ビアンエッセイ♪

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■21960 / inTopicNo.1)  ギターを弾く女
  
□投稿者/ いちこ 一般♪(5回)-(2015/06/28(Sun) 16:03:12)

    ケイコは、中小企業のOLだ。
    ケイコは落ち込んでいた。仕事でミスが
    重なり、上司にひどく叱られたのだ。
    仕事が終わり、帰りの途についても、
    まだ引きずっていた。
    改札を出て交差点の前で、信号が変わるのを
    待っていた。頭の上からは、電車がやかましく
    通り過ぎる音が降ってくる。
    この交差点を渡り、500mほど歩くとアパートに着く。
    「はぁ〜〜。」と溜息が漏れる。
    やがて信号が変わり、歩行者用信号が
    急き立てるように鳴り出した。
    周りの人たちが、ケイコを残して渡り出す。
    なんとなくこのまま帰りたくなかった。
    ケイコは踵を返し、駅裏へ歩き出した。
    別に呑みに行きたいわけじゃなかった。
    女ひとりで、居酒屋に入れるほどの根性はない。
    ただ、歩きたかった。でもすぐに後悔した。
    呑み屋の多い駅裏は、酔っぱらいも多かった。
    女ひとりは珍しいのか、ジロジロ見られた。
    いやだなぁ〜。
    前から運動部系の学生数人の酔っぱらいが来た。
    大きな声で笑ったり話したりしている。
    その内のひとりがケイコに気づき、
    隣りの仲間になにか喋った。
    思わず立ち止まり横道を探したが、なかった。
    彼らはあきらかにケイコを見ながら近づいてくる。
    逃げるように、すぐ横の木のドアを開けていた。
    そこは小さなライブハウスだった。
    これから始まるようで、ステージの前には
    数人の女の子達がいる。
    ネクタイをしたサラリーマン風のおじ様達もいた。
    ケイコはソルティードッグを注文して待った。
    やがてその人がギターを持って登場した。
    おんな?オトコ?
    前の女の子達が歓声をあげる。
    パラパラと拍手があった。
    黒髪に白いメッシュの入ったベリーショートヘアー。
    穴の空いたスリムジーンズ、よれたTシャツに革ジャン。
    その人はあいさつもせずに、ギターを弾きだした。

    いきなり音の洪水がケイコを包む。
    すごい‥‥音楽には詳しくないが、
    素人目に見ても凄さは感じた。
    とてもひとりで弾いているとは思えない。
    やがて激しい一曲目が終わり、一転して
    静かな曲が始まった。
    その時、その人と目が合った。
    ケイコの胸の奥でズキッと痛みが走った。
    弾きながらも、その人は目を逸らさない。
    ケイコも視線を外せなかった。
    そしてハスキーヴォイスで歌う。
    あっ!‥‥ギターの音とハスキーヴォイスが
    素肌に直接しみ込むような感覚があった。
    身体の中心が熱を持つのが感じた。
    ラブソングだ。
    英語なので歌詞は正確には解らないが
    ケイコはそう感じた。

    その人は圧倒的なテクニックで五曲ほど
    演奏して、やはり挨拶もなく、さっさと
    袖に隠れた。
    しばらく呆然としていたが、名前も解らないことに気づいた。
    店を出て、表のポスターを確かめると
    ライブスケジュールが貼りだしてあり、
    今日の欄に

    『アッシュ』

    とだけ書かれている。
    「女か男かわかんないじゃない!」
    思わずつぶやくと、背後にアルコールの
    臭気がした。
    いつの間にか、酔っぱらいのおじさん達がいた。
    「ねえちゃん、かわいいねぇ。これから
    一緒に呑まないかい?」
    「ごっ、ごめんなさい。待ち合わせしてるの。」
    「また、またぁ〜。‥‥いてっ!」
    おじさんを突き飛ばして、『アッシュ』がケイコの前に立った。
    「走るよ!」
    アッシュはケイコの手を取り、走り出した。
    アッシュの手は意外に小さく、
    とてもあんな演奏ができるとは思えなかった。
    踏切の高架下まで、一気に走った。

    ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥

    荒い息を整えながら、アッシュが言った。
    「僕、おんなだよ!」
    そして、強引にケイコを抱き寄せ、くちづけた。
    「えっ‥‥んん〜。」
    首すじにもキスをする。
    「あっ‥‥いやっ、やめて!」
    思わずケイコはアッシュを突き飛ばしていた。
    頭の上を電車が轟音とともに通り過ぎていく。
    ケイコは、逃げるように走って帰った。

