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Nomal スマイルストリップ /mama' (06/04/17(Mon) 01:09) #14217
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Nomal スマイルストリップ 38 /mama' (07/04/09(Mon) 00:25) #18561 完結!
Nomal ありがとうございました /mama' (07/04/09(Mon) 00:35) #18562 完結!
│└Nomal Re[2]: ありがとうございました /miya (07/04/10(Tue) 02:10) #18577
Nomal miyaさんへ /mama' (07/04/10(Tue) 21:25) #18579 完結!


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■14217 / 親階層)  スマイルストリップ
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2006/04/17(Mon) 01:09:42)
    我ながら
    ぶきっちょだ


    みっともないことだ
    わかってる


    でも

    残り半年の学校生活

    少しでも……

    言葉を交わしたくて?
    なにかがが欲しくて…?


    ううん

    違う

    そんな計算
    する余裕なんてなかった

    あぁ、この問題を作ったのも印刷したのも
    先生なんだな…そう思ったらたまらなくて

    思考が止まった


    杉山先生…

    ううん…眞子先生



    眞子先生…



    また、前みたいな笑顔が見れたらいいのに。

    前みたいに頭をなでて。

    たとえ髪が絡まったって構わないから。
    子供扱いするななんて、
    もう…怒らないから。


    眞子先生…。



    その日出した
    私の答案

    「7番・倉山理子」

    出席番号と名前だけの…。



    (携帯)
[ □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 14217 ] / 返信無し
■14218 / 1階層)  スマイルストリップ 1
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2006/04/17(Mon) 01:14:50)
    配られた答案用紙に、
    「仲田未樹」
    と。自分の名前を書いて。
    カリカリ問題を解くものの、私はどこか上の空だった。
    休憩時間のトイレで、誰かが言ってたセリフがまわる。

    「男なんて単純。
    その気にさせるなんて簡単だよ。」

    なんでもね、知っているような顔して言う子、いるけどさ。まぁ、単なる自意識過剰でもないと思うわけで…。
    そういう意味では、私も"男"そのもの。

    私こそ、まさに“単純で簡単な”イキモノだから。

    だってさ。

    瞳うるませて
    真っ赤な顔して
    声なんてかすれちゃって

    やばいんだって、

    あれは反則だよ。

    可愛く見えない訳がない。
    可愛く見えちゃうんだよ。

    単純に、さ。
    ソノ気に…なるじゃない?

    世間では、これを「遊び人」っていうらしい。
    昨日。親切な下級生がそう指摘してくれたおかげで、やっと私も自覚した…ような気がする。

    ……仲田先輩がそんな遊んでたら、好きなのに転校してったマミがかわいそうです。
    もっと真剣に考えて下さい!!

    初対面だった、名前すら知らない子の言葉だけが残ってる。

    …遊んでるわけじゃないんだけどなぁ。

    どれ位ぼんやりしてたのか…

    キーンコーン♪
    カーーンコーーン♪


    テスト終了の合図が鳴った。

    ―――と、同時に私は席を立つ。
    一番後ろ座席の生徒が、縦列全員の答案を回収する役目なのだ。
    チラチラ見えてしまう。その答案達の一部一部………。



    あれっ??



    一瞬目を疑った。


    白紙



    まっさらの






    (携帯)
[ 親 14217 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 14217 ] / 返信無し
■14219 / 1階層)  スマイルストリップ 2
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2006/04/17(Mon) 01:20:36)
    答案そのものは何くわぬ顔して教卓においてきたものの、
    しっかりチェックしてしまった。

    「7番 倉山 理子」

    私から見たら、ほんとにおかしい位いつも笑顔で
    明るい…優等生。

    へぇ…こんな子でも
    こういうことしちゃうんだ。

    これが、その時の感想。


    直接言葉を交わしたことも記憶にはない。仲が悪い訳でもないけれど、もちろん親しい訳でもない。
    そんな、クラスメイト。


    ま。それ位の関係だったんだよね。

    その時までは…さ。



    さて、二教科目。
    彼女の背中を目で追ってしまう自分。


    これもやるのかな?


    教科は同じく英語。

    手は、動いてる。



    はたして…

    結果は?



    ぼんやりと眺めてたら、むくむくと…

    芽生えた好奇心。

    白紙で提出か…


    ふーん。




    そのまま
    MONOの消しゴムで。
    私も答えを消した。


    ぐるりと見渡すと、
    同じセーラー服の群れが
    同じように必死にシャーペン走らせていて。

    悪いけど笑ってしまった。

    へぇ…。
    こんな眺めもあったんだ。

    それ位の感覚で、

    仲田未樹と、名前だけ残った


    真っ白な答案を出した。



    彼女の行為に、どんなわけがあるのかも知らずに。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14236 / 1階層)  スマイルストリップ 3
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2006/04/18(Tue) 15:35:07)
    呼び出されたのは翌日の放課後だった。

    英語担当、杉山眞子。
    別名、鉄の杉山。もしくは杉鉄。

    堅いのよ。とにかく。
    隙がない。
    冗談通じない感じでね。
    いっつも無表情だしさ。

    呼び出されたときは、しまった…って。思った。

    うーん。

    まさか、倉山さんににつられてやりましたなんて、かっこ悪いことは言えないしな…。

    もっともらしい理由を考えねばと、ない頭ひねってたら。後ろから声をかけられた。


    倉山理子さん?


    そんなに




    にらむなよ。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14237 / 1階層)  スマイルストリップ 4
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2006/04/18(Tue) 15:40:14)

    「なんで?」

    いきなり廊下までひっぱり出され、間髪いれずに倉山理子の問い詰め口調。

    真剣そのものって顔してさ。
    おかげでこっちは、変な余裕が出ちゃうじゃない。

    「そっちこそ、なんで?
    どうして白紙?」

    腕組みしながら柱にもたれる。
    と…
    みるみるうちに…

    あれ?あれれ?

    「なんで仲田さんが知ってるのよっっ!」

    うるんだ瞳
    …真っ赤な顔
    ……かすれた声

    そのまま、くるりと背を向けて、足早に歩き始めた。

    「ちょっと!ついてこないで!!」

    「いや…だって行き先同じだし」

    呼び出されたLL教室は校舎の端。誰もいない中。スタスタと歩く優等生の後ろを、私が早足で追いかける感じ。

    ゴム底の上履きを鳴らし、
    茶色い髪を揺らして、
    いかり肩なのは…、ん?私のせいか。

    改築を重ねた古い校舎は、所どころ継ぎ目に段差がある。
    肩までの髪とセーラーの襟がその度に舞い上がって、のぞいたうなじにさえ朱がさしてるように見えた。

    「…好きなヤツのことでも、考えてた…?」

    ―ピタッ

    と、音がしたような気がした。立ち止まる倉山理子。

    あぁなんて分かりやすい…

    「仲田さんには…」

    言葉の途中だった。

    「早く中に入りなさいっ!」

    げっ。出た!杉鉄っ。



    いつの間やらLL教室到着。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14258 / 1階層)  スマイルストリップ 5
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2006/04/20(Thu) 15:34:05)
    長机に仲良くならんだ二枚の問題用紙の片割れを、優等生は仲悪さげにひったくった。
    やつは、ライティング。
    私は、グラマー。

    「解いたら提出するように」
    と、用件だけを述べて。
    杉鉄はLL教室の音響部屋へ。

    広い階段教室の中に、二人きり。

    ん…。

    意識してるのは、私だけみたい。
    彼女はさっそくテストに取り掛かったように見えた。

    ふーん。

    夏の濃い緑をバックに
    あっ…
    なかなかに可愛い子だったんだなぁ…。

    ん…。


    手持ちぶさたなシチュエーション。

    おうっ…
    フデバコないや…

    「…倉山理子さん?」

    眉だけがピクンと動いた。

    「シャーペン貸して〜」

    視線も合わさず、彼女の横に転がされたシャーペンと消しゴム。

    んー。

    そばまで行って、受け取る。
    あれ?

    ……???!


