ビアンエッセイ♪

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■8590 / inTopicNo.21)  14
  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(18回)-(2005/04/08(Fri) 19:58:06)

    やばっ‥柚羅さん怒ったかな?


    お酒って恐い。


    調子にのりすぎちゃった。



    ちょっとムッとしたような顔で、柚羅さんが寝室に向かったから。


    そんな事を、考えてしまっていた。



    でも。


    乾いた髪を撫でながら、寝室へと足を踏み入れた。



    柚羅さんは、フカフカの布団に顔を埋めて。


    とっても可愛い笑顔を見せていた。



    ‥良かった。怒ってないみたい。


    「ゆーらさん♪」


    だからそう言って近づいたら、


    柚羅さんは怒ったような顔を見せて、

    スグに外方を向いてしまった。



    えぇー。




    「ちょっ、何怒ってるんですか?」


    あまりの豹変ぶりに驚き、

    布団を上げながら、私は聞いた。



    「知らないっ。寝るんでしょ?黙って入れば。」



    んつ?柚羅さん‥。




    ‥もしかしてイジけてる?





    照れたような横顔と、照れたような声。




    そうだと確信できたから。



    ものすごく柚羅さんを愛しく感じた。




    「柚羅さん‥。」




    外方を向いた柚羅さんの隣。





    そっと布団に入って。





    後ろからギュッと抱き締めた。



    「――!?」



    柚羅さんの体が強ばって。



    だけど私は自分の気持ちに逆らう事が出来なくて。



    「亜紀、まだ酔ってるの?」



    振り向きもせずに囁いた言葉。


    「酔ってません。」


    それを否定する。



    伝えるはずではない言葉。


    口に出してしまいそうで。




    「先輩をからかったらイケナイよ?」


    「からかってません。」


    恋しくて、愛しくて。


    「‥じゃあ‥何で―」


    「――好きなんです。」




    もう‥勢いだった。



    言うつもりなんかなかったのに。



    すぐに、後悔した。


    どうして言ってしまったんだろう、と。



    私の言葉に。


    柚羅さんからは何の反応もなくて。




    私は、言葉の代わりに。



    柚羅さんを、もっと強く抱き締めた。







    柚羅さん、お願いだから。



    笑い飛ばしてよ。





    黙ったままの柚羅さんの背中。




    もっともっと強く抱き締めた。





    (携帯)
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■8618 / inTopicNo.22)  はじめまして♪
□投稿者/ ノア 一般♪(1回)-(2005/04/10(Sun) 14:29:23)
    奈々子さんの作品は大好きで、いつも楽しく読ませていただいてます☆
    SMエッセイの方も、内容や状況(?)が好きなのばかりデス(≧∀≦)
    楽しみにしているので、頑張って下さいね(*´∀`)ノ
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■8637 / inTopicNo.23)  NO TITLE
□投稿者/ マキ 一般♪(1回)-(2005/04/11(Mon) 12:36:48)
    菜々子さんの作品、どれも最高です(*^□^*)SMエッセイの作品も良かったです。これからも頑張ってくださいね。楽しみにしています。

    (携帯)
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■8649 / inTopicNo.24)  ノアさん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(19回)-(2005/04/11(Mon) 22:33:34)
    読んでくれてありがとうございます(*^-^*)
    アチラのほうも読んで頂けたようで光栄です。

    大好き‥って言ってもらえるとすごくやる気がでるんです。ありがとうございます☆

    相変わらずの駄文+スローペースですが、最後までお付き合い頂けたら幸いです(*^◇^)ノ

    (携帯)
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■8650 / inTopicNo.25)  マキさん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(20回)-(2005/04/11(Mon) 22:37:56)
    読んでくれてありがとうございます(*^-^*)

