




    おかんからの連絡は来てないようだ。




    薄手のパーカーを羽織ってリビングに向かう




    その前に…
    恐る恐るおかんの部屋を開けてみる。




    いない。




    リビングに入っても姿はなく、帰ってきたような形跡もなかった。




    またか。




    昔から良くある事だ。




    今日は早いから一緒にご飯食べよう、とか


    次の休みに一緒にどこかへ行こう、とか


    でも、実際は急な仕事なんかで流れる事がほとんど。




    仕方ないし、慣れてる。




    女手ひとつで子供を育てる苦労は、並大抵なものじゃないやろうからね。




    おかんも悪気があるわけじゃないのは分かってるし




    気にしてないようで
    一番気にしてるのはおかんだっていう事も昔から知ってる




    だから、どんな約束を破られても責めた事や憎んだ事はない




    至っていつも通りに接してきた。




    昨日の下準備したものを調理して、メモと一緒にテーブルに置く。


    【温めて食べて。おつかれさん。颯】


    今日は1人分多かったから、お弁当箱に詰めて学校に持ってこう。




    昨日は晩ご飯を食べてなかったから、炒飯を少し食べた。




    久々に、なんか空しくなって
    ちょっと早いけど、学校に向かった。






    (携帯)
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■19562 / inTopicNo.22)  - 19 -
□投稿者/ Y 一般♪(21回)-(2007/08/03(Fri) 05:44:20)
    何も考えずにいつも通り体育館に向かうと、やっぱりまだ誰もいなかった。




    軽く体をならしてから
    3ポイントシュートの練習をしていたら、亜也が来た。


    『お〜ディゾンおはよ!
    てか…あれ?
    もしかして今日朝練ないって連絡いかんやった?!』


    あぁ…そう言えば。
    つか、ディゾンって誰やねん?


    『あーなんかそう言えば奏音から夕べそんな電話があった様な…

    でも、忘れてました。

    つか、ディゾンって誰ですか?』


    すると亜也は笑いながら


    『忘れとったって(笑)
    それにしても早かね!

    ディゾンは1年生の中での颯の呼び名♪
    2年生にディゾンそっくりの先輩がおる!って有名らしかよ(笑)

    でも確かに似とるけん、今日からウチも颯の事はディゾンって呼ぶと♪♪(笑)』


    あぁ、最近何回か言われた。
    なんちゃらディゾンに似てるって。
    私知らないけど…


    『やめて下さいよ…(苦笑)

    今日はたまたま早く起きたから早く来ただけですよ。

    で、なんで先輩は朝練ないのに来てはるんですか?』


    その問い掛けに、亜也はストレッチをやめてこっちを見た。


    『フラれたけん。

    うさ晴らし?(苦笑)』


    ………え。
    先輩、付き合ってた人おったんや。


    『そうですか。』


    何て言っていいか分からんから、それしか出てこんやった。


    『それだけかい!!(笑)
    もっと慰めるとかしてみてよ(笑)』


    と突っ込む先輩の目は、良く見ると確かに赤くて少し腫れてた。


    『すいません。
    言葉で慰めるのって苦手分野なんで…
    私で良ければ…バスケ、付き合いますよ。』


    すると亜也は立ち上がり、よしやるか!と言って、私が持っていたボールを奪った。




    ひたすら汗をかいて、2人してヘトヘトになった所で、体育館に大の字で並んで寝転ぶ。


    息が落ち着いてきた頃に、窓から見える空を見ながら亜也が喋り出す。


    『今日、天気よかね。』


    「そうですね。」


    『学校、さぼりたくならん?』


    「そうですね。」


    『さぼってみる?』


    「そうですね。」


    『笑っていいともみたいやね。』


    「そうですね。」


    亜也はそのくだりがツボやったらしく、1人で転げ回って笑っている。




    私は、そんな先輩が面白くて笑ってた。




    先輩はこれでもかという位に笑って、大きなため息を一つ、ついた。

    (携帯)
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■19563 / inTopicNo.23)  - 20 -
□投稿者/ Y 一般♪(22回)-(2007/08/03(Fri) 07:06:51)
    『ねぇ、ディゾンってどんな人が好きと?』


