ビアンエッセイ♪

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Nomal I'm so into you /ハチャル (05/07/21(Thu) 23:33) #11160
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■11160 / 親階層)  I'm so into you
□投稿者/ ハチャル 一般♪(1回)-(2005/07/21(Thu) 23:33:55)

    照りつける太陽と
    空の青。




    高まった感情を、
    抑えることは出来ません。






    季節は、夏。






    それは汐梨に
    恋をした、季節でした。







    (携帯)
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■11161 / 1階層)  I'm so into you 1
□投稿者/ ハチャル 一般♪(2回)-(2005/07/21(Thu) 23:36:03)

    「あっつ〜」


    何なんだ、この暑さは。
    好きな暑さじゃない。7月なのに何かこう、じジメジメしている。


    生徒に頼まれた資料を取ろうと、私は準備室の前に立ち鍵を開けた。
    瞬間、ムシッとした空気が流れ出る。


    開かれた窓からダラダラとした風が入り込みカーテンをフワッと揺らしていたのだ。


    閉め忘れ‥不用心だな。
    そんなコトを思っていたら



    「‥んあっ!?」


    揺れたカーテンの隙間、蒼白い足が見えた気がした。
    驚き、思わず声が出る。


    ‥いや、今は授業中だし。それに鍵は閉まっていたから人はいない筈だ。



    そう自分に言い聞かせながら恐る恐る窓に近づいた。
    非現実的なコトは嫌いだ。



    「あ〜」

    「‥はっ!?」


    やっぱり足だ!と思ったのと同時。確かに、気の抜けたような声が耳に入った。無意識にまた声が上がる。


    驚いて勝手に腰が引けてしまい、足が後ろに下がる。
    そのまま声のした方、ユラユラと揺れるカーテンを見つめた。


    「‥あー?先生?」


    そこから現われたのは‥見たことのある顔。


    襟足だけを伸ばし自然に立ってしまう程短くした天辺と、シルバーのピアスに飾られた耳がチラチラと見えるサイド。一際目立つように染められた、髪。
    そこから続く、綺麗なフェイスライン。



    長谷山汐梨。


    そう、彼女の名前。



    「‥今授業中なんだけど?何してるの?」


    人間だと解ったからいつもの冷静さが戻ってきた。
    だからその調子で私は聞いた。


    「や、別に。ココ涼しいから、ちょっと休憩してた。」


    薄い唇をニッとあげると、彼女は言った。
    しかし切れ長の目が、笑っていない。


    「鍵、どうしたの?」


    嫌でも目立つ生徒だった。職員会議でしょっちゅう名前が上がっていたから。


    「簡単〜♪」


    そう言うと彼女はご丁寧に、ヒラヒラと手にある針金を見せてくれた。





    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■11162 / 1階層)  I'm so into you 2
□投稿者/ ハチャル 一般♪(3回)-(2005/07/21(Thu) 23:38:00)

    「‥どいて。窓閉めるから。」


    呆れてものも言えなかった。
    窓枠に座る彼女にそう言い、その視線を受けながら窓を閉めようと。


    「あれ?」


    窓から中庭に向かって走っていく女の子が見えた。
    辛うじて見えた上履きのラインから、1年生だというのが解る。


    「‥何してたの?」


    馬鹿な質問か。
    しかし、明らかに今ココから立ち去ったというのが解ったから。
    後ろでテーブルに寄り掛かり足をクロスさせている彼女に聞く。


    「あ〜見つかっちゃった〜」


    彼女はこちらを見てニヤニヤと笑うと、ふざけたようにそう言った。
    私が見つけるコトを楽しみにしていたような、そんな口調で。


    「何って‥チューしてただけだよ?」


    黙っている私に彼女は、まるで反応を伺うかのようにサラッと言った。


    生温い風が、二人の髪を揺らす。


    「‥そう。満足したなら早く授業に戻りなさい。」


    馬鹿にされている、そう感じた。
    ‥生徒に馬鹿にされて教師が勤まるものか。二十年以上続けたクールフェイスはこんなコトでは崩れない。


    ‥少し驚いたけど。



    窓を閉めた私は、彼女の隣に移動し促す。
    こんな時にコツコツと響く自分のヒールの音は、何だか心地よく感じる。


    「はいは〜い」


    彼女は適当に返事をすると、ジッと私を見つめた。


    「早くしなさい。」


    その視線は‥何かを射抜いてしまいそうな程強く、一瞬たじろぐ。
    だから先程より強い口調で言った。


    「先生ってさぁ‥本当、噂通りクールなんだね。」


    彼女は感心したように言うと、そのまま私の肩に手を置く。



    「でも‥」
    「?」
    「恐がりなんだ、意外に。」



    そう言うとまた口の端だけあげてニヤッと笑った。

    どうやら、先程の間抜けな声をばっちり聞かれたらしい。


    「それがどうしたの?」


    本当はすごく恥ずかしかった。しかし声の調子は変えない。
    ナメられたら堪ったもんじゃないから。



    「ううん‥別に。ただ‥」


    ただ‥何?と思った瞬間、勢い良く体を引き付けられ。




    「‥すごく可愛い。」




    甘過ぎる、と言う程に甘い声で。
    耳元に、囁かれた。



    「じゃあ、またね。ちょっと学校に来るの、楽しみになっちゃった♪」


    と、勝手にソレだけを言うと彼女は準備室を後にした。





    (携帯)
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■11164 / 1階層)  NO TITLE
□投稿者/ ちょぺ 一般♪(1回)-(2005/07/22(Fri) 00:02:18)

    続きが…

    すごく
    すごーく気になります(^^)笑

    頑張って下さい(●'∀'●)ノ


    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■11188 / 1階層)  ちょぺさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(4回)-(2005/07/22(Fri) 19:57:49)
    続き、気にしてくださってありがとうございます。遅い更新となりそうですが、お付き合い頂けたら嬉しいです☆