    最高だなんて‥菜々子にはもったいない言葉ですが、すごく嬉しいです。ありがとうございます(*〃∇〃)SMエッセイの方も読んで頂けたようで‥ありがとうございます☆

    スローペースで申し訳ありません。
    完結まで頑張りますので、最後までお付き合い頂けたら幸いです(*^-^*)

    (携帯)
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■8651 / inTopicNo.26)  15
□投稿者/ 菜々子 一般♪(21回)-(2005/04/11(Mon) 22:39:54)
    「んっ‥」


    朝のほのかな光で目が覚める。


    あっ亜紀の家に泊まったんだっけ。


    いつもの目覚めとは違う風景に、一瞬戸惑い、記憶を辿った。



    眠い目をこすりながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。


    「あっ柚羅さん。おはようございます。」


    寝室のドアを開け、

    まだボーッとしている私に、亜紀が言った。



    可愛らしい水色のエプロン。

    キッチンに立つ姿は、とても女性らしい。


    眠い目をこすりながら、そんな事を思った。


    「おはよう。」


    そう言いながら、私は時計に目をやる。


    ―7:25―


    今日は二人とも早番。


    お遊戯会の準備があるから。
    8:30までに行かなきゃ、だな。



    「顔洗っててください。もうすぐ、朝ご飯できますから。」



    そう言って笑ってみせる亜紀。
    フライパンの中からはジューっておいしそうな音。



    亜紀‥。



    洗面所で、顔を洗いながら。


    亜紀に対する気持ちばかりが、私を締め付けた。




    ねえ、亜紀。



    昨日、私の背中にしがみついて。



    泣いてたよね?




    泣き腫らした目で。



    無理に笑顔作って。






    亜紀にそんな顔、似合わない。




    だけど。





    そうさせているのは私で。






    勢い良く、お湯を顔にかける。


    バシャバシャと、何度も何度も。



    近場にあったタオルを手に取り、顔を拭いて。


    よしっ。と気を引き締めながら、洗面所を後にした。




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■8652 / inTopicNo.27)  16
□投稿者/ 菜々子 一般♪(22回)-(2005/04/11(Mon) 22:41:31)

    「そこに座ってください。」


    キッチンのすぐ横にあるテーブル。


    言われたまま、その椅子に腰をかける。



    「はい、どうぞー。」


    差し出された目玉焼きやら、みそ汁やら。


    うーん、いい匂い。




    朝食を全てテーブルに並べ、亜紀も椅子へと腰をおろす。



    亜紀が座ったのを確認してから、


    「いただきます!」


    おいしそうな料理を前に、少しはしゃぎながら私が言うと、



    亜紀は笑いながら


    「おあがりください。」


    だって。


    なんだか仕事場みたいで。


    二人で目を合わせて笑った。


    亜紀が先生で私が子供。だな。



    どれから食べよっかな、と迷いながら、



    やっぱりみそ汁から手をつけた。

    ズーっとすすって。



    「んーっ。うまい!」


    初めて食べる、亜紀の手料理。



    うん、本当にうまい。



    朝は食べない派の私だけれど。


    こりゃあ、箸が進む。




    「良かった。ありがとうございます。」



    亜紀が嬉しそうに笑ったから。

    私も、それにつられて笑っていた。




    いつも通りにしようとする亜紀。



    だから、私もそうする。




    ごめんね。




    それしか出来ないんだ。




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■8653 / inTopicNo.28)  17
□投稿者/ 菜々子 一般♪(23回)-(2005/04/11(Mon) 22:43:04)