    「せやから、その呼び方やめて下さいって。」


    『やだ(笑)』


    「恋愛とか、好みとか、まだ良く分からないです。」


    『そっかぁ…。
    今は好きな人とかおらんと?』


    「いてませんね。」


    『ウチね、どうしても男を好きになれんったい。』


    「そうですか。」


    『驚かんと?(笑)』


    「別に驚きませんけど?」


    『そっか。(笑)
    でね、一年の時から好きやった子に、二年の時に告白したんやけどフラれてね。
    そこでなんと、ウチを好きって言ってくれよったその子のお姉ちゃんと付き合ったんよ。』


    「はい。」


    『その人は、ウチが妹をずっと好きやった事も知っとってさ、尚且、妹の事好きでもいいけん付き合って欲しいって言ってきたったい。』


    「そうですか。」


    『でも、そんな失礼な事は出来んし、そもそもその人とは親友というか、めっちゃ仲良かったけん、恋愛対象として好きって思った事がなかったと。

    それでも、フラれたショックが大きかったのと、必要としてくれる事が嬉しくて、結局付き合ってしまったんよね。』


    「元々お姉さんとも仲が良かったって事は、お姉さんもこの学校やったんですか?」


    『そう。
    2人とも同じ学年。』


    「双子…?」


    『いや、そのお姉ちゃんの方は、高校一年の時に体を壊して3年留年したから、年はウチの3つ上なんやけど、同学年なんよ。』


    「へぇ…。
    三年にそんな人がいたんですね。」


    『まぁ…それがまなみなんやけどね。』


    「…………あぁ。
    そうやったんですね。」


    『これでも驚かんと?(笑)』


    「亜也先輩とまなみ先輩がそういう仲なんかな…ぐらいは気付いてたんで。

    でも、年の事は少し驚きました。」


    『肝っ玉やなぁ〜ディゾン。』


    「せやし、ディゾンちゃいますって。」


    『でね、ディゾンちゃん(笑)

    付き合ってくうちに、ウチはどんどんまなみに惹かれてった。
    …というより、まなみとおると心から安心できる様になって、まなみの妹の事もだんだんふっきれてきよったんよ。

    今ではまなみが一番大切やし、かけがえのない存在って言い切れる。

    それで、昨日が付き合ってから一年記念日やったっちゃけど、部活始まる前にいきなり向こうから別れたいって言われてさ。』


    「理由は?」


    そう尋ねると、亜也は体を起こして座った。

    (携帯)
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■19564 / inTopicNo.24)  ちょっと休憩♪
□投稿者/ Y 一般♪(23回)-(2007/08/03(Fri) 07:20:34)
    読んで下さってる方々、初めまして<_<)o>>

    今回小説に初挑戦しているYですが、果たしてこれは読んでて面白いのか、客観的に見る事ができないので不安です…(ΘoΘ;)

    まだまだ長くなるとは思いますが、最後まで頑張りたいと思っています!!

    よろしければ、感想を書き込んでもらえたら嬉しいです♪♪

    読み難い感じなら、アドバイスなんかももらえると助かります(笑)

    では、これからもTIME ∞ LAGをヨロシクお願いします(*^_^*)

    (携帯)
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■19565 / inTopicNo.25)  NO TITLE
□投稿者/ あ 一般♪(1回)-(2007/08/03(Fri) 08:31:40)
    すごく面白いです。
    アドバイスとかはないですが、続きが早く読みたいって思う内容です。
    更新待ってるので、これからも頑張って下さい。

    (携帯)
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■19566 / inTopicNo.26)  感想その2(^-^)
□投稿者/ 希深 一般♪(2回)-(2007/08/03(Fri) 11:35:23)
    2007/08/03(Fri) 11:36:19 編集(投稿者)

    更新早いですね〜(((^^)
    しかも、読みやすい(^^)俺もアドバイスとかは出来んけど、マジ面白い!こげん事言って焦らせたらすみません(((^^;)でも、次の更新楽しみにしてます(^-^)


    (携帯)
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■19567 / inTopicNo.27)  NO TITLE
□投稿者/ れん 一般♪(1回)-(2007/08/03(Fri) 12:47:59)
    めっちゃおもしろいです!!

    続きが気になった仕方ないです(≧∇≦)


    本当に初心者なんですか!?応援してます!!

