ビアンエッセイ♪

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■9233 / inTopicNo.41)  26
  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(34回)-(2005/05/04(Wed) 21:43:33)

    ベッドに移動して。


    力尽きるまでに、郁を抱いた。


    「ねェお姉さん。」


    時間が流れて。

    二人でゆっくりと天井を見上げていた時。


    「んっ?」


    郁は。"特等席"だと言い張る私の腕の中で。


    「郁以外にも、女、いるでしょ。」


    無邪気な笑顔でそう言う。


    「‥恋人は、作らない。」


    まぁ適当に。


    「それじゃあ答えになってないよー。」


    何が楽しいのか、郁は笑いながら。


    ゴロン、と私側へ頭を寄せる。


    「郁はね。今は、ソレでもいいの。お姉さんと一緒にいられればいいの。」


    クスクスと私の髪を触りながら。


    「そっか。」


    郁につられて私も笑う。


    何だか、本当に子どもみたいな娘だな、って思ったりして。


    「お姉さんね。前の郁みたいなんだよ。
    だから、ゆっくり待つの☆」



    「前の郁?」


    そりゃヤバイだろ。


    周りにはそんな風に見えるのか、と


    私は少し困りながら笑った。


    「何かね。淋しそうな目、してるよ。」


    郁はその澄んだ目で私を見つめて。


    そんな事はないはずだと、自分では思っているのに。


    まるで図星をつかれたように、私は黙り込んでしまった。


    「お姉さんが郁を救ってくれたから。
    今度は郁が、お姉さんのために何かしてあげたいんだ♪」


    照れたように笑いながら、私の胸に顔をうずめる。


    「こらっ。」


    からかうように頭つつくと、

    郁は幸せそうな笑顔を見せる。



    そんな風に

    素直に甘えられる郁が、すごく羨ましく思えた。




    (携帯)
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■9263 / inTopicNo.42)  菜々子さんへ
□投稿者/ アヤ 一般♪(4回)-(2005/05/05(Thu) 20:42:30)
    こんばんわ。
    柚羅さんの過去に何があったんですかねぇ?
    亜紀ちゃんのことを考えると切なくなります(>_<)

    (携帯)
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■9264 / inTopicNo.43)  アヤさん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(35回)-(2005/05/05(Thu) 22:50:03)
    こんばんわ。読んでくれてありがとうございます(*^-^*)

    柚羅の過去‥これから出てくる予定であります(^-^)亜紀‥どうなるんだろう‥なんて書きながら思ってしまう菜々子です(苦笑)

    まだまだ書き方が甘くて、読んでいて飽きてしまうかもしれませんが‥最後までお付き合い頂けたら幸いです。

    感想、ありがとうございました☆

    (携帯)
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■9265 / inTopicNo.44)  27
□投稿者/ 菜々子 一般♪(36回)-(2005/05/05(Thu) 22:50:44)

    郁と出会ったのは一年以上も前の話。


    どこから見ても"家出少女"だった彼女。


    大きなボストンバックを持って。橋の上に。



    何となく声をかけた。


    またいつものように、身体だけの関係を探し求めていたから。



    「ねェ」
    私の声に振り向いた、郁の瞳は。

    凍えてしまいそうなくらい、冷たくて。


    正直、放っておけば、今にも飛び降りてしまいそうだった。



    詳しい事は今でもわからない。


    ただ

    「とりあえず、私と遊んでみなよ。」

    なんて適当な事言って。



    無反応な郁の隣に。


    黙って居座っていた。



    何度か二人で食事して。

    何度か二人で会話した。



    私がしたのはソレだけだったけど。

    郁の瞳に光が見えた。


    ‥不思議と、私達は仲を深めた。



    でもやっぱり。


    どこかで距離を置いてしまう私がいて。


    郁とは身体だけの関係のまま。



    郁の気持ちをいつも避けてきた、自分勝手な私。


    亜紀の知らない私。



    「んー?」


    いつのまにか寝てしまった郁の髪を触りながら。


    「あっ起こした?いいよ。寝てて。」

    今の郁と昔の郁を比べた。



    笑いかける私の言葉に、安心したような笑顔を見せて。

    再び眠りにつく。



    「何やってんだろ‥」


    郁の幸せそうな寝顔を見ながら、一人呟く。


    今までは、郁を一番大切に思っていたのに。



    踏み切れない私を。

    黙って待っていてくれる、この娘を。


    身体だけの関係と言いながら。

    私を癒してくれる、この娘を。


    「ダメじゃん。」



    どうして‥亜紀の姿が浮かぶのだろう。





    (携帯)
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■9357 / inTopicNo.45)  菜々子さんへ
□投稿者/ E→☆ 一般♪(4回)-(2005/05/09(Mon) 04:15:46)
    これから先の展開がすごく楽しみですo(^-^)o

