ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

ツリー一括表示

Nomal 海鏡 /金丸 (06/10/08(Sun) 14:23) #16753
Nomal 海鏡の月-6- /金丸 (06/10/08(Sun) 15:40) #16756
Nomal 百歌様&昴様 /金丸 (06/10/08(Sun) 14:49) #16754
Nomal 200レスおめでとうございます!! /夏菜 (06/10/08(Sun) 15:20) #16755
Nomal おめでとうございます^^ /映美 (06/10/08(Sun) 19:40) #16758
Nomal 映美様 /金丸 (06/10/10(Tue) 12:44) #16795
Nomal 海鏡の月-7- /金丸 (06/10/10(Tue) 13:00) #16796
Nomal 海鏡の月-8- /金丸 (06/10/10(Tue) 13:09) #16798
Nomal 海鏡の月-9- /金丸 (06/10/10(Tue) 13:26) #16799
Nomal 銀色の蜘蛛 /金丸 (06/10/12(Thu) 03:18) #16838
Nomal 銀色の蜘蛛-2- /金丸 (06/10/12(Thu) 03:31) #16839
│└Nomal 金丸さんへ /ヤス (06/10/15(Sun) 20:10) #16915
Nomal 顔出し /金丸 (06/10/12(Thu) 03:43) #16840
Nomal 海鏡の月-10- /金丸 (06/10/12(Thu) 12:38) #16841
│└Nomal いいなぁ〜〜☆ /百歌咲蘭 (06/10/14(Sat) 16:44) #16880
Nomal 百歌様 /金丸 (06/10/15(Sun) 00:52) #16885
Nomal 海鏡の月-11- /金丸 (06/10/15(Sun) 01:21) #16886
Nomal 海鏡の月-12- /金丸 (06/10/15(Sun) 01:32) #16887
Nomal 海鏡の月-13- /金丸 (06/10/16(Mon) 02:47) #16922
Nomal ヤス様 /金丸 (06/10/16(Mon) 02:19) #16920
Nomal 海鏡の月-14- /金丸 (06/10/18(Wed) 02:55) #16964
Nomal 海鏡の月-15- /金丸 (06/10/18(Wed) 03:22) #16965
Nomal 海鏡の月-16- /金丸 (06/10/18(Wed) 03:33) #16966
Nomal 海鏡の月-17- /金丸 (06/10/18(Wed) 03:46) #16967
Nomal 海鏡の月-18- /金丸 (06/10/18(Wed) 04:01) #16968
Nomal 海鏡の月-19- /金丸 (06/10/21(Sat) 13:09) #16997
Nomal 海鏡の月-20- /金丸 (06/10/21(Sat) 14:16) #16998
Nomal 海鏡の月-21- /金丸 (06/10/23(Mon) 02:22) #17019
Nomal 海鏡の月-22- /金丸 (06/10/25(Wed) 03:24) #17063
Nomal 海鏡の月-23- /金丸 (06/10/25(Wed) 21:21) #17073
Nomal 海鏡の月-24- /金丸 (06/10/28(Sat) 00:24) #17088
Nomal 海鏡の月-25- /金丸 (06/10/28(Sat) 01:57) #17090
Nomal 海鏡の月-26- /金丸 (06/11/01(Wed) 02:20) #17143
Nomal こんばんは! /よっしー (06/11/02(Thu) 00:45) #17151
Nomal よっしー様 /金丸 (06/11/05(Sun) 20:06) #17176
Nomal 海鏡の月-27- /金丸 (06/11/05(Sun) 20:21) #17177
Nomal 海鏡の月-28- /金丸 (06/11/06(Mon) 03:49) #17183
Nomal 海鏡の月-29- /金丸 (06/11/06(Mon) 12:20) #17187
Nomal 海鏡の月-30- /金丸 (06/11/06(Mon) 23:38) #17188
Nomal 海鏡の月-31- /金丸 (06/11/07(Tue) 00:06) #17189
Nomal 海鏡の月-32- /金丸 (06/11/07(Tue) 00:52) #17190
Nomal 海鏡の月-33- /金丸 (06/11/07(Tue) 01:36) #17191
Nomal 海鏡の月-34- /金丸 (06/11/07(Tue) 21:39) #17193
Nomal 海鏡の月-35- /金丸 (06/11/09(Thu) 04:18) #17195
Nomal 海鏡の月-36- /金丸 (06/11/10(Fri) 20:23) #17207
Nomal 海鏡の月-37- /金丸 (06/11/10(Fri) 20:39) #17209
Nomal 海鏡の月-38- /金丸 (06/11/11(Sat) 22:52) #17222
Nomal 海鏡の月-39- /金丸 (06/11/14(Tue) 02:25) #17234
Nomal 海鏡の月-40- /金丸 (06/11/23(Thu) 03:20) #17303
Nomal 海鏡の月-41- /金丸 (06/11/23(Thu) 03:52) #17304
Nomal 海鏡の月-42- /金丸 (06/11/24(Fri) 00:23) #17310
Nomal 海鏡の月-43- /金丸 (06/11/24(Fri) 18:53) #17313
Nomal 海鏡の月-44- /金丸 (06/12/03(Sun) 00:26) #17400
Nomal 海鏡の月-45- /金丸 (06/12/03(Sun) 01:14) #17401
Nomal 海鏡の月-46- /金丸 (06/12/08(Fri) 14:15) #17433
Nomal 海鏡の月-47- /金丸 (06/12/09(Sat) 01:14) #17438
Nomal 海鏡の月-48- /金丸 (06/12/09(Sat) 01:39) #17439
Nomal 海鏡の月-49- /金丸 (06/12/09(Sat) 01:49) #17440
Nomal 海鏡の月-50- /金丸 (06/12/09(Sat) 02:20) #17441
Nomal 海鏡の月-51- /金丸 (06/12/09(Sat) 02:54) #17442
Nomal 海鏡の光橋-1- /金丸 (06/12/10(Sun) 01:16) #17447
│└Nomal 海鏡の光橋-2- /金丸 (06/12/10(Sun) 02:24) #17448
│  └Nomal Re[3]: 海鏡の光橋-2- /麺子 (06/12/10(Sun) 17:16) #17449
Nomal 麺子様 /金丸 (06/12/12(Tue) 17:35) #17455
Nomal 海鏡の光橋-3- /金丸 (06/12/15(Fri) 11:10) #17478
Nomal 海鏡の光橋-4- /金丸 (06/12/15(Fri) 11:43) #17479
Nomal 海鏡の光橋-5- /金丸 (06/12/16(Sat) 01:53) #17482
Nomal 海鏡の光橋-6- /金丸 (06/12/16(Sat) 19:36) #17487
Nomal 海鏡の光橋-7- /金丸 (06/12/23(Sat) 23:15) #17526
Nomal 海鏡の光橋-8- /金丸 (06/12/24(Sun) 02:03) #17528
Nomal 海鏡の光橋-9- /金丸 (06/12/24(Sun) 03:07) #17529
Nomal 海鏡の光橋-10- /金丸 (06/12/25(Mon) 01:46) #17533
Nomal 海鏡の光橋-11- /金丸 (06/12/26(Tue) 01:30) #17536
Nomal 海鏡の光橋-12- /金丸 (06/12/26(Tue) 01:51) #17537
Nomal 海鏡の光橋-13- /金丸 (06/12/31(Sun) 20:56) #17581
Nomal 海鏡の光橋-14- /金丸 (06/12/31(Sun) 21:25) #17582
Nomal 海鏡の光橋-15- /金丸 (06/12/31(Sun) 21:45) #17583
Nomal 海鏡の光橋-16- /金丸 (06/12/31(Sun) 22:49) #17584
Nomal 海鏡の光橋-17- /金丸 (06/12/31(Sun) 23:23) #17585
│└Nomal お久しぶりです☆ /夏菜 (07/01/01(Mon) 04:01) #17587
│  └Nomal 夏菜様 /金丸 (07/01/01(Mon) 15:53) #17590
Nomal 新年のご挨拶 /金丸 (07/01/01(Mon) 16:00) #17591
Nomal 海鏡の光橋-20- /金丸 (07/01/02(Tue) 03:03) #17594
Nomal 海鏡の光橋-19- /金丸 (07/01/02(Tue) 02:57) #17593
Nomal 海鏡の光橋-18- /金丸 (07/01/02(Tue) 02:50) #17592
Nomal 海鏡の光橋-21- /金丸 (07/01/04(Thu) 10:17) #17601
Nomal 海鏡の光橋-22- /金丸 (07/01/04(Thu) 10:53) #17602
Nomal 海鏡の光橋-23- /金丸 (07/01/10(Wed) 03:34) #17633
Nomal 海鏡の光橋-24- /金丸 (07/01/14(Sun) 00:10) #17660
Nomal 海鏡の光橋-25- /金丸 (07/01/14(Sun) 01:53) #17661
Nomal 海鏡の光橋-26- /金丸 (07/01/14(Sun) 02:23) #17662
Nomal 海鏡の光橋-27- /金丸 (07/01/15(Mon) 18:18) #17680
Nomal 海鏡の光橋-28- /金丸 (07/01/20(Sat) 22:54) #17720
Nomal 海鏡の光橋-29- /金丸 (07/01/20(Sat) 23:10) #17721
Nomal 海鏡の光橋-30- /金丸 (07/01/21(Sun) 00:37) #17722
Nomal 海鏡の光橋-31- /金丸 (07/01/21(Sun) 01:06) #17723
Nomal 海鏡の光橋-32- /金丸 (07/01/21(Sun) 01:34) #17724
Nomal 海鏡の光橋-33- /金丸 (07/01/29(Mon) 02:22) #17810
Nomal 海鏡の光橋-34- /金丸 (07/01/29(Mon) 02:39) #17811
Nomal 海鏡の光橋-36- /金丸 (07/01/30(Tue) 02:17) #17822
Nomal 海鏡の光橋-35- /金丸 (07/01/30(Tue) 02:05) #17821


親記事 / ▼[ 16756 ] ▼[ 16754 ] ▼[ 16755 ] ▼[ 16758 ] ▼[ 16795 ] ▼[ 16796 ] ▼[ 16798 ] ▼[ 16799 ] ▼[ 16838 ] ▼[ 16839 ] ▼[ 16840 ] ▼[ 16841 ] ▼[ 16885 ] ▼[ 16886 ] ▼[ 16887 ] ▼[ 16922 ] ▼[ 16920 ] ▼[ 16964 ] ▼[ 16965 ] ▼[ 16966 ] ▼[ 16967 ] ▼[ 16968 ] ▼[ 16997 ] ▼[ 16998 ] ▼[ 17019 ] ▼[ 17063 ] ▼[ 17073 ] ▼[ 17088 ] ▼[ 17090 ] ▼[ 17143 ] ▼[ 17151 ] ▼[ 17176 ] ▼[ 17177 ] ▼[ 17183 ] ▼[ 17187 ] ▼[ 17188 ] ▼[ 17189 ] ▼[ 17190 ] ▼[ 17191 ] ▼[ 17193 ] ▼[ 17195 ] ▼[ 17207 ] ▼[ 17209 ] ▼[ 17222 ] ▼[ 17234 ] ▼[ 17303 ] ▼[ 17304 ] ▼[ 17310 ] ▼[ 17313 ] ▼[ 17400 ] ▼[ 17401 ] ▼[ 17433 ] ▼[ 17438 ] ▼[ 17439 ] ▼[ 17440 ] ▼[ 17441 ] ▼[ 17442 ] ▼[ 17447 ] ▼[ 17455 ] ▼[ 17478 ] ▼[ 17479 ] ▼[ 17482 ] ▼[ 17487 ] ▼[ 17526 ] ▼[ 17528 ] ▼[ 17529 ] ▼[ 17533 ] ▼[ 17536 ] ▼[ 17537 ] ▼[ 17581 ] ▼[ 17582 ] ▼[ 17583 ] ▼[ 17584 ] ▼[ 17585 ] ▼[ 17591 ] ▼[ 17594 ] ▼[ 17593 ] ▼[ 17592 ] ▼[ 17601 ] ▼[ 17602 ] ▼[ 17633 ] ▼[ 17660 ] ▼[ 17661 ] ▼[ 17662 ] ▼[ 17680 ] ▼[ 17720 ] ▼[ 17721 ] ▼[ 17722 ] ▼[ 17723 ] ▼[ 17724 ] ▼[ 17810 ] ▼[ 17811 ] ▼[ 17822 ] ▼[ 17821 ]
■16753 / 親階層)  海鏡
□投稿者/ 金丸 ファミリー(193回)-(2006/10/08(Sun) 14:23:52)