    (携帯)
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■19569 / inTopicNo.28)  (*´_`*)!!!
□投稿者/ Y 一般♪(24回)-(2007/08/03(Fri) 15:36:00)
    あサン♪

    初めまして!
    感想ありがとうございます☆☆☆
    更新待ってるという言葉、すんごく嬉しいし励みになります(>_<)!
    頑張りますので、また感想聞かせて下さい♪


    希深サン♪

    ありがとうございます!!
    希深さん、九州の方なんですか〜(^O^)?
    頑張ってアップしていきたいと思います♪♪
    また感想聞かせて下さいね!



    れんサン♪

    初めまして(^O^)
    感想ありがとうございます☆
    読みやすいと言って頂けてカナリ安心しました(*^_^*)♪♪
    たまに感想をもらえるとアップする指もはかどります(笑)
    良かったらまたお願いしますね!



    皆さん、本当にありがとうございます(´`●)*・。゜★
    頑張ってアップしていくので、私のデビュー作、どうか最後まで見守ってやって下さい♪

    (携帯)
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■19570 / inTopicNo.29)  - 21 -
□投稿者/ Y 一般♪(25回)-(2007/08/03(Fri) 20:53:07)
    『好きな人が出来た。…らしい。』


    「そう…すか。」


    『全然そんな素振りしてなかったけん、急過ぎて受け入れきらんというか、理解できんでさ。
    一晩考えたけど、考えれば考えるほど頭がおかしくなりそうで、気付いたら家飛び出してた。
    バスケするしかないって。』


    その気持ちは分かる気がする。
    私も小さい頃から、考えたくない事を考えたくない時、ひたすらバスケに打ち込む癖がある。




    今でもそう…




    つか、今日も多分……
    そう。


    「バスケしてる間は、忘れられますもんね。」


    『そうっちゃんねー。』


    「でも、ほんまですかね?」


    『………え?』


    「ほんまに、理由はそれだけなんですかね。」


    『何度聞いても理由はそれしか言わんやった。
    ウチが別れたくないって言っても、もう聞く耳持たないというか…かなり意志は堅かったみたいやけん。

    なんでそう思うん?』


    「いや、特に理由はないんですけど…。」


    私は、一昨日まなみが流した涙を思い出していた。


    声を殺して


    存在ですら消してしまいたいかの様に泣いていたまなみ。


    あの出来事を亜也は知っているのだろうか?


    言うべきかな。


    いや、言わない方がいいと思う。


    なんとなく、直感でそう思った。


    『ま…理由どうあれ、まなみが決めた事やけんね。』


    「もう、諦めるんですか?」


    『潔く受け入れてあげな、あいつが別れに踏み出した勇気を無駄にしてしまうやろ。』


    そんなもんなんかな。


    「難しいですね。」


    『難しかよ。』


    私は立ち上がって亜也先輩の前に立つ。


    「先輩、授業始まりますよ。
    着替えましょ?
    で、また放課後。
    一緒にバスケしましょ。」


    そう言って手を差し出す。


    その手をがっちり握って立ち上がる亜也。


    まだ笑顔は弱いままやけど。


    『もうディゾンにしか見えん!(笑)』


    なんて言えてるだけまだマシなんかな、と思う。


    着替えを済ませ
    それぞれの教室に向かう別れ際。


    あ、そうや。


    『これ、良かったら食べて下さい。』


    朝作った中華料理を詰めた弁当箱を亜也に渡す。


    亜也は一瞬不思議そうな顔をして…
    でも、それを笑顔で受け取り


    『ありがと!
    そう言えば昨日から何も食べとらんやった!ディゾンのおかげでお腹空いた!』


    ディゾンちゃうし。




    まーいっか。

    (携帯)
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■19571 / inTopicNo.30)  おもしろかデス(○´∪`)
□投稿者/ 優貴 ちょと常連(93回)-(2007/08/04(Sat) 00:25:28)
    続き楽しみにしてます!

    私も九州住まいなんで、九州弁で読みやすいです(´艸`)+。゚

    無理なさらず頑張ってください☆

    (携帯)
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■19572 / inTopicNo.31)  - 22 -
□投稿者/ Y 一般♪(26回)-(2007/08/04(Sat) 01:20:34)
    午前中の授業も、珍しく今日は眠くなくて