    答案には、

    濡れたあと。



    「……嫌われたぁ…っ」



    表情はみえなかったけど。
    一言で充分。


    あぁ…相手は杉山先生か。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14259 / 1階層)  Re[1]: スマイルストリップ
□投稿者/ 彩 一般♪(2回)-(2006/04/20(Thu) 17:25:46)
    続き楽しみにしてます☆
[ 親 14217 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 14217 ] / 返信無し
■14274 / 1階層)  スマイルストリップ 6
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2006/04/21(Fri) 15:38:39)

    でも。
    ほんとのびっくりは、その後にやってきた。

    「解かなきゃ」

    猛然と…そんな言葉がぴったり。
    目をこすり、スンッと鼻を鳴らして
    シャーペンを手に
    問題を解き始めた。



    なんなんだ…こいつ。



    元々優等生の答案と。
    一夜漬け劣等生の答案。

    見比べて杉鉄はため息をついた。

    白紙答案の結末は、意外なことにたった三回の補習だけ。

    なぜか問い詰めも説教すらもなかった。


    今回の答案で成績をつけると言ったその表情には、いつものような冷ややかさはなく…むしろ人間的。
    戸惑いや迷いが透けて見えて。

    拍子抜けしてしまった。


    ある意味…無罪放免。




    理由はあなたにあったんだね。

    理子。




    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 14281 ]
■14275 / 1階層)  スマイルストリップ 7
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2006/04/21(Fri) 15:41:11)

    「失礼しました。」

    一礼して教室を出る倉山理子の後ろを、軽い会釈のあと追いかけた。

    私達のクラスの教室は、すっかり空っぽで、さすがにテストあけの今日は
    運動部の掛け声も吹奏楽部の演奏も聞こえない。
    しんと静かだった。

    「これ…ありがとね」

    シャーペンと消しゴムを返すと、きついまなざしでにらまれた。

    「言わないでね…。」

    「は?」

    「なんで白紙で出したのか…知らないけど、
    先生を困らせたいわけじゃないから。」

    「…」

    「補習もちゃんと出て。」

    「いいじゃん。好きな相手と二人っきりかもだよ?
    むしろ私がさぼった方がさ、倉山さん的にはラッキーなんじゃない?」

    イスの背もたれに寄り掛かるように逆向きに座りながら言うと、つかつか寄って来て…
    優等生の平手が
    パチンと頬にとんだ。

    思わず、私も手が出る。

    反撃の手を掴むと、あいた手で胸の辺りを叩かれた。

    「仲田さんのそういうとこ大キライ。
    いっつもいい加減で、適当で。」

    「はぁ?」

    「後輩とっかえひっかえ遊んで…もて遊んで…」

    力の入った両手を、私がつかむような格好になった。

    そのまま勢い余って床に崩れる。

    そばの机やイスがガラガラ倒れた。





    (携帯)
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▲[ 14275 ] / ▼[ 14283 ]
■14281 / 2階層)  mama'さん
□投稿者/ saya 一般♪(1回)-(2006/04/22(Sat) 19:18:49)
    なんだか好きなお話です(*^_^*)続きを楽しみにお待ちしております♪

    (携帯)
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▲[ 14281 ] / 返信無し
■14283 / 3階層)  sayaさんへ(予告付き…笑)
□投稿者/ mama' 一般♪(9回)-(2006/04/23(Sun) 05:21:55)
    書き込みありがとうございます。好きだなんて…わが子にそう言ってもらえて嬉しいです(^-^*)

    この先は…未樹の胸がはだけるドキドキシーンが出て来るかも。もちろんお相手は…。
    週明けにチマチマ更新してきたいなと思ってます。
    また読んで下さいませm(__)m

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14276 / 1階層)  彩さん
□投稿者/ mama' 一般♪(8回)-(2006/04/21(Fri) 15:44:20)
    どんなの楽しみにしてもらえてるんだろ…と
    にまにま嬉しく読みました。書き込みありがとうございます。

    (携帯)
[ 親 14217 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 14217 ] / 返信無し
■14293 / 1階層)  スマイルストリップ 8
□投稿者/ mama' 一般♪(10回)-(2006/04/25(Tue) 16:07:10)
    2006/04/25(Tue) 16:11:09 編集(投稿者)

    「真剣になったことなんてないんでしょっ」

    そのままの体勢で、彼女は泣き始めた。

    静かな教室に倉山理子の泣き声だけが響く。

    泣きながら叩かれた。

    握り拳が当たるけど。

    そんなものより、その言葉の方が私には痛くて…手から力が抜けた。


    なぜ痛いのか。
    同じ言葉を、ついこの前も言われたはずなのに
    なぜ今になって刺すような痛みが走るのか。

    私には分からなかった。

    わからないのに
    わからないのに

    あれ…

    涙が出てくる…。


    もつれた腕が絡まって、倉山理子の床を着いた手が、私の襟元を引っ張った。

    プチプチ…ッ

    ホック留めのリボンが
    セーラーの襟が
    一気に開いて…大きく胸元をはだけさせ…

    ぎょっと我に返って距離を置いた彼女が、その涙に気付いてしまった。


    「押し倒される側になったの…初めてかも」


    ゆがんだ口元のまま余裕ぶったって、ごまかせるわけじゃないのにね。




    (携帯)
[ 親 14217 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 14217 ] / 返信無し
■14294 / 1階層)  スマイルストリップ 9
□投稿者/ mama' 一般♪(11回)-(2006/04/25(Tue) 16:19:51)
    2006/04/25(Tue) 16:23:41 編集(投稿者)


    「優等生が泣いてばっかだから、私にまで移ったじゃん…」

    「………。」

    何も言わず倉山は立上がり、申し訳なさそうに涙目で私を見た。

    「そんな顔するなよ。なんて言っていいか分かんなくなる。」

    すそを払って私も立ち上がった。


    …真剣になったことなんてないんでしょ

    いつもいい加減で…


    あなたみたいな人、大嫌い!


    あぁ…でも……


    「補習にも行くし。
    だから、泣くな。

    誰にも言わないから。」

    言えないよ。

    「秘密にして…くれる?」

    するよ。

    本気。



    視線だけでうなずいて、
    顔をあげる。

    安堵する頬のゆるみを見て
    この恋の秘密を分かち合うのは、
    私が初めてなんだと
    自覚した。



    それは、ちくんとしたトゲを伴う自覚…。



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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14298 / 1階層)  スマイルストリップ 10
□投稿者/ mama' 一般♪(12回)-(2006/04/26(Wed) 16:02:03)

    「…良かったぁ……」


    涙目で笑った彼女を見たら

    はたかれたことも
    罵られたことも

    どうでも良くなる。


    やっぱり…単純なイキモノらしいよ、私。


    慌てて邪な感情を振りほどくと、なおも無邪気な笑顔の倉山理子。


    そんな顔されちゃうとさ…

    自然に、右手が出た。

    びくっと首をすくめる優等生の頭をくしゃくしゃっと

    なでた。

    あらら
    顔が真っ赤…

    「やっぱりふざけてるじゃないっっ」


    叫ぶ声が教室に響く。

    叩こうとする手をよける。

    「また、押し倒す気〜?」


    更に

    赤くなって…





    (携帯)
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■14299 / 1階層)  スマイルストリップ 11
□投稿者/ mama' 一般♪(13回)-(2006/04/26(Wed) 16:05:07)

    「やっぱりっ!
    一瞬だけ、いい人かもって思ったのにっ
    仲田さん、本当に本当にっ
    まじめに補習でる気あるの?」

    倉山理子が眉を上げて怒るのとは対照的に、私は自然と笑ってた。

    声上げて…。


    「未樹って呼んでよ。」

    よけながら…一気に言った。
    「かたっ苦しいし?
    まじめに授業受けたこともないのにさ
    補習の間中そう呼ばれてたら、さすがに…さぼりたくなるかも?」


    ぐっと…言葉に詰まったあと。
    一言返ってきた。

    「なら…私のことも優等生って呼ばないでよ…」

    「わかった。じゃあ…」



    理子。



    初めて呼んだ時、ちょっとびくっとしてたね。

    あ…そういえば、クラスの子はみんな
    倉ちゃんとか
    呼んでたんだっけって気付いたんだ。

    特別感ってやつ?