    大変だとは思いますが頑張って続き書いて下さいねっ♪

    (携帯)
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■9380 / inTopicNo.46)  E→☆さん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(37回)-(2005/05/10(Tue) 00:00:16)
    またまたありがとうございます(^^ゞ

    そして申し訳ないです。更新が遅くて(涙)
    今回は長くなる‥予定ですが、必ず最後まで完結させますので☆お付き合い願えたら有り難いです。

    応援、して頂けると本当に励みになります。
    ありがとうございました☆

    (携帯)
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■9381 / inTopicNo.47)  28
□投稿者/ 菜々子 一般♪(38回)-(2005/05/10(Tue) 00:00:54)
    いや!どこにいくの?


    置いていかないで。



    亜紀がいいこじゃないから?


    だからママはとおくへ行くの?



    「亜紀が一番だ」って。
    いっぱい抱きしめてくれたじゃない。



    ねェ、どうして。




    どうして行っちゃうの?





    こわいよ。いかないで。






    いかないで、ママ――




    鳴り響く雷。目が覚めた。


    激しい雨が窓をうつ。


    「は‥っ。」


    嫌だ。嫌な夢。


    呼吸が荒くなってる。


    冷や汗のせいで、髪の毛が額にはりつく。



    「こわい‥。」


    雷の音が。



    違う。こわい。



    何が?わからない。




    下が伝わってくるような。低い音。




    耳を塞いだ。


    嫌だ。



    布団にくるまった。


    聞きたくない。





    思い出したくない。




    忘れかけていたのに。



    「何でよ‥っ」



    どうして、余計なことばかり。




    助けて、こわい――





    (携帯)
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■9382 / inTopicNo.48)  29
□投稿者/ 菜々子 一般♪(39回)-(2005/05/10(Tue) 00:02:21)

    「すご‥っ。」


    あまりの音に、思わず目が覚めた。


    暗い部屋がピカッと光って、
    激しい音が鳴り響く。




    「やっ‥こわいよぉ‥」

    郁もさすがに起きた様で。


    弱々しい声で私にしがみつく。


    「大丈夫、もう少ししたら鳴り止むよ。きっと。」


    やわらかな髪をそっと撫でながら、震える郁を腕に抱く。



    「平気?」

    「ん‥っ。」


    臆病な郁。

    音が鳴るたびビクッと体を震わせる。



    「お姉さん‥」


    その言葉を遮り、返事をする。


    「いいよ。郁が寝るまでこうしてる。」


    「‥ありがとう。」



    少しの笑顔。けれど涙目。

    怯えてる。



    郁を抱く腕に力を入れた。



    でも‥。


    「コレはあたしでも恐いなぁ‥。」


    苦笑。


    普通じゃない、豪雨に雷。アパートが‥響く音で微妙に揺れる。



    「壊れませんように‥」


    なんて半分本気で。




    ご機嫌斜めな空に願った。




    (携帯)
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■9419 / inTopicNo.49)  30
□投稿者/ 菜々子 一般♪(41回)-(2005/05/11(Wed) 22:37:29)

    「おー」

    何だったんだ。昨日の空。


    見事なまでに気持ちのいい朝。


    「んーっ☆」


    本当、気持ちいい。



    いや、考えなきゃいけないことはたくさんあるけど。


    今はこの気持ち良さを満喫したい、とそう思った。



    郁を起こさないように、起き上がり。


    スヤスヤ眠る郁の頭を撫でる。


    「ヨシヨシ。」

    おとなしく寝てるな。



    洗面所に移動して、顔を洗う。


    「あー郁学校行くのかな。」


    そういえば今日は平日だって、ふと思った。


    「起こすべきか‥。」


    いや、でも。制服とかないよな。

    さぼりか?