    奏音が何度も後ろを向いては物珍しそうな顔をして前を向き直す。




    意外と多いもんやねんな…
    心から笑ってない人。




    無理に笑うのは
    心配をかけたくないという思いやりがあるから。




    それは
    どんな人でも、どんな場合でも同じだと思う。




    でも私からしたら




    その人の涙を見るより
    その人が苦しそうに笑う顔を見た方が悲しくなる。




    まなみ先輩も
    亜也先輩も




    素直な心で話し合えばきっともっと違う【終わり】があると思うのに。




    別れという事実は変わらないとしても




    あの2人は
    きっとお互いに一番言いたい事を隠してる気がする。




    言葉がなくても通じ合える仲も素晴らしいとは思うけど




    やっぱり時には言葉にするのも大事なんやろう。




    私が言うのも何やけど




    物分かりが良過ぎるのも、考えもんやな。




    一番大切なものでさえ失ってしまうから。




    窓の外を見ると




    この学校に来た時には満開だった桜が、今はもうほとんど散っていて。




    風が吹くと、下に落ちていた花びらが一度舞い上がり、またすぐに土の上に戻る。




    それを繰り返して




    あの花びらは一体どこに行くんだろう。




    私達は、何度出会いと別れを繰り返したら




    永遠になれるのだろう。




    授業が終わり、部室に向かう途中


    『今日、一日中ずーっと何考えよったと?』


    奏音が隣から見上げて聞いてきた。


    『ん〜…多分答えはどこにもない様な事。』


    そう、きっと正しい答えなんてない。


    『じゃあ。
    その答えのヒント、のんが教えてあげる。』


    何とも意外な答えに奏音を見下ろした瞬間に


    たった一瞬の短いキス。




    その後で


    『愛だよ、愛♪
    世界の平和に必要なのは愛!』


    と言って、スキップしながら【先行ってるね〜】と行ってしまった。




    ツカメナイ。




    でも、あながち
    間違ってはいないかも。




    鞄で鳴った携帯を見ると




    【受信メール】
    差出人:おかん
    件名 :無題

    本文 :昨日はごめん!やっぱりあんたの中華が一番やわ!今日焼肉行くから早く帰ってきや〜!




    埋め合わせのつもりですか?




    一番高い肉食ってやる。

    (携帯)
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■19574 / inTopicNo.32)  優貴サン♪
□投稿者/ Y 一般♪(27回)-(2007/08/04(Sat) 01:43:33)
    ありがとうございます☆

    私も昔九州に住んでいたので、思い出しながら書いてます♪

    九州弁、可愛いですよね(*^_^*)

    仕事の日はノロノロなアップになりますが、気長にお付き合い下さいねo(^-^)o

    (携帯)
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■19575 / inTopicNo.33)  - 23 -
□投稿者/ Y 一般♪(28回)-(2007/08/04(Sat) 02:42:45)
    その日の部活に
    まなみ先輩の姿はなかった




    体調が悪くて早退したらしい




    亜也は、一見普段通りに見えるが
    目が合うと苦笑いを浮かべていた




    家に帰ると、おかんが焼肉に行く気まんまんで待っていた。


    『さ、今日は食べるで〜♪♪
    はよ着替えておいで、チビ♪♪♪』


    おかんは昔から今も変わらずに私の事をチビと呼ぶ。




    そんな当本人は160cmあるかないかだから、こっちから言わせりゃおかんこそチビな訳だが…




    案外、嫌でもない。




    普段生きてて他の人に言われる事ないからね。




    ロンTにデニムのラフな格好にキャップを被る。




    普段フェミニンな格好はしない。




    スカートを履くのは制服だけやし、パンツもデニム地がほとんど。




    ヒールがあるミュールやサンダルもあまり履かない。




    基本スニーカーか低いパンプス。




    だからこの長い長い髪がなければ、きっと結構な確率で男に見られるやろう。




    だから髪は昔から長いままなのかもしれない。




    大阪に住んでた頃は、いつも行く焼肉屋さんがあったけど




    福岡で焼肉屋に行くのは初めて。




    適当に見つけて入るのかと思ったら、乗込んだタクシーでおかんが場所と店名を伝えた。


    『知ってる店なん?』


    何気なく聞くと


    「人に教えてもらってん。」


    と返ってきた。




    少し間をおいて


    『昨日、紹介したいってゆーてた人?』


    と尋ねると


    「まぁな、私も行くのは初めてやねんけど。」


    『へぇ。』




    沈黙になって変な空気が流れる。




    なんだか妙に落ち着かない。




    その時おかんの携帯に着信があり、会話の中で【私らも、もーすぐ着くわ。】と言った。




    え。誰か来るん?