    なんだかこんな関係も悪くないって思えたんだよ。


    ん…。
    悪くない。

    むしろ…新鮮でいいじゃない。




    (携帯)
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■14312 / 1階層)  スマイルストリップ 12
□投稿者/ mama' 一般♪(14回)-(2006/04/28(Fri) 15:27:38)
    そして初日。

    無難に補習を終えた私たち。

    他にも赤点組が数人が参加してたけど、なんだかジロジロ見られて居心地悪い。
    それもそうだ。
    私達は一番上のAクラスで。
    受験必須の英語に赤点なんて、ありえない。
    アルファベット順にそういうクラス編成なんだ。

    「そういえば…未樹。あの答案でよくウチのクラスにいるね?」

    …だいぶわかってきたんだけど。
    理子はにこやかなふりして、実は毒舌でストレートな物言いをする。

    「入試、トップだったし…」

    「はぁ?昔はまじめだったんじゃん。じゃぁなんで?」

    「んー。第一希望に落ちたらどうでも良くなって…かな。」

    どこ?って理子が聞いて来るから、正直に言った。私にしてはそんなことも珍しい。

    ウチの県内でトップクラスの偏差値…東大合格数がウリのまじめ校。
    基本的に中高一貫だから、高校からの入学はかなりの高倍率になる。

    IT成金なウチの両親の趣味だった。

    「そこ…私も中学入試で落ちてる。
    おんなじとこ落ちたんだね。私達。」

    ちょっと顔をしかめ、理子はうつむいた。

    「ウチのお姉ちゃんが通ってた…。」

    今イギリスの大学にいるんだけどね。
    と…。独り言みたいな声で付け足した。

    「ふ〜ん。」

    何気ない風を装ってうなずく。


    お姉さんの存在…。

    それは理子のウィークポイントなんだと、すぐに理解できたから。




    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 14343 ]
■14313 / 1階層)  スマイルストリップ 13
□投稿者/ mama' 一般♪(15回)-(2006/04/28(Fri) 15:37:51)
    行きに近所のパン屋で買ったメロンパンをかみしめ、コーヒー牛乳で流し込む。
    なにせ育ち盛りの女子高生。
    すぐにおなかが減る。

    横にいる理子は、カロリーメイトに野菜ジュース。
    健康なんだか不健康なんだか分からないメニューだった。
    補習後の教室に二人。
    窓の外を眺め、むしゃむしゃ間食する私達。


    「私、お姉ちゃんみたいになりたかった…

    お姉ちゃんみたいになれたらいいのに…」

    うつむいたままの理子。

    …ん。

    「いいじゃない。

    理子には理子の賢さがあるし…」

    それにと、言葉を足した。

    「理子かわいいじゃん?」

    にっと笑って顔を寄せ、


    頭をなでた。


    「んね?」

    かがみ込む私と上目づかいの理子の視線が合う。
    手からカロリーメイトのかけらが転がり落ちる。

    と…たちまち理子の罵声がひびいた。
    しかも大音響で。

    「ほ〜ら。怒ってる顔もかわいいよ〜。」

    笑いながら。

    「信じらんないっ。
    いっつもそうやって口説いてるんでしょ?」

    背中をぽかぽか叩かれる。

    こういうやり取りが好きな私は、少しエスっ気があるのかもしれないや。
    いや…罵られて楽しいんだからエムなのかもね。



    「ん?元気でた?」

    振り返って、笑いかける。

    髪が表情を隠してて…
    サラサラなびくネコッ毛がきれいだった。

    「…髪がくしゃくしゃになったじゃない。」

    文句を言いながら、手櫛ですく
    消え入りそうな小さな声を背中に聞いた。



    そして終わる初日。




    (携帯)
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■14343 / 2階層)  mama’さん
□投稿者/ saya 一般♪(2回)-(2006/04/30(Sun) 17:11:10)
    予告つきメッセージ
    あざす!(笑)
    個人的に理子という名前が
    すごく好きです。
    かわいくっていいですねぇ♪
    二人が仲良くなっていく様に
    少しどきどき
    ちょっとニヤニヤしながら
    読ませていただきました。
    また続きを楽しみにしています。

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▲[ 14217 ] / 返信無し
■14390 / 1階層)  スマイルストリップ
□投稿者/ mama' 一般♪(16回)-(2006/05/08(Mon) 18:32:01)
    2006/05/08(Mon) 19:16:33 編集(投稿者)
    2006/05/08(Mon) 18:51:41 編集(投稿者)

    ものごとの始まりはいつだって気分が浮き立つ。
    上手くいかないことすら、ちょっとしたハプニングとして楽しめる感じ。

    理子のフグみたいな膨れっつらなんて、思い出しただけで笑ってしまう。

    自宅のベランダで冷たいジンジャーエールを飲みながらにやけてると、姉が帰って来た。

    「未樹ティただいまぁ〜」

    ふにゃけた声で抱き付いて来て、私の手からグラスを奪う。

    「つまらんモノ飲んどるのぉ〜」

    そばの瓶を綺麗なジェルネイルの指先でつまみ上げる。

    「空っぽ」

    「はいはい」


    あやすように脇から手を差し込んで座らせ、一旦キッチンへ。

    持ってきたグラスを一気に飲み干して、…濡れた上目遣い。
    「もっと。」

    この人は、こういう仕草がひどく似合う。
    私は苦笑しつつ、片手のピッチャーでおかわりを注いだ。中で、つぶれたクシ切りのライムが踊る。

    「未樹ティ…ホストみたい。」

    「チホ姉、飲み過ぎ…酔っ払いのお客様は入店拒否で。」

    グラスを取り上げると、頬に柔らかな二の腕の感触がきた。

    「…ごめん〜ん」

    そんな酔っ払いの行動すらかわいいと思ってしまう。



    女の子は
    …可愛いイキモノ


    刷り込んできた元は、確実に私の姉。

    って言っても義理なんだけどね。

    ウチは14のときに再婚してる。
    お互い小さい頃を知らないし、血のつながりもないから余計なんだと思う。

    素直に、可愛いと思うんだ。


    「未樹は、パパ似だよね…きっと。
    女泣かせな顔だちだもん。」

    私の前髪をかき上げながらつぶやく。


    うん。
    そうだよ。

    この外見で生まれたこと、感謝してます。


    でも、最近もて余し気味なんだ。

    大嫌いとか言われちゃうし
    ひっぱたかれるし…
    罵られるし…


    「未樹ちゃん…顔がニヤけてるよ?」

    「え?…ほんと?」


    口元に手をやる。


    「本当。」

    人差し指を私の唇にあてて、チホ姉はジッと私を見た。



    「好きな子でも出来たの?」



    ごめん。

    大爆笑。


    チホ姉、それはありえないよ。



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■14391 / 1階層)  スマイルストリップ 14
□投稿者/ mama' 一般♪(17回)-(2006/05/08(Mon) 18:36:10)

    補習二日目。

    前回の確認テストから始まった授業のあと、私だけがなぜか杉鉄に呼び出された。



    「今回の答案…」

    差し出された一枚の紙切れ。
    「おっ♪満点♪」

    「…ねぇ。なんで?」

    「いや…私、やればできる子なんですよ〜」

    へらっと笑う。

    「仲田さん?」

    杉鉄の目は真剣。

    「いや。テストの日は頭痛がひどくて…」

    上目づかいにうかがうと、表情は硬いまま。

    「すいません。」

    ぺこっと一礼。
    なおも変わらない杉鉄の目。

    「私の教え子にも一人、白紙答案出した子がいたの。
    この学校の子じゃないけど。
    何か自分で解決出来ない悩みがあったら、ちゃんと誰かに頼ってね。
    もちろん私でもいいから。」

    へぇ…こんな模範的なお説教が、鉄の杉山から聞けるなんて…ちょっと意外だわ。
    同じことを理子にも言うのかって思ったら、複雑な気分だけどさ。


    そこから少し間があったから、話はそれだけなんだと思った。

    さっさとこの場を終えよう。
    そう思って切り出した。

    「私悩みなんてないんですよ。」

    いつもの営業スマイルを惜しみなく。

    「白紙答案もほんの出来心ってヤツで…反省してます。もうしません。まじめに補習も受けますんで」

    申し訳なさそうな表情もちゃんと演出…

    「すいませんでした。」

    一気に言って、一礼。
    ドアへ向かう。



    「仲田さんっ」



    私を追いかけるように杉鉄の声。


    呼び止めたくせに、
    ためらいを見せ
    そして、やっと口を開く。




    「良くない噂聞いたんだけど…本当?」



    なんか最近よく耳にするフレーズだな…。



    あぁ…本題は

    そっちか。



    (携帯)
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■14392 / 1階層)  スマイルストリップ 15
□投稿者/ mama' 一般♪(18回)-(2006/05/08(Mon) 18:39:57)
    “良くない”噂…その中身は、正確に理解できた。
    できたけど…

    「噂…?んー。何でしょう?」

    しらばっくれてみる。

    言葉に詰まる杉鉄。
    そりゃそうだ。あの後輩や理子みたいに、言えるわけがない。
    かりにも先生なんだし。

    「噂ってあてにならないもんですよ。
    ほら、女の子って、そういう話大好きだから。」

    ね?と安心を誘うようなことを言ってみる。
    それで終えるつもりだった。

    一応は納得したのか、表情がすこし緩む。

    うん。よしよし…
    さて帰るか…そう、

    そう思ったのに。



    「……じゃあ、


    今回倉山さんが白紙だったのと、仲田さんのとは関係ないのね?」

    念を押すような言い方だった。



    じゃあって…

    じゃあって、何?