    『金糸雀』も100レスを迎え

    新しく『海鏡』を立てることができました。


    読んでくれる皆さんと

    色んなものをくれる恋人と

    気づかせてくれる友人に

    感謝



    ポツポツと

    つらつらと


    海に反射する光を

    書いていきます。



    更新は不定期ですが

    どうぞお付き合いくださいませ。



    金丸

    (携帯)
[ □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16756 / 1階層)  海鏡の月-6-
□投稿者/ 金丸 ファミリー(195回)-(2006/10/08(Sun) 15:40:00)

    海は

    度々考え込むことがある。

    考え過ぎると言ってもいい程に。


    時折それは海自身を貶める。

    考え込むことによって自己解決への道が生まれる

    でもそれは

    果たして本当に解決になっているのか定かじゃない。


    自分の中のモヤモヤを

    人に見せられる様になったのはここ数年のこと


    話すことで解決の糸口が見つかることを知った


    もしくは消化されることを知った。



    でも未だ人に見せる時は

    切羽詰まった時か

    もう1人では出口が見つからない時。


    多くは

    1人で考え込んで考え込んで

    答えに似たものを見つけ

    少しボロボロになりながら

    掴んでいる。


    でもそれは


    ただ形を変えて

    解決しないまま

    積み上げているのかもしれないと


    思えた



    それに気づいたのは

    一つ年下の


    司という


    少し面白い人間性の

    友人と電話している時だった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16754 / 1階層)  百歌様&昴様
□投稿者/ 金丸 ファミリー(194回)-(2006/10/08(Sun) 14:49:25)

    昴様

    応援ありがとうございます。
    昴さんもあっという間に100を越え200を越えていき、『凄いなぁ』と茫洋と見ています。
    長編が書けない私は感心しすぎて口が開いてしまいます。
    昴さん
    これからも頑張ってください。
    私も のほほーんと書いていきますので また気が向いたら読んでやってくださいな。



    百歌様

    感想ありがとうございます。
    誤字脱字乱文と三拍子揃って読みにくい私の文章を良いと言ってくださって嬉しく思っています。
    このサイトは下手な小説より良いものが沢山あります。

    その中で三拍子揃った私のエッセイが目に止まったことは凄く嬉しいことです。

    ありがとう(*´ω`)

    また気が向いたら読んでやってください。


    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16755 / 1階層)  200レスおめでとうございます!!
□投稿者/ 夏菜 一般♪(1回)-(2006/10/08(Sun) 15:20:06)
    いつも金丸様の言葉に励まされ、共感し、毎日を送る楽しみにさせていただいています。

    これからも更新頑張って下さい!!応援してますw
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16758 / 1階層)  おめでとうございます^^
□投稿者/ 映美 一般♪(33回)-(2006/10/08(Sun) 19:40:33)
    金丸様

    はじめまして 映美と申します 
    200レスおめでとうございます^^
    いつも拝見させていただいてますが・・・
    1から改めて拝見させていただきました・・。

    あなたのエッセイに、私の伝えたい言葉や欲しい言葉
    過去の恋でもらった言葉などが沢山重なります・・・

    金丸さんも 私と同じような恋をしたのでしょうか
    あ、しただなんて・・・過去形 
    私は過去形ですが・・・金丸さんは現在進行形ですね^^
    しているでしたね 失礼しましたm(__)m

    エッセイを読ませていただき切なくもなりましたが・・・
    心地よい風が心の中を包んでくれたようです

    最近ちょっぴり 心が行き詰まってるわたし・・・
    今夜はその心地よい風で癒されました^^

    これからも素敵なエッセイを書いてくださいね
    楽しみにしています・・・。



                     映美

[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16795 / 1階層)  映美様
□投稿者/ 金丸 ファミリー(196回)-(2006/10/10(Tue) 12:44:28)

    はじめまして


    恋をしていた

    恋をしている


    多分どちらでも合っていると思います。
    同じ人に何度も失恋して
    何度も恋して

    その繰り返しが今だから。


    私の文字を見て
    あなたの心に風が吹いたこと

    嬉しく思っています。

    これからも

    出来るだけカッコつけず、出来るだけそのまま書いていきたいと思っています。

    また

    誰かの心に

    風を吹かせられるといいなって

    願いながら




    感想ありがとうございます。

    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16796 / 1階層)  海鏡の月-7-
□投稿者/ 金丸 ファミリー(197回)-(2006/10/10(Tue) 13:00:07)

    私は

    考えることが遅くて

    尚且つ行ったり来たり。


    スタートラインの前で

    たどたどしく足踏みして

    二歩後ろに下がり

    また一歩進み


    長い間ウロウロウロウロすることが多い。


    ウロウロ歩き疲れ

    スタートラインが遠のいた


    それすらも気付かないまま


    携帯を開いた。



    ダラダラと

    思っていることを話しながら

    少しおちゃらけて

    泣きそうになる波がくる



    なにがしたいんだかわからない


    なにを伝えたいのかわからない


    逃げに負けたくないのに


    楽な道は居心地がよく見える。


    今更恨んだり悩んだりしても

    私の体は変わらない。


    私から

    あの人へ




    あの人の歩む道に

    土砂崩れを起こすことを


    恐れていた。



    体温がどんどん下がる


    行き詰まって



    気づいたら涙が流れていた



    「泣きながら電話するなんてレアだよ」

    笑いながら


    泣いていた



    ケラケラ笑いながら

    苦しかった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16798 / 1階層)  海鏡の月-8-
□投稿者/ 金丸 ファミリー(198回)-(2006/10/10(Tue) 13:09:09)

    結局解決への糸口は見つからないまま

    ドロドロを少し吐いて

    携帯を閉じた。


    またウロウロ


    スタートラインは


    遥か向こう


    もう少し



    もう少し


    考えてみよう



    いっぱいいっぱいになったら


    あいつに電話しよう。



    そうして眠りについた。


    また1日

    片時も

    悩みを離さなかった。


    仕事から帰り

    毛布にくるまる



    今日は寒い



    寒さに冴えた頭は


    曇って



    もう空が明るくなり始めるまで


    目は

    宙をさまよった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16799 / 1階層)  海鏡の月-9-
□投稿者/ 金丸 ファミリー(199回)-(2006/10/10(Tue) 13:26:51)

    ふと

    あの子の言葉が浮かぶ


    『水が見える。

    穏やかだけど

    良い時の水はもっと空みたいな色で

    またそれとは違うんだよね。


    昔の心の情景が夜の海で

    今はとても美しい草原だって言ったけど

    多分見える水は

    昔の心の情景から来てるのかもしれない。』


    少し不思議なものを持っている少女が

    こう言っていた。


    こうゆうことだったのかな。



    ちゃんと

    聞いてみよう



    病院に行った時



    聞こう




    私の体をよく知る

    あの先生に




    あと数日



    それまではいくら考えたって答えは出ない。


    ウジウジするのはやめにしよう。



    ちゃんと答えをもらえたら



    素直に従おう



    ウジウジするのは


    もう


    やめだ

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16838 / 1階層)  銀色の蜘蛛
□投稿者/ 金丸 ベテラン(200回)-(2006/10/12(Thu) 03:18:27)
    2006/10/12(Thu) 03:20:03 編集(投稿者)

    とても綺麗な下弦の月の夜に

    光る雲が流れる






    遠い昔

    恋に苦しむ少女が居た

    想い募る相手は

    とても美しい

    女性



    黒髪が風になびき

    褐色の肌に月明かりが触れた

    振り返る笑顔に

    濡れた様に見える唇が

    その人を輝かせる


    心掴まれ

    踊る気持ちをひた隠し

    窓から見える月に


    あの姿を思い出す



    想いを

    表せない時代


    拙い恋は

    彼女を甘く苦しめる



    あの人の居る丘はもう

    遥か彼方


    彼女は


    白い部屋の


    冷たいベッドの上


    青白い肌を


    細く力ない腕を


    窓に見える月に


    かざす



    あと僅か


    手紙も書けない


    ここでは いくら振り絞って声を出しても届かない


    月は遥か遠く


    切なく見下ろす





    彼女は想い伝えられぬまま

    静かに

    一粒涙を残し

    鼓動に終止符を打った



    それは


    美しい月夜のこと


    あの人は

    知らずに

    変わらぬ笑顔





    悲しく笑う彼女を見て

    神様は悲しく笑い返す


    優しく頭を撫でて


    彼女を世に戻す




    人ではなく



    銀色に光る蜘蛛として


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / ▼[ 16915 ]
■16839 / 1階層)  銀色の蜘蛛-2-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(201回)-(2006/10/12(Thu) 03:31:08)

    彼女は糸を紡ぐ

    伝えられぬままの恋心を

    一線一線綺麗に


    それは必ず月夜に作られる


    照らされた糸は重なり

    光を増やす


    キラキラと


    幾重にもなった糸


    壊れることなく


    想いは月明かりに照らされる





    あの人が


    彼女の死を人づてに聞き


    褐色の頬に

    涙の軌跡を描いた夜



    銀色の蜘蛛が作った糸は

    一つ残らず

    風にさらわれた




    それは月夜に舞い


    風に手をひかれ


    高く高く舞い登る





    あの人を探し

    糸は踊る




    いつからか



    糸は空に浮かび


    雲となる




    月に寄り添い


    蒼く照らされ


    あの人の上へ流れ着く




    あの人は


    見上げた月夜の雲の美しさに


    彼女を思い出し


    涙を流す





    手には花



    涙落ちた足下には



    彼女の墓




    冷たい墓石に



    キスをする





    彼女が恋い焦がれた


    その唇で

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16839 ] / 返信無し
■16915 / 2階層)  金丸さんへ
□投稿者/ ヤス 一般♪(2回)-(2006/10/15(Sun) 20:10:41)
    密かに、いつも読んでますよ☆情景が目に浮かぶお話しですね(o^-')b

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16840 / 1階層)  顔出し
□投稿者/ 金丸 ベテラン(202回)-(2006/10/12(Thu) 03:43:48)
    おはようございます。
    こんにちは。
    こんばんは。

    改めましてきんまるです。

    海鏡の月は少しお休みして

    童話チックなものを書いてみました。


    童話は凄く久しぶりなので

    たどたどしくはありますが

    楽しんでもらえたら良いなと思っています。


    たまに童話も書いていきたいと思い始めています


    話の途中だろうがなんだろうが浮かんだら書きます。

    そこはご了承ください。


    忘れやすいのとメモすることが苦手なもので(-公-;)