    その疑問が解消されないまま、車は指定された店に着いてしまった。




    おかんは会話を続けながら私に財布を渡し、先に降りてしまった。




    残された私がお金を払い、おかんの荷物も持って降りる。




    辺りを見渡すと、お店の入口付近でおかんが手招きしている。




    その隣には




    見た目、まだ20代といった様な若い男性が立っていた。

    (携帯)
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■19576 / inTopicNo.34)  - 24 -
□投稿者/ Y 一般♪(29回)-(2007/08/04(Sat) 06:07:34)
    焼肉の味は覚えてない。




    ただ、覚えてるのは




    その男と楽しげに話すおかんが




    【自分の母親】とは別人に見えていた事。




    自己紹介をされたけど、名前も年も覚えてない。




    いつもの癖で違う事を考えていて聞き逃した訳じゃなくて




    多分




    聞かない様にしてた。




    別にその男が気に食わなかったとかじゃなくて




    こういう風に…




    いわゆる母親の彼氏と会ったりするのは初めてで




    今までもおったんかもしれへんけど




    どちらかというと
    おかんはそれを隠したがっていたから




    何故、この人には会わせようとまで思ったのかが分からなかった。




    いかにも仕事が出来そうな爽やかな青年。




    何度も笑顔で話しかけてくれたけど




    私は一度も笑いかけてあげられへんかった。




    目を細めるだけの作り笑いさえ出来ひんかった。




    なんやろう、この感情は。




    母親を取られた子供が拗ねてるのか?




    違う。




    【女】である母親を
    初めて知ったショック。




    きっと、両親のSEXを見てしまった子供の気持ちはこんな感じだろうか。




    挙句の果てに
    その会食の後、お金を渡されて先にタクシーで帰らされた。




    きっとあまりにも私が無愛想やったから
    相手の男が気を落としてるんやろう。




    でも、こっちにもそうなったのにはそれなりの事情がある。




    おかんが、今後も家族を…私を巻き込んでその男と付き合っていきたいのなら




    今フォローするべきなのは、あの男より私やと思う。




    つか、そうであってほしかった。




    やけどあの女性は




    【母親】ではなく
    【女】を優先した。




    そうなるのは当たり前なんかな?




    確かに私とあの女性は切っても切れない縁な訳やし、16年そばにいた私とは多少の事で崩れたりする関係でもない。




    多分私は、彼女にとって一番の理解者やと思う。




    せやけど




    いくら血で繋がっていたって




    失うものはある事を知った。




    恋愛とは、こういう物なのか。




    時には家族まで犠牲にするもんなのか。




    世界平和に必要なのは愛だと言った奏音の言葉を思い出した。




    でも、人を苦しめるのも【愛】が存在するからやと思う。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19577 / inTopicNo.35)  - 25 -
□投稿者/ Y 一般♪(30回)-(2007/08/04(Sat) 06:33:31)
    私は本気で人を好きになった事がない