    何を言い出すんだ?
    なんで、そんなことで安心してるんだ?


    理子の真剣なまなざしがよみがえる。

    嫌われた…と泣きながら、なのに必死で答案を埋めていた理子。

    迷惑をかけたかったわけじゃないと、私を睨んだ理子。


    こんなヤツが本当に好きなの?


    …秘密にしてくれる?

    心細そうに言った声色が浮かんできて、唇をかむ。

    あぁ…でも…
    踏み止どまれない。



    ごめん。


    (携帯)
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■14393 / 1階層)  sayaさんへ(予告付き・笑)
□投稿者/ mama' 一般♪(19回)-(2006/05/08(Mon) 19:12:23)
    sayaさん、再びありがとうございます(*^-^)

    距離が縮まっていく雰囲気…出したかった所なので、感じてもらえて嬉しいです。

    連休明けましたし、またちまちま更新しますのでお付き合い下さいませ。

    次回は、未樹ティによるS言葉責め…の予定。
    (また懲りずに書いてみました・笑)

    (携帯)
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■14410 / 1階層)  スマイルストリップ 16
□投稿者/ mama' 一般♪(20回)-(2006/05/09(Tue) 17:11:00)

    呼び出された教室に二人。
    クーラーのファンが音立てて回ってる。
    普段はこんなにしないのに…。

    意識が冴えるって不思議だ。
    頭に血は上ってるのにさ。


    「無関係ですよ。今はまだ。」

    営業スマイルのまま言った。

    「でも、かわいいですよね。確かに。」

    杉鉄の表情が変わる。

    「どこまで優等生でいられるのか、試したくなる。
    意外な一面が見れるかも…。ね?先生?
    ほら、思春期だし?好奇心旺盛なんですよ。」

    杉鉄の表情から、血の気がひいていって
    加虐心が煽られていく。


    「私遊んでるから、そっち系ならイロイロ教えてあげられるかも。」


    …ガタンッ


    いきなり立ち上がるものだから
    椅子が勢いよく倒れた。

    「本気なの?」

    「…なんでそんなこと聞くんですか?」

    「………。」

    そのまま切なくゆがんでいく。

    「私は…私は…。」

    言葉に詰まる杉鉄。


    「ねぇ?先生?」



    遠くで

    セミの鳴き声がする。


    うるさい位に夏の恋を歌いあげて…
    なんて分かりやすいんだろう。
    これ位、全てが明らかなら
    いいのに。




    (携帯)
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■14419 / 1階層)  スマイルストリップ 17
□投稿者/ mama' 一般♪(21回)-(2006/05/10(Wed) 17:29:00)
    そして、沈黙の後。
    口を開いたのは杉鉄。


    「理…倉山さんをそういう対象にしないで」


    それは、今日聞いた杉鉄の声の中で、

    一番真剣なものだった。


    気持ちが一気に冷静を取り戻す。

    質問を悔やむくらい追い詰めてやりたいと、そんな欲求が満たされた後…
    残ったのは、後味の悪さだけだった。


    感情にまかせた、単なる自己満足…


    床に置いていたカバンを取り上げ、私は改めてドアに向かう。
    取っ手に指を掛けて、振り返った。

    「いろいろ噂はあるかもしれないけど、私はそういうつもり…ないし、
    別に倉山さんのことも、そういう目で見てるわけじゃないから。」

    言葉のない、杉鉄。

    「さっき言ったこと、真に受けないで下さい。

    失礼しました。」


    目を見て言うこともできず、

    一礼して、
    ドアを開け…
    下駄箱へ向かって歩こうとし、


    あっ…


    廊下の人影。
    一瞬だけ、目があった。


    理子。


    ひるがえる制服のエリ。



    聞かれて…た?




    (携帯)
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■14420 / 1階層)  スマイルストリップ 18
□投稿者/ mama' 一般♪(22回)-(2006/05/10(Wed) 17:30:46)

    「待ってよっ理子っ。」

    追いついたのは下駄箱前。
    ローファーに手を掛ける理子の腕をつかむ。

    「離してっ」

    振り払われる腕をつかみ直すと、壁に押しつけるような格好になった。

    「どこから聞いたの?」

    間抜けだ。
    そんなことしか聞けない。


    「噂…」

    かすれた声。


    「良くない…噂って…」


    微かに湿度を伴い
    小さく
    こもったように響く。

    こんな声が聞きたいわけじゃないのに…。


    言葉が…出てこない…。



    「手…離してっ

    私…帰るから…。」



    なす術もなく、
    呆然と。



    見送ることしか出来なかった。




    (携帯)
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■14422 / 1階層)  スマイルストリップ 19
□投稿者/ mama' 一般♪(23回)-(2006/05/11(Thu) 17:30:17)


    家に帰っても、理子の後ろ姿が離れない。
    どんな想いで帰ったんだろう…。


    “……じゃあ、

    今回倉山さんが白紙だったのと、仲田さんのとは

    関係ないのね?”


    念を押すように杉鉄に言われ

    単なる噂と理子の行為が
    同列に扱われてたんだと感じた…

    あの瞬間。


    私はたまらなかった。

    信じられなかった。


    杉鉄に対する苛立ちが止まらなかった。


    理子がどんな表情で再テストの答案を埋めたか。
    それすらも知らないくせに。

    何も知らないくせに。
    何も、知らないくせに…。


    でも。



    それでも。


    見たことないような真剣な顔して私に頼むんだ。


    そういう対象にしないで…と。


    それは、教師として?
    それとも、個人として?


    記憶を反芻する。
    あの時、一瞬言いかけてなかったか…


    理子…と。


    杉鉄は確かに

    そう呼ぼうとしてなかった?

    なんで?


    あぁ…違う。
    それよりも…。
    そうじゃなくて、まずはちゃんと



    理子に


    謝らなきゃ…。






    (携帯)
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■14423 / 1階層)  スマイルストリップ 20
□投稿者/ mama' 一般♪(24回)-(2006/05/11(Thu) 17:32:27)

    冷静になれば…

    理子に想われてるなんて、杉鉄は知らないはずなんだから…
    あれは当然の思考プロセスで。

    現役優等生と、浮わついた劣等生。
    Aクラスの生徒が二人揃って、しかも同じ英語でさ。

    よく考えれば、噂も妄想も…入る隙間がありすぎた位だ。


    責任はすべて、私。

    あの時、私が興味本位で白紙の答案を出さなかったら…

    あの集団で補習は辛いかもしれないけど
    私なんかと出て、こんな事になるんだったら…
    一人で混ざってた方が良かったに違いないし。


    ガバッと、タオルケットを頭からかぶる。


    あぁ…軽はずみなコトした…私。

    自分自身に苛つく。


    チッ


    チッ


    チッ



    あぁ…っ、暑いっっ。

    タオルケットを蹴り下げ
    扇風機の風にさらすように
    携帯を眺める。

    うかつなことに、まだ私は…


    理子のアドレスすら知らない。


    そういえば、
    それ位の関係だったのだと…
    今更のように
    気がついた。


    なんだ…情けない。

    私だって、まだ何も知らないじゃない。




    (携帯)
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■14442 / 1階層)  スマイルストリップ 21
□投稿者/ mama' 一般♪(27回)-(2006/05/12(Fri) 18:01:02)

    次の補習まではまだあと一週間もある。

    答えのないまま逡巡し…


    ベットの上で考えて…。
    あっ…と思い付く。



    クラス名簿…。




    そこから丸一時間。ずっと携帯と名簿とを見比べてた。

    載ってるのはもちろん家の電話番号の方だけ。

    親が出たらかなり気まずいかも…てか、いきなり電話切られそう
    そもそも、やっぱり電話じゃ話しづらい。
    いやでも…待つのか?補習まで…

    ぐるぐる巡る選択肢。

    そして
    ふと、思い付く別のやり方。


    名簿に載ってるのは、
    名前と電話番号だけじゃなく、


    住所…。



    なんだ。
    定期で行ける距離じゃないかと

    補習の後は用事を入れてないなんて…確か今朝言っていたと

    思い出した。



    こんなに必死に切羽つまった感じで

    会いに行くなんて。

    でも。みっともない自分に
    苦笑する余裕もない。


    こんなに
    おさえのきかない自分は初めてで



    どうしちゃったんだろ


    いてもたってもいられなかった。




    (携帯)
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■14443 / 1階層)  スマイルストリップ 22
□投稿者/ mama' 一般♪(28回)-(2006/05/12(Fri) 18:03:52)
    2006/05/12(Fri) 18:09:05 編集(投稿者)