    「まぁいっか。」


    なんて適当に。

    歯磨きも済ませて、小さな台所に立つ。



    「よしっ。」


    と気合いを入れてから。

    おにぎり作り。


    炊きたてご飯じゃなくて申し訳ないが。



    学校行く前はしっかり食べなきゃいけないからな。



    解凍したての熱々ご飯と格闘しながら約10分。



    やっとの思いで、出来たおにぎり。


    中身はメジャーな梅干しで‥ってソレしかなかったんだけどね。


    皿にのせ、ゆるくラップをかける。


    「あぁー」


    鍵、返してもらわなきゃ、だな。

    どうしよ。


    少しだけ悩んでから、郁宛てに手紙を書いた。


    「これでイイかな‥」


    もう一度読み返してから、二つに折った手紙を皿の下に置いた。


    黒のTシャツにジーンズを穿いて。
    上からパーカーを羽織る。


    「いってきまぁーす。」


    と、なるべく小声でそう言い、私は仕事場へとむかった。




    (携帯)
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■9420 / inTopicNo.50)  31
□投稿者/ 菜々子 一般♪(42回)-(2005/05/11(Wed) 22:39:12)

    目覚めると、お姉さんの姿はもうなかった。


    まだパッチリ開かない瞼をこすりながら起き上がり、

    そのままベッドに座る。


    「あっ。」


    部屋を見渡して。
    シルバーのサイドテーブルに、

    おにぎりが置いてあるのを発見。


    「わぁー☆」


    手作りっぽい‥。
    お姉さん‥作ってくれたんだ。


    ソレは初めてのことで。

    ものすごく嬉しくかった。


    「いただきまーす☆」


    テーブルの横に移動して、ラップのかかったおにぎりに手を伸ばす。


    「おっ?」


    お皿の下に紙切れを見つけてしまった。



    手紙だ‥。


    うそ‥。郁宛?


    高鳴る胸を左手で押さえながら、

    二つ折りの紙をゆっくりと開く。



    "郁へ
    おにぎり、お腹が減っていたら食べてください。
    食べたらちゃんと学校に行くこと。


    あと合鍵は‥


    管理人さんに渡しておいてもらえるといいな。
    ‥ごめんね。"



    スラスラと書かれている上手な文字。


    やっぱり鍵は返さなきゃいけない、か。



    でもいい。大丈夫。



    少しだけ痛んだ胸をそっと撫でながら、
    続きに目を向ける。



    "P.S
    昨日の質問の答え。

    郁と出会ってから、他の女性を抱いたことはないよ。

    じゃ、仕事行ってくる!"



    えっ?


    自分の目を疑った。


    いつもクールで。
    いつも大切な事は話してくれなくて。


    女性に慣れてるのも、
    抱かれてすぐにわかった。



    そのお姉さんが書いたの?



    ‥あふれる気持ちが押さえられない。


    嬉しくて嬉しくてたまらない。



    小さな紙切れを胸の前で。



    大切に大切に握り締めた。




    (携帯)
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■9466 / inTopicNo.51)  32
□投稿者/ 菜々子 一般♪(43回)-(2005/05/14(Sat) 19:44:47)

    「おはようございます。」


    「おっ柚羅、早いね。おはよう。」


    いつも通りの朝の風景。

    清水さんが小さな庭で、花に水をやっている。



    「今日は‥煙草ないんですね。」

    なんて冗談混じりに言う。


    照りつける太陽がまぶしい。


    「あたしと煙草はセットかい。」


    と、清水さんは困ったように笑いながら。

    長いホースから出る水を止めた。


    「ねェ、柚羅今日予定ある?」

    「‥ないですけど?」


    たぶん郁は帰っていると思うから。


    「んじゃ、飲みに行こう。」


    そう言うと一人で"うんうん"と頷く。


    「へっ?何でッスか?」


    いきなりの誘いに驚いた。

    しかも行く気まんまんだし‥。


    「嫌なの?あんたには言わなきゃいけない事、いっぱいあるんですけどー?」


    その綺麗な顔で睨みをきかされると、恐い。


    「‥わかりました。」


    と返事をするしか出来なくなるんです。



    私の返事に清水さんはご満悦の様子。


    「あっあと、ちゃんと優太に謝れよ?」


    思い出したようにそう言うと、ニカッと笑った。


    白い歯がまぶしく光る。


    「‥わかってます。」


    苦笑せずにはいられなかった。

    優太にはヒドイことをしたから。


    心を落ち着かせる。


    私は大人なんだから。と。



    小さな子どもの繊細な心を、もう二度と傷つけない。



    再び自分の心にそう誓い、私はその場を後にした。




    (携帯)
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■9467 / inTopicNo.52)  33
□投稿者/ 菜々子 一般♪(44回)-(2005/05/14(Sat) 19:52:58)
    2005/05/15(Sun) 22:20:55 編集(投稿者)