    感想、応援、批評、批判

    前々回、前回に引き続き大歓迎です。

    お気軽に書き込みしてください。


    お読みいただき
    ありがとうございます。


    気が向いたらまた覗いてみてください。



    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / ▼[ 16880 ]
■16841 / 1階層)  海鏡の月-10-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(203回)-(2006/10/12(Thu) 12:38:36)

    絵の具を放り込んだ袋に水をいっぱい

    大きな布を捻って入れた



    深い青が


    布に染み入る



    時が経ち袋を開ける


    布を縛っていた紐をほどき

    流水に浸す



    青が溶けていく


    線になりモヤになり

    水の中に放される



    『綺麗…』


    布はムラ染めになって


    青も薄くなり


    所々白い部分がまるで

    空と雲のよう



    『やっぱり綺麗…』


    排水溝に吸い込まれる水は青く



    水から上げた手や爪も


    薄い青に染まる



    『…綺麗じゃない…』




    その青は


    海の色とはかけ離れ


    改めて自分の色を知る


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16841 ] / 返信無し
■16880 / 2階層)  いいなぁ〜〜☆
□投稿者/ 百歌咲蘭 一般♪(8回)-(2006/10/14(Sat) 16:44:34)
    2006/10/14(Sat) 16:45:01 編集(投稿者)

    いやぁ〜〜。イイネ |ー^)b
    しっとり じっくり 読まみましたよん♪
    美しいお話ですなーー(。-_-。)ポッ 
    いいなぁ〜〜〜いい恋したいね 
    人の恋話ばかりで満腹なんて超サミシー( p_q) シクシク
    (はぁーー、柄にもなく感傷的になっちまうぜいぃ〜〜)

    では、またのドラマたのしみにしてまーす


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16885 / 1階層)  百歌様
□投稿者/ 金丸 ベテラン(204回)-(2006/10/15(Sun) 00:52:43)

    私の拙い恋愛話でまたお腹いっぱいにしてください(笑

    ゆっくり じっくり読んでいただき嬉しく思っています。

    のんびりできる話を書ければとも思っているので嬉しいことです。

    ありがとうございます

    これからもよろしくお願いします(*´ω`)

    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16886 / 1階層)  海鏡の月-11-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(205回)-(2006/10/15(Sun) 01:21:46)

    とても静かな

    朝の病院


    ここはかつて

    私が生活した場所



    当時からの担当医と会うのは1ヶ月ぶりか


    呼び出され


    検査が始まる。



    冷たいジェル

    息を吸い

    止める


    その繰り返し


    20分ほどで終わった。


    『ん〜…変わりないね。』

    「悪くはなってないんですか?」

    『悪くなってないけど、臓器の荒れ方は変わってないね。』

    「そうですか…」

    『でも血液検査の結果は全然いいよ。全く問題ない。』

    「本当ですか?!じゃぁピアスしても大丈夫ですか?」

    『血小板の数値もいいし、大丈夫だよ。』

    「じゃぁ…」


    海は緊張したり

    何か考え始めると肘を触る癖がある


    この時も

    左肘をさすりながら

    担当医の目を見た



    「前に恋人が入院した話したの覚えてますか?」

    『うん。』

    「私あれ以来キスすることが怖いんです。
    今は違う人と付き合ってるんですけど…
    あの…

    あの時の人はキスから移る病気だったじゃないですか。

    本当に私の病気は移らないんですか?」

    『ん〜…』

    「…」


    不安がよぎる


    質問を変えた


    「キスとか恋愛ですることでは移らないですか?」

    『あー…移らないよ。前の人の病気は○ーウィルスでしょ?仮にあなたがウィルス陽性だったとしても、今はもう移る期間は過ぎてる。』


    「そうですか。」


    不安は拭えないけど

    少し安心した


    『ただ原因不明だから将来わかるウィルスかもしれないし、今は定期的に検査しないと。』

    「…はい…。」


    『だからちゃんと来てね(笑)』

    「えへへ…はい。」



    病院から出て

    携帯の電源を押した

    メールフォルダを開き

    結果を彼女に伝えた






    不安を全ては拭えなかったけど


    もらえた答えを大切にしようと思った







    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16887 / 1階層)  海鏡の月-12-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(206回)-(2006/10/15(Sun) 01:32:16)
    家に帰り

    また出かける準備をする。


    今日は隣りの市で大きなお祭りがある

    その出店の一つに

    彼女が居るからだ。



    お昼すぎに準備が終わり

    兄に車で駅まで送ってもらう。


    海は


    睨むように電車に揺られていた


    揺るがない決心を

    保つ為に

    担当医の言葉を

    反芻していた。



    駅を出ると

    人の海

    ワラワラと

    一歩進むにも時間がかかる。


    色んな店から

    色んな匂いが立ち込める。


    香水も混じり


    早くここから抜け出したいと願う海は


    逢いたいとゆう想いと重なり

    人の波を早足ですり抜ける。



    やっと彼女の居るあんず飴の店を見つけたのは


    一時間以上も歩いた後だった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16922 / 1階層)  海鏡の月-13-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(208回)-(2006/10/16(Mon) 02:47:32)
    「久しぶり。」

    『おぅっ』


    四季はすももに竹串を刺していた

    目の前に赤い山が出来ている


    『マジ腹減ったー』

    「なんか買ってこようか?」

    『いやいい。みんな食べてないのに自分一人だけ食べる訳にいかないから。』


    「そっか…じゃぁ飲み物買ってくる。何がいい?」

    『コーヒー。』

    「ブラック?砂糖のみ?カフェオレ?」

    『ブラック以外。』

    「あぃよ」


    赤い財布を手に歩き出す


    約1ヶ月ぶりなのにやっぱりいつも通りで

    それがなんとなくおかしくて

    顔が笑ってしまった。


    四季の友達のアコちゃんが隣りの隣りの店でチョコバナナを売っていた


    久しぶりって声をかけようとしたが

    チョコの匂いがダメな私は横目で見ながら

    自動販売機を探した。


    缶コーヒーを2つ買って店に戻る。



    「ただいま。どっちがいい?」

    『赤いの。』

    「ほい。」


    四季の手はすももの色に染まっていて

    「何人殺ったの?」

    『やまほど。』


    「おー恐。」


    しばらくして店仲間のお爺ちゃんが来た

    目が若々しくてキビキビ動くしキビキビ喋るお爺ちゃんだ


    パパと呼ばれる人も来た


    どちらにも『お前は誰』的な目で見られた


    当たり前だ


    いきなり現れて店手伝ってるんだから


    ってゆうか

    私なんで手伝いしてるんだろう


    逢いに来た筈なのに。



    あんず飴のパチンコやお金の受け取りは海

    無くなったあんず飴を作るのは四季とゆう形がいつの間にか出来ていた。


    「はい一個200円になります。
    ちょうどいただきます。
    じゃぁ一回やってください。
    …あー一個ですね。
    じゃぁ好きなの選んでください。

    ありがとうございましたー。」








    『いや座っていいよ。』

    「あっはいはい。いや癖で立ちっぱになっちゃうわ。」


    以前地元のイベントで売り子をしていた癖だ。


    お客さんが来ない間は飴を作ったり話しをしたりしていた。

    飴を作る姿を見て

    「おもしろそうだね。」

    『おもしろかぁねぇよ。やってみる?』

    「いやいい。」

    『簡単だって。こーやってこーやって…で、グサッてぶった切ってクルクルって』

    「いやいやいやいい。」

    『だから…』

    「いやいい。(笑)」

    『だーいじょぶだよ』

    「…いい…。(笑)」

    『やってみって。』

    すももとヘラを渡される

    見よう見まねでやってみた。

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16920 / 1階層)  ヤス様
□投稿者/ 金丸 ベテラン(207回)-(2006/10/16(Mon) 02:19:52)
    いつも読んでいただきありがとうございます☆

    多分お祭りの話で3話くらい行くと思います。

    海鏡シリーズは長くなると思います。

    どうぞお付き合いください(*´ω`)


    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16964 / 1階層)  海鏡の月-14-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(209回)-(2006/10/18(Wed) 02:55:33)

    飴作りはやってみるとなかなか面白いものだった。

    でも店員以外の人間がやることに対してお客さんが知ったら嫌だろうし

    巻く飴の量のことも、これでいいのか と迷って

    あまり手を出さないようにしていた。


    やる時は四季がトイレに行く時位。


    トロい手つきで無くなった飴を補充する。


    お客さんが来ない間はたわいもない話をしていた。


    『ふーんふーん。他人の前じゃノロケるのに本人の前じゃノロケないんだぁ〜。』

    「ノロケませんっ。」

    『ふーん』

    「…


    本人の前でノロケられる人は積極的な人。」

    『あそぉ。(笑)』





    『お前だってキャスター大好きな癖に。』

    「…キャスターが好きな訳じゃねぇよ。…」

    『あーあー四季ちゃんが吸ってるから好きなのね。(笑)』


    「うっせぇっ。(笑)」




    青い飴にミカンが乗って星型の砂糖菓子が乗っているのを指し

    ぼーっとしていた私は何を思ったか

    「…ねぇ」

    『あん?』

    「これ夜空?」

    『へ?』

    「ぬぁっ!!!!いやいや忘れて!!!!」

    柄にもない発言を後悔してたのに


    『かわいいこと言うね〜(笑)』

    「いやいやいやいや忘れて!!!なかったことにして!!!!」

    『かわいいかわいいね〜(笑)』

    「うるせぇ!!!!!!!(笑)」



    もう外も暗くなり

    気温も低くなる


    上着を羽織る四季をみて



    赤く染まった四季の手をみたら

    冷え性の四季の手が

    余計に冷えてるように思えた


    でも

    私には

    四季の手を握る勇気はなくて




    「椅子動かして。」

    『あん?』

    「だから…」

    ガタガタと四季の座っていた椅子を動かし座らせ

    肩揉みを始めた


    『んぁー。』


    「…」


    『いででででっ』


    「この位?」


    『んー。』




    私が近づいて

    肩揉みして

    少しでも

    温かくなってほしかった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16965 / 1階層)  海鏡の月-15-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(210回)-(2006/10/18(Wed) 03:22:23)

    すぐにお客さんが来て

    心のどこかで少し

    落胆していた。


    お客さんの波が過ぎて

    二人で別々に座っていると

    姉から電話がかかってきた


    <もしもし?いつ頃帰ってくる?>


    四季の顔を見る


    「ん〜10時位に終わるらしいから片付けしてから帰るよ。」

    <帰りにタバコ買ってきて〜>

    「あぃよ。じゃぁね。」


    携帯を閉じると四季が

    『大丈夫だよ。帰っていいよ。』

    「ううん。」

    『あそぉ。』










    「いいじゃんね。」

    『ん?』


    「1ヶ月ぶりなんだからいいじゃんねぇっ。」

    『あそぉ。ははっ(笑)』



    言っておきながら心の中は恥ずかしさでいっぱいだった。


    お客さんも子供からカップルが多くなり

    片手に日本酒の入った升を持ったお客さんも来るようになった時間

    少しずつ片付けを始めた。


    けど何をどうしたらいいかわからず

    ぼーっと眺めることしか出来なくて

    歯がゆかった。


    『アイツにこれどうすんのか聞いてきて』

    「ん。」


    チョコバナナの出店に向かって

    しゃがみ込む


    「久しぶり。」


    と笑顔で言う


    「…おー!!!久しぶり!!!わかんなかった!!!(笑)」


    相変わらず可愛いアコちゃんは

    髪が伸びていて


    「あははっ。あ、ねぇねぇ四季があれどうすんのかってさ。」

    「あーあーあー、全部紅白の中に入れるように言っておいて。」

    「わかった。じゃねっ。」

    「うんっ」


    小走りで四季の店に戻り

    「紅白んなか入れるんだって。」

    『そかそか。』


    ガタガタと片付ける姿をみて

    何か手伝うことはないかと探してみるけど

    勝手がわからない…


    『下に箱があるから取って。口あいてるやつ。』

    「なんか乗ってるよ。」

    『適当にどかして。』

    「んっ」



    結局ほとんど手伝うことが出来ずに

    パパさんが来て片付け終わってしまった。


    「四季」

    『ん?』

    四季の腕と私の腕を組み

    「ほっ」と

    昔授業でやったストレッチを始めた

    『あ゛〜っ帽子脱げる帽子脱げるっ』


    四季を下ろして

    「手。」

    今度は脇腹を伸ばした。

    『あででででっ』


    「ほいっ。じゃぁあれに座って。」

    『ん』


    しまわれた店の影で肩揉みを始める



    その肩がかたくて

    ちゃんとほぐしてあげたいと

    むしろ全身ほぐしてやりたいなぁと

    心の中で思っていた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16966 / 1階層)  海鏡の月-16-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(211回)-(2006/10/18(Wed) 03:33:47)