    電車に乗って二駅。

    理子んちは、びっくりな位のお住まいで
    それこそ邸宅っていう方がぴったりくるような門構えだった。


    うーん。

    ベルの前でためらって

    帰りかけて

    やっぱり向かい合い…。


    最初になんて言おうか反芻し

    あっやばい、お母さんとかが出てきたときのセリフ考えてなかったじゃん…

    なんて
    また、向きを変え

    右往左往。



    いつでもふてぶてしい位、ドンと来いやっな自分は
    どこに行ったんだろ…。


    はぁ…


    溜め息をついて…

    やっぱり
    準備し直そうと決意した

    その時だった。


    後ろから、声をかけられた。


    「未樹?」



    それは、

    制服姿の理子だった。




    突然の登場に、考えてた言葉をすっかり忘れてしまった。
    頭は真っ白。

    「…えっと。あの…」

    口ごもる。


    「未樹…ごめん。」


    …え?

    いきなり言ったのは、理子の方。

    “何しに来たの”
    冷たく言い放たれる…それ位のことを覚悟してたのに。


    「全部、

    私のせいだから…

    私、いきなり帰っちゃったし。
    やな気持ちにさせたよね。」

    すまなさそうに、私を見上げる理子。


    だから、謝るのはむしろ
    私で。


    それに、間違いなく理子のせいではないし…。


    初めてそこで顔をあげた。



    「家入ろっか…?
    麦茶位しかないけど…」


    女の子はナゾだらけ。
    ?マークの飛び交う中、門の内側に招き入れられた。





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▲[ 14217 ] / ▼[ 17169 ]
■14747 / 1階層)  NO TITLE
□投稿者/ ! 一般♪(1回)-(2006/05/29(Mon) 00:52:34)
    あげ

    (携帯)
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▲[ 14747 ] / 返信無し
■17169 / 2階層)  Re[2]: NO TITLE
□投稿者/ miya 一般♪(1回)-(2006/11/04(Sat) 21:05:41)
    続きがとっても気になる〜、お休み中かな??
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▲[ 14217 ] / ▼[ 17248 ]
■17210 / 1階層)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2006/11/10(Fri) 20:53:32)
    久々に見て、びっくりしました。
    中途半端になげてしまって申し訳ないやら、レス嬉しいやら・・。
    間、あいてしまいますが、ちゃんと書きますねm(__)m
    また、よろしければお待ちしてます

    (携帯)
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▲[ 17210 ] / 返信無し
■17248 / 2階層)  わお!
□投稿者/ miya 一般♪(2回)-(2006/11/16(Thu) 18:57:25)
    はじめまして。
    続きを書いて頂けるなんて、とってもうれしいです。
    ありがとうございます。
    無理をせずに書いてくださいね。楽しみにしています。


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▲[ 14217 ] / 返信無し
■17426 / 1階層)  スマイルストリップ 23
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2006/12/07(Thu) 18:50:26)
    言葉通り麦茶を出した。

    未樹を見ると、わかりやすく緊張してて
    つられて私も言葉をためらってしまった。

    グラスの水滴がやたらと気になるような

    イヤな沈黙。


    どうしたらいいのか・・
    何から話せばいいのか・・


    あぁ。

    そういえば、今までこういう気まずさがなかったのは、
    未樹だったから・・なんだね。
    いつも、こういう間を埋めてくれていたんだね。


    無理に笑わなくたって、つながりはちゃんと作れるし
    少し位の気まずい瞬間なんて、いくらでもなかったことにできるんだってこと。

    私さ。

    未樹と一緒にいて
    初めてわかったよ。

    未樹と友達にならなかったら、ずっと気付かなかったかもしれない。


    でもね。

    からかいながら私の髪に触れるその手の感覚は


    どうしても、思い出とワンセットなの。


    杉山先生が、
    私だけの「先生」だったときの。

    私のお姉ちゃんの

    「恋人」

    だったときの。



    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■17427 / 1階層)  スマイルストリップ 24
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2006/12/07(Thu) 18:53:50)
    2006/12/07(Thu) 22:48:41 編集(投稿者)
    2006/12/07(Thu) 18:56:24 編集(投稿者)

    杉山先生と初めて会ったのは、中二の半ばだった。
    下がる一方だった当時の私の成績。
    それにうんざりした両親が呼んだ家庭教師として、先生は現れた。


    「大丈夫。
    理子ちゃんにはさ、
    ちゃんと理子ちゃんの賢さがあるんだから。」


    自信たっぷりに言い切って笑うから、胡散臭い感じすらした。


    Be動詞

    +、−の概念


    そんなホントに初歩の初歩から、のんびりと

    授業は始まって。


    二ヶ月。


    やっと学校の進度に追いついた頃

    胡散臭さよりも
    尊敬が

    押し付けられてる感よりも
    楽しさが

    わいてきた。


    尊敬と恋心のスパイラル。


    そのゴールに、
    先に着いていたのがお姉ちゃんだったなんて、
    まるで嫌がらせみたいじゃない。

    耳に残ってるの。

    早退して、自分の部屋で寝てた私
    私に気付かず、先生と帰ってきたお姉ちゃん

    セミの鳴き声

    ベッドのきしみ

    密やかな笑い声・・


    薄い壁一枚を隔てて
    いないふりをする私は
    なんてマヌケなんだろ
    って
    思ったよ。





    未樹・・・

    私、全然

    優等生なんかじゃない。


    何もかも、
    ちっともうまく出来なかったもの。

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 17437 ]
■17436 / 1階層)  スマイルストリップ 25
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2006/12/08(Fri) 23:12:06)
    出された麦茶はもうぬるくて、氷なんてみる影もなかった。

    「だからね、妹なわけじゃない?私はさ。
    だからきっと
    先生も冷静になれなかったんじゃないかなって・・。

    だから・・未樹が気にやむ必要ないんだよ。

    未樹は関係ないのにね。」

    理子は曖昧に笑った。

    「関係ないとか言われると、ちょっと寂しいかも」

    やっと私は口を開いた。

    うん・・寂しい。

    「・・ごめん。」

    「素直だと、困るよ。」

    うん・・・困る。
    すごく困る。

    でも、泣かれるとさ
    もっともっと

    困る。


    抱きしめたくなる。


    「泣かないでよ。」


    私の手が伸びた。


    「泣かせてよ」


    ひっくひっくと、理子の背中が揺れた。


    この揺れを
    止めらるのは、


    私じゃない。



    それが
    もどかしい。


    もどかしくて
    もどかしくて


    手に力が入ったのは、

    だから・・

    だと


    思った。

    (携帯)
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▲[ 17436 ] / ▼[ 17470 ]
■17437 / 2階層)  こんばんは。
□投稿者/ miya 一般♪(4回)-(2006/12/09(Sat) 00:06:08)
    更新、ありがとうございます。
    杉山先生と理子の関係が少し分かりました、切ないですね。
    秘めた想いが溢れ出しているんでしょうね。
    こういう設定には、かなり惹かれてしまいます。
    これからの3人の関係がどう変化していくのか、とても楽しみです。

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▲[ 17437 ] / 返信無し
■17470 / 3階層)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2006/12/14(Thu) 23:55:18)
    2006/12/15(Fri) 00:08:19 編集(投稿者)

    こんばんは。
    書きますとお約束してから・・一ヶ月近くお待たせしてしまったのに
    また嬉しくなってしまうコメントを頂きまして。ありがとうございます。
    miyaさんからの言葉がきっかけで再開したというか、
    むしろ、なかったら書いてなかったと思います。
    のんびりですが、ちゃんと丁寧に進めたいな〜と思います。
    楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 17471 ]
■17468 / 1階層)  NO TITLE
□投稿者/ りょう 一般♪(1回)-(2006/12/14(Thu) 08:16:47)
    すごいおもしろいです!切なくて泣きそうになりました。。。
    これからも頑張ってください!