    園について、教室に入っても。

    優太にいつもの元気も生意気さもなかった。


    その上、私とは目も合わせてくれない。


    「ゆーたっ♪」


    努めて明るく。
    教室の隅でうずくまる優太に声をかける。


    ‥やっぱり私を見てはくれない。


    「昨日はごめんね。」

    隣に座り込み、その小さな手をギュッと握った。


    「‥。」


    やっぱり答えてくれない。


    「先生のこと、嫌いになったか‥な?」


    覗き込むように、話し掛けると。

    優太はソレを避ける。


    「‥先生は優太が好きだから。嫌いなんかじゃないからね。」


    素直だね。

    私と話すことを嫌がっているのが、嫌というほど伝わってくる。


    少々キツイ‥な。


    「ごめんね。」


    反応の無いままの優太の頭を撫でて、私は立ち上がる。


    コレ以上、負担をかけたくないと思ったから。



    「‥ほんとう?」


    と、立ち上がった私の服の裾を優太が掴む。


    「えっ?」

    「ほんとうかよ?」


    合った瞳が、震えていた。


    私の答えを聞くことを、恐がっているかのようにも感じた。


    「‥大好きだよ。本当に。」


    その視線を合わせたまま、自分の気持ちを口にする。


    不安にさせちゃったね。
    ダメな先生だね。



    「もーいーよ。許してやるよ!」


    強きな態度。

    けれど、俯く顔がほんのり赤く染まっている。


    「‥許してくれるの?」
    「そうだよ。」

    「ほんとに?」
    「そうだよ!」


    やっぱり子どもは不思議だな。


    けれど。気が、楽になる。そんな気分になって、笑みがこぼれた。


    「ありがとう、優太。」


    ありがとう。


    嫌がる優太を無理矢理抱き締めて、高く抱げる。




    初めて。優太は、私よりも大人なんだと感じた。


    まったく‥。


    その成長の速さには、驚かされてしまうよ。





    (携帯)
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■9485 / inTopicNo.53)  34
□投稿者/ 菜々子 一般♪(45回)-(2005/05/15(Sun) 22:21:46)

    「おっ許してもらったか?」


    ドアの向こうから、清水さんのからかう声が聞こえてきた。


    「えぇ、まぁ一応。」


    あえて素っ気なく。


    本当は"良かった"と心から安心していたけど。


    「顔、ニヤけてるけど?」

    フッと鼻で笑われた。


    すかさず私はムスッと顔を歪める。


    「んな顔すんなって。でさ、気分いい所悪いんだけど‥」


    「なんですか?」


    「亜紀、今日休みだって。」


    えっ‥?


    亜紀の名前が出た途端、


    ちっぽけな私の心が揺れた気がした。


    「ってことで、最後まで宜しく。」


    清水さんは困ったように笑うと、優しさに溢れた手を私の肩にかける。


    「‥わかりました。」

    「飲みに行くのは、そのあとで。」


    ポンポンと二三度、肩を叩くと、そう言い残し教室を後にした。



    風邪だ。きっと。


    そう、自分に言い聞かせる。



    休みなんて誰にでもあるだろう。




    ‥けれど。昨夜見せた亜紀の悲しい笑顔。




    思い出して。


    胸が苦しくなるのは何故なんだろう。





    (携帯)
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■9487 / inTopicNo.54)  こんばんわ〜^^
□投稿者/ 純 一般♪(3回)-(2005/05/15(Sun) 23:04:21)
http://ganbare.k-server.org/index.html
    初めまして〜♪ずっと読ませていただいてました(^^)とてもおもしろいです!
    これからも頑張ってください(´∀`)
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■9508 / inTopicNo.55)  純さん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(46回)-(2005/05/16(Mon) 23:05:56)
    こんばんわ☆そして初めまして♪読んでくれてありがとうございます(*^o^*)

    はい、頑張ります♪完結までお付き合い頂けますと嬉しいです☆☆

    実は‥ココまで長いお話書くのは初めてなんです(苦笑)だから、読んでくれている方がいるのは本当に嬉しくて。励みになります☆

    感想、ありがとうございました♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■9509 / inTopicNo.56)  35
□投稿者/ 菜々子 一般♪(47回)-(2005/05/16(Mon) 23:06:39)