    続く












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■21964 / inTopicNo.2)  ギターを弾く女2
□投稿者/ いちこ 一般♪(6回)-(2015/07/02(Thu) 23:25:27)

    アパートに戻っても、激しい動悸が続いていた。
    「どうしてあんな、あんなこと!」
    首すじが、熱い。
    用を足すためにトイレに入って、ケイコは愕然とした。
    あっ、まさかそんな?!
    下着を下ろしたら、ソコが糸を引くほど濡れていた。

    ケイコは『アッシュ』について調べてみた。

    超絶ギターテクの女性歌手であること。
    ケイコより2歳若いこと。
    デビューして2年経つが、ぱっとしないこと。
    音楽のジャンルはブルースであること。

    あまり情報がなく、この程度だった。
    ケイコは次の日、あのライブハウスにいた。
    自然と足が向いていた。今日も出演するはずだ。
    昨日と同じく激しい曲のあと、あのラブソングが始まった。
    ケイコはアッシュの視線を待った。
    しかしアッシュはちらっと見ただけで、
    すぐにギターに集中した。
    ケイコはひどく傷ついている自分に驚いた。
    バカみたい。これではまるで恋する乙女ではないか?
    自分より年下で、しかも女性なのに。
    ライブが終わっても、しばらく動けなかった。
    いい大人が、なにをしているのだろう?
    溜息をついて出口へ向かう。
    出口の横にアッシュがいた。
    腕組みをして壁にもたれていた。
    目を合わせないよう、出ようとしたら、
    アッシュに腕を掴まれた。驚いて振り向くと
    「昨日はごめん!お詫びに飯を奢るよ!」
    と言って、アッシュはさっさと歩き出した。
    一度も振り向かないアッシュに、少しむっとしながらも、
    ケイコは大人しく付いていった。
    アッシュは呑むと饒舌になった。
    自分のことを「カズミ」と名乗った。
    ケイコは思わず吹き出した。あまりにも
    イメージと違ったからだ。
    二人で自分の名前の不満を言い合った。
    そしてアッシュは唐突に、ケイコの目を見つめ、
    「ねぇ、一目惚れって信じる?」
    と欲望にギラついた目でケイコを見た。
    女の子に求愛されたのは、初めてだったが
    ケイコは舞い上がった。

    女の子の一人歩きは危ないからと、
    アッシュは年下のくせに言い張った。
    でも部屋に誘ったのは、ケイコだった。
    そして靴を脱ぐ前にケイコは抱きしめられ
    キスをされた。
    今度はもう抵抗しなかった。

    続く








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■21965 / inTopicNo.3)  ギターを弾く女3
□投稿者/ いちこ 一般♪(7回)-(2015/07/05(Sun) 13:27:39)

    アッシュとのセックスは、オトコとのそれに似ていると
    ケイコは感じた。身勝手で傲慢だと。
    でも決定的に違うのは、相手が女だということ。
    当然 女の身体を知り尽くしている。
    アッシュはケイコを楽器のように扱った。
    アッシュは、キスをしながら器用にケイコを素裸にした。
    ベッドに押し倒すと、楽器をチューニングするように
    両手と口で身体中の性感帯を調べられた。
    それからおもむろにケイコという楽器の演奏を始める。
    ケイコはアッシュの望むまま、声を上げさせられ、
    ほとんど強制的に何度もイカされ、
    ケイコがもう許してと懇願しても、
    自分が満足するまでやめなかった。
    アッシュが自分のソコとケイコのソコを
    合わせて動き始めた時、ケイコは痙攣していた。
    身体中いたるところに、キスマークを付けられ、
    ビクンビクンと痙攣しているケイコの耳元に口を寄せ
    アッシュは
    「ありがとう。またね!」
    と言って出て行った。
    ケイコは起き上がることもできずに
    ドアの閉まる音を聞いていた。

    それからアッシュは、たびたびケイコのもとを訪れた。
    セックス以外は優しいので、ケイコは惹かれていった。
    やがて「カズ」「ケイ」と呼び合う仲になったが、
    ふたりの間でアッシュの音楽の話は禁句だった。
    素人は、黙っててほしいとはっきり言われた。
    アッシュにとっての聖域なのだ。

    そんなある日、アッシュは曲づくりに行き詰まり、
    モヤモヤを抱えたままケイコのもとを
    訪れた。
    ケイコはアッシュのために食事の準備をしているところだった。
    いきなりアッシュは襲いかかった。
    「いやっ、ねぇ‥‥しっ、食事をしてからに。」
    「イヤだ。まずケイを食べたい!」
    後ろから抱きしめて、首すじにキスをした。
    「だめっ‥‥やめて‥‥あぁ。」
    右手はたくみに乳首を探り当て、
    左手は下着の下に潜り込み、クリを探し出し、
    同時に摘んで引っ張った。
    「かはっ‥‥くぅ‥‥」
    こうなるとケイコはアッシュのなすがままだった。