    「おっ?ラブラブ出勤?」


    園について、敷地に入った途端。


    清水さんのからかう声が飛んできた。



    「うるさいですって。」


    明るい茶色の髪を、風になびかせ。


    煙草を口にくわえながら、

    長く引っ張ったホースで、花に水やり中の清水さん。




    いやいや‥。



    「あぁ?朝の挨拶もなしか?
    全く、何様なんだか。」


    ブツブツとそう言う清水さんに向かって、


    「おはようございます。」


    と亜紀が笑顔で言う。


    すると清水さんは満足気な顔で。


    「よしよし。亜紀はいい子だね。それに比べて‥」


    言いながら私に冷たい視線。


    「何ですか‥」


    呆れたように私が言うと。



    「はい、柚羅さんコッチに来なさい。」



    おー呼び出しだ。



    「先行ってていいよ。」


    私はそう言い、
    クスクスと笑う亜紀の肩をポンッと叩いて、

    先に園内へと向かわせた。



    亜紀の後ろ姿を見送りながら、


    「ふーん。」


    とニヤニヤ笑っている。



    「だから何ですか‥」


    「いやぁ、くっついちゃったのかなぁーと思って。」



    真っ白い煙を吐き出しながら、
    楽しそうに笑っている。


    「んなわけないでしょ。」



    あきらかに、からかうような視線。

    私は少しムッとして、わざと冷たく言い放った。



    「だって昨日と服、同じじゃん?」


    あーやっぱり鋭い。


    でも教えてあげない。



    「清水さんの期待しているような事は、何もありませんでしたよ?」



    私はフッと笑ってみせた。



    「へぇー。まぁいいけどね。」


    あきらかに何か企んでいるような顔をしながら。


    愛用の携帯灰皿で

    煙草をもみ消している。



    「ねぇ柚羅。」


    と、清水さんはイキナリ真剣な顔をつきで。


    「何ですか?」


    聞き返した私の顔を覗き込む。




    「一人で抱え込むんじゃないよ。」



    そう言って私の頭を。


    ポンポンと撫でた。




    「何ですか‥。」



    俯く私の頭。



    あぁ‥まったく。



    清水さんの鋭い目には。



    何でも見抜かれてしまう。




    まいったな。






    今にも崩れてしまいそうな、自分がいた。





    (携帯)
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■8817 / inTopicNo.29)  18
□投稿者/ 菜々子 一般♪(24回)-(2005/04/17(Sun) 23:31:44)
    「はぁーい。みんなココに集まってー。」


    亜紀の声に反応し、

    バラけていた子供たちがテクテクと歩き出す。



    と、まだ8ヵ月の美有まで亜紀の元へと行こうとする。


    「こらこら、あんたはココに居ていいんだよ。」


    楽しそうにハイハイする美有の体を抱き上げて。


    笑いながら言ってやると。


    わかっているのか、いないのか。


    美有もキャッキャッと笑いだす。



    「今日はお遊戯会です。
    人がいっぱい来るからね。みんないい子にしてくださいね。」


    集まってきた子供たちに亜紀がそう言うと、


    「「はぁーい」」


    と元気な返事。




    「よしっ。じゃあ体育館に行くよー!」


    亜紀は立ち上がり、子供たちを2列に並ばせる。



    「ほら、優太君は一番前だよ。」


    年令順に並ばせるため、


    優太が一番前になる。



    けれど優太は。


    「いやだっ!」


    と、一際大きな声で叫び。

    黙り込むかのように、身を固くした。



    その声に驚く亜紀。

    けれどすぐに冷静さを取り戻す。


    「どうしたの?わがまま言わないで。ほら、ちゃんと並びなさい。」


    そう言って優太の背中を押す。


    「いやだっ!」


    優太は亜紀の手を払い除け。


    「こらっ優太君!」


    「いやだいやだっ!!」


    そのまま

    しゃがみ込んでいた亜紀の顔を

    力いっぱい叩いた。



    「優太っ!」


    たまらず私が声をあげると。

    優太はビクッと体を揺らす。




    優太が普通じゃないのは。


    見ればすぐに分かったはずなのに。




    異常なまでに怯える優太を、




    何故か私は許せなかった。




    (携帯)
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■8818 / inTopicNo.30)  19
□投稿者/ 菜々子 一般♪(25回)-(2005/04/17(Sun) 23:33:13)