    駅までアコちゃんを含め数人で歩き

    私だけは少し離れた駅に向かう為

    軽く挨拶をして

    別々になった。


    繁華街はギャルやB-boyやギャル男、ホストやキャバ嬢、ちらほらと店をしまう人で

    賑わっていた。



    なぁんも出来なかったなぁと少し落ち込みながら

    疲れて早く帰りたいと早足で歩く


    三人でたむろしていたギャルがでかい声で話していた

    「ねぇ〜声かけられた?!
    私一回も声かけられなかったんだけど!!
    最近マジかけられないんだけど!!



    お気の毒に…


    私はナンパされたよ。



    パンチパーマのおじちゃんに。



    うれしくねー



    と心の中で呟いた。


    混みもしていない電車に乗り

    地元の駅に着く


    自転車で来なかったことに後悔しながら

    暗い夜道を

    空と星を見ながら歩き出した

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16967 / 1階層)  海鏡の月-17-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(212回)-(2006/10/18(Wed) 03:46:52)

    御陰様で地元はとんでもない田舎で

    月を眺めながら

    歌っていた。



    疲れた体の


    心の中



    四季の温もりを思い出す




    少しは役に立ったのだろうか



    赤く染まった手は かじかんでいたのだろうか




    四季は楽しかったかな



    疲れた体

    もっとちゃんとマッサージしてやりたかったな



    傍に居たいなぁ



    口ずさむのは


    スタンド バイ ミー。



    明日早いのかな



    月が



    綺麗だ




    吐く息が白いことに気づく



    四季が


    風邪ひかないといいな




    隣で


    寝たいなぁ




    私は




    私は





    いつか



    キス出来る時がくるんだろうか

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16968 / 1階層)  海鏡の月-18-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(213回)-(2006/10/18(Wed) 04:01:09)

    だいぶ怖くはなくなった


    けど


    だけど




    あいにく根性がないんだよなぁ(笑)



    いつになることやら…



    歌は終わって


    静かに考えだした。




    もし


    キスができた時


    私は


    泣くかもしれない。


    拭えなかった恐怖と

    嬉しさと


    戸惑い



    色々なものが押し寄せて


    泣くかもしれない。


    はははっ


    困るだろうなあいつは。(笑)




    でも



    キスしなくても幸せだよな


    ただ逢えるだけで


    ただ喋るだけで


    ただ隣で眠るだけで。



    家に着く直前



    最近体の調子が悪いと言っていたことに


    私に出来ることはあるだろうかと考えていた。



    それは眠りに落ちる直前まで続いた。




    夕方

    店で

    四季が顔を上げた時

    海が驚きとっさに出した言葉



    「こわい」



    それは



    拭えなかった恐怖から生まれた言葉だと


    海が気づくのは



    翌日




    その時の四季の表情を


    海は見逃していた


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16997 / 1階層)  海鏡の月-19-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(214回)-(2006/10/21(Sat) 13:09:47)

    誰も居ない

    ガランとした空間


    白い壁

    間接照明のように薄暗い光

    だけど優しくはない


    冷たく硬い床


    一つ小さな鏡がある

    窓はとても高い場所に


    背伸びをして腕を伸ばしやっと指先が触れる程度



    落ちる影はゆらゆらと

    ぼやけるように私の分身を床に映す



    血の通わないこの部屋に


    どんどん体温は奪われる



    冷たくなり始めた指先



    縮こまることなく

    ただ海は突っ立っている




    探すこともせず


    ただ何かを見つめる



    やがて

    部屋の隅に

    膝を抱えて座り込む


    ただ己の呼吸に耳を澄ませ


    一点を見つめる




    寒さはもうない




    高い窓からは


    夕空が見えた



    部屋がオレンジに染まる



    ふっと



    あのお香が薫る




    静かに目を瞑り


    海は立ち上がり


    部屋を出る

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■16998 / 1階層)  海鏡の月-20-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(215回)-(2006/10/21(Sat) 14:16:25)


    「一緒に


    歩こうか。」


    「うん。」



    手を繋ぎ


    同じ歩幅で歩く



    細い路を


    同じ背中が並んで


    月灯りに影が落ちる



    「早くない?大丈夫?」


    「うん。」


    「そっか。」



    「下弦だっけあの月…」


    「多分。」


    「綺麗だね。」


    「うん。」


    強く手を握りしめられた


    「ん?」


    ただ

    見つめてくるだけ



    「んん?どした?」


    手が緩む


    「ううん。」



    「んん?」



    軽く握られた手は

    離れることなく

    温かさが伝わる



    「少し

    寒いね。」


    「うん。」




    薄くだけど

    息が白い



    空を見上げる


    「お弁当箱に梅干しみっつ♪」


    「え?」


    「ん?あぁオリオン座。」


    「?」


    空を指差し

    「ほら。あれ。」


    「……あっ。」


    「めっかった?」

    「うん。」


    二人でニヒヒと笑った



    「あれしかわかんないんだよね。」


    「充分じゃない?」

    「そうかな?」


    「うん。」


    「そっかそっか。」



    心の中


    会話する




    二人の私






    小さな海と

    普段の海



    二人手を繋ぎ


    寒空を歩く



    繋いだ手は

    離れることなく



    月灯りに照らされる

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17019 / 1階層)  海鏡の月-21-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(216回)-(2006/10/23(Mon) 02:22:04)

    私の


    甘い香りに


    アナタは気づいているだろうか


    儚く香る


    僅かな匂い―





    「…」

    無言でつつく


    同じように手をあげて と仕草する


    引き上げられた手を引き寄せ


    袖をくんくんと嗅ぐ


    「よし。」と手を放す


    『なにがや(笑)』

    くんくんと嗅いで

    『なんの匂いもせん。』


    「するよ。」

    『あたしにゃわからん。』


    「お香の匂いと…ね。」


    『ふ〜ん。』




    一つしか無い香り



    そんな匂いが


    私にも僅かにある


    タバコや

    香水

    シャンプーの匂いに消されている


    ココナッツに似た匂い



    気づいているだろうか


    知らないだろう





    「あっ…海の匂いがする。」


    後ろを歩く同級生が言った


    「えぇ?!クサイ?!」

    「ううん。
    なんか…
    少し甘いってゆうか…
    なんていうか…
    とにかく海の匂いっ。」


    「えぇ?!わけわからん!!!臭くはないの?」


    「うん。」



    どれだけ鼻が良いんだか。



    匂いに気づいたのは


    その時から4年後




    この匂いに気づいた人は



    どれだけ居るんだろうか



    男口調の


    こんな私の


    甘い香りに

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17063 / 1階層)  海鏡の月-22-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(217回)-(2006/10/25(Wed) 03:24:09)
    どこからか

    甘い香りがした


    あの匂い


    あのタバコの

    あの頃の匂い



    キョロキョロと探してみたけど

    君は居る筈もなく


    タバコの姿も無かった。



    恋しいのだろうか。



    手を握った


    首筋を撫でた


    頬を撫でた




    恋しいのだろうか。



    唇に触れた指先が冷たくて


    窓の外は雨が降る。


    うざったい程長くなった髪を手グシを通した



    あの日の

    この髪に触れた君の手が


    恋しくなる。



    君の


    あの柔らかいほっぺたが


    またおでこに感じられないかなぁと

    目を瞑る。



    体の力が抜ける。



    夕方

    落書きをして


    気づけば君の眼を描いていた


    睫が多くて

    長くて

    少し垂れ目で

    二重の幅が広くて


    あぁ濃いな


    眉毛は少しキツくて


    あぁこれこれ。



    君の眼を思い出す


    君の肩を思い出す


    君の手を思い出す




    デコルテ

    背中



    優しく笑う口元




    この想いが届けなどとは思わない


    私のことを考えてほしいなどとも思わない


    ただ


    ただ


    ただなんだろう



    ただ…



    もう今は


    君の胸の中で眠りたい



    ただ


    恋しい



    君の隣で


    無垢に笑いたい

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17073 / 1階層)  海鏡の月-23-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(218回)-(2006/10/25(Wed) 21:21:25)
    海は極端に嫉妬をしないし、束縛もしない。


    四季が彼氏を作ろうと

    海が抱くのは

    四季の周りに居る人々への嫉妬


    ―すぐに逢える―


    それだけだ。


    海は四季とゆう彼女が居る。

    海は幸せで四季をとても好きだ。

    四季には海とゆう彼女が居る。

    とても真っ直ぐに愛してくれる不器用な奴。


    四季には彼氏がいる。

    とても自然を愛している優しい

    子供みたいな人。



    三角関係というものなのだろう。



    海は四季に彼氏が居ることを知っている。


    海は願っている


    彼氏を大切にしてほしい と


    自分のことはいいから彼氏を優先させてほしい と


    なるべくうまくいってほしい と。



    海は四季を愛している。

    それは変わらず昔も今も。


    海はただ


    たまに四季に逢い


    笑って

    温もりを感じて

    小さな幸せを一つもらうだけで


    本当に満足している。



    これを話すと

    「うーん…」や

    「本当にいいの?」や

    「すごいね」と言われる。


    みんな眉間にシワを寄せて首をもたげたり、傾げたり。


    「幸せだよ。」と言うとみんな不思議がりながらも

    「海が幸せならいいか。」と言う。



    愛に定義がないのなら

    不思議はない。

    そこに愛があるのなら

    不思議はない。


    幸せは

    柔らかくて

    どの形にもなる。


    心の中にある受け止める器さえしっかりしていれば

    幸せは

    愛は


    その形になり

    温かさとなる。



    今日もまた

    笑う海が居る


    笑う四季が居る


    笑う彼がいる。

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17088 / 1階層)  海鏡の月-24-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(219回)-(2006/10/28(Sat) 00:24:38)
    「元気かー」


