| あたし達はスクランブル交差点で、信号待ちをしていた。 信号が変わり、そのひとはあたしの手を引き、歩き出す。 交差点の真ん中で突然立ち止まり、振り向く。 ドキッとするあたしの目を見詰め、顔を近づける。 ‥えっ、こんな所で?‥‥恥ずかしい‥
ジリリリ‥ジリリリ‥ジリリリ‥
遠くで目覚ましが鳴っている。 へっ、目覚まし!?えっ、ヤバイ。 アイは慌てて飛び起きた。さっきの夢で、まだドキドキしている。 「あれは誰だったんだろう?」 まぁいいか。さぁ、今日も仕事だ、頑張ろう! アイは出版社に勤める25歳、独身。 出版不況のためリストラ寸前。嫌がらせで左遷されたばかり。 なんとエロ本出版部門。『月刊エロエロ』センスの欠片もない。 負けるもんか!
出社すると、いきなり編集長に呼ばれた。 「おい、ユミ先生とこに行って原稿もらってこい。貰うまで帰って来るなよ。」 ユミ先生とは、女流エロ漫画家。 その過激さゆえ、髭が生えていると噂がある。 ちょっと怖いな。
おそるおそる呼び鈴を押すと 「はーい!どちらさま?」 「あ、あの『月刊エロエロ』のものですが。」 あ〜恥ずかしいー! 「あー、どうぞー!」 「失礼します。」 「いらっしゃい、今度は女の子でよかったわ。」 そこにはラベンダー色のコーディガンを羽織ったスレンダー美女がいた。 年の頃は30代くらいだろうか? きれい!誰だ?髭が生えてると言ったやつは?アイは思わず見惚れた。 「ぼーとしてないで入ったら?」 「あっ、あっ、はい。」 慌てて靴を脱いで、上がろうとしたら框に足が引っかかってよろけた。 やばい!コケる!なっ、なにか掴まるものは?とっさに手を伸ばした。 ビリビリッ!バターン!えっ、ビリビリッて? 手にはラベンダー色の切れ端が!
見上げると何故かニッコリ笑った先生がいた。 「ご、ごめんなさい。弁償します。もちろん。」 「弁償ねェ?お気に入りだったのよね。」 「すみません!!」と頭を下げた。 先生は値踏みするかのように、ジロジロ見ると、いきなりアイの胸を鷲掴みにした。 「な、何するんですか?」 「まぁ、こんなものか?あなた、脱いでくれる?」 「えぇ〜〜!」
続く
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