    (携帯)
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▲[ 17468 ] / 返信無し
■17471 / 2階層)  りょうさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2006/12/15(Fri) 00:00:03)
    コメントありがとうございます。
    四月から半年以上放棄してたお話なので・・コメント頂いてオドオドしてます。
    でも、もちろん嬉しいです。
    続きも少しずつですが書いていきたいと思いますので
    よろしくお願いします。


    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■17609 / 1階層)  スマイルストリップ 26
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2007/01/05(Fri) 21:32:33)
    言葉も出せず、私は固まったまま。

    しばらくそうしていると、なんとか落ち着いたみたいで
    腕の中の理子が静かな声で私に尋ねてきた。

    「ねぇ
    未樹にはきょうだいっている?」

    「・・姉が一匹いるよ」

    「何よ、一匹って」

    理子はくすくす笑い出して、
    抱きしめた腕から小刻みに振動が伝わってきた。

    「仲良し?」

    「ほぼメイドかなぁ」

    義理だとは言わなかった。
    チホ姉のこと。

    「未樹がメイド?」

    「うん

    ジュース持ってきてとか
    おなかへったとか
    アイロンかけてとか
    朝六時に起こしてとか
    宇多田ヒカルのモノマネしてとか
    芸人ネタやってとか

    ・・?

    んっ?

    そんなに笑える??!」

    泣いているからじゃない背中の揺れ。

    あ・・ほっとする。

    「うん
    だって、だって
    モノマネって〜

    似てるの?」

    「らしいよ」

    「え〜
    やってやって」

    「絶対イヤ」

    「やってよ〜」


    声が明るくなったから
    嬉しかった。



    私が何かしら言って、それで元気になってくれるなら

    それでいいじゃない。


    それだけで

    いい

    反応が嬉しい。



    満たされてく感覚。

    与える快感。


    もっともっと

    笑ってよ


    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■17610 / 1階層)  スマイルストリップ 27
□投稿者/ mama' 一般♪(8回)-(2007/01/05(Fri) 21:35:24)
    そして補修日程は順調に過ぎ・・。私は約束通り、さぼらないで夏休みの学校に通った。

    でもね。
    ただ、理子との約束だからってだけじゃなくて・・、
    授業はマジメに受けてたと思う。

    ニコリとも笑わない杉鉄

    冗談も脱線もない授業

    なのに何故か
    「英語理解できたら楽しいんじゃ?」
    と思わせるような、説得力に満ちてて・・

    「今、英語理解出来てるじゃん」と、そんな興奮すら湧いてきて・・
    驚いた。

    杉鉄に感じてたお固さとか近寄り難い壁みたいなものは、薄くなってた。
    馬鹿にすらしてて、からかう対象でしかなくて、
    理子が好きだと知って正直
    「どこがいいの?」
    なんて思ったのに。

    授業に関しては、
    あくまで誠実でストイックな杉鉄。


    理子が惚れるのもちょっとわかって、
    軽く凹んで

    「マジメな自分」っていうキャラもこそばゆくて、

    相変わらず軽口叩いてはいたけどさ・・・。


    補修を受けて良かった。
    あのまま及第スレスレの一夜漬けばかりしてたら、こんな楽しみには

    きっときっと

    気付かなかった。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 17612 ]
■17611 / 1階層)  スマイルストリップ 28
□投稿者/ mama' 一般♪(9回)-(2007/01/05(Fri) 21:40:50)
    授業後、
    解らないトコロを教えてって言ったら、理子は目をまるくして固まった。

    「別に中学まではマジメに授業受けてたんだよ?」

    「知ってるけどさぁ。
    いきなりどうしたの?」

    ぐっと言葉に詰まる。
    まさか、杉鉄の授業きいてたら英語に興味わいてきた・・なんて恥ずかしくて言えない。

    にまにま笑う理子に問題を突きつけたら、そのまま再び、
    でも別の意味で固まってた。

    「あっ。これ、

    私もわからない・・」

    「んっ」

    「atの前で区切るでしょ・・agonyが苦痛だから・・えっと・・」

    「ん〜理子もわからない?」

    困ってるのが楽しくなってきた。

    「じゃぁ、質問行こっかぁ〜」

    「えっ、それって」

    「杉山センセのとこだよ、もちろん」

    ニマニマ笑うのは今度は私。

    「いや。いいよ、いいよ。
    私、家で調べてくるし。
    多分、似た構文載ってる参考書あるはずだからっ。」

    慌て始めてる。
    一気に形勢逆転。

    「今聞いちゃえば早いよ」

    「いや、マジ勘弁〜」

    私の言葉が移った理子。
    優等生はマジ勘弁なんて言わないよ?

    じゃぁ、私、一人で行ってくるよ〜って言ったら
    慌ててついてきた。


    自分自身に対してすら鈍感な私。



    「個人同士の壁を越えた理解が苦痛であり、それを意識すらできないなら、
    自分に対する理解も困難になる。」

    丁寧に解説してもらったテキストに、
    私はまだ

    なんの感想もなかった。



    (携帯)
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■17612 / 2階層)  
□投稿者/ miya 一般♪(5回)-(2007/01/05(Fri) 23:14:22)
    一度に沢山の更新、ありがとうございます。
    飛びついて読んじゃいました。
    無理をせずに続けてくださいね。

    「個人同士の壁を越えた理解が苦痛であり、それを意識すらできないなら、
    自分に対する理解も困難になる。」

    う〜ん・・・含蓄のある言葉だわぁ〜
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■18149 / 1階層)  スマイルストリップ 29
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2007/02/25(Sun) 22:42:58)
    机に向かう習慣がついた。
    単語帳も始めてみた。

    それは、受験生の夏にしては遅すぎるスタートライン。

    夏期講習なんて行ってみたりさ。
    (普通は夏前に予約するんだろうけど)


    チューターという便利な存在がいて、自習室にこもって勉強にいそしんだ。

    理子とは、たまにマックでお茶をして、一緒にその日の復習をする仲になった。
    まぁ、難易度が段違いなんだけど。

    そんな日が続くんだと、漠然と思うとも思わず・・いた。
    まったくの大きな勘違いだ。



    いつものように自習室で勉強して、解らないトコロをチューターに聞きに行く・・


    途中まではすべて、いつも通りだった。


    「仲田さんって、聖泉でしょ?
    杉山先生って知ってる?」

    そいつが、そんな質問をするまでは。

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18151 / 1階層)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2007/02/25(Sun) 22:54:23)
    いつもコメント、ありがとうございます。原動力です。

    遅すぎてダメダメですが、もうクライマックスです。
    しばしお付き合い下さったら嬉しいです。
    次はさほどお待たせせずにすむかと。

    親ばかですが、理子の「泣かせてよ」・・ここが書けて良かった〜。

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18150 / 1階層)  スマイルストリップ 30
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2007/02/25(Sun) 22:44:49)

    「杉鉄のこと、知ってるんですかぁ」

    気の抜けた返事をして、テキストをめくった。
    目の前のチューターは20半ば位のお固そうな男で、顔を上げて話す気にもなれない。

    「知ってるも何も、元々ここのチューターだったからね。
    懐かしいな〜。
    鉄壁の杉山ってさ、講師より人気あったから。合格は堅いってね。」

    あだ名・・最初はそんな意味だったんだ・・。
    私も、今となっては納得できた。

    補修でさえ手抜きせずに、授業分と自宅学習分のプリントを用意してた杉山先生。

    勉強するきっかけをくれた杉山先生。

    昔の理子を変えた、杉山先生。


    理子の好きな

    杉山先生。


    なんでだろう。
    なんだか急にイライラしてきた。

    席を立ちかけた私に、慌てて引き止めるように男が口を開く。

    「っそういえばさあ」

    しつこいな・・
    だから、もてないんだよ
    これみよがしに眉根を寄せて振り返る。



    「杉山先生、夏休みで辞めて

    イギリス行くんでしょ?」




    ・・・え?



    (携帯)
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▲[ 14217 ] / ▼[ 18155 ]
■18153 / 1階層)  スマイルストリップ 31
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2007/02/25(Sun) 23:48:21)
    「本当は切りよく春の予定だったらしいけど、後任がみつからなかったみたいだよ。

    ウチの主任が向こうの仕事紹介しててさぁ、この前挨拶に来てたから。」


    辞める・・

    しかも、イギリスって・・

    理子は知ってるの・・?