    「柚羅さん!私、大丈夫ですから。」


    柚羅さんの目。


    止めなきゃいけないと思った。



    「私、大丈夫ですから。」


    だからもう一度。


    ゆっくり、強く。



    「あっ‥」


    「優太君は、私が見ておきますから。」



    ねっ。と笑ってあげる。


    「分かった‥あたしが子供たち連れていくね。」


    俯きながら柚羅さんは言う。
    そのまま立ち上がり、


    「亜紀‥ごめんね。」


    教室を出る時、小さく私に謝った。



    何だか。


    その言葉には、たくさんの意味が含まれているようで。



    少しだけ、困ってしまった。





    優太君と二人だけの。


    静かな教室。



    「どうしたの?」


    その隣にそっと座って、


    震える肩を抱き締める。



    「おうちで何かあった?」




    静かに。静かに。


    優太君は涙を流していて。





    「みん‥っな‥」


    震える声を。


    必死に絞りだす。




    「みんな、どうしたの?」



    私は出来るだけ、優しく。

    優太君の信号を受けとめる。



    「おれっのこ‥と‥きらいなんだ‥っ」



    溢れだす涙を。



    そっと拭ってあげて。





    深く深く傷ついている心。




    ソレを痛い程、感じとることが出来た。




    「誰も。優太君の事嫌いじゃないよ。」



    きっと。鋭いトゲが彼の心には刺さっている。






    自分の子供すら愛せない親を。





    私は知っているから。





    「先生も、優太君、大好きだよ。」




    自分の出来る事をしてあげたい。






    "愛されること"を。






    教えてあげたい。





    「‥っ――」



    泣きじゃくる優太君を、




    ギュっと抱き締めて。







    ただ、一緒に泣いた。






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■8825 / inTopicNo.31)  NO TITLE
□投稿者/ E→☆ 一般♪(1回)-(2005/04/19(Tue) 05:58:42)
    初めましてです♪
    SMエッセイの方も一気に読ませていただきました(>_<)
    どの作品もすごく丁寧で読みやすくて菜々子さんファンになってしまいました☆照
    これからも菜々子さんのペースで頑張って作品作って下さいね!!
    続き楽しみにしています(*v.v)

    (携帯)
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■8833 / inTopicNo.32)  はじめまして
□投稿者/ 久美 一般♪(1回)-(2005/04/20(Wed) 03:19:59)
    柚羅さんと亜紀ちゃんが幸せになれるといいなって思いながら、いつも読ませていただいています。
    これからも、菜々子さんのペースで頑張って作品を書き続けて下さいね。楽しみにしています。

    (携帯)
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■8976 / inTopicNo.33)  E→☆さん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(26回)-(2005/04/24(Sun) 21:43:34)
    初めまして(*^-^*)レス遅れて申し訳ありません(;_;)
    SMエッセイのほうも読んで頂けたようで‥ありがとうございますm(u_u)m☆

    ファンだなんて‥(照)すごく嬉しいです。
    菜々子の駄文でよろしければ、これからも読んで頂けたら幸いです。

    感想、ありがとうございました(*^-^*)☆

    (携帯)
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■8977 / inTopicNo.34)  久美さんへ
□投稿者/ 菜々子 一般♪(27回)-(2005/04/24(Sun) 21:50:47)
    読んでくれてありがとうございます(*^-^*)レス遅れて申し訳ありません(;_;)

    何だか長ったらしく感じるかも知れませんが‥。
    飽きられないように最善を尽くしますので、最後まで柚羅と亜紀を見守って頂けたら嬉しいです。

    相変わらず更新が遅い菜々子ですが(;_;)応援してくれる方々がいますので、頑張ります(*^-^*)

    感想、ありがとうございました☆

    (携帯)
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■8978 / inTopicNo.35)  20
□投稿者/ 菜々子 一般♪(28回)-(2005/04/24(Sun) 21:51:34)
    「亜紀、亜紀っ!」


    誰かの声に。


    「‥んっ?」

    まだ重い瞼を、ゆっくりと開く。


    あっ。今、仕事中!