    ‥お姉さん、遅いなぁ。



    おにぎりを食べてからも、私はお姉さんの部屋に居た。


    この幸せな気持ちで学校に行くのは、もったいない。そんな感じがしたから。


    で、お姉さんの帰りを待っているわけだけど。


    「遅いっっ!」


    早く逢いたいのに。


    逢って抱き締めてもらいたいのに。


    お姉さんが帰ってくる気配はなくって。



    「今日早番なはずじゃーん。何で帰ってこないんだよォ‥」


    なんて一人でブツブツ。



    「どーしよ。」


    帰ろっかなぁ。

    そう思い、バックに物をつめ始めた瞬間。


    ―ブー―
    っと。古くさい音のインターホンがなった。


    「あっ☆」


    お姉さんが帰ってきた☆なんて疑いもせずに思い。


    駆け足で玄関の扉を開ける。


    「おかえり☆な‥‥さい?」


    よーく考えて。


    お姉さんだったら、鍵あるもんね。


    わざわざインターホン鳴らしません。


    と言うことに気付きました。


    で、私の目の前に立っていたのは知らない女の人。


    開けてしまってからでは、もうどうにもならない。


    他人と話すのは苦手なのに。


    「あれ‥ココ木村さんのお宅じゃありませんか?」


    どうしよ‥。


    どう対応すればイイのか分からない。
    しかも‥美人だ。


    ドアノブを握り締めたままの私の手。
    開いた口が塞がらない。



    「ねぇ?」


    彼女は不思議そうに首を傾げる。


    「あっはい!そうです!」


    明らかに挙動不振な自分。
    クスッと笑われてしまった。


    「良かった。柚羅はいます?」


    お姉さんを"柚羅"と呼ぶその女性は、


    綺麗な長い茶髪に、綺麗な瞳。
    筋の通った鼻と、形のいい唇。


    「あっ‥まだ仕事で‥。」


    「あら‥そう。」


    おまけに声まで透き通っている。


    彼女は残念そうにそう言うと、ジッと私を見つめた。


    「?」
    「あなたは?」



    ‥どうしよう。


    他人と話すのは苦手だ。





    (携帯)
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■9523 / inTopicNo.57)  36
□投稿者/ 菜々子 一般♪(48回)-(2005/05/17(Tue) 20:47:44)

    「はーい。さよなら。」


    最後の子のお迎えがきて、私は笑顔で手を振る。


    一人足りないだけで、仕事の量はかなり増える。


    「んーっ。」


    疲れた方を自分の手で優しく揉む。


    右・左・右。



    「あー終わったー」


    教室に戻ると、清水さんが床に寝転んでいた。


    起きる気力もないのか、寝たままで。


    「どうします?行きますか?」


    見るからに、かなり体力を消耗した模様。


    お疲れさまです。


    「行きたいー!」


    チラッと私のほうを見た彼女は、子どものようにジタバタし始める。


    「わかったわかった。わかりましたから。
    じゃあ行きましょう?」


    少し呆気にとられたが、
    思わず笑ってしまった。


    清水さんは人を笑顔にするのが巧い。と改めて思う。


    「でも疲れたー!」

    「どっちですか‥」

    「んー‥行く!」


    まるで甘えてるみたい。

    なんとなく、私との会話のやり取りを楽しんでいるようにも感じた。


    変わった人。



    「よっ。」

    と、清水さんは起き上がり、ニコッと笑った。


    「さて、行きますか☆」


    そう言い、そそくさと教室を出る。
    私はその後ろをついて歩く。



    歩きながら。


    話って何なのか‥。



    予想はつくけど。



    どうやって言葉にすればイイのか。

    その答えを探していた。





    (携帯)
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■9537 / inTopicNo.58)  37
□投稿者/ 菜々子 一般♪(49回)-(2005/05/18(Wed) 20:13:37)

    「あーえっと‥」


    言葉につまる。

    「あなたは?」なんて問に、どう答えればいいんだ。


    ‥言葉が見つからない。


    どうしたらいいのかわからずに、目の前の女性を見上げると。

    彼女は薄らと笑みを浮かべていた。



    「友達‥にしては歳が離れているわね。」


    まるでからかうような視線。


    「恋人、かしら?」


    そう言って長い指を私の胸の真ん中へ立てると、
    「当たりでしょ?」と言うような目をむける。


    ドキッとした。


    「‥違います。」


    何にドキッとした?


    わからない。けれど答えは正しい。



    「本当に?」



    本当?

    ねェ‥あなたが私を、お姉さんの恋人だと思うのはどうして?


    どうしてそんな風に思うの?