    数十分後、ケイコはキッチンの床を大量の潮で濡らし、
    へたり込んでいた。
    ぼんやりと拭き掃除しなきゃとケイコは思っていた。
    「まだだよ!もっと食べたい!」
    アッシュはケイコをベッドに連れていき、
    身体中にキスの雨を降らせた。
    ケイコに抗う気力は残っていなかった。
    アッシュはケイコの身体中の水分を
    絞り尽くすように貪った。

    アッシュは満足すると、ケイコの作った食事に手もつけず、
    さっさと着替え、出て行こうとした。
    「カズ、待ってよ!」
    ケイコは重い身体を起こし、声を絞り出した。
    「えっ‥‥」
    驚いてアッシュが振り向くと、
    まだ少し痙攣している身体でヨロヨロと
    立ち上がろうとしてよろめくケイコ。
    慌てて手を出したアッシュに
    「触らないでっ!!」
    とヒステリックに叫んでいた。
    ケイコは怒ったいた。

    続く











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■21966 / inTopicNo.4)  ギターを弾く女4
□投稿者/ いちこ 一般♪(8回)-(2015/07/11(Sat) 19:04:30)

    「カズは、あたしの身体だけなの?
    いい加減にしてよっ!」
    「そっ、そういうわけじゃ。」
    「だいたい、自分勝手なのよっ。
    見える所にキスマークつけないでって言ったよね。
    それに私だってカズに触りたいよ。愛したいよ‥‥、
    カズのライブだってそうだよ。」
    これ以上、言ってはダメとケイコの頭の中で警告音が鳴ってる。
    でも、もう止まらなかった。
    「自分の曲を、好きなように演奏して
    聴衆はおいてきぼりよ。カズの演奏は
    そりゃすごいよ。でも無理矢理なのよ。
    聴いている人のこと考えたことある?
    ないわよね。いつも挨拶もしないじゃない?
    あなたの演奏はマスターベーションよ。」
    言っているうちから、アッシュの顔が
    みるみる怒りに赤くなってゆく。
    アッシュが一歩踏み出した。
    「きゃっ」
    ケイコは思わず屈み込んだ。

    でもアッシュは黙って出て行った。

    それきりアッシュは消えてしまった。
    あれからケイコは、連絡の取れなくなった
    アッシュをあらゆる方法で探したが、
    見つからなかった。
    ケイコは、きっちり一週間泣き続けた。
    それから少しずつ笑顔を取り戻していった。
    カラ元気だったが、笑顔でいると何人かの男が言い寄ってきた。
    でもケイコは誰とも付き合う気はなかった。
    どうしても彼女のことを忘れることが
    できなかった。
    どうしても、どうしても、どうしても
    忘れることができなかった。

    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

    アッシュが居なくなって一年が経とうとしていた。
    ケイコには生きている実感がなかった。
    そんな時、ケイコの元に一枚のエアメールが届いた。
    差出人の欄には『Kazu』と書かれていた。
    ケイコは封を開ける前に泣き崩れてしまった。
    中にはSDカードとメモが一枚。
    メモには『PASSWORD Kei's birthday』と書かれていた。
    「覚えててくれたんだ。」
    ファイルを開いてみると、カズがアパートの一室で
    ぎこちない笑顔で写っている。
    『ケイ、元気ですか?突然居なくなってゴメンね。
    あの時言われた言葉、正直傷つきました。
    でも冷静になると、その通りだと思いました。
    そこで一からやり直すことにしたの。
    あれから単身、ギターだけ持ってニューヨークへ渡りました。
    別れの挨拶でケイのアパートまで行ったけど、
    ケイの顔を見たら、くじけそうだったから、黙ってきちゃった。
    まずストリートライブから始めたの。
    運も良かったと思うけど、今のブロデューサーと出会えて、
    そしてなんとこちらでデビューが決まりました。
    やったね!』とガッツポーズをしてる。
    『それで、◯月◯日の◯時着の便で
    ブロモーションのため日本に帰ります。
    もしも、もしもケイにステディがいなかったら、
    成田に来て欲しい。
    来なかったら、二度と連絡しません。
    ケイと愛し愛されるエッチがしたい。
    来てくれることを願ってます。』
    「ばかぁ、なに言ってるのよ!もう。心配したんだから!」
    顔を赤らめながら、泣き笑いするケイコだった。








完結!
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