    そんな文章からメールが始まる。

    「元気だよー」

    そんな文章で終わるメールが多い。


    この数ヶ月電話をした回数は

    待ち合わせの確認を除けば二回だ。

    一度目は四季から。

    二度目は海から。


    二度目の電話はなんとなく。

    特に理由はないが

    たまにはカップルらしいこともしてみようか とゆう思いつきだった。


    まぁ、そんな理由でかけた電話が続く筈も無く

    20分もしないうちに

    『じゃぁまたメールする。』

    いつもの言葉。

    「うん。あんがと。」

    『じゃぁね。』

    「オヤスミ。」


    電話を切った海は

    「やっぱり慣れない事はしないほうがいいな

    それに

    やっぱりうちらは

    逢って話すのが一番いい」


    思い返すのは

    四季の声と

    あの優しい笑顔。




    電話の向こうの君は

    あの笑顔だったのだろうか



    そうだといい



    優しい笑顔を思い出し

    心が温かくなる。



    君は

    何をしたら喜ぶだろうか


    どんな時幸せだと思うのだろうか


    辛い時私の顔は浮かぶだろうか


    あの小さな手は冷たくなっていないだろうか



    元気かな


    また焼酎飲んでんのかな

    弱くなったって言ってたけど

    少しは控えてんだろうかアイツは。




    収入も少しは安定して


    ある程度貯金も貯まってきて


    恋もして


    充実してきたのか

    少しだけ変わってきた



    部屋を綺麗にして

    模様替えもして

    出費は出したくないから工夫して


    喋り方も少し変わった気がする


    髪ものびて

    不器用ながらもセットして

    不慣れながらも化粧をして

    よく笑っている私の顔は

    少しは痩せたんだろうか…

    まぁいいや。


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17090 / 1階層)  海鏡の月-25-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(220回)-(2006/10/28(Sat) 01:57:15)
    傍で

    まだ首の据わらない赤ん坊が居る。

    こいつの目の前で二度泣いた。

    悲しい涙と

    愛情が湧いた涙。


    止め処なく溢れる涙と

    ホロホロと静かに落ちた涙。


    不安と

    安堵。


    愛しく想う


    無垢な笑顔に


    何故だか

    居場所を感じた。




    誰かの笑顔に私の居場所はある

    それに気づいた時

    私の笑顔も誰かの居場所になることに気づいた。


    大好き がいっぱい溢れた笑顔には

    『居場所』が生まれる

    たとえそれが

    忘れ去られる運命だったとしても

    そこに『居場所』があったことは消えない。


    身の回りには

    優しい歌が沢山溢れてる

    その中の幾つかしか

    触れられていない


    だけど

    触れられた時の優しさや温かさは

    消え去りはしない。


    たとえそれが

    忘れ去られる運命だとしても

    消えはしない


    たとえそれが

    置いてけぼりにされる運命でも

    また手を差し伸べれば優しく包んでくれる。


    たとえあなたが

    過去の人になろうとも

    今に続く想いがある。


    たとえあなたが

    独りでも

    孤独という温もりがある。



    不幸だと

    嘆く足元には

    ちいさな幸せが咲いている

    沢山の幸せを見逃してきた

    沢山の幸せを抱いてきた

    取り残された幸せは

    どこ行くこともなく

    あのときの自分の傍で咲いている

    今の自分の傍にも

    ちいさな幸せは咲いている。



    どうすればいいかわからない時

    その時はそれでいい

    何かを見て

    何かに気づくときが来る。


    少なくとも私はそうだ

    あなたは違うと思うかもしれないし

    実際そうなのかもしれない

    ただ

    ひとつ

    そうゆうことも有り得ることなのだということを

    頭の隅においておいてください

    ただの

    一例として




    私は

    幸せです


    苦しいときも沢山あります

    迷いも沢山あります

    不安も少しあります

    だから

    私は

    幸せです


    孤独や

    寂しさを感じたとき

    あなたを浮かべて

    自分の力の見直しをします


    そのとき

    あなたの優しさが

    温かく感じられます



[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17143 / 1階層)  海鏡の月-26-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(221回)-(2006/11/01(Wed) 02:20:57)

    仕事でたらふく呑んで

    寒空の中を自転車で走った。


    風が冷たくて


    君が恋しくなる。


    逢いたいと

    言葉で伝えられない代わりに

    逢いたいと

    行動にできない代わりに


    私は月を探した。


    あいにく曇り空で

    夕方見た月を思い出し

    君に教えてもらった月の名前を思い出した



    「か…げん。」


    曇り夜空に呟いた



    吐く息が白くて


    ハンドルを握り締めた。


    「下弦…」



    君の名前を呟くように


    月を呼ぶ



    強く目を閉じて


    また強く目を開ける


    優しい唄に包まれた。


    月の姿はないけど


    私は名前を覚えた。


    君が隣に寄り添い

    月を指差し教えてくれた。


    君の名前を呼べない代わりに

    月の名前をそっと


    曇り夜空に投げて



    還らぬ声に


    耳を澄ませた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17151 / 1階層)  こんばんは!
□投稿者/ よっしー 一般♪(3回)-(2006/11/02(Thu) 00:45:43)
    本当にお久しぶりです
    こうやって感想を書くのは久しぶりですが、更新されるたびいつもチェックしています(´∀`)
    感想は色々あるけれど、金丸さんの「お話」が一列に並べられているのを見るのが好きだったので、ロムってばかりいました(笑)


    「君が恋しくなる」

    この言葉っていいですね。
    なんだかすごく気に入って、好きな人のことを思いだし、「恋しく」なってしまいました

    長々とすみません。
    「海鏡の月」とてもおもしろいので、更新楽しみにしていますね
    最近寒くなってきているので、風邪などひかれぬようお気を付けください
    それでは失礼します


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17176 / 1階層)  よっしー様
□投稿者/ 金丸 ベテラン(223回)-(2006/11/05(Sun) 20:06:19)
    お久しぶりです。お元気でしょうか?

    いつも見てくれて本当に嬉しいです。(*´ω`)
    ズラッと並んでるのが好きなんですか(笑
    なかなか更新しなくてズラッとはいかないですが(笑


    その中で気に入った一言があった事嬉しく思っています。

    色々有難うございます。

    頭の中をまとめるのが苦手で返事が遅くなって申し訳ないです。すみません。


    多分更新は遅いでしょうがどうか気が向くだけお付き合いください。


    金丸


    あ、ちなみに何とかは風邪引かないので全くもって健康です。御配慮ありがとうございます。(*´ω`)

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17177 / 1階層)  海鏡の月-27-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(224回)-(2006/11/05(Sun) 20:21:23)
    携帯の画面に[新着メール受信]の文字

    送り主は四季だった。


    『今日忙しい?』



    「バイトだよ〜。」

    逢いたいのかな



    『あ〜そっか』

    「なんで?」

    『行こうかなと思ったけどやっぱいいや』

    「這這這這這這這這這這這這這這(゚Д゚)

    んなら私が行くわ」


    『明日あるけ〜いいよ』


    「お前が逢いたいと思った時逢いたいよ」


    『かっこいい〜』


    「ばかかっ(笑

    遅刻すりゃいい話だしな」


    『そこまでせんでえぇよ〜』


    「そこまでする価値があるのよ私には。

    で逢うのか逢わないのか」

    『どこで逢う?』


    「お前んちでいいんじゃない?」



    そのメールを送ってから私は

    マッハで家事を終わらせ

    マッハで風呂に入り

    生理が来たことに落胆しつつも、そんなことに構っている暇はなく


    自転車を走らせた。


    化粧より時間が優先で


    その理由は


    化粧なんざどうでもよくて、要は逢っている時間を少しでも長くしたいからだった。



    電車の中で走りたい衝動に駆られながらも


    一番早く進めるルートに陣取るしか出来なかった


    『鍵あいとるけ〜』

    「あいよ」



    生理痛はどんどん酷くなるけど


    それより四季だった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17183 / 1階層)  海鏡の月-28-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(225回)-(2006/11/06(Mon) 03:49:42)
    生理痛と時間を相手に戦う海はメガネの奥で睨みをきかせながら早足で

    頭の中は

    「一秒でも早く」

    それだけだった。


    何時間にも感じられた道のりはアパートの四季の部屋の前で

    現実に戻った。


    緊迫した自分を自由にしてやり

    鼻息をフンッと吐き出して

    いつもの海に戻る。


    そしてドアを開ける


    「おはよーございまーす。」


    『おー。』


    四季は洗濯物を干していた。


    ベッドの前に座り「あっつ…」と小声で言いながら

    重い方のタバコを取り出しマッチを擦った


    一口吸って吐いた白い息の先には


    頭が若干ボサボサのメガネをかけた四季だった。


    ボーっと見ている内に、洗濯物を干し終わった四季はクッションに座り

    同じようにタバコを吸い始めた



    『天気いいなぁ〜。どっか行くかぁ。』

    海はただ嬉しそうに四季を見つめるだけ


    『ん〜チャリか歩きか電車か…』


    そう言いながら四季は床を掃除し始める


    ハンディークリーナーは見る見る内に威力が弱まっていって


    『やべっ充電がねぇっ』と言いながら掃除機をかけ続ける四季


    海はその一言から長い間考え続けた悩みを打ち明けてしまおうと思った。


    部屋の中をウロウロと片付けをする四季のズボンの裾を引っ張っては

    『セクハラッ』

    「知ってる」

    と会話を繰り返す。


    本当は海は「知ってる」じゃなくて「ねぇ。」と言いたかった


    だけど


    言えなくて



    「ねぇ。」


    『あん?』


    「クリスマスプレゼント、掃除機とセルフどっちがいい?」


    『はっ?』


    「ずっと悩んでたんだよね。
    プレゼント。
    でも実用品か消耗品しか思いつかなくて。
    掃除機がいいかなって思ったんだけど、セルフと迷って。」


    『セルフ。んでまたお前は悩みすぎてブラシとか買うんだろ。』


    「いやいやセルフって一緒に買い物行って四季の好きなもの買うんだよ。」


    『はっ(笑)』


    「色んな人に相談したんだけど決まんなくて。
    そりゃ本人じゃないから当たり前なんだけど。
    うちら本当に何が欲しいとか話さないし。」


    『今更クリスマスっていってもね。』と四季はただ笑うだけだった。





    四季


    私はね


    クリスマスを2人で過ごしたいなんて思ってないよ


    本音を言うと

    クリスマスは彼氏と過ごしてほしい


    ただ


    恋人になれたから

    恋人としてプレゼントをしたいんだ

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17187 / 1階層)  海鏡の月-29-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(226回)-(2006/11/06(Mon) 12:20:57)
    『歩きか2ケツか電車どれがいい?』


    海は時計を見て


    「歩き。」


    『歩きかぁ〜30分くらいかかるよ。』


    「靴にもよるよ。私のは長く歩けるけど、四季がブーツとかなら歩きじゃなくていいよ。」


    『いやあたしは大丈夫だけど。』


    「じゃぁ歩きで。」


    いそいそウロウロと四季は上着を羽織ったり用意をして


    玄関を出た。


    「今日雲が綺麗だよ。」

    『ほんとやなぁ〜。』


    てくてくと同じ速度で歩いて


    同じ景色を過ごした

    鳩や

    雀や

    カラスや

    猫や




    たわいもない話をしながらてくてく歩く


    『ん。』と出された手を

    躊躇わずに握った


    顔は相変わらずニヤけているけど


    少しだけ

    前よりは恥ずかしくなくなった。


    『本当天気えぇなぁ。あっつい』

    「あついねぇ。」

    『本当暑い。ってゆうかお前が熱いんだよ。(笑)』

    「あぁ。(笑)」と


    放していいよと手を開いた時の間は


    少し寂しくて


    少し自分の体温を恨んだ。


    コンビニでコーヒーとお茶を買って


    また歩き出す。



    生理痛が酷くなってきて


    靴の中の靴下は半分下がってマメができて


    痛いなぁと思いつつも


    2人歩くことが幸せで



    両足に結構な痛みが走っても


    海は四季と同じ速度で歩いていた。


    「…っ。」


    『どした?』


    「ねぇあとどれくらい?」


    『どれくらいっつーか目の前のあそこだよ。』


    「じゃぁ言う。実は足にマメが出来てまして痛くて若干内股になってる。」と海はニヘヘと笑い

    『はよ言えやっ。』と、たしなめられてしまった。


    公園に着くと

    親子連れやカップルの間をぬってビニールを敷いた


    腰を下ろすと海は靴を脱いで

    「ほら半分しか履けてない。」と笑った

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17188 / 1階層)  海鏡の月-30-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(227回)-(2006/11/06(Mon) 23:38:35)
    長い間