    夏をテーマにしちゃったりしたので、夏中には終わらせたいなぁ‥(笑)と思っている次第であります。

    お早い感想、ありがとうございました(^O^)

    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■11189 / 1階層)  I'm so into you 3
□投稿者/ ハチャル 一般♪(5回)-(2005/07/22(Fri) 19:58:44)

    「やばっ‥」


    残されたそこで一人呟く。
    顔に血が昇っていくのが手にとるように解った。


    やばい、気付かれてないよね‥?本当はすぐに顔が赤くなってしまうこと。


    クールフェイスは、不意打ちにとても弱いんだ。
    彼女に、いとも簡単に崩されてしまった。



    自分に冷静さを取り戻させる。キャビネットからファイルを取出し、求めていた資料を手に取った。


    そのまま彼女が出ていった戸から廊下へ出る。



    蒸し暑い準備室。
    全てはこの、熱さのせいなのだろうか。




    長谷山汐梨。


    彼女はこの女子校の3年生で。
    私は彼女のクラスの数学を受け持っている。



    しかし、言葉を交わしたのは今日が初めてだった。
    彼女はあまり学校に来ないから。



    「あんな子だったのか‥」


    職員室までの道程を、下を向きながら歩いた。
    彼女の存在を改めて感じる。



    『チューしてただけだよ?』


    彼女の一言。チューって‥。

    そんな当たり前のように言われたら、

    今は授業中なのよ!とか
    相手は女の子じゃない!とか、他にも。

    たくさんの疑問点に突っ込むコトすら出来なかった。



    それと同時に、あの囁きを思い出してしまった。



    『‥すごく可愛い。』



    こんなクールを作っている自分だ。可愛いなんて久しく言われていない。



    『‥可愛い』



    耳元から足の爪先までその声が響いていく。


    私は廊下の途中で立ち止まり、身震いしてしまいそうな程‥その声を感じてしまっていた。






    (携帯)
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■11199 / 1階層)  …素敵です♪
□投稿者/ はなこ 一般♪(1回)-(2005/07/22(Fri) 22:14:09)
    これからシオリちゃんが動いていくのか、とても楽しみですo(^-^)o 頑張ってくださいねん(*>∀<)ノ"

    (携帯)
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■11238 / 1階層)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(1回)-(2005/07/24(Sun) 01:52:53)
    先生視点のお話、新鮮で面白いです!!
    是非、続きをお願いします♪

    (携帯)
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■11275 / 1階層)  はなこさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(6回)-(2005/07/24(Sun) 22:42:23)
    素敵だなんて‥ありがとうございます。嬉しいです(^O^)
    汐梨、どう動いていくのか‥是非是非お楽しみにしていてくださいね。
    期待に応えられるよう頑張りますので☆

    それでは‥感想ありがとうございました♪

    (携帯)
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■11276 / 1階層)  えりかさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(7回)-(2005/07/24(Sun) 22:47:48)
    新鮮‥ですか?
    嬉しいな(^O^)


    先生視点って、書いていて何だかドキドキしてします(>_<)どうしてだろ‥(笑)

    ご期待に応えられるよう頑張りたいと思います。
    完結までお付き合い願えたら嬉しいです☆
    それでは‥感想ありがとうございました♪

    (携帯)
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■11277 / 1階層)  I'm so into you 4
□投稿者/ ハチャル 一般♪(8回)-(2005/07/24(Sun) 22:48:59)

    生徒名簿。
    いつもは、"/"がついている長谷山汐梨の欄。


    今日は、ついていない。



    「それでは授業を始めます。」


    3Bの授業。



    汐梨の出席に、心臓が高鳴った。




    「でさ〜」
    「えっ!まぢ!?」
    「ありえね〜」



    授業開始をはっきりと告げているにも関わらず、相変わらずのうるささに嫌気がさす。
    特に6時間目の授業は、寝てるかおしゃべりかで。
    チョークの音も無意味にかき消されてしまう。


    悪い子達ではない。
    ただ、あまり頭の良いクラスではないから、"数学"と聞いただけで始めからあきらめてしまっているのだ。
    それをどうにかするのも私の仕事なんだけど。



    「ですから、x=は‥」


    努力はしているのに報われない事が多い。
    優しくすればケジメが無くなるし、恐くすれば文句を言われて無視される。



    「ってか何で長谷山さん来てるの?」
    「知らな〜い。」
    「確か長谷山さんってさ‥」
    「え、何なに!?」



    いつしか話題は長谷山汐梨のものとなっていた。
    私に聞こえてるのだ、汐梨にも聞こえているだろう。


    彼女達にはxが何であろうと関係ないのだろう。まぁそんなもんだ。
    ‥けれど、その話題は気に入らないな。



    「なんかね、結構ヤバいことしてるらしいよ〜!」
    「え、どんな?」
    「聞いた話なん‥」




    バン――ッ!!


    教卓を力一杯叩いた。
    それ以上は聞きたくなかったから。



    「いい加減にしなさい。今は授業中よ、わかってる?
    そんなに喋りたいのなら出ていきなさい。」



    勢いのまま喋り続ける自分がいた。
    何故かこんな時も、口調は冷静なまま。
    癖って、恐いね。



    「・・・」



    静まり返ったクラス中を見渡す。


    顔を上げているのは数人。
    その中でも一際は熱い視線を感じた。



    『‥すごく可愛い。』



    汐梨だ。



    その視線に思わず昨日のコトを思い出してしまう。


    いや、ダメだ。忘れろ、と。
    そう自分に言い聞かせ、その視線から目を逸らした。


    そのまま授業の終わりを告げるチャイムが鳴るまで、教科書通りのつまらない授業を続けていった。
    私なりの、精一杯の強がりで。







    (携帯)
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■11283 / 1階層)  NO TITLE
□投稿者/ ャマ 一般♪(1回)-(2005/07/24(Sun) 23:51:48)
    ぁたしは先生…
    好きになった事があるのですが
    このぉ話を読んでいると、なんだかその時のあたたかい気持ちを思い出しました(*'∀')ノ
    幸せな気持ちになりました♪
    続きよろしくです♪

