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栞はここ数ヵ月、毎晩出会い系サイトを見て回るのが日課になっていた。 どうしても彼氏が欲しいとか、両親に急かされているというわけではない。 彼氏が欲しいと思わないこともないけれど、ネットで探すのはハイリスクだ。 慎重なところがある栞は、そんなリスクを冒してまで出会いを求めたくなかった。
時々、多少興味をそそられる募集記事を目にすることはある。 しかし、栞が彼らにメールを送ることは今まで1度もなかった。 いつも「あ、この人、いい感じの人だな」で終わってしまうのだ。
今夜も最近と同じように、晩ご飯もお風呂も終えてからパソコンを開く。 そして、いつも見ているサイトを見たり、リンク先に飛んだりした。 今日も今日とて、栞にメールを送る気を起こすような人はいない。
(・・・・ん?)
それは、サイトからサイトへと飛んでいる途中で見つけたリンク。 サイトのタイトルを見ると、栞が今まで見たことがないサイトのようだ。 色々なサイトを見て回っていたので、まだあったのかと少し驚いた。 まあ最近ではネット上の婚活も活性化しているようだし、不思議ではない。 栞はそのまだ覗いたことがないサイトのリンクを・・・・クリックした。
(えーと・・・・・)
随分可愛らしい感じのサイトの内装だな、と思いつつ、とりあえず見て回る。 友達を募集するところがあったので、まずはそこをクリックしてみた。
(!?)
栞は、そこに投稿された出会いを求める募集記事を見て驚いた。 『男性・ネカマお断り』という言葉が、高確率で並べられていたから。 よく読んでみると、出会いを求めている人は、全員が女性のようだ。 ・・・・女性が女性との出会いを求めているサイトだったのだ。
(これって“レズ”とかいう人たちの出会い系・・・・?)
栞は同性愛者ではない・・・・というより、女性との恋愛経験がない。 過去に女性を好きになったことはないし、反対になられたこともなかった。 少なくとも女性同士の告白やキスやそれ以上のことは、一切したことがない。 このサイトだって、リンクから飛ばなければ知らなかっただろう。
(どうしよう・・・・)
引き返した方がいいのかどうか迷いながらも、募集記事を読む。 そこでは、さまざまなタイプの女性が出会いを求めていた。 フェミニンな人、ボーイッシュな人、カジュアルな人・・・・。 いくつかの分からない単語があったが、調べて理解した。 彼女たちには彼女たちなりの世界や価値観があるのだろう。
(こんな出会い系もあるんだ・・・・)
男性同士の出会い系サイトがあるというのは、友達から聞いて知っていた。 でも、女性同士の出会い系サイトがあるというのは、初めて知った。 まあ私生活ではなかなか出会いがないだろうから、あってもおかしくない。 若干男性が苦手な栞には、そのサイトはどこか居心地がよく感じられた。
その日は友達を募集するところだけを見て、眠りについた。 ・・・・そのサイトを、お気に入りに登録して。
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