    ポツポツ話しながら

    家族連れや

    カップルや

    凧上げをしているお爺さん達を眺めていた。


    空の色が変わり始めた頃になると

    会話はなくなって


    海は時折、四季を見つめた


    『ぁん?』

    「睫多いなぁって思って。」

    『あぁ〜。これでも昔よりは減ったよ。』

    「何、もっとモッサリだったわけ?」

    『中学んときが一番濃かったんじゃない?まず隙間が無かった。』

    「はぁ。」


    濃い顔はさておき、睫なんて理由は後付けで


    ただ

    見ていたかっただけだった。


    『夕日が真っ赤っかや〜。』

    「ん?本当だ。綺麗だね。」

    『あぁ。』


    気付けば家族連れは少なくなって

    走り回っていた小さな子供達も少なくなっていた


    少し気温が下がって

    四季は『寒い。』が口数少ないこの時の口癖になっていた

    海が羽織っていた上着を脱ごうとすると

    『いいよ。』と間髪入れず四季が言ったのに対し、海は悔しそうな変顔をした。


    四季がゴソゴソし始めたと思ったら

    『寝る』と言い出し

    膝枕をした。


    組んで伸ばしていた足に頭を乗せ、かぶってきた帽子を顔の上に乗せた

    『ん〜高い。』と文句を言うので組んでいた足を解いた

    『ちょうどいい。肉厚だし。』

    鼻で笑って「うるせぇ。」と帽子が乗って見えないのをいいことに

    海は少し

    愛おしい目を四季に向けた


    今度こそ羽織っていた上着を四季にかぶせると

    『いいつってんだろ。』そう四季は言ったが海は無言だった。



    ふと気づくと

    サッカーをしていた外人さんが手を伸ばして写真を撮っていて

    なんのポーズだろうと海が後ろを振り返ると

    まんまるなお月様が居た。


    「ねぇねぇ見て。月が綺麗。」


    『んぁ?』と帽子をはいで四季も月を眺めた


    『本当やなぁ。』

    「ウサギが餅ついとる。」

    『ふっ(笑)。あ、こっちむいていいよ。月見たいだろ。』と頭を上げた


    「よぃせっ」と上体を少し上げ
    地面に着いていた手に付いた芝生を払い、反対を向いて また同じ姿勢をとる。


    しばらく月を眺めていた


    どんどん気温が下がって

    生理痛が酷くなる


    手も痺れてきた



    だけど


    この状態をやめるのは

    少しどころか大分惜しいと海は思う





    大好きな人が


    自分の膝枕で寝ていて


    周りには人が居なくて

    ほぼ二人きり


    月が綺麗で


    足から伝わる体温が温かい


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17189 / 1階層)  海鏡の月-31-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(228回)-(2006/11/07(Tue) 00:06:28)
    そんな幸せな状態は海からしたら自分の体なんて比べものにならない程

    どうでもよかった。


    四季が起き上がりトイレに行った後


    足の寂しさを感じながら海はタバコに火をつけた。


    遠いトイレから帰ってくると

    四季もタバコを吸い出した


    携帯を見て笑うと

    『まだ言ってねぇのかよっ。あんだけ背中押したのに』とまた笑う


    「花さん?告白すんのってなかなか出来ないんだよ。」と思い出しながら海は言う


    『そろそろ行くか。もうすぐ着くらしいから。』

    四季がそう言うと海は本日何本目かのタバコを消そうとした

    『いいよ。それ吸ってからで。』

    「そか。」と海は2、3口吸うとタバコを消した。


    二人は立ち上がりゴミを片付け

    敷いていたビニールを畳んだ


    「あででででっ!!足痺れた!!!」

    『いやーん痛い子が居る〜』

    「あででででっ!!いででででっ!!」


    『ほぃ』


    そう言って四季が出した手を

    痺れに歪んだ顔で恥ずかしさをごまかしながら


    海は手を握った。


    『あったかいな。』

    「私にしたら冷たい方だよ。」


    四季は万年冷え症らしく

    海は心の中で

    早く緊張であったかくなれ 手よ

    と念じていた。


    人並みをかいくぐり

    駅前に着くと 四季は花に電話をした。

    が、


    駅を間違えて教えていたことが発覚し

    花がくるまでマックに入って待とうとしたが、あいにく喫煙席は満席でマックを後にした。


    道をキョロキョロと店を探していると四季が

    『あれドトール?』

    「ん〜…ドトールやね。」


    二人は同じタイミングで歩き始めたが

    同じタイミングで四季が好きそうな店を見つけた


    「寄る?」と言いながら海は四季を押す

    四季は無言で店に入り二人で物色し始めたが、気に入るものは無く5分も経たない内に店を出てドトールに向かった




    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17190 / 1階層)  海鏡の月-32-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(229回)-(2006/11/07(Tue) 00:52:47)
    ドトールに入り注文していると背後から花が挨拶してきた

    「おぉっ!!お久しぶりっ。」

    「お久しぶりですっ。お邪魔しますっ。」

    「はははっ。花さん髪バッサリ切ったんだね。」

    「あっ、そうなんですよ!!ほらー、気づいてくれるんだよ。」と花が外見の変化に疎い四季に言うと

    四季は苦笑した。

    「海ちゃん髪茶色くしました?」

    「そうそう。気づくの早いねぇ〜。」とあえて四季を見ながら笑った。


    先に出てきた二人分のコーヒーを手に四季が席をとり、花の告白の話が始まった。


    今日告白しに行ったのにどうしても言えなかった花と

    昨日今日と背中を押した四季と

    言えなかった気持ちが痛い程わかる海


    海は四季に告白した時の心中や状況を交えてアドバイスし

    四季は昨日と今日の朝に続き花の背中を押した

    二人は花の告白を心から応援し


    2つの灰皿がいっぱいになるまで話し続けた。


    海は腕時計を見てタイムリミットが来たことを知っていたが

    どうしても花の力になれないものかと時間を無視した。


    しばらくして話が一旦まとまり

    四季が時計を見ると

    とうに海が行かなければならない時間が過ぎていた


    『時間過ぎてんじゃん。』

    「知ってる。これ吸い終わったら行くよ。」

    「ん?」と花がキョトンと二人を見ると

    四季が『こいつ仕事なんだよ。』と答えた

    「こんな時間からですか?!」と相変わらず抜けない敬語で花が言う


    『そーなんだよ。なんたって水商売だから。』

    「意外でしょ?」と海は笑った


    花は相変わらずキョトンとしながら「うん。」と正直にも答えてくれた


    「はははっ。みんなそう答えるよ。」と笑いながら言い
    海はタバコを消した。


    海が鞄を腕にかけてトレーを持つと、既に準備していた花が「あっありがとうございますっ。」と言うと

    四季が『力持ちさんだから大丈夫。』と笑って言った


    まぁね

    と思いながら海は笑った。


    ドトールを出て駅に着きホームで海と四季、花で別れることになり


    また花は「お邪魔しました」と別れ際に二人に言った。


    『そんなことないよ。』と四季は優しく花に言い

    海は笑って見送ったが

    心の中で「花さんだったら邪魔とは思わないよ」と思っていた。



    改めて


    四季の大切な人に逢い

    その人に向ける四季の優しさ

    海の好きな四季の一面を目にして

    海は幸せな気分になっていた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17191 / 1階層)  海鏡の月-33-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(230回)-(2006/11/07(Tue) 01:36:04)
    向かいのホームに花を見つけ

    電車の中から手を振った


    四季と花は電車が発進し見えなくなるまで手を振り合っていた


    その情景に海は二人に愛しさを抱く



    座席に戻り すぐに四季が降りる駅に着いた


    「明日連絡ちょーだい。」

    『へ?』

    「ほら逢えるか逢えないかって。」

    『あ〜わかった。』

    「気をつけてね。」

    『おぅ。』


    ドアが閉まり

    手を振った


    また

    姿が見えなくなるまで

    ずっと



    先程と同じ想いを抱きながら


    本当は仕事休みたかった と考えていた。



    そのまま花が言った「お邪魔しました」の一言を考えた


    花さんなら許せる

    四季の親友さんも許せる





    四季の彼氏も許せるな


    あとアコちゃん


    四季が大切にしている人なら

    邪魔とは思わない



    それにしたって仕事面倒だなぁ…



    電車の中でやむなく化粧をしながら


    ふとよぎる



    今日は

    四季どうしたんだろう


    なんかあったのかな

    話したいことがあったのかな


    ただ逢いたかっただけなんだろうか





    その日の仕事で海は

    ヘマが多かった

    そして

    珍しく酔っ払っていた



    深夜仕事が終わり家に帰り

    へべれけで着替え、顔を洗ってベッドに潜り込んだ





    明日


    逢えるといいな




    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17193 / 1階層)  海鏡の月-34-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(231回)-(2006/11/07(Tue) 21:39:25)
    ♪〜

    ん…

    ♪〜

    ん…?

    ♪〜

    「んがっ!!!」
    海は目を開けると同時に携帯を開いた。
    四季からのメール

    『おはよ〜。ヤッパリ今日無理になった(>人<)』


    「マジか…。」

    画面を見て少し落胆する


    「おはよー。わかった(*´ω`)」


    さて

    今日はどうするか。
    タバコを吸って時計を見ればまだ午前中で、海は暇つぶしに掃除を始めた。

    頭の中が四季でいっぱいで落ち着いて居られなかったのだ。

    とうとう掃除する所が無くなり

    タバコに火をつける


    出かけようかな


    どこかに出かけたい


    行こう



    ヨシッとタバコを消して立ち上がりお風呂場に向かう。

    服を脱ぎながら


    あー

    新しい下着買わにゃーいけんなー…


    シャワーは熱めに浴びた


    あとストールと…


    あー髪切りてーが口癖になる程伸びた髪の毛は洗うのが面倒で


    まぁあのエスニックのお店行きゃいいか…


    急いでる訳でもないのに早めに上がる


    だいぶ伸びた髪はなかなか乾いてくれないので

    頭にタオルを巻いて歯磨きを始めた


    んー


    んー


    んー…



    今日は頭の中がいつも以上に四季だらけ

    何をしてても四季以外のことを考えている時間の方が少ない位だ


    服を着て、歯磨きをしたまま廊下に出ると海の姉の葉子と出くわした


    「ひょーはやへにかえふとおもふー」

    「あ?うんわかった。」

    「おひやへなんかひふー?」

    「お土産?毛布。」

    「ひゃーほれはむひはから ふっきーほか」

    「あーいつものクッキーで。」

    「ほーい」



    よく会話が成り立つなと思いながら口をゆすいだ


    さすが姉妹

    と感心しながら髪を乾かす。


    海は髪の毛だけには気を使う


    「いい髪だね。」と褒められる所だからだ


    めんどくせーし化粧はいいか

    と眉毛だけ描いて上着を羽織る


    腕時計をはめてタバコに火をつける


    フーッと煙を吐き出すと


    四季の顔が浮かんだ


    んー


    んー…


    ん゛ーっ…




    やっぱり少し


    寂しいな

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17195 / 1階層)  海鏡の月-35-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(232回)-(2006/11/09(Thu) 04:18:15)
    もう