    ガバッと起き上がろうとするが、


    腕の中でスヤスヤ眠る優太君に気付き、また後ろに倒れそうになった。


    「亜紀先生はこんなに堂々とサボりですか。」


    目の前に居たのは清水さんで。


    あぁ、怒ってる‥。


    「言い訳してごらん。」


    明らかに怒りを含む声に、話す前から威圧されて。


    「あっ‥えっと‥。」


    言葉につまる。



    優太君をなだめて、

    お遊戯会に途中参加。

    の、つもりだったのに。



    泣き疲れて眠る優太君を見てたら、
    いつのまにか私も寝てしまった。


    不覚‥。



    「すみませんでした!」


    私は優太君を抱えたまま立ち上がり、

    深く頭を下げる。




    けれど‥清水さんから返事はない。


    恐る恐る、目だけを清水さんへと向けると。



    からかうように笑ってた。



    「‥?」


    「柚羅から聞いたよ。大丈夫、怒ってないから。」


    そう言って優しく微笑む。



    清水さんは、美人で。


    でも冷たいような、そんな雰囲気があって。


    だからその微笑みは、ものすごく魅力的に感じた。



    「お疲れさん。」

    私の頭をポンポンと撫でて、優太君を抱き寄せる。



    「あっ、ありがとうございます!」


    私はもう一度、深く頭を下げた。


    「いいえ。じゃあ後片付けいってらっしゃい。」


    笑いながら、私に軽く手を振る。



    えっ?後片付け‥?



    うそ。お遊戯会終わったの‥?


    「あんまり気持ち良さそうに寝てるもんだからさ。起こせなかったよ。」


    クスクスと笑う清水さんを見て。


    この人はこーゆー人なんだって。



    私が楽しみにしてたの知ってるくせに。


    あぁ‥イジワル。



    「来年もあるさ♪」


    と。来年も私がいることを前提に。



    あくまでも前向きな清水さんに。



    半分呆れながら、


    どこか安心したような。



    気が楽になる、そんな暖かい感情に包まれた。




    (携帯)
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■8979 / inTopicNo.36)  21
□投稿者/ 菜々子 一般♪(29回)-(2005/04/24(Sun) 21:54:05)

    「あきせんせいーゆうたくんは?」


    体育館についた私に、


    子どもたちが聞いてきた。


    「優太君ね、ちょっとお熱があるみたいだから、教室で休んでるの。」



    そう言うと、子どもたちが騒めく。


    「大丈夫だよ。大丈夫。」


    そう笑顔で言ってあげると、みんなも安心したようで。



    散らばっていたカラフルな紙吹雪きを、

    一枚ずつ拾い集め始めた。



    「亜紀‥大丈夫だった‥?」


    誰よりも不安そうな顔で聞いてきたのは。


    柚羅さんで。



    「大丈夫‥ではないと思います。何かあったみたいです。」


    二人で小さな体育館の隅っこに移動して。


    「ごめん亜紀。私のせいで‥」


    柚羅さんは本当に申し訳なさそうな顔を見せる。


    「んっ?私は大丈夫ですよ?」


    こんな柚羅さんは初めて見て。


    どんな言葉をかければ良いのかわからなかった。



    「あっ、じゃあ今度ご飯連れて行ってくださいよ♪柚羅さんのおごりで♪」


    だから私は精一杯明るくするだけ。

    柚羅さんのモヤモヤを、少しでも晴らしたい。



    「んっ‥わかった。」


    うそっぽい笑顔。


    けど笑おうとしてるだけ、いいのかな。




    「せんせいーおわったよー!」

    絶妙なタイミングで。


    お片付けも終わったみたい。



    「よーしっ!じゃあ教室に戻りますよ!」


    小さな体育館いっぱいに響く声で私は言った。




    何だか、昨夜のことなんて。


    悩み込む余裕もなくって。


    いいのか、わるいのか。



    悲劇のヒロインにはなれなかった‥な。





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■9158 / inTopicNo.37)  22
□投稿者/ 菜々子 一般♪(30回)-(2005/04/30(Sat) 23:24:42)