    やから
    おかんとあの男がどれだけ愛し合っているかなんて、言葉にされても分からんし




    今日みたいに態度で示されても分かれへん。




    その感覚自体が、分からないから。




    【母親】だって恋愛するのは自由やと思う。




    むしろうちのおかんは、今まで良く1人で頑張ってきてくれたとも思う。




    陰で支えてくれていた男性はいたのだろうけど、それを私に気付かれないようにしてくれていた事を









    すごく感謝できる。




    私が【愛】に対して無知すぎるんやろう。




    だからこんなに受け入れられないのだろう。




    初めて会わせたおかんにも、きっとそれなりの理由があるんやろう。




    親離れはとっくの昔に出来ていたはずやのに




    いざ子離れされるのを身を持って実感すると




    寂しいものなんやね。




    タクシーを降りる時に届いた一通のメール。




    【受信メール】
    差出人:おかん
    件名 :無題

    本文 :ごめんね。




    ………………なんで罪悪感を感じるんやろ。




    自分の中にあるいくつもの矛盾が
    絡まりすぎて解けない。




    気付いたら




    泣いていた。




    なんで泣いたのかは良く分からない。




    でも、きっと苦しかったんやろう




    解ってあげられない自分が。




    男に負けた自分が。




    愛を知らない自分が。




    ガキな自分が。




    今ここで1人で泣いている自分が。




    何年かぶりに感じた
    涙が頬をつたう感覚。




    最後に泣いた記憶があるのは、小学生の時、初めてばかりのバスケの新人戦で負けた時。




    あの時流した涙の記憶は、もっと体中が熱くなって悔しい気持ちが溢れてきていた。




    でも、今の涙は
    温度がない。




    込み上げてくるものが何なのかも分からない。




    はっきりしているのは




    今、1人でいたくないという事。




    でも、こんな事を思うのも初めてで




    こんな時、誰を求めたらいいのかも分からへん。




    今まで、漠然とした寂しさを感じた時は
    バスケをして無理矢理かき消していた。




    だけど…今は




    人の温もりが、欲しい。




    何もしてくれなくていいから




    ただ、そばにいてほしい。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19578 / inTopicNo.36)  - 26 -
□投稿者/ Y 一般♪(31回)-(2007/08/04(Sat) 07:12:45)
    とりあえず気持ちを落ち着かせる為に




    ベランダに出て煙草を吸ってみたけど




    余計に涙が溢れてむせてしまう。




    携帯のアドレス帳を開いてみたけど




    やっぱり誰に言ったらいいのか




    何て言っていいのか分からなくて




    そのまま閉じてしまった。




    その時




    手元で着信音が鳴る。




    画面を開いて確認してみたけど、知らない番号。




    でも、誰かと会話するだけでも気が晴れるかもしれない。




    『はい。』


    泣いている事がバレない様に、小さい声で出る。


    「颯…?分かるかな?」


    この独特な雰囲気の声。
    優しさと穏やかさと強さを持つこの声は…


    『まなみ先輩ですか?』


    「すごい、良く分かったね。」


    耳元でも人の温度を感じると、止まりかけていたのに…また喉の奥が狭くなって目頭を熱くする。


    やばい
    早く喋らなきゃ。


    『……っ…。
    どうしたんですか?』


    必死に絞り出した声に


    「今、どこにおると?」


    と返って来た。


    『家…ですけど?』


    「家、どのへん?」


    『福岡タワーのすぐ近くです。』


    「そうなんや、じゃあ家から近いったい。」


    『そうなんですか。
    …何で私の番号知ってはるんですか?』


    「のんちゃんに教えてもらったと。
    この間のお礼…したかったけんさ。」


    『そんな、私何もしてへんし…。
    気にしんといて下さい。』


    静かなのに、すごく癒される声


    きっと今私が泣いている事も悟ってくれて、尚且敢えて触れないでいてくれる感じも


    やっぱり年上やな、と実感する


    私の4つ上やもんね。


    「ねぇ、今から少しだけ会えんかいな?」


    『………え?』


    きっと今まなみに会うと、泣いてしまう気がする。


    だけど、今だから


    この人に会いたい、と何故か本能が動いた。


    はい、と返事をしようと思ったら


    「ね、会おうよ。」


    と、もう一歩歩み寄ってくれた。


    『はい。』


    「実はね、今福岡タワーの下におるっちゃけど、出てこれる?
    用意してからでもいいよ、待っとーけん急がんでいいけんね。」


    何でもう着いたんやろ?


    まぁ…いいや。


    『いや、すぐに出ます。』


    そう告げて電話を切ると、焼肉の匂いがする服を着替えて、泣いてた事がバレへん様に、深くまで被れるキャップに変えて向かった。

    (携帯)
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■19579 / inTopicNo.37)  - 27 -
□投稿者/ Y 一般♪(32回)-(2007/08/04(Sat) 08:50:28)
    福岡タワーに着いて周りを見渡してみたが、それらしき人が見当たらない。