    「まぁ、優秀な人はひっぱりダコだから。
    僕もね、弁護士の勉強しててね〜。」

    途中からは彼の自慢話へと脱線し、私が呆然と立ちすくんでるのをいいことに、チューターは話し続けた。


    私は上の空。




    「行きたいってのは知ってたよ。
    カテキョに来てたときから聞いてたもん。」


    マックシェイクをすすりながら、理子は言った。


    「冷たくないと不味いわ〜

    甘すぎだし・・」


    シェイクがぬるくなる程の長い沈黙の中で、何を思っていたのか
    私には聞けなかった。


    どんなに勉強したって、こんな時にふさわしい言葉なんて
    きっと思いつかない。


    英語も数学も歴史も

    私自身も、


    ホントに役立たずだ。



    (携帯)
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▲[ 18153 ] / 返信無し
■18155 / 2階層)  ありがとうございます。
□投稿者/ miya 一般♪(1回)-(2007/02/26(Mon) 00:18:53)
    更新、ありがとうございます。
    もうクライマックスなんですね、動きも出てきたし。
    杉鉄と理子、美樹はどうなっていくんでしょう〜
    楽しみにしています・・・p(^^)q

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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18185 / 1階層)  スマイルストリップ 32
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2007/02/28(Wed) 00:18:00)
    お店を出たのは夕方で、
    そこからの理子の行動は早かった。

    「みんなで送別の色紙を書くので、早めに登校」

    そんな内容の連絡網が、クラスメートから回ってきたのが九時位だった。

    理子が話をまとめたんだろう。



    「連絡網、ちゃんと回ってきたから。」


    「ん。ありがとう。」


    連絡網の並び。

    末尾の私。
    先頭の理子。

    どんな顔、してるの?
    私、何を言えばいい?


    「色紙、理子が買い行ったん?」

    もう、こんなことしか思い浮かばない。

    「山っちが行ってくれたよ」

    学級委員の名前を挙げて。

    「本屋でバイトしてるから、社割きくらしいよ。」

    「え〜、この時期にバイト?」

    「最近まで塾すら行ってなかった未樹がいうの?」

    「いやぁ、クラスメートの心配でもと・・」

    「そんなに仲良しだとは知らなかったわ〜」

    「いや、実は顔も思い浮かばない・・」

    「まったくもう。いい加減なんだから〜」

    くすくす笑い声が受話器から震えて伝わった。
    いつもは「いい加減」だと怒るのに、かすかな声で笑ってた。

    だから、余計。
    私はその日、馬鹿なことばかり言ってたと思う。

    その度に笑ってツッコミを入れる理子と、


    初めての長電話だった。


    沈黙が怖いのも初めてで。

    今まで、誰と付き合ってても
    どんなシチュエーションでも

    こんな緊張なんてなかった。


    「じゃぁ明日」

    そう言って電話を切ったら、手にじっとり汗をかいてた・・。
    手って、毛穴もないのに汗かくんだ・・。



    じゃぁ、明日ね


    小さな当たり前の言葉がこだまする。



    先生、

    明日が別れの日になるの?


    当たり前の、ささやかな言葉さえ

    もう、理子は言えないの?

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18187 / 1階層)  スマイルストリップ 33
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2007/02/28(Wed) 00:20:45)
    あの日、私が白紙の答案さえ出さなければ、なんてことはない。
    ただの夏休みの登校日。


    最後に講堂に集まって、そのまま避難訓練がてら解散・・

    多分、そこで最後の挨拶がある。


    回ってきた色紙に、なんて書けばいいか分からず、
    「お元気で。」
    と、隣の言葉をそのまま書き込んだ。


    最後の方だったのに、どんなに探しても
    理子のコメントは見つからなかった。


    「ずいぶん考えてたじゃ〜ん」

    「授業、寝てたしなぁ」

    クラスメートの言葉に笑って答えながら、講堂に向かった。

    我ながら、無駄な笑いだ。

    どうでもいい会話を交しながら歩く。


    理子と一言も交さず。


    でも、自然と



    気配と声を追ってしまった。





    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18188 / 1階層)  スマイルストリップ 34
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2007/02/28(Wed) 00:23:52)
    2007/02/28(Wed) 00:48:43 編集(投稿者)

    「続きまして・・突然ではありますが、杉山先生はこの度・・」

    長々と、残り夏休みの訓示をたれて、教頭がマイクを杉鉄に手渡した。

    簡単な形通りの挨拶の後で、それぞれのクラス委員から色紙と花束を受けとり、

    杉山はちょっとそれを見つめ
    考えこんだ後で
    一息に言った。

    「イギリスに行きます。」


    わぁっと黄色い声が、講堂に響いた。


    恋人に会いに行くの?
    先生、駆け落ちだ〜
    パツキン?
    かっこい〜

    そんなヤジが行き交う。

    「仕事です。」

    一喝。

    見事に、ホントに見事にしんとなった後、笑った。

    あの、鉄の杉山が、

    完璧冷静な杉山先生がにっこり笑って、

    「ですが、会いたい人はいます。」

    言い切った。


    今度こそ、割れるような歓声。


    私は、泣きそうだった。

    壇上、花束に囲まれ
    一人で立つ杉鉄が揺らめいた。


    止まない歓声。


    なんだかんだ、好かれてた証なんだろう。


    「静粛にっ」

    杉鉄の言葉にしんとなる。


    「If you ・・・」


    ゆっくりした英語が、マイクを通じて講堂に響く。

    あっけに取られる雰囲気には構わず、言葉を続けた。


    綺麗な発音



    聞き憶えのあるフレーズ。



    それは、あの日。
    私と理子が質問に行った文章だった。


    他人を理解するのが怖いなんて言ってたら、
    自分を理解することだって難しい。

    意訳すると、こんな感じかな〜


    あの日、遠い昔じゃないのに
    懐かしい感じがした。


    受験のための英文集だからね。
    一部分の抜粋で、多分ここで終わりじゃないのよ。
    これだけだと、確かに訳しづらいわね。


    そんな風に言ってた。



    あの日、質問した英文をそらんじ終えて、

    そこから、杉山は更にスピードを落とした。


    言葉は簡単で、私にもヒアリングできた。



    だから、自分に言いきかせる。
    自分や相手と向き合うのを恐れちゃだめだと。


    私はあの人が好きだから。

    きっと、もっと好きになるから。


    「以上。最後の課題です。

    分からなかったら、いつでも質問すること。

    私は、いつまでも


    ずっとあなたの先生です。」



    多分、最後の「I love you」に反応したんだろうみんなの、大きな歓声と冷やかし。

    収拾がつかないと判断した学年主任のダミ声が、投げ遣りに避難訓練という名の解散を告げた。


    目の前が更に霞んで

    気付いたら腕を強く引かれてた。


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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18444 / 1階層)  楽しいです
□投稿者/ テキーラ 一般♪(1回)-(2007/03/28(Wed) 18:16:48)
    なんか学生時代を

    思い出させる気がします



    気長に続きを待ってます

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18521 / 1階層)  スマイルストリップ 35
□投稿者/ mama' 一般♪(1回)-(2007/04/05(Thu) 23:06:58)

    ただ、私は引っ張らるまま。


    理子の手の湿度と
    私の気持ちは

    同調してて。


    廊下のきしみさえ、違和感なく。
    走って。

    たどり着いたのは屋上。


    そこで、やっと顔を上げた。



    理子。

    霞んで、表情が見えない。


    暑い夏。
    汗をかいた私の手を、離さずに


    しっかりと握って


    からまる足には

    でも躊躇しないで



    理子。



    理子。



    校舎を駆けた後。


    涙でぐしゃぐしゃだった私を

    抱きしめてくれたね。



    役立たずでごめん。


    泣くことしかできなくて。


    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18522 / 1階層)  スマイルストリップ 36
□投稿者/ mama' 一般♪(2回)-(2007/04/05(Thu) 23:08:27)
    しゃくり上げる私を
    抱きしめて