    「あー今日も終わるーっ。」


    清水さんが大声をあげながら、腕を上に伸ばす。


    「うるさいですって。」


    柚羅さんは冷めた声で。




    いつもの柚羅さんだ。と思って、少し嬉しくなった。


    清水さんも気付いたみたいで。
    笑いながら柚羅さんを見つめる。


    「‥?」


    不思議そうに首をかしげる柚羅さん。




    清水さんはまた、笑いながら、延長保育の名簿を手に取った。



    「おっ。今日は優太だけだな。」


    ノートに目を運ばせながら、

    煙草のBOXを胸ポケットから取り出そうと。



    「ココ‥禁煙ですけど?」



    すかさず柚羅さんが口を出す。


    「お」っと清水さんは柚羅さんを見つめて。



    「あーやっぱりダメか。」



    残念そうに笑った。



    「当たり前でしょ。」



    柚羅さんも呆れたように笑っていて、
    私も二人を見ながら笑っていた。


    "んー"と清水さんは少し考え込んで。


    「よし。あんた達、もう上がっていいよ。」


    思いもよらなかった事を口にした。


    「えっ?」

    「優太一人なら、私だけで平気だし。それに今日一緒にきたでしょ?」


    清水さんは「うん、うん。」と一人で勝手に頷きながら。



    私は、てっきり。


    遅番同士、仲良しの清水さんが送ってあげると思っていたから。



    予想外――少し戸惑った。


    「じゃあ上がろっか。」


    立ち上がり、そう言う柚羅さん。




    柚羅さんは何も思っていないみたいで。



    私は。

    また二人きりになるのは。


    少しツライものがある気がした。



    先に出ていった柚羅さんの背中。



    面白そうな清水さんの視線。



    清水さんに。


    仕組まれた。な。




    (携帯)
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■9159 / inTopicNo.38)  23
□投稿者/ 菜々子 一般♪(31回)-(2005/04/30(Sat) 23:26:22)

    「何か聞きます?」


    あまりにも静かな車内。


    耐えきれなくなったのか、亜紀が聞いてきた。


    「んー‥」


    少しだけ、迷ったフリをしてみる。

    本当は考えてなんかいない。



    「柚羅さん?」



    亜紀は本気なのかな。



    あたしの事、好きって。



    人の気持ちは。わからない。


    「もう。柚羅さん!」



    「‥んっ?」


    あまりにも無関心な私に。

    亜紀は少しだけ怒ってるみせる。



    「ははっ。ごめんごめん。何でもいいよ。」



    赤く光る信号。


    亜紀はMDをかける。



    私の家はまだ遠い。



    英語‥洋楽か。


    「‥私のせいですか?」



    小さく流れるBGM。


    透き通った綺麗な歌声を背に。



    緊張したような亜紀の声が、車内に響いた。



    「えっ。何が?」



    本当はわかってる。


    私が普通じゃない事でしょ。きっと。



    「私のせいですか?」



    亜紀は下を向いたまま。

    ハンドルを強く握りしめて。

    もう一度。私に聞いた。




    そんなに聞かないで。


    「‥‥。」


    何も、答えられなくなる。




    青に変わった信号で。



    ゆっくりと、二人を乗せた車は走る。


    重い沈黙と共に。





    (携帯)
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■9172 / inTopicNo.39)  24
□投稿者/ 菜々子 一般♪(32回)-(2005/05/01(Sun) 21:40:15)
    2005/05/12(Thu) 17:38:23 編集(投稿者)