    (携帯)
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■11309 / 1階層)  ャマさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(9回)-(2005/07/25(Mon) 18:46:48)
    初めまして☆
    あたたかい気持ちに、なって頂けたんですか?
    とても光栄です(^O^)ありがとうございます。
    先生って、憧れますよね。ハチャルもよくキャーキャー騒いで‥ときめいていました(笑)

    宜しければ最後までお付き合いくださいね☆
    感想、ありがとうございました(^^)

    (携帯)
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■11310 / 1階層)  I'm so into you 5
□投稿者/ ハチャル 一般♪(10回)-(2005/07/25(Mon) 18:47:50)

    あー疲れた。
    何だかすごく力を使った気分。


    6時間目の授業が終わっても、まだまだ仕事はたくさんあるのに。



    めんどくさい。





    「ねぇ!」


    下りようとした階段の一歩手前。いきなり、後ろから腕を強く引っ張られた。


    慌てて振り向くと。



    あっ!!!



    「何で目合ったのに無視したの?」



    汐梨だ。
    ちょっと怒ってるみたいだけど。


    相変わらずその耳元にはキラキラとシルバーのピアスが光っている。


    って、それより‥



    「無視?」

    したつもりはない。


    「そう、無視したでしょ。せっかく目が合ったのに。」


    汐梨はそのままジッと私を見つめると、口の端を微妙にあげた。


    また、からかわれているのか。


    「別に、授業中に目が合うのは特別だとは思わないけど。」


    そうでしょ?と私は掴まれていた腕を、そっと振り払う。


    馬鹿にされて堪るものか。



    「うそ。目合った時、ドキドキしてたくせに。」


    何だその自信。
    そりゃ少しはドキドキしたよ。でもソレは昨日の不意打ちのせいだし、特別なコトじゃない、はず。



    「いいわ、勝手に言ってなさい。」


    話していてもどうにもならないと思ったから、その切れ長の目を睨んで去ろうとした。


    「気付いてないの?顔、赤くなってたよ。
    ‥昨日みたいに。」


    そう言って彼女は小さく笑った。


    その言葉に思わず私は振り返る。
    やっぱり見られていたんだ‥。


    振り返った私を見て、汐梨は無邪気に笑った。
    そりゃあもう、満足そうな笑顔で‥。


    「馬鹿にしてるの?」


    何だかその笑顔で一気に気が抜けた。
    この子はこんな顔もできるのか‥と少し感心。


    だから少しため息交じりで笑いながらそう言う。


    「してないよ。
    あっ!それが言いたかったわけじゃないの。」

    「何?」

    「今日の夜、暇ありませんか?」



    改まって汐梨はそう言うと、やはりまた。
    口の端だけを上げて、微笑んだ。






    (携帯)
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■11356 / 1階層)  I'm so into you 6
□投稿者/ ハチャル 一般♪(11回)-(2005/07/26(Tue) 23:35:11)

    「‥どうして?」


    突然の質問に驚いた。
    何だろ、一体。


    すると汐梨は、少し私に近付き、周りの生徒に聞こえないような小さく。


    「一緒にご飯食べに行こ?」

    笑みを帯びた声でそっと言った。



    や、待って。
    生徒に食事誘われちゃったよ。



    「どうして私が行かなきゃならないの?」


    もう6年教師をやっているけど。この性格でしょ?
    卒業生にすら誘われた事もなかった。
    別に、仲良くする気もないし‥と、生徒との交流は勉強以外に全くしていかなった。


    それなのに突然の展開。
    少し焦る。



    「いいじゃん、行こうよ!」


    わざと冷たく言っているにも関わらず、汐梨は引こうとしない。
    逆に‥はしゃいでいるみたい。


    「だから何で‥」

    私なのよ。昨日初めてしゃべったばかりじゃない。



    ため息混じりにそう言うと、汐梨は困ったように笑ってから。


    「先生と仲良くなりたいの。」


    照れたようにそう言った。




    見たことないようなその表情に。
    何故か胸が高鳴った。



    だって今まで。
    お説教されてキレてるか、ダルそうにしている汐梨しか見たことがなかったから。


    「やっぱりダメ、ですか?」

    改めて私に問うその瞳は、少しだけ不安の色が混ざっていた。




    (携帯)
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■11423 / 1階層)  I'm so into you 7
□投稿者/ ハチャル 一般♪(12回)-(2005/07/28(Thu) 12:50:31)

    「うーん‥でもねぇ」


    すごく嬉しかった。
    だってこの子が、だよ?
    汐梨が他の先生にこんな風に話かけているのなんて、見たことがないし。


    好かれるのは、悪くないから。


    だから、嬉しかった。



    「‥無理?」

    「まずいと思うのよね。こう‥」


    特定の生徒と必要以上に仲良くするのは。
    他の生徒に見られたら、問題になりそうだし。



    「あ、そうだ。うち来ない?それならいいよ。」


    あっ!と思いついた。問題は、他の人にバレなきゃいいだけなのだから。
    うん。我ながらナイスアイディア。



    私の答えを聞いた汐梨は何故かキョトンとしている。


    そのまましばらく沈黙が続いて。



    「え、本当に!?」

    驚いたようにそう言った。


    「嫌?なら別にいいけど。」

    「ううん、行く!行きます!」


    汐梨の顔がパッと明るくなる。それは高校生の笑顔だった。
    思わず私も小さく微笑む。



    「あっ‥でも条件付きだよ。」


    ちょっと意地悪してみようか。
    何だか気分が上がってきたから。


    そう言いながら私は、汐梨お得意の笑顔で笑ってみせた。





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■11657 / 1階層)  I'm so into you 8
□投稿者/ ハチャル 一般♪(13回)-(2005/08/03(Wed) 00:37:59)

    「え、何?」

    「もう学校にピアスつけてきちゃダメ。それ守ってくれるなら、いいよ。」


    そう言いながら、耳元のそのピアスに触れる。
    高そうなピアスだな‥。


    「‥ピアスは無理‥」


    くすぐったそうな素振りを見せてから汐梨は少し悩むと、うつむきながらそう言った。


    「じゃあ化粧。」

    「うっ‥それも無理ぃ。」


    分かり切っている答えだけどちょっと期待していた。
    私が言えば‥直してくれるかなって。


    「じゃ、今の話は無し。」


    キッパリと言ってみた。
    そのまま方向転換して階段を降りる。


    「‥はっ?え、まじ!?」


    慌てる汐梨の声をバックに、軽快に歩く。
    そりゃあもう、ルンルンと。


    歩く、歩く。


    歩く、あ‥?