    どれ位たったろう。

    日陰ではあったけど、
    背中をつたう汗の玉が、何度となく感じられた。


    「私ね。
    参考書の出版社にね・・電話したの」

    理子はゆっくり話し始めた。

    「出典が知りたいって。
    未樹が質問したあの英文の。

    そしたらさ。

    その問い合わせは今日2件目です、って
    同じ電話があったから、すぐ答えられますよ、って。」


    杉山先生がかけたんだ。

    あの時
    理子が関心を示したから。

    続きがあるなら読んでみたいと言ってたから。

    別れは目前だったのに。


    だから、

    「いつまでも、あなたの先生です」

    あのセリフは本心から偽りのないもので。

    理子のために
    あのスピーチはあったんだ。

    そらんじられる位、暗記して・・。


    「ねぇ、未樹。

    私、もっと先生と話せば良かった。
    もっと、もっと知れば良かった。

    怖かったの。

    拒絶されたらどうしようって。

    一生懸命、勉強して
    優等生扱いされて・・

    せめて、嫌われないようにって。

    でも、話しかける勇気がだせなかったの。

    お姉ちゃんのこと、先生から聞くのも怖かったし・・

    でも・・
    私、

    私・・・


    本当は、もっと、前みたいに・・
    マコ先生と話したかった。」


    「うん」


    「訳してもらったテキストね、
    私、自分のこと言われたみたいな気持ちだったのよ」

    「うん」

    「先生が問い合わせてくれてたって分かって、
    すごく嬉しかったの」

    「ん・・」

    「嬉しかったのよ」

    「・・。」

    「調べてくれてたのは知ってたけど、
    まさか暗記してるなんて、びっくりだったな」

    声は、どこまでも静かだった。


    「ほら、いつまで泣いてるのよ」

    ギュッと力が入った。

    「だって・・だって・・
    理子、泣かないから
    代わりに泣いてるんだよっ」

    「うん
    分かってるよ

    分かってる

    ・・ありがとう」

    いつもの皮肉もなく、素直に言うから、
    びっくりして顔を上げた。


    「未樹、ありがとう」


    理子は、笑顔だった。



    胸が締め付けられる位の。




    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18523 / 1階層)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(3回)-(2007/04/05(Thu) 23:17:10)
    お返事、誤ってけしてしまってたみたいで、遅くなってしまい失礼しました。

    書き込みありがとうございます。

    未樹、最初はモテキャラだったはずなのに。
    あらら・・です。

    また、読んでもらえてたら嬉しいです。

    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18524 / 1階層)  テキーラさん
□投稿者/ mama' 一般♪(4回)-(2007/04/05(Thu) 23:24:13)
    書き込みありがとうございます。
    気長にお待ち頂けるとのこと、更にありがとうございます。

    たいして長くもない話なのに、もう季節が一巡りしてしまいました。
    せめて、物語の季節も春にして終わらせたいと思ってます。

    えぇ。春のウチに完結させます。

    校舎イメージは、私の母校です。登校日の感じもそのままです。



    (携帯)
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18560 / 1階層)  スマイルストリップ 37
□投稿者/ mama' 一般♪(5回)-(2007/04/09(Mon) 00:21:27)
    2007/04/09(Mon) 00:22:19 編集(投稿者)

    そして、私達は揃って、屋上のフェンス越しから先生を見送った。
    花束に埋もれた先生。

    校門に呼ばれたタクシーに乗り込む前、大きく校舎を振り返り、
    彩り鮮やかな花びら越しに
    目があった。

    ゆっくり手を振ってくれた。

    私達も振り返えした。


    静かなお別れ。


    「いいの?下降りなくて?」

    「うん。
    伝えたいこと、吐き出しちゃったから。」

    にっと笑った理子。
    怪訝な私に教えてくれた。



    「好きだって、叫んじゃったもん」


    「へっ?叫んだっ?
    いつ??」

    「体育館で♪
    みんな好き勝手ヤジ飛ばしてたから、私もまぎれちゃった〜」

    誰も気付かなかったよと、イタズラっ子みたいに言った。

    「マジで?」

    「マジで♪」


    顔を見合わせて笑った。


    「あっ、佐々先生っ」

    まずい。気付かれたっ。
    避難訓練を放棄した私達。

    慌てて、屋上を飛び出した。


    怒鳴り声は明らかに私の名前を叫んでて。

    日頃の行いが悪いからだと、「優等生」は笑った。
    最初の頃の、笑い方とは違う。

    楽しそうな笑いだった。


    私も一緒に笑った。


    ずっと、一緒に笑いたいと
    笑った顔を見ていたいと



    ふいにそう思って気が付いた。



    自分の気持ち





    理子が好き


    理子のことが好き




    まだ夏
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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18561 / 1階層)  スマイルストリップ 38
□投稿者/ mama' 一般♪(6回)-(2007/04/09(Mon) 00:25:31)
    2007/04/09(Mon) 02:16:51 編集(投稿者)

    実際のところ、夏が終わらないどころか、気が付いたら春だった。
    いつ秋が来て、冬になったのかも分からない。
    確かに衣替えもしてたし、コートも着てたけど・・ふと我に返ってみたら、コートを脱ぐどころか制服に別れを告げる季節になってた。

    それ位に必死で勉強した。


    恋の力はすごい。
    私は見事に志望校に合格した。

    理子と同じ大学に。



    そして迎えた春、一通の絵はがきが理子の元に届いた。


    「理子ちゃんへ

    卒業&合格おめでとう。
    元気ですか?
    私は仕事にも慣れて、毎日英語と格闘してます。
    英文科にしたと聞きました。
    サマースクールでこちらへ来たら、ぜひ遊びに来てね。
    杉山眞子より

    理子へ
    友達と来れば?案内位ならしてあげる
    聡子」


    最後の二行の筆跡だけ違うのは、お姉ちゃんからのだという。


    「ね〜ね〜。一緒に来いって〜」

    「いや、一人で行くし」

    「私がいないと寂しくない?」

    「別にっ」

    「大学、結局同じとこにしたくせに〜」

    「共学やっぱりイヤだっただけだもん、未樹は関係ないし」

    「ひっど〜。
    これから一緒に住む人に、なんてこと言うのよ」

    「ウチの親が、一人暮らしするなら寮に入れるって言ったからじゃないっ」

    「まぁまぁ〜
    楽しみだね、夏。」


    手が伸びる。

    理子の髪に。

    頭をなでる。


    「髪がクシャクシャになるじゃないっ」

    真っ赤になるのは、怒ってるからじゃないって
    もう分かってる。


    もう、次の夏なんてあっという間だ。

    あの夏がくるんだよ。


    白紙の答案を出した夏。
    理子を好きになった夏。



    もっと、いろんな顔を見せて。

    ずっと追いかけるから。


    もっと知りたいから。



    〜完〜
完結!
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▲[ 14217 ] / ▼[ 18577 ]
■18562 / 1階層)  ありがとうございました
□投稿者/ mama' 一般♪(7回)-(2007/04/09(Mon) 00:35:20)
    一年がかりですが・・完結です。
    読んで下さった方、ありがとうございます。

    感想を頂けたから、ここまで書き終えられました。
    特にmiyaさんには、ナイスタイミングでコメント頂きました。
    本当にありがとうございます。

    高校時代を振り返ってみても、リアルはこんなに綺麗に終わるものでは多々ないですが・・。
    書けた大好きなキャラクター全員が、ハッピーになるような結末にしたかったのです。
    眞子先生も、聡子姉さんも、きっと裏で苦労したことでしょう(笑)

    本当にありがとうございました。

    (携帯)
完結!
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▲[ 18562 ] / 返信無し
■18577 / 2階層)  Re[2]: ありがとうございました
□投稿者/ miya 一般♪(1回)-(2007/04/10(Tue) 02:10:04)
    完結、おめでとうございます、と言うべきなんでしょうね。
    でも、ちょっと寂しいです。
    みんなHAPPY ENDでほんと良かった。

    『ずっと追いかけるから もっと知りたいから』

    この言葉、すごく好きです。
    これからが二人の本当の始まりなんだなと思いました。

    元気が出るお話を、ありがとうございました。

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▲[ 14217 ] / 返信無し
■18579 / 1階層)  miyaさんへ
□投稿者/ mama' 一般♪(8回)-(2007/04/10(Tue) 21:25:13)
    2007/04/10(Tue) 21:29:30 編集(投稿者)

    感想ありがとうございます。

    エッチな場面もなければ(題名負け)、告白シーンすらなかったなぁと、
    終えたから気が付きました。

    知りたいと思う気持ちは、未樹には初めてで
    自然体を見せることは、理子の初めて。
    でも、両方とも素の欲求じゃないかと思います。
    それを出して、相手に見せたから「ストリップ」(強引?)

    最後の文章が好きと言って頂けて、作者冥利につきます。
    嬉しかったです。

    本当にありがとうございました。

    (携帯)
完結!
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