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あの告白から月日は流れ、あっという間に半年が経った。 学校祭は大成功を収め、学校祭の終了と同時に委員会は解散した。 しかし、自分と彼女との関係は、あの日から変わっていった―――――
『琴音!私今日放課後寄りたいところがあるんだけど、いいかな?』
『いいわよ、予定は何もないし・・・・でも海、部活は大丈夫なの?』
『大丈夫、今日顧問の先生が出張だかで、部活休みだから!琴音こそいいの?』
『合唱部も今日は練習が休みなのよ、奇遇ね』
『じゃあ遅くならないねー』
あれから琴音のお望み通り、2人の距離はぐっと近づいた。 一緒にお昼ご飯を食べるようになり、放課後や休日も一緒に過ごすようになった。 深く付き合ってみると、琴音が付き合いやすいことに気が付いた。 お嬢様育ちのくせに、全然お嬢様らしくない性格や振る舞いなのだ。 まあ、言葉遣いはお嬢様らしい口調が定着しているようだけど。 琴音と過ごす時間は楽しくて、いつもあっという間に過ぎてしまう。
終礼が終わるのと同時に、琴音と一緒に教室を出た。 お嬢様なのに車で送り迎えなどはしていないので、気軽に寄り道が出来る。 琴音と一緒に近くのお気に入りのクレープ屋さんでクレープを買った。 いつも通り、自分はチョコバナナ、琴音はストローベリー。 食べながらお喋りをし、ゆっくりと歩き、目的地に向かう。 もうすっかり冬を迎えた外は寒くて、コートとマフラーが必須だ。 2人して白い息を吐きながら、寒いね、と言い合った。
『そういえば、どこに行きたいのか聞いていなかったわね』
『今日はね、洋服を見たいの』
『ならいつものところかしら?』
『うん、そうしようと思ってるー』
いつも琴音と行く洋服の店、『JACK』は、世界的に有名なブランドだ。 ブランドといっても学生のお客がほとんどの、リーズナブルなブランド。 3点セットで3000円などと、利益が心配になるほどの安さで売っている。 今から行く支店の『JACK』は、自分の母親の知り合いが店長を務めている店だ。
建物の3階にエレベーターで行き、1番奥の赤を基調としたブースにまっしぐら。 『JACK』のイメージカラーは赤で、全店舗赤を基調とした店内なんだそうだ。 夕方というのもあって、ブース内はそれなりに女性たちで賑わっていた。
『あら海ちゃん、琴音ちゃん!来てくれたのね!』
茶色く染めた髪を頭のてっぺんでお団子にし、フェミニンな服装をした店員。 母親の知り合いで秋からこの支店の店長になった、大津里佳子さんだ。 よく見ると、綺麗に整えられた縦に長い爪も、ピンクと白で飾られている。
『こんにちは、今日は里佳子さん、フェミニンなんだね!』
『そうなのよー、ちなみに昨日はロックにキメたわ』
『JACK』は様々な洋服を売っているため、一通りのジャンルの服は買える。 ロックでもカジュアルでもフェミニンでもなんでも売っているのも魅力の1つ。 『JACK』の服を着て接客している店員の服装のタイプも様々だ。
『さて、今日はどんなお洋服をお探しかしら?』
『今日は―――――』
自分が欲しい洋服のイメージを伝えると、里佳子さんはすぐさま選んでくれた。 一目見て気に入ったのでさっさと試着を済ませ、お会計を済ませる。
『ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております』
数人の店員の声をバックに、2人は『JACK』のブースを出た。 歩きながら、琴音があ、と小さく声を漏らした。
『どうしたの?』
『そういえば化粧水がもう少しでなくなるんだったわ、寄ってもいいかしら?』
『全然構わないよ!』
2階に降り、琴音は化粧品のコーナーで化粧水とマスカラを購入した。 新色のマニキュアが発売されていて、買うかどうか迷っていたがやめていた。 それぞれ買い物を済ませた2人は、同じく2階のカフェに向かった。 そして2人とも温かいカプチーノを注文し、身体を中から温める。
『今日は久しぶりに一緒にお買い物が出来て楽しかったわ』
『うん、私も楽しかったよ、最近部活の練習ばっかだったし』
『そうよね・・・・また明日から頑張りましょう』
そんなやり取りをして、2人は別れた。
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