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『もう、ダメだ。』
お昼頃に、奈々を呼び出し、ランチを食しながら、弱音を吐いた。
「あら?まだ二日目じゃない?」
奈々はパスタをフォークに巻き付けながら、返答する。その目は楽しそうで、私をからかっている目でもあった。
『確かに似ている。つか似ているレベルじゃなくて本人だと思いそうになる。』
「あら、尚更良かったじゃん?会いたがってたんだから」
『傷口に塩を刷り込む奴だなぁ』
「荒治療かもしれないわね。でも、チカは朱美の死に捕われすぎだわ。何年も前に逝ってしまった朱美は、チカが悲しんでいる姿を見たくないと思うわ」
『わかっている…けど、朱美は私の青春であり、最愛の人だった。愛里はいい子だけれど…朱美じゃない。愛里と付き合えたとしても、私は愛里の中に朱美を見るだろう』
それは、とても失礼であるし、そんな私と付き合う事すら嫌がるだろう。
「今までの子猫は無条件で抱いて、朱美似の愛里は無理。じゃあ今までの子猫には失礼ではなかったの?」
確かに、自暴自棄になっていた私はたくさんの女を抱いた。
それ相応に愛していたつもりだった。
でも、心はいつも朱美を求めた。
『失礼だったな』
「だったら、償いとして愛里を幸せにしなさい?愛里を守ってあげて?」
奈々は愛里について、教えてくれなかった。
知人の娘、大学生、ハタチ。
たったこれだけの情報しか得られないのに、どう幸せにすればいいと言うのか。
だったら、本人に直接聞くしかない。
そんな勇気、私は持ち合わせていない。
それが出来たら、朱美に告白だってすぐに出来ただろう。
(携帯)
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