    電話をかけようとすると、短い車のクラクションの音がして




    振り向くと、その車の運転席の窓からひらひらと手を振って笑っているまなみが乗っていた。




    車…?
    あ、そうか、4つ上やった。




    小走りで駆け寄ると、乗って?と助手席を指差した。




    乗込むと、いつもつけてるまなみの香水の匂いがした。




    何かしらんけど、人のそばにいる事に、やたら安心している自分がいた。


    『早かったね。』


    「先輩こそ。」


    『実はね、海が見たくて1人でドライブしとったんよ。』


    「そうなんですか。」


    『で、何故か颯の顔が見たくなってのんちゃんに番号聞いてかけたと。
    で、そしたら何故か颯が泣きよったと。』


    「…………。」


    『バレバレだよ、お姉さんには。(笑)』


    「5〜6年ぶりなんです。」


    『そっかぁ。』


    まなみは車のエンジンをかけて


    『どこに行きたい?』


    と聞いてきた。


    「福岡のこと、まだ分からないんでお任せします。」


    そう言って、シートベルトを締める。


    『じゃあ、ちょっとブラブラ走ろっか。』


    ゆっくり動き出した車は、広い道を抜けて行く




    しばらくお互いに何も話さないまま窓の外の流れる景色を眺めていた。




    やがて何色何通りにも光る大きな観覧車が見えてきた所で、車は止まった。




    その観覧車を見つめるまなみの遠い目から




    なんとなく、そこが特別な場所である事は分かった。




    『そう言えば。

    大丈夫ですか?体調。
    今日、体調悪くて早退したって聞いたから。』


    「あぁ…うん、ありがと、もう平気。
    軽い発作やけん。」


    『発作…?
    どこか悪いんですか?』


    「うん、心臓がちょっとやんちゃなんよ。」


    そう言えば、亜也先輩が朝言ってたな
    体調崩して留年してるって。


    『そうですか。
    無理はしないで下さいね。』


    「無理か…
    できたらいいのにな。」


    『できたとしても、しんといて下さい。』


    「はぁーい…。

    あんね、私、留年しとるっちゃん。」


    『…はい。』


    「しかも3回も。」


    『はい。』


    「あれ?何で驚かんと?!」


    知らんかったフリするべき?


    いや。


    『知ってたんで。

    今日の朝、亜也先輩に聞いて。』

    (携帯)
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■19580 / inTopicNo.38)  - 28 -
□投稿者/ Y 一般♪(33回)-(2007/08/04(Sat) 10:15:47)
    亜也の名前が出てから
    しばらく沈黙が続いて


    『どこまで…聞いたと?』


    と聞かれたから、今日の朝の出来事を
    思い出せる限り話した。


    亜也先輩から聞いた話も


    それを聞いて私が思った事も。


    まなみは最後まで黙って聞いていて、私が全てを話し終えた後


    『そっか。』


    と消え入りそうな声を漏らし、ハンドルに頭を伏せて肩を震わせていた。




    元々華奢な体を更に小さくして




    また、声を殺して泣いていた。




    背中をさすってみると




    声をあげて泣いていた。




    ひとしきり泣いて
    息が落ち着いた頃




    『また泣いちゃったよ。
    亜也の前じゃ、今まで一度も泣けんやったのにね。

    てゆーか…今日は颯を励ましに来たのに。
    ごめんね…すぐ泣く先輩で。』


    「素直に泣いてくれる先輩で良かったです。
    美帆いわく、私空気みたいな存在らしいですから。
    先輩が私で息できるんやったら、いつでも呼んで下さい。」


    『颯って…すごかね。』


    「何もすごくないですよ。」


    『よし、移動しよう!』


    車が走り出す。


    福岡タワーの近くまで戻ってきた所で、車を駐車場に入れ、歩いてすぐの砂浜まで来た。


    煙草を吸おうと思ったらもう入ってなかったので




    まなみにちょっと待ってて下さいと言って、近くのコンビニまで買いに行った。




    4月の夜の海は少し肌寒かったので
    煙草と、温かいコーヒーを二つ買って戻った。




    体冷えたらあきませんから、とコーヒーを渡すと




    彼氏みたい、と笑っていた。




    そのコーヒーを2人で飲みながら




    ゆっくり波が打つ音をBGMに




    他愛もない話を沢山した。




    まなみが引き出してくれたかの様に
    気付くと私は今日の出来事や複雑な想いも話していた。




    口に出している内に
    何となく心の整理もついてきて




    暗くて広い海を見ていると、なんだかすごく小さい事の様な気がしてスッキリした。




    自分の事を人に話すのは、初めてだったけど




    まなみが優しい目で
    優しい声で聞いてくれていたから




    安心しきっていた。




    そして、静かにまなみが私の手を取って


    『颯の番だよ。』


    と呟いた。


    その手はとても温かくて、涙は自然と出て来た。


    今度の涙には
    温度があった。




    (携帯)
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■19581 / inTopicNo.39)  - 29 -
□投稿者/ Y 一般♪(34回)-(2007/08/04(Sat) 11:08:42)
    手に汗をかく位、ずっと握られたままの手。




    涙が引いても離れる事はなかった。




    煙草に火を点けると


    『私にも一本ちょうだい。』


    と言ってきた。


    「体の事知ってもーたんで、無理です。」


    と言うと、頬を膨らませていた。


    『煙草、吸ってはったんですか?』


    と聞くと


    『煙は好きじゃないけど、味は好き。』


    と返ってきた。




    味なぁ…。
    苦いもんが好きなんかな?