    いつのまにか走ってきた汐梨が、私の前へと立ちはだかった。


    「何?」

    「髪‥黒くする。」


    ポツリ、とそう聞こえた。


    「え?聞こえないけど?」

    ほんとはばっちり聞こえていた。


    「もぉ!髪、黒くします!それならいいでしょ!!」


    汐梨は拳を握り締めて、一際大きな声で。
    どうにでもなれ!みたいな勢い。



    「よし、いいよ。」


    だから素直に。
    そのヒヨコみたいな天辺の髪を撫でながら、誉めてあげた。






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■11911 / 1階層)  I'm so into you 9
□投稿者/ ハチャル 一般♪(14回)-(2005/08/08(Mon) 22:59:10)

    「高橋先生、何かいい事ありました?」

    「え?」

    「顔、ニヤけてますよ(笑)」


    放課後の職員室。
    となりの席の佐伯先生に絡まれた。


    「んあッ!?本当ですか。」


    思わず両手で自分の頬を触る。
    言われるまで気付かなかった。すぐにいつもの表情を取り戻そうと、意識を集中させた。


    「‥あはははは!それじゃ逆に恐いですって!」


    一分くらい、そんな私を見ていた佐伯先生は我慢が切れたように笑い出した。
    失礼なくらいに大笑い‥。


    「‥そんなに笑わないでくださいよ。」

    少し冷めた視線を彼女に送る。


    けれど。
    自分でもわかるくらいに、顔の筋肉が弛んでしまっていて。なかなかいつもの表情が戻ってこない。


    「はは、すみません。
    けど、そんな高橋先生見るの初めてだったから‥つい。」


    言いながら彼女はまだ笑っている。
    確かに、佐伯先生と席が隣になってから3ヵ月程たつが、今までは事務的にしか話したことがなかった。
    と言うより私は、学校で笑うことは少ない。


    「やっぱ、何かいいことあったんですか?」


    左腕で頬杖をつきながら、私を見つめる瞳はまさに好奇心そのもの。


    佐伯先生は私より年上で、明るく気さくな女性だ。
    生徒からも絶大な人気を得ている。要するに、私とは真逆の"教師"。
    で、私は彼女が受け持っているクラスの副担任をしている。


    「や、別に何もないですよ。」

    「本当に?」


    言いながらパソコンに視線を戻した私に、彼女はなおも聞いてくる。


    「佐伯先生‥しつこいですよ。」


    何で今日はこんなに絡んでくるのだろう、と不思議に思いながら、再び視線だけを彼女に向けた。


    「はは!すみません。
    でも興味あるな。高橋先生ってクールだからさ、何考えてるのかなーって。」


    絶えず笑顔の彼女に。
    一瞬だけ、色気‥のような。
    射ぬかれる、そんな視線が見えた気がした。


    「いたって普通の人間ですよ。
    佐伯先生も授業プリント作らなくて大丈夫なんですか?来週はPTAもあるし‥帰れなくなっちゃいますよ?」


    その視線を振り払うように彼女に仕事を勧めた。


    だって、正直‥ドキッとしてしまったから。



    「あはは!はぁーい」


    なんて、返事はしてくれたものの。
    私の仕事が終わるまで、彼女の質問攻撃は止まなかった。






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■12503 / 1階層)  I'm so into you 10
□投稿者/ ハチャル 一般♪(15回)-(2005/08/29(Mon) 01:37:41)

    何とか今日中にやらなければならない仕事が終わり、すでに時計は午後六時を回っていた。


    帰り支度を整え、隣の佐伯先生に挨拶して職員室を出ると、真っ先に汐梨のクラスへと向かう。


    「‥お待たせ。」


    ドアのガラス越しに汐梨の姿を確認してから、ガラっと扉を開け。



    赤い光が差し込む放課後の教室。
    一番後ろの窓際に座る汐梨に声をかけた。




    ふと、外へ向けていた彼女の視線が私へと移り
    一瞬、表情が強ばった。
    なんて言うか‥驚いたような嬉しいような、いろんな感情が混ざった感じ。


    「遅いよー!待ちくたびれちゃった」


    でもそれは一瞬だけで、はにかんだ笑顔で彼女はそう言った。


    「ごめんね。思った以上に時間かかっちゃった。
    あたしの車、わかる?」


    「んーわかんないかも。」


    「駐車場の一番端にある、赤い車。確か赤はあたししかいないから、わかると思うよ。」


    「ん、わかった。」


    生徒玄関と職員玄関は別々だから、先に自分の車を伝えておく。
    まぁ、今の時間に帰る先生も少ないし、駐車場で誰かに見られることはないだろう。


    「じゃ、先に行ってるね。」

    「はーい」


    私はそう言い、教室を後にした。
    今夜の夕食、何にしようかな。なんて考えながら。





    先についた駐車場。
    車に乗り込み、エンジンをかける。



    ラジオでもつけようか?
    いや、音楽のほうがいいかな。



    なんて。
    何故か、妙に悩んでしまっていて。


    やっぱり今日の自分は変だ。調子がおかしい。





    だから


    「お待たせしました。」


    と、突然の汐梨の声に心底驚いた。


    私が悩んでいる間に、ちゃっかり助手席に腰をおろし、しっかりドアまで閉めていたらしい。



    気付かなかった‥。




    「じゃ、行こっか。」


    「はーい」


    いつもの調子を取り戻すかのように冷静さを保つ声で言ってから、私はアクセルを踏みこんだ。






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■12513 / 2階層)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(5回)-(2005/08/29(Mon) 10:38:18)
    待ってましたぁ〜(≧▽≦*)♪
    良い展開になってきましたね!!
    続き、ヨロシクお願いしまーす☆★