    電車に乗っても

    歩いても

    コーヒーを飲んでいても

    頭の中は四季だらけ。


    今頃

    親友さんのあのマシンガントークを聞いているか

    または悩みを聞いているか


    しているんだろうか。



    久しぶりに来たエスニックファッションばかりのお店に入ると

    強いお香の匂いがした


    上着ないかな

    んー…。


    あまり好きではないデザインばかりで


    パンツに手を伸ばす。


    あんま派手目じゃなくて

    生地が柔らかいので…


    なかなか見当たらないので店員に話しかけた


    すると奥からタイのパンツを持ってきてくれた


    「ちょっと面倒だけどはきやすいですよ。」


    海は一発でそのパンツに惚れた。


    「じゃぁこれください。あ、でもまだみます。」

    「じゃぁ預かっておきますね。」

    ドレッドヘアーのお姉さんはきつめの顔を接客用笑顔をする。


    ストールストール…麻…綿…


    海はマフラーと手袋がつけられない体質で、どのショップに行っても一瞬触って落胆する

    唯一つけられるのは麻の布だけだ。


    これでいっか


    ストールを抱え店内をうろつく。


    あ…


    四季のお香だ



    手に取り匂いを嗅ぐ


    鼻の奥と

    頭の中と

    胸の中に

    切なさが広がる。


    レジに行くと

    手にはお香を持ったままだった。


    「コレ全部お願いします。」


    袋の中にはタイパンツとお香とストール



    とうとう買ってしまった


    あぁ


    手を出すまいと思っていたのに…。



    駅ビルに行き

    下着売場に行った


    新しい下着はピッタリで


    2カップ大きくなった胸を見て落胆する。


    そんな姿を見て店員は「どうしたんですか?」と声をかける。

    「いや…胸がでかいのが嫌なんです。」と苦笑いをすると

    「私なんかパッドいっぱい入れてこの位にしてるんですよ。」と少し怒ったような笑顔になる。


    「ははっ…」

    気まずい…



    早々にその下着を買って駅ビルを出る


    コーヒーショップでクッキーを買い

    カプチーノを頼む



    まだ入りたてだろう店員さんはレジ打ちを先輩に確認する


    「カプチーノは店内でお召し上がりですか?」と慣れない笑顔が照れくさそうで


    優しい気持ちになり
    「はい。」と笑顔で答える。


    頑張れ新米


    と心の中で呟き


    テーブルに着いた。



    カプチーノの泡がきめ細かいこの店は



    海の大好きな場合だ

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17207 / 1階層)  海鏡の月-36-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(233回)-(2006/11/10(Fri) 20:23:46)

    カプチーノを一口飲む度

    ため息が出そうになる。



    4ヶ月か…



    思い浮かぶのは

    日の沈む光と共に見た

    あの横顔。



    携帯を開いても

    スケッチブックを開いても


    何をしよう、何を描こうよりも四季の姿が浮かぶ



    気づけばカプチーノは空になり

    タバコは灰皿に数本


    時が経つのが早い。


    重い腰を上げ

    「ありがとうございました。」と初々しい笑顔の店員に軽く会釈をして

    ホームに向かう。




    寒さに気づいた



    あぁもうこんなに寒くなっていたのか



    服の隙間から入り込む冷気に


    寂しさが増す



    電車の窓に流れる光を見やる


    木々の影を見やる



    握り締めた手は



    私の体温しかない








    私が月なら


    あなたは太陽だろうか



    月は太陽の光を浴びて


    青く

    朱く

    白く光る



    私は


    風の姿を


    失ってはいないだろうか

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17209 / 1階層)  海鏡の月-37-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(234回)-(2006/11/10(Fri) 20:39:35)
    暗い部屋は

    白い息が生まれる


    口をつぐみ

    電気をつけた。


    がらんどうな部屋


    なんの温かみもない。


    部屋着に着替え

    顔を洗う


    私は最近

    この義務的になった習慣が嫌いになりつつある



    部屋に戻り

    袋からお香を取り出す。



    そのまま匂いを嗅いだ


    強い強いその匂い


    四季の服に染み付いた匂いが蘇る


    ライターで火をつければ


    あの部屋で薫った匂いが蘇る


    気づかぬうちにお香は消えても


    匂いが残る



    手を握る


    あの温もりを探す


    蘇る景色


    蘇る情景


    蘇る幸せ


    蘇る


    切なさ




    ベッドの中でうずくまる



    目を瞑り


    頭の中に

    四季の温もりを呼び戻す



    あの安らぎが戻る



    今日は



    幸せと


    切なさと


    寂しさに包まれた日




    夢の中


    君に逢えるだろうか

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17222 / 1階層)  海鏡の月-38-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(235回)-(2006/11/11(Sat) 22:52:38)
    体温計の電子音が響く


    -37.9℃-


    喉も痛けりゃ鼻も詰まって

    節々が痛くてダルい

    完全に風邪だ。



    バカは冬に風邪引かないんじゃなかったっけ…


    バッチリ夏風邪は引いたのに…


    回らない頭はそんなことしか浮かばない。


    重い体は動いてないのに痛くて


    息をする度痛みが走る喉は声がかすれて

    それでも痛めつけるように口にするタバコ


    まずくても咳込んでも吸うのは

    寂しさを他で埋められないニコチン中毒者だからだろう。



    ぐったりした目線の先には鳴らない携帯


    心細くなりメールを送る


    しばらくして返ってきて光る画面に流れる着信音


    もうそれだけで少し元気になる。



    寂しい時は


    心細い時は


    君を思い出す



    目を瞑り


    匂いを呼び戻す



    そうやって


    私は強くなった



    そうやって


    私は




    君の色を濃くする





    気が付けば数年


    抱き締めたい想いは強く


    傍に居たい想いは強くなった。




    11月の寒空の下



    新たな感情が形になった



    それは戸惑いと


    まだモヤのかかる


    温かいもの



    これは


    私の強さとなる



    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17234 / 1階層)  海鏡の月-39-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(236回)-(2006/11/14(Tue) 02:25:27)
    私が―

    最初に一人暮らししたいと思ったのは

    家族から解放されたいが為


    後付けで―

    独りで何もかも出来るようになりたいから

    家族から離れて甘えのない生活を送ることが

    自分を成長させるんじゃないかと

    思ったから。


    最近は

    あまり家族から離れたいと思わなくなった

    ちゃんとそう感じてはいるけど


    それよりも


    疲れたって一言が


    君の疲れたって一言が

    一人暮らしを願わせる。


    疲れたって言われても

    今は飛んで行けないし

    長くは居られない。


    限られた私の出来ることすら

    ままならないこの距離


    ままならないこの状況


    歯がゆい思いは

    日に日に強くなる。


    逢いたい


    そう言わなくなったのは


    色々理由はあるけど


    逢いたい


    言葉にしてしまえば

    出来ないことは目に見えて

    やれないことが目の当たりにされて

    自分が無力に思えて


    心の中で


    ごめんね


    って呟く



    ただ一緒に寝ることさえ

    滅多に出来ない今



    ただ一緒に寝るだけでも出来る

    一人暮らしを叶えようと躍起になる。





    『ただいま』



    「おかえり」



    『疲れた』



    その会話が


    早く出来るようになりたい




    ありがとうが聞きたい訳じゃない


    ただ


    ただ私は


    気持ち良さそうに寝る

    君の顔を

    ただ眺めたい



    起きた時


    スッキリした顔が見たい



    君が元気になれるようなことをしたいんだ


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17303 / 1階層)  海鏡の月-40-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(239回)-(2006/11/23(Thu) 03:20:46)
    優しい眼で笑う

    優しい歌を歌う


    そんな貴女に

    手を伸ばし

    抱き締められる勇気が私にあれば


    そう願う時がある。


    大好きの一言が

    メールじゃなく

    ちゃんと私の声で貴女に届けられる勇気があれば


    そう願う時がある。


    ため息をつく貴女の横に

    寄り添える勇気があればと

    願う時がある。



    同じ道を歩く時

    私から手を繋ごうと

    手を出せる勇気があればと

    願う時がある。


    愛しいと胸が切なくなった時

    抱き寄せられる勇気があればと

    願う時がある。



    ごめんの一言が

    ちゃんと言えればと


    悔しくなる時がある。




    あぁ


    あの頃

    呆れたように見えたあの眼差しは

    愛情の眼差しだったのかもしれない



    訳もわからず涙がでる



    沢山気づかなかったことがある


    ありがとうの言葉が

    言えない代わりに涙になる



    幾千のありがとうが

    いっぱい詰まった涙が

    一粒


    また一粒



    あの眼差しを浮かべる



    ありがとうも
    ごめんなさいも

    ロクに言えない


    気づくのだって

    これでもかって程遅い



    ありがとうが溢れてくる


    ごめんなさいが溢れてくる



    あの眼差しには愛情が溢れてる

    あの腕には愛情が溢れてる

    歩くスピードにだって

    握り締めたあの手にも

    あの時貴女から流れた言葉にも


    空を見上げた時にだって


    愛情が溢れてる



    なんで気づかなかったんだろう


    涙は


    ありがとうの数より少なく


    流れ続ける

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17304 / 1階層)  海鏡の月-41-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(240回)-(2006/11/23(Thu) 03:52:28)
    悔しさの涙でも

    寂しさでも

    自分への怒りでも

    後悔の涙でもない




    ただ

    ただ

    ありがとう

    ごめんなさい


    あの時の四季を思い出すと涙が流れる



    ごめんなさい


    ありがとう



    ごめんなさい


    ありがとう




    ごめんなさい


    ありがとう



    いくら書いても足りない

    いくら言っても足りない

    いくら涙を流しても足りない

    何をしても

    何を言っても

    到底追い付かない程


    私は


    愛情をもらってる



    なんで気づかなかったんだろう


    私は


    何に怯えていたんだろう



    もう

    怯えることはない


    尽きないありがとうを

    尽きないごめんなさいを

    そして

    届くかわからないけど

    今以上の愛情を


    貴女に

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17310 / 1階層)  海鏡の月-42-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(241回)-(2006/11/24(Fri) 00:23:12)
    いつか

    いつの日か

    憧れているあの地に

    還りたいあの海に

    逢いに行きたい



    悲しみも

    愛しさも

    溢れたあの地に。



    最期はあの地で迎えたい


    骨は海へ

    悲しみも海へ

    愛しさも海へ


    永久の輪に

    生きたい




    例え独りで逝こうとも

    例え四季と離れていても



    例え四季が知らぬとも


    眼を瞑り

    四季を浮かべ

    波に共鳴し

    青い空に



    それが出来れば

    私は幸せだ



    私の体が

    私の心が

    例え命の輪車に触れられすらしないとしても


    その輪を

    見守ることは出来る


    その輪を

    守ることは出来る



    優しく

    包むことは

    出来るのかもしれない



    遠い

    遠い遠い未来


    例え四季が傍に居ないとしても


    私は想い

    想い出す


    あの眼差しを

    あの温もりを

    あの歌声を。


    例え

    届かなくとも

    私は

    雲に託す

    風に託す

    空に託す

    星に

    月に託す



    4つの言葉を




    そう誓うからこそ

    今を幸せに生きられる


    独りも悪くないと思える





    君が幸せであればいい


    本当にそう想っていることは

    君が一番わかっているだろう



    君が幸せなら

    私は笑い

    幸せだと思える



    そんな私を見ている君が

    一番わかっているだろう




    話したいことは沢山あるけど

    これから

    口からでるのは

    とても少ない言葉に

    なるかもしれない





    私の愛は無償の愛だと

    君は言ったけれど


    無償の愛なのは

    君の方だ




    だから

    優しい笑顔が見える


    だから

    安心出来る



    四季


    私は今

    充分過ぎる程幸せだよ


    振り返ることはない


    歩めばいい


    君の思うまま

    君の願うまま

    君の求めるまま



    心配しなくていい




    もうすぐ

    君の近くに行くから

    逢いたくなったら呼べばいい

    逢いたくなったら来ればいい




    私はいつでも君を両手で迎えるよ


    私はいつでも両手で見送るよ



    だから


    君が想うまま


    私は君の周りを廻るよ






    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17313 / 1階層)  海鏡の月-43-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(242回)-(2006/11/24(Fri) 18:53:55)
    愛とは