    「すみません。昨夜のことは‥忘れていいですから。」


    その重苦しい空気を破ったのは亜紀で。



    わざとらしく明るくしている声が。


    あまりにも下手くそ。




    うつむいた顔を上げて。



    盗み見た亜紀の顔は。




    今にも泣き出しそうだった。




    違う。違う。違う。




    亜紀のせいじゃない。





    過去を断ち切れない。




    私のせいなのに。






    自分の気持ちすらわからない。




    私のせいなのに。




    「‥ごめんね。」



    やっと吐き出せた言葉は。



    たったソレだけだった。




    再び訪れた、長い沈黙の中。


    ただただ、流れる風景を目で追い掛けた。



    「ありがとう。」


    アパートの前で車は止まり。
    言葉と一緒に、車を降りた。




    「ご飯おごってくれるの、忘れないでくださいね?」


    そう言いながら笑う亜紀。


    「んっ‥わかってる。」



    私も笑ったつもりなのに。


    どうしてだろ。


    上手く笑えない。



    「じゃあ、また明日。」



    ドアを閉め。窓越しに見た亜紀の顔には。



    "嫌いにならないで"と


    痛い程書いてあって。



    走り去る車を見つめながら。


    馬鹿な自分を悔やんだ。






    (携帯)
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■9200 / inTopicNo.40)  25
□投稿者/ 菜々子 一般♪(33回)-(2005/05/02(Mon) 21:14:28)
    2005/05/02(Mon) 22:16:50 編集(投稿者)

    古びた外階段。


    コツコツという音が。


    おかしなくらい響く。


    部屋の前で、鍵を取り出す。けれど、


    「おっ?」


    鍵、開いてる。


    何だ?と、少し不審に思いながら。


    思い切って開けてみる。



    「おかえりー☆」



    と、開いた扉の向こうからは聞き慣れた声。



    「‥あっ。来てたの?」



    声の主の姿を確認して。


    後ろ手にドアを閉める。



    「うん☆」


    「鍵‥渡してたっけ?」


    部屋に居たのは郁で。

    けど、部屋が開いてたのには驚いた。


    「ひどーい。"いつでも来ていいよ"って言ってたじゃーん。」


    郁は少し大袈裟に。


    でも嬉しそうに言った。



    「あー覚えてないや。」


    たぶん酔っていたんだろう。


    不用心な自分に少し驚いた。


    変な癖は直さなきゃ、な。



    少しだけ考えてから。


    「‥脱ぎなよ。」


    鞄をソファに放り投げ。


    襟元を緩めながら、笑顔の郁に言う。


    「えっ?」


    郁はキョトン、とした顔を見せ。


    「そのために来たんでしょ?」


    知らず知らず、冷たくなる自分の言葉。


    「何か‥今日のお姉さん恐い‥。」


    郁は、今にも泣きそうに顔を歪めた。


    「嫌だったら帰ればいい。」



    酔ってるわけじゃない。


    今は優しく、なんて気分じゃない。



    「どうするの?」



    傍にあった椅子に腰をかけて、足を組む。



    郁はその可愛らしい顔を真っ赤に染めて。


    戸惑いながら薄いブラウスに手をかけた。



    「いい娘だね。」



    そう笑いかけてやると、一層、頬を赤く染める。


    次々と、順序よく。


    郁は服を脱ぎ捨てる。



    「全部‥だよ。」


    下着に手をかけ、躊躇している郁に私は言った。



    「できないよ‥っ」


    恥ずかしさのせいか、郁は下を向いたままで。


    「‥おいで。」


    私は両手を伸ばし。


    私の言葉に恐る恐る歩み寄る郁を、


    腕いっぱいに抱き締めた。



    「お姉さん‥?」


    今は。


    人肌が恋しい。



    郁の体温が私に伝わってくるのを、


    すごくすごく不思議に感じた。



    そのまま郁を床に押し倒し。


    自分勝手に
    身体を重ねた。



    (携帯)
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