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■12518 / 2階層)  初めまして&感想です
□投稿者/ 雅(みやび) 一般♪(3回)-(2005/08/29(Mon) 13:41:34)
    初めまして。

    首をなが〜くしてお待ちしていました(笑)
    あ〜、どうなるんでしょう。メチャメチャ先が気になります。
    先生と生徒・・。淡いドキドキ感、懐かしくて(謎)
    ワクワクしながら、こっそり見ておりました。

    続き楽しみにしてます♪頑張ってください。雅(みやび)
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■12524 / 1階層)  えりかさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(16回)-(2005/08/29(Mon) 20:27:14)
    またまたご感想ありがとうございます☆

    日にちが空いてしまい、申し訳ありません(T_T)お待たせ致しました。
    夏中には終わる予定だったんですが‥夏は8月で終わりなのかな?
    だからハチャルの夏は9月いっぱい、ということにしました(笑)

    遅い更新となっていますが、完結までお付き合い頂けますと幸いです(^^)

    読者様からの感想はとても励みになりますので、これからも応援頂けると嬉しいです。
    感想、ありがとうこざいました☆

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■12525 / 1階層)  雅(みやび)さん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(17回)-(2005/08/29(Mon) 20:39:51)
    初めまして、今晩は(^O^)

    お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした(T_T)
    続き、気に掛けていただいて大変光栄です☆


    学生時代の淡い‥(笑)
    拙い文ですが、そう感じて頂けると嬉しいです。

    先生に恋をしたことのある方って多いと思うんです。そう言った読者様に、その時の想いとか‥思い出して頂けるように‥なんて大きな目標をたてています。

    ‥でも。実際、書いてるハチャルが一番楽しんでしまっています(笑)


    こっそりなんて言わずに、これからも応援いただけると嬉しいです(^^)
    感想、ありがとうこざいました☆

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■12526 / 1階層)  I'm so into you 11
□投稿者/ ハチャル 一般♪(18回)-(2005/08/29(Mon) 20:40:49)

    「どうぞ、好きに座って。」

    「お邪魔しまぁーす‥」



    駐車場に車を停めてから、汐梨をマンションの部屋へと招いた。
    ドアを開けた途端、ムワっとした空気が外の空気と入れ替わる。



    時計に目をやると。
    途中、買い物をしてきたためか時間は7時を過ぎていた。


    「ん?座っていいよ?」



    妙にソワソワしている汐梨に気付いた。


    玄関で何やら固まっている。


    「テレビでも見てて。
    ‥オムライス、作っちゃうから(笑)」


    「‥何で笑うのよー!」


    和ませようとからかうと、汐梨は照れたように頬を膨らませた。
    ソワソワした雰囲気が徐々に穏やかな空気へと変わる。



    先程車内でした、夕食の話。
    「何が食べたい?」って聞いたら
    「オムライス!!」だって。


    大人ぶってるくせに、素直な部分に笑顔がこぼれた。



    「別に(笑)
    あ、ご飯食べたら髪黒くするからね。」


    言いながら私はエプロンを身につけ、腰紐を結ぶ。
    本当は着替えたかったけど、まぁいっか。


    「‥へっ!?」


    何気なく放った一言に、汐梨は面白いくらいに驚いて。


    「さっきついでに買ってきたんだ。
    美容院でやるより、私がやった方が安上がりでしょ?」


    そう、いろいろ買い出したついでに。
    黒染も買ってきた。



    「え‥先生がやるの!?」


    「うん。嫌って言ってもダメだよ?汐梨から言いだしたんだからね。」


    でしょ?と振り向き様に彼女を見やると、



    「‥うぅ〜‥イキナリなんてずるい!」



    うつむきながら悔しそうにそう言った。



    「そう?いつやっても一緒じゃない。」


    言いながら、ソファの前で立ったまま話していた汐梨の肩をトンッと押してソファに座らせる。



    「大丈夫。あたし染めるの上手だから。たぶん。」



    そう言ってニコリと笑ってやると、汐梨は観念したような顔を見せた。



    「たぶんって‥もう!‥早くオムライス作って!」




    イジけているような汐梨のその表情は、やはり高校生そのものだった。



    「はいはい(笑)」


    可愛いな、なんて思いながら。
    久しぶりに作る二人分の食事に、いつも以上に手をかけた。






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■12563 / 1階層)  I'm so into you 12
□投稿者/ ハチャル 一般♪(19回)-(2005/08/30(Tue) 19:38:44)

    目の前で、おいしそうにオムライスを頬張っている汐梨。
    時折、笑顔で「おいしー!」と声をあげる姿を見ると、やはり独りじゃない食事はいいな、と思った。



    ん、あれ?



    「ちゃんとサラダも食べなさいよ。」



    サラダ食べてないじゃん。

    気付いた瞬間、まさか‥とは思いつつも食べることを促した。


    食べ途中のスプーンを口の前まで運んだところで、汐梨の目だけがコチラを向く。


    もう少しでなくなりそうなオムライスに対し、一向に減る気配のないグリーンサラダ。



    「野菜‥嫌い。」


    ジッと見つめてそう言うと、汐梨は視線を戻し、またモグモグと口を動かし始めた。


    予想どおりというか‥やはり味覚は完全にお子ちゃまらしい。



    「ダメよ、食べなきゃ。バランス悪いじゃない。」


    言いながら一人分のサラダが入ったガラスの皿をオムライスの隣へと移動させる。


    「‥でも嫌いだもん。」


    けれど汐梨はなかなか引かない。
    はなから食べる気はないらしい。


    「ひどいなーせっかく作ったのに。」


    だからイジけたように、そう言ってみせた。
    視線は、汐梨を見つめたままで。




    「‥先生が食べさせてくれたら食べれるかも。」


    少し悩んだかのような間をおいてから。
    うつむいたまま、ポツリと汐梨がそう言った。



    「え?」


    「食べさせて。」


    「って、何で‥」
    そこまで子どもなの?



