| (愛美ちゃん…)
声無き声で彼女の名前を呼ぶと、何度目かの白い息が、はぁーっとモクモク出て空へと消えていった。 今の私の想いみたいだなー…
名前を呼んでも気持ちまでは届かない
切ないとか、大好きだとか…
たくさんの言葉を頭の中で拾い集めて、手のひらの隙間から流れる想いを ただじっとみているだけの刹那
「クリーム、そろそろ家に帰ろーか?」
(なんだぁ…もう帰っちゃうのかぁー…)
真っ赤なパーカーに身を包んでいる愛美ちゃんは毎朝二時間、体を鍛える為に走り込みをするという。 傍らには必ず、愛犬のクリームと一緒
黒くて長い髪を結び直すその姿にキュッと心が縛られる時が大体、愛美ちゃんがお家に帰るのと一緒で 青い短パン、パーカーの下のTシャツ、流れる汗、クリームに笑いかける時の笑顔
それら…ううん、もっともっといろんなもの全部が、私が愛美ちゃんに対する友達の部分の感情を持ち去るみたいに愛美ちゃんは公園を後にする。
(うー…)
マフラーに隠れる私の今の表情を絶対、愛美ちゃんに見せちゃダメなんだ
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