| 30分後
サッパリした顔で コウちゃんが寝室に戻ってきた。
「お待たせしました」
「お待たせされました(笑) コウちゃん ちょっと座って」
「はい」
コウちゃんは 私の隣に腰かけた。
「指輪 ホントにありがとう…すごく嬉しい…でも…ちょっと淋しい気もしてる… だって…あたし…まだ…」
話しているうちに 涙が出てきて 自分でも 何が言いたかったのか わからなくなってしまった。
コウちゃんは 私の肩を抱き 回した手を私の手に重ねた。
「恭子さん 大丈夫っすか?」
「大丈夫じゃないっ…」
黙り込んだコウちゃんに
「あたし…いつになったら『恭子』って呼んでもらえるの? いつになったら 敬語じゃなくなるの?」
最悪の八つ当たりをしてしまった。
もっと穏やかに…可愛く甘えながら 言いたかったのに… こんなヒステリックになってしまうとは…
記念の夜を台無しにしてしまった後悔で涙が止まらなくなった。
いくらコウちゃんでも こんなことになるとは思っていなかったに違いない…
嫌われることはなくても 呆れられてしまったのは確かだろう…
取り繕うことも出来ず 泣くだけだった…
手の甲に重なったコウちゃんの手が離れなかったことが嬉しく その優しさに また泣いた。
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