    「‥違います。」


    そう。私は恋人じゃない。恋人ではない。


    自分の声が、消え入りそう。弱々しく響いている。


    「そうなの。」


    彼女は困ったように笑うと、指をそっと撫でおろした。



    前にお姉さんが言っていた事が頭をよぎる。



    『一度だけ恋人がいた時があったよ。』



    酔っ払ってた。
    笑ったフリをしていた。
    悲しい瞳をしていた。



    何でこんなに綺麗なのに、恋人がいないんだろうって疑問だった。



    「‥あなたは?」



    一体誰なの?



    ダレナノ?






    (携帯)
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■9578 / inTopicNo.59)  38
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(50回)-(2005/05/20(Fri) 21:59:48)

    「‥今暇?」

    彼女はスッと息を吸い込むと、内緒話のように声を潜めた。


    「えっ?」

    「おなか、すいてない?」


    半ば強引に私の腕を掴むと、耳元にその綺麗な形の唇を寄せる。


    「ご飯食べに行きましょう?」


    甘く、甘く囁かれた。


    戸惑う自分。


    返事もしないうちに彼女が私の背中を押した。


    「準備して。」


    ニコリと笑うと、扉の前で腕を組む。

    チラっと時計を見てから。


    「5分でね。」


    「えっ?」


    何だ、何だ。

    私は「行く」と一言も言っていないのに。


    けれど彼女は私を待っている。


    「‥。」


    少し悩んで。少し呆れた。


    バックの中に、持ってきたものをつめ直し息を吸い込む。


    サイドテーブルに置いたままの鍵を握り締めてから


    「‥できました。」


    扉のむこうの彼女に言った。


    「もう?早いわね。じゃあ‥行きましょうか。」


    少し微笑むと、歩き出した彼女。

    私も玄関を出て、お姉さんの部屋の鍵をしめる。


    ―ガチャ―


    静かな闇に鍵音が響く。

    夜の風はまだ冷たい。



    駐車場に行く前に、管理人さんの部屋に寄った。


    もちろん、鍵を返すために。


    そんな私を、彼女は不思議そうに見つめていた。



    不安。


    好奇心。


    不安。



    二つの思いが私の胸をかき乱す。
    けれど、黙っていたってどうにもならないから。


    私は彼女の後ろを歩いて行った。




    (携帯)
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■9629 / inTopicNo.60)  39
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(51回)-(2005/05/22(Sun) 20:48:01)

    「で、どうよ?」

    「だから何がですか‥。」


    さっきから、ずっとこの調子。


    今日は清水さんの行きつけのバーで、いつもの居酒屋とは違った雰囲気。


    カウンター席に、私と清水さんは並んで座っていた。


    「あたしに隠し事する気?」


    薄暗い、オレンジ色の照明が店内を照らす。


    いまいち、彼女の表情が読み取れない。


    「別に話すような事じゃないと‥。」


    正直、何を話せばいいのかがわからないから。


    「悩んでるくせに。」


    だろ?みたいな目をしながら、淡い水色のカクテルを口に運ぶ。


    「亜紀のこと、でしょ?」

    そう言って首を右に傾けて見せる。


    うーん―‥


    「まぁ‥はい。」

    答えた笑顔がひきつってしまう。


    「好きなの?」


    ストレートな質問。
    なんて答えればいいんだ。


    戸惑い、答えられない私は目の前のグラスをつついた。


    「まだ引きずってるんだ?」


    疑問系。
    しゃれた感じのBGMがやけに耳に響く。


    覗き込むような清水さんの瞳とこの店の雰囲気が。


    何故か私を切なくさせる。


    「引きずっているつもりは無いんです。」


    うん。と心の中で頷く。
    自分の中では整理できたはずだから。


    でも‥


    「携帯が鳴るたびに思い出しちゃうんですよ。」


    来るはずがない電話。
    わかっているのに。


    そう言ってかわいた笑いをあげる。


    ソレを見て清水さんは困ったように笑うと、


    「まだ綾香の事が好き?」



    またまたストレートに。


    私は少し悩んでから、赤く光るグラスを口に運ぶ。


    「‥よくわからないです。けど‥」


    グラスを置き、小さく息を吸う。


    「けど、何?」

    「綾香を思い出すのは‥辛い。」


    それが正直な気持ちで。
    胸が、苦しくなる。


    綾香を思い出すたびに、私の心は乱される。



    私の愛しかった人。



    綾香は



    もう何処にもいないから。






    (携帯)
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