    「じゃなきゃ食べない。」


    と、言いながらうつむいていた顔をあげた汐梨。
    その顔は、口の端だけ上げたあの笑顔。




    この顔‥初めは馬鹿にされているように感じたけど。
    この子なりのコミュニケーションかな、なんて思った。
    頑張って、大人ぶってる‥みたいな感じ。





    だから少し考えてから。
    一口分のサラダをフォークに乗せ、からかうように言った。






    「はいはい、お姫様。
    アーンして?」







    ほら、やっぱり。
    顔が真っ赤になってるよ?







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■12584 / 1階層)  I'm so into you 13
□投稿者/ ハチャル 一般♪(20回)-(2005/08/31(Wed) 20:05:26)

    「はい、これで最後!」


    皿に残ったレタスをフォークにさして、汐梨の口元へと運ぶ。



    "ヴー"と唸りながらも、嫌々に口を開けて。




    目を瞑ったままモグモグ。
    そして、ゴクッと飲み込んだ。



    「‥ご馳走様でした。」


    ゆっくり目を開け、食事の終わりの挨拶。
    けれど顔は苦々しい。



    「えらいねーヨク頑張りました。」



    それが可愛らしくて。
    間にテーブル挟みながらも、手を伸ばしその頭を撫でた。



    「‥!」


    子ども扱いするな!
    と言う視線が送られてくるが、気にしない。



    「じゃあ次は‥髪黒くしようね。」


    「んー‥本当にやるの?」


    「当たり前でしょ。約束したじゃない。汐梨が言いだしたんだからね。」



    言うと汐梨は黙り込む。
    私はクローゼットから適当にTシャツを取出し、イジけ気味の彼女に手渡した。


    「制服汚れちゃうとダメだから、コレに着替えておいてね。」


    隣に立ち、笑顔で言うと、座ったままの汐梨は。


    「‥」
    無言。



    「‥着替えさせて欲しいのかな?」


    だからその腕をひっぱり立ち上がらせ、そう言った。



    「え、あっ!?ちょっと!!」


    「汐梨ちゃんはまだ子どもだもんねー。
    先生がお手伝いしてあげなきゃねえ?」



    からかうようにクスクス笑いながら私は汐梨のネクタイに手をかける。


    と。




    「あー!!わかったわかったから!
    一人で着替えます!」


    その手を制して、汐梨は声をあげた。
    やっと諦めてくれたらしい。



    「うん、じゃあ着替えておいてね。
    お皿、片付けてくるから。」



    顔を真っ赤にして焦っている汐梨がおかしくておかしくて‥。
    笑みが勝手に零れていた。



    若い子と触れ合うのも、なかなかいいものだな。







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■12696 / 1階層)  I'm so into you 14
□投稿者/ ハチャル 一般♪(21回)-(2005/09/05(Mon) 22:39:55)

    食器を片付けた後、私も別室でTシャツと短パンに着替えた。
    で、床に新聞紙を敷いてからイジけている汐梨をそこへ座らせた。



    「もーまだイジけてるの?」


    「だってー‥黒いの嫌いだもん」


    座っている汐梨の後ろで、立ち膝のまま、私はその首元にタオルを巻く。
    汚れないようにね。


    巻き途中、何度か私の指が素肌に触れると、その度に彼女はくすぐったそうに首をすくめた。
    私はと言えば、そのツルツルとした若い肌の感触が気持ち良くて、偶然を装いながら指を滑らせた。





    「よし、できた!」


    30分以上たったところで、染液を洗い落とした汐梨の髪をドライヤーで丁寧に乾かす。


    途中から大人しくなり、私のなすがままになっていた汐梨は、長い沈黙の後にフーッとため息を吐いた。

    その横顔は何処か大人びていて、話したことのなかった時の‥冷たい印象の汐梨に見えた気がした。




    ってか‥





    めちゃめちゃ黒髪似合うんですけど‥!








    「‥っ何?」


    不機嫌そうな彼女はクイッと首をこちらに向け、ふてくされた目を見せる。



    「んーや、別に。」


    言いながら彼女を立たせ、その肩を両手で包んだまま鏡の前まで歩かせた。



    「ちょっ、痛いってば!」


    「いいからいいから。」



    わさわざ洗面所の大きな鏡まで連れて行き、


    「ほら、見て。」


    肩を抱いたままうつむいていた彼女の顔を上げさせた。


    「すっごい似合うと思わない?」


    鏡に映った汐梨を、穴が開いてしまいそうなくらいに見つめる。
    すると、キョトンとしていた汐梨の顔は見る見るうちに赤く染まって。



    「‥んなに見ないでよ。」



    わざと素っ気ないように、消え入りそうな声でそう呟いた。





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■12790 / 1階層)  I'm so into you 15
□投稿者/ ハチャル 一般♪(22回)-(2005/09/10(Sat) 23:37:05)

