| 2008/06/18(Wed) 01:02:02 編集(投稿者)
夜の音が、湿り気を帯びた優しい音色が聴こえてくる。 目の見えない私にも分かる、目が見えない私だから分かる。 人にはそれぞれ、その人にしか奏でる事のできない音色がある事を、私は知っている。彼女の音は、色で言うと濃い青。六月の雨を降らす夜の青。しとしと、しとしとと、春と離れ離れになった悲しみを夏に伝えて尽きる事のない涙を流す。 その涙の一粒一粒を愛おしむ様に眺めていたあなただから。 春でも夏でも秋でも冬でもない、この季節を彼女はこよなく愛した。そして私も、彼女を愛する様にその季節を慈しんだ。昔も、今もである。
何故なら彼女は、この季節にしか生きられないのだから。
(携帯)
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