| 2015/01/03(Sat) 00:04:54 編集(投稿者)
第1話
桜の開花。 ウグイスの鳴き声。 暖かい陽光。
春の訪れを肌で感じる3月下旬。
私、神崎めぐみは心を躍らせていた。
恋人との待ち合わせ。 駅近くのオシャレなカフェ。
浮き足立って、 30分も早めに来たのは秘密。
「先生、まだかなー」
口元が緩む。 今日は彼女との久々のデート。
「めぐみ、おまたせ」
黒髪ロングに白い肌。
ベージュのトレンチコートを身にまとい、 彼女は颯爽と現れた。
彼女の名前は桜木唯子。
私の家庭教師、だった。
ーーというのも、 彼女は念願叶って教職の採用が決まり、 4月から私と同じ高校で働くこととなったのだ。
「先生と最近会えなかったから、 今日が待ち遠しかったの」
喜ぶ私をよそに、 先生は無言で席に腰を落とす。
「もうすぐ先生と学校で会えるなんて、 考えただけでもドキドキするね」
「そうね…」
「あ、ちゃんとバレないようにするから!」
「うん…」
「これから受験勉強も始まるけど、 たくさん先生とイチャイチャしたいな」
「……」
彼女は目線を静かに下に落とす。
沈黙が続く。
私はこの時、 彼女の異変にようやく気付いたのだ。
「…どうしたの、具合でも悪い?」
「めぐみ、話したいことがあるの」
彼女は息を飲み、視線を私に戻した。
馬鹿でも分かる。
この雰囲気。
フ ラ レ ル ン ダ。
頭の片隅で警報が鳴った。
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