    「だってすごく似合う。
    やっぱり黒いのは嫌?」


    可愛い、と素直にそう思った。
    だからまた下を向いてしまった顔を、クスクス笑いながら覗き込む。



    「別に‥もう染めちゃったし。」


    そう言いながら照れたようにフイッとその顔を逸らす仕草は、どうにも胸にグッとくる。



    母性本能くすぐられる‥ってこーゆーコトだよね。


    まぁそれが女性相手であっても、私にとっては特別なコトじゃない。


    あ、汐梨もそーなのかな?
    女の子とチューしてたし‥。




    「‥」


    そんなコトを考えていたら、何だか胸が騒ついた。
    イライラに‥似たような感覚。


    「先生?どうかした?」


    いつのまにかコチラを向きなおしていた汐梨が、いぶかしげな顔の私に聞いた。


    「や、何でもないよ。
    それより時間大丈夫なの?」


    時計に目をやると時間は9時をとうに過ぎていた。


    「別に、大丈夫だよ。」


    一瞬、はかなげな目をした汐梨はスッとリビングに向かって歩きだした。
    たから私もその後ろを歩く。


    敢えて理由は尋ねなかった。人に話したくないこともあるだろうから。
    聞いても、強がりな汐梨は話してくれないだろう。




    「ねぇ先生。」

    無言のままソファに座り、クッションをギュッと抱きかかえた汐梨が口を開いた。


    「どうした?」

    その隣に座り、私もクッションを腕に抱く。




    「今日、泊まっていっちゃダメかな?」






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■13066 / 1階層)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(7回)-(2005/09/25(Sun) 22:04:13)
    続きが気になります
    (>□<。)!!
    お忙しい中だと思いますが更新を気長に待ってます(^_-)☆★

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■13092 / 1階層)  えりかさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(23回)-(2005/09/28(Wed) 00:19:33)
    こんばんは、えりかさん。

    すみません‥また更新が滞ってしまいました(T_T)夏中に終わらせる予定が‥もうすっかり秋です(泣)
    もう少し身の回りが落ち着いたら、また更新していきます。
    お待たせしてしまい、申し訳ありません。

    続き、また読んで頂けたら光栄です(^O^)

    いつも読んでくれて本当にありがとうございます。嬉しい限りです。
    感想、ありがとうございました☆

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■13288 / 1階層)  I'm so into you 16
□投稿者/ ハチャル 一般♪(24回)-(2005/10/11(Tue) 17:05:52)

    「何?いきなり」


    突然の汐梨の問い掛けに、思わず声が上ずる。
    ‥全く、この子には驚かされてばかりだ。


    そんな気持ちを隠しつつ、いつものように冷静を装った声で、隣に座る彼女に聞き返した。


    すると汐梨はクッションにギュッと顔を埋めて。


    「んー‥」


    少し考え込んでいる様子。



    そして、クッションに埋まった顔から目だけをコチラに向け


    「‥もっと先生と仲良くなりたいんだもんー‥」


    なんて飛び切り甘えたような声を出した。



    「‥何か嘘っぽいんですけど。」


    まぁそれが正直な感想で。
    だけど同時に。



    生徒相手に。
    胸が高鳴った。




    汐梨に聞こえてしまいそうな程、脈打つ鼓動。



    ってそれより‥
    何か他に理由があるんだろう、家に帰りたくないような理由が。
    無理強いをしてまで聞きはしないけど。



    だけど嘘は好きじゃない、だから汐梨からクッションを取り上げキッと横目で見やる。


    睨まれても汐梨は萎縮する様子もなく


    「あー!本当だって!ほら、明日土曜日だし♪」


    丁度いいじゃん、なんて言いながら私からクッションを取り返してニッコリと笑った。



    どうしようか、なんて結構悩んだ末に


    「家に帰りたくない理由でもあるの?言いたくないなら別にいいけどさ。」


    なんてありきたりな質問。
    だって他に言葉が思い浮かばなかった。




    思い浮かぶ、
    余裕が無かった。






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■13302 / 1階層)  I'm so into you 17
□投稿者/ ハチャル 一般♪(25回)-(2005/10/12(Wed) 20:18:37)

    「ん?そんなの無いって!信じてよ〜」


    装い作った私の声を、彼女は"真剣"と取り合ったようで。
    妙に慌てた素振りでそう言ってみせた。


    「ふーん。」


    怪しい。
    絶対何か有りそうな。



    そんな雰囲気が二人を包んだ。




    「‥う〜ん‥
    先生のコトもっと知りたい、ってのは本当だよ?」



    言葉に続く、あの笑顔。
    からかうようなあの瞳。




    また、からかわれてる‥



    だから思い切って選んだ無言戦略。
    馬鹿にされるくらいなら、しゃべらないもんっ。





    そうして始まった妙な沈黙を、
    諦めたかのような溜息で汐梨が破った。



    「んー‥本当はずっと前から先生のこと気になってたんだー」



    うつむき加減で、ボソボソと言葉を吐く汐梨。



    その真剣さを帯びた声に、聞き返す。


    「え?」


    よく、聞き取れない。
    見えない彼女の顔を覗き込むようにする。‥と



    「あーもうっ!そんなに可愛い顔しないでよ!」



    バッと顔をあげた汐梨は、私の肩をグッと掴み、視線を絡ませた。


    「へ‥はいっ!?」


    突然のことに思わず馬鹿みたいな声をあげ、ビクリと肩が震える。


    だけど汐梨は視線を外してくれない。




    再び訪れた沈黙に。


    汐梨はスーっと大きく息を吸い込むと、



    「‥初めて見た時からずっと先生のこと気になってたのっ!
    綺麗なのに全然無表情で。だから‥何か気になっちゃって。見かける度に目で追うようになってて。
    それなのにあの日、今まで見たこと無い反応ばっかりしてる先生見て、すっごく可愛い人だなって思ったの。
    だから、もっともっと先生のこと知りたくなっちゃったのっ!」



    勢いよく言葉を吐き出すと、小さく息を整えた。


    ‥逆ギレみたいな?
    そんな勢いでしゃべっていた汐梨だけど。



    その言葉一つ一つがつたいなくて、暖かくって。



    見つめた瞳は、子犬のように潤んでいて。



    外さないままのピアスをつけた耳まで、真っ赤に染まっていて。




    愛しさを、感じた。








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■13338 / 1階層)  I'm so into you 18
□投稿者/ ハチャル 一般♪(26回)-(2005/10/14(Fri) 19:31:09)