    吸い終わって、コーヒーを飲もうとすると


    『颯、それ飲むのちょっと待って?』


    と手を止められた。




    え?
    と思った瞬間―




    まなみの柔らかい唇が私の唇に重なる。




    奏音とは違う




    長い、長い、大人のキス。




    気付くと、まなみはあぐらをかいていた私の膝の上に乗っていて




    両手は私の首に回されている




    ビックリしてはいるけど




    気持ち良くて、唇が離せない。




    こんなに気持ちいいもんなんや、キスって。




    でも多分これは




    お互いに心を開いているからだろう。




    どの位の時間そうしていただろう




    2人の息が少し切れる位。




    一瞬離れてはまた勝手にくっついてくような、不思議な感覚やった。




    暗くてお互いの顔は良く見えなかったけど、きっと今、すごく照れた顔をしてるんやろう。




    いわゆるディープなキスをしたのは初めてでもないのに




    生きてきた中で、多分今が一番ドキドキしてる。


    『やっぱり煙草の味、おいしい。』


    と言って笑うまなみを




    無償に抱き締めてみたくなって、手を背中に回して力を入れた。




    まるでそれに応じるかの様に、まなみも私に回した手に力を込めて、しがみつくように首に顔を埋めた。


    『分かった。
    颯に足りないのは心の温度だったんだよ。

    今、颯の心温かい?』


    「うん、めっさ温かい。」


    『良かった…
    私も、ばり温かいよ。』




    愛しい、というのはこういう事を言うんやろうか。




    離れたくなかった




    離したくなかった




    満たされていた。




    永遠に今が続けばいい。






    (携帯)
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■19582 / inTopicNo.40)  - 30 -
□投稿者/ Y 一般♪(35回)-(2007/08/04(Sat) 11:50:46)
    帰り際


    『気をつけて。』


    と言うと


    『もう一回キスして。
    明日まで、颯が私を忘れんように。』


    色気が漂うお姉さんから、こんな可愛い台詞が出て来るのはズルイ。




    不覚にも一瞬
    男ゴコロらしきものが理解できた私、どないやねん。(笑)




    そんなに長くもないけど、心が通うのを感じる事ができる熱いキス。


    『誰に習ったん?』


    と意地悪な顔をして私を見るまなみ。


    「先輩にさっき。」


    と言うと、幸せそうに笑っていた。




    今までみたまなみ先輩の笑顔の中で、一番綺麗やった。




    車に乗り込もうとした時、もう一度まなみはこっちを向いて


    『また明日。おやすみ。』


    と私の目を見て言った。


    『また後で。』


    と返すと、朝練遅刻しちゃいかんよ〜と言って帰って行った。




    まなみの車が見えなくなるまで目で見送ってから、私も家路につく。




    帰ってきた自宅では、さっきと何も変わらずに1人やけど




    何ていったらいいかな。




    言うならば、世界の色が変わったと言うか




    さっきまであんなに理解できずに苦しんでいた【愛】が、今なら少しだけ分かる気がした。




    具体的に言うと
    好きではなかったスキンシップが、人によって…心によっては、こんなに気持ち良くて、幸せなものなんだと分かった。




    冷静に考えたら
    相手は同性やし
    まなみはまだ亜也の事が好きで、亜也もまなみの事が好きなんやろうけど
    今日の事がまなみにとっては寂しさを紛らわす気紛れだったとしてもいい



    ぶっちゃけ
    今の私にはそんな事関係なかった。




    【初恋】




    そう、きっと
    あなたが私の初恋の人。




    生まれて初めて、心が躍るような恋をした日。




    煙草を吸ったら




    さっきのキスを思い出した。




    明日まで私を忘れない様に。




    そう言って交わした今日のキスが




    明日どころか
    一生忘れられないキスになった。




    寝る直前に、おかんにメールを返信した。




    【送信メール】
    宛名:おかん
    件名:Re

    本文:こっちこそ。あの人にも謝っといて。




    【送信完了しました】




    今日はいい夢が見れそうな気がする。

    (携帯)
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