    あ、やばいな。
    今めちゃくちゃドキドキしてるんですけど。


    ‥生徒なのに。




    「ちょ――っ先生」


    「‥‥‥‥ん?」


    「無言、やめて?」




    どのくらいだったか。
    沈黙が続いていて。


    再び私に視線を合わせた汐梨は、
    からかう――とは程遠い、自信の無い、不安気な瞳を見せていた。




    「あぁ‥ごめん。」

    やばい、本当に。
    何でこんなに胸が高鳴るのだろう。


    作った自分が今にも崩れてしまいそう。





    抱き締めて、抱き締めて、抱き締めて。






    キスをしたい。







    溢れてしまいそうな欲望を、理性が必死に抑えようとして。
    無意識に、目を逸らしてしまった。





    冷たい空気が、
    妙な雰囲気が、辺りを漂う。




    すると。
    私の肩をつかんだままの汐梨の手に、ギュッと、力が入った。





    「先生」


    「ん?」
    汐梨の目を見ることができない。




    「先生」


    「何?」
    フローリングを見つめたまま、応答する。





    「先生っ!」



    それと同時に。
    グイッと顎を掴まれて、無理矢理顔を上げさせられた。




    再び絡んだ視線、
    動けなくなる。





    そして‥。




    「‥っ!」






    力一杯、抱き締められていた。







    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■13387 / 1階層)  I'm so into you 19
□投稿者/ ハチャル 一般♪(27回)-(2005/10/17(Mon) 22:26:39)

    背中に回された腕が。
    優しく、撫でるように上下する。



    スッ、スッと、服と腕との擦れる音が、静けさを纏った部屋に響いた。




    私はやっぱり身動きが取れなくて。
    汐梨の首元に顔を埋めたまま、胸の高鳴りを必死に抑えようとしていた。





    でもこのまま。




    このまま、流されてしまうのも悪くないと思った。





    「先生‥」


    汐梨は少し身体を離し、私との間に距離を作る。



    背中に回されていた腕は、いつのまにか
    肩へ、二の腕へ。




    彼女は私をジッと見つめて、
    自然に、本当に自然に両腕を横に広げさせると。




    スーッと。
    両方の指先へ自分の両手を移動させた。




    いやらしく、二人の指が絡まる。





    「‥っ!」



    慣れてる、絶対慣れてる!!



    そう思っても、絡んだ指先から目を逸らすことが出来ない。






    彼女の、空気が変わった。




    「ふふ‥先生顔真っ赤だよ?」


    初めて言葉を交わした時のように、甘く、甘い声。



    覗き込むようなその瞳と、クスリと笑ったその口元。



    感覚に、溺れてしまいそう。



    「ドキドキ、してる?」


    からかうような口振りにすら、今は高鳴りを感じてしまう。



    「‥するわけないじゃない。」


    強気なことを言ってはみても。無意識に、声音が弱々しくなる。



    「嘘でしょ?
    だってほら‥」






    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■13388 / 1階層)  I'm so into you 20
□投稿者/ ハチャル 一般♪(28回)-(2005/10/17(Mon) 22:27:50)

    そう言って彼女は右手の人差し指と中指を私の左手首に移動させた。




    「‥脈早いよ(笑)」


    「っ―‥!!///
    何で脈計るのよっ!!」



    フワフワしていた甘い空気は、彼女の行動で笑いに変わった。



    あはは、と楽しそうに笑う彼女に何だかホッとしたけど。




    ‥ものすごく恥ずかしい。
    嘘を吐けない鼓動を、知られてしまう。
    全て、見透かされてしまう。



    自分を装う余裕なんて無かった。




    「‥そう。こーゆー先生をもっと見たい。もっと知りたいの。」


    汐梨は満足気に妖しく微笑むと、私の耳元にその薄い唇を寄せて



    「すごく可愛い。」



    あの声で。甘い声で。
    あの時と同じ言葉を囁いた。



    さっきまでの可愛い汐梨は?照れたりイジけたりしてた汐梨は?
    何処に行ってしまったの‥。

    なんて考えたら、悔しくて少し泣きそうになった。





    もうその時点で。
    すっかり豹変してしまった彼女のペースに、完全に呑まれてしまっていたんだ。







    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■13538 / 1階層)  I'm so into you 21
□投稿者/ ハチャル 一般♪(29回)-(2005/10/23(Sun) 22:39:13)

    段々と、汐梨の体重が私の身体に加わっていって。
    そっと、ソファの上に押し倒された。



    そして彼女は優しく私の髪を撫でながら。


    「‥抵抗しないの?」


    そっと囁き、クスクスと響く笑い声。




    だけどその手は、かすかに震えていた。
    小さく、震えていた。




    それは愛しさを感じさせるものだった。



    「しないよ。」


    だから、はっきりと口にする。
    抵抗する気なんて、もうとっくに忘れたもの。



    そう言った私に、
    汐梨はキョトンとした顔を見せると。


    「先生‥」


    また、子犬みたいな瞳をした。



    それが可愛くて可愛くて。



    「来て?」


    ニヤリと笑いながら彼女の首元に腕を絡ませる。



    狭いソファが二人でいっぱいになって。
    激しく、重なり合う唇。




    「どうなっても知らないからね?」


    途切れ途切れの吐息の合間。
    言いながら汐梨は妖しく微笑んだ。




    その瞳に眩暈を覚え。



    止まらない欲望のままに、
    彼女の首にしがみついていた。








    (携帯)
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▲[ 11160 ] / 返信無し
■13622 / 1階層)  Re[1]: I'm so into you
□投稿者/ さぼ 一般♪(8回)-(2006/02/12(Sun) 00:24:16)
    先生と生徒の恋・・かぁ。
    現実的に結構そういう片思いしてる人は多いですよね。
    そう人にとっては夢のようにうらやましい話だと思いました(笑

    なんだか先生の外見が天海優輝さんが出てきて、安っぽい自分の頭に笑ってしまいました(苦笑

    クールビューティー・・なりたいけれどなれない女性の理想像ですね。
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