    こういうことなのかもしれない


    言葉にすることも

    絵にすることも

    音にすることも

    私には出来ないけど


    こうやって

    小さな手を握った時の温もりや

    優しい声や

    愛おしい笑顔に触れた時


    切ないような温かさが胸に響く



    大声で笑って

    泣き顔を見て顔がくしゃくしゃになる

    そんな時の胸の温かさ


    空を見上げ

    地に咲く花を見つめ

    風に揺れる木々を見て

    ゆったり流れる水を見て


    二言三言交わす中に

    安らぎがある



    ゆっくりと

    歩く路筋に

    一つ一つ花が咲く



    ゆっくりと

    歩く路筋に

    春風が吹く



    七色に

    輝く雲が流れる



    わかるだろうか


    なんて難しいんだろう


    私の顔を見せられたら

    一番手っ取り早いのかもしれない



    嬉しくて

    温かくて

    切なさが少し



    あぁ

    なんて難しいんだろう


    言葉にすればするほど

    遠くなるような気がする



    今この表情を

    誰かに見せられる時はくるのかな


    到底恥ずかしくて

    見せられない気がする


    でも


    多分その時は来るだろう



    愛情を表すのは

    恥ずかしいことじゃないって

    いつか

    素直になれる時は来るだろうか



    素直になれた時

    気づかれなくてもいい

    その時気づくことに意味があるんじゃないんだろう



    愛は

    ただ包むことにあるのかもしれない

    愛は

    ただ迎え見送ることなのかもしれない



    いつか気づく


    それが今



    遅いかもしれないけど

    気づけたことは

    私に大きな意味がある




    君に触れられたことに

    君に出逢えたことに

    君の傍に居られることに


    感謝するのは

    日々連なる



    私がこれから

    抱き続けていきたいと

    強く胸に刻むのは


    君にもらった愛と

    君への愛と


    気づけた愛



    この温かさを

    この手に

    この眼に

    この胸に

    この体に…





    ずっと囚われてきた

    必要とされることが

    生きる意味


    そうじゃない



    なんて言葉にしていいかわからない



    だけど


    だから



    胸に強く刻める






    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17400 / 1階層)  海鏡の月-44-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(249回)-(2006/12/03(Sun) 00:26:53)
    友達のともさんの実家に遊びに行った。

    元々四季の親友で

    何故だか二人で帰省した。


    空が綺麗で

    空気が綺麗で


    その世界にある雲は生きて

    様々な形になる

    腹筋が痛くなるほど笑い

    息が出来なくなるほど笑い

    私の知らない四季の知らない時代の写真や

    趣味で撮った写真を見せてもらった

    朝方まで話した


    心の病気があっても

    変に気を使うと逆効果だろう と

    いつもの私で居た


    ただ

    心から笑おうと

    優しい気持ちを隠さずに笑おう

    そう心の中固く想った。


    自分の頼り無さに

    怒りが湧いた瞬間もあった


    だけどそれは

    ともさんが望んでいることじゃない

    だから

    心の奥にしまって

    ただ話を聞き

    素直に笑顔を向けた。


    長く居る程

    ともさんは綺麗に見えてくる

    心にある美しさや

    優しさや

    人を笑わせ

    隠さずに笑う姿

    人を思いやる気持ち

    想いに体が、想いが行動がうまく噛み合わない時があると話す時


    それらを知る度

    時折みせる表情が

    目を奪う


    あぁ

    この人は

    綺麗な人なんだ




    心の中

    四季の向こうに居た人が

    今はもっと私に近くなる



    そうなったことが

    心底嬉しかった


    不器用な愛情しか表せないけど

    もっと

    自然と傍に居られるようになりたいと願った





    行きのぎこちなさも

    帰りの電車では無くて

    ともさんが苦手なトンネルの中は

    沢山喋って

    誰にも見せていないものも

    内心逃げ出したいほど恥ずかしくても

    特別に見せた


    ほんとにね

    誰にも見せてないんだよ

    四季にさえも。


    そう言うと

    嬉しそうに優しく笑ってた


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17401 / 1階層)  海鏡の月-45-
□投稿者/ 金丸 大御所(250回)-(2006/12/03(Sun) 01:14:37)
    ともさんが

    四季と少しでも逢わせたいと言ってくれて

    ともさんを駅まで送ったらとんぼ返りしようと思っていたけど

    逢うことにした。

    一緒に帰ると一通り連絡した後

    一通のメールが四季から届いた




    「彼氏と会うかい?」



    あぁ

    ついに来たかこの時が


    逢いたいと願い

    逢ったら私は笑えるだろうか と

    少し心が乱れた


    深呼吸して頭を整理する

    「うん」

    そう送った後


    とうとうか

    私の中で

    何か変化することが起きるかも知れない


    少しの恐怖と

    少しの不安

    入り乱れ

    徐々に大きさを増す



    装うことはしたくない

    繕ったまま人に触れたくない

    恐いけど

    少しだけ恐い



    風のまま居たい

    手にした変化を

    無にしたくはない

    あぁ

    そうか

    この手にしたものを

    包み隠さず居ればいいんだ


    優しい風が吹くように

    初夏の

    優しさに満ちた風のように在ろう




    私の中に風が吹く


    このまま

    このまま

    抱きしめるように

    あの人に逢おう


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17433 / 1階層)  海鏡の月-46-
□投稿者/ 金丸 大御所(251回)-(2006/12/08(Fri) 14:15:05)
    2006/12/09(Sat) 18:57:32 編集(投稿者)



    大荷物を抱えて四季の家に着く


    ともさんの持つ
    合い鍵でドアを開ける


    電気のついていない台所と


    部屋


    部屋に入ると

    あの狭いベッドにみっちみちになって

    二人が寝ている



    暗い部屋が余計に暗く見えた瞬間


    何故だか笑顔になる


    寂しさのような


    愛しさのような



    物が溢れた六畳の部屋に荷物を置く


    四季の好きなロールケーキと

    四季の仕事用に買ったオールスターの靴


    もぞもぞと四季が起きて

    ベッドに座りタバコをつける


    お土産買ってきたよと

    ともさんはお菓子を差し出す


    ともさんが「海もお土産買ったんだよ」そう言っても


    ただ私は笑うだけだった



    ちょうど物の影になって見えないケーキと靴


    眉間にシワを寄せて探す四季


    ケーキを手に取り差し出す


    「お前好きだろ」


    「おぉっ!!」


    「あと靴。ボロボロやったろ。」


    「あぁっ!!」



    四季が起き上がってケーキを切りにいく

    「お前は?」

    「ううん。」

    「ん。」



    ロールケーキを三切れ皿に乗せて四季は部屋に戻ってきた


    ケーキに釣られベッドが坊主頭が浮き上がる


    私の目の前にはヒーターの前に陣取った四季が

    大口を開けてケーキを頬張る

    頷きながら食べる姿を見て


    何納得だそりゃ


    と心の中で呟く




    あまり

    あの人を見れていないことに気づく



    ここで逃げても意味がない



    でも


    見れば見る程

    何か形になっていく


    現実を目の前にした時


    今までとは違うものが生まれる



    過去に抱いた思いが

    もっと形になって

    私の中に陣取る




    「肩凝ったなぁぁぁぁ」とわざとらしく四季が言う


    「ふーん。」とわざとらしく私が言う


    「ええー」と四季が笑いながら眉間にシワを寄せる



    私は立ち上がって台所に行き



    手を洗った



    水を握り締め



    受け止めよう


    受け入れよう



    それが私が選んだ道だ




    少し冷たくなった手を拭いて

    部屋に戻る



    無言で四季の肩を揉み始めた



    痛くならないようにせにゃーならんなー

    と思いながらも少し強めに揉む


    「あっつ…」
    四季はヒーターの出力を弱くする



    ともさんは化粧直し


    四季の肩を揉む私



    相変わらずベッドに横たわるタケちゃん



    優しい気持ちは不思議と消えなかった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17438 / 1階層)  海鏡の月-47-
□投稿者/ 金丸 大御所(253回)-(2006/12/09(Sat) 01:14:25)
    ゴソゴソと

    もぞもぞと

    六畳の部屋で4人が出かける用意をする


    履きにくい靴のともさんと私は先に玄関を出る



    階段を降りて待っていると

    二人が降りてくる



    四季が先頭

    私が二番

    ともさんとタケちゃんは並んで後ろ



    タケちゃんと四季は並んで歩かないのかな と後ろを何度か見た


    スタスタ歩く四季の

    斜め後ろ

    三歩下がって歩く



    離れぬ程度に


    横に行かぬ程度に




    「髪自分で切ったんだよ」


    「短くなったとは思った」

    帽子から覗く髪が

    少しだけ揃っていた


    「痛んでるとこね」

    「うん」



    先頭の四季と

    ともさんとタケちゃんは大分離れて


    いいのかな

    少し心配になる



    いつものお店に着くと

    私は席の前で立ち尽くした


    どうやって座ればいいんだろう



    端に座ると

    四季が隣に座った


    私の前はともさん

    四季の前にタケちゃん



    四季はなんで此処(私の隣)なんだろうと少し不思議に思う


    この時

    初めてまともにタケちゃんを見た気がする


    顔ちっちぇー…

    多分この4人の中で一番小さい



    さぁ

    宴が始まる


    長旅で疲れた体に酒を


    何かが恐い心に酒を


    本当は浴びる程飲みたかったけど

    あいにく私は家に帰らなきゃならなくて

    酔うには食べない

    それしか無かったけど


    食べないと四季が怒るのでお通しに手を着けた



    最初はぎこちなく


    少しずつ笑い出す



    笑えば笑う程


    四季は嬉しそうに笑う


    その度に


    心の中形になっていく


    寂しさを少し残して


    心から笑う私が居る

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17439 / 1階層)  海鏡の月-48-
□投稿者/ 金丸 大御所(254回)-(2006/12/09(Sat) 01:39:19)
    タケちゃんがトイレに立った後ろ姿を見送り

    四季に視線を向けた

    少し心配そうな影を残して四季が私を見る



    「タケちゃんいい体してるでしょ。背中の筋肉が綺麗。」


    四季は笑い「言ってあげたら喜ぶよ。」
    そう言った



    タケちゃんが席に戻ると

    「いい体してるね。背中の筋肉が綺麗。」笑いながら言った


    タケちゃんは嬉しそうに笑う



    その笑顔を見てみんなが笑顔になる



    「こっち来れば?」と四季がタケちゃんと席を代わる


    私とタケちゃんは筋肉の話で盛り上がり

    そのマニアックさに四季とともさんが笑う


    ともさんは四季に甘え

    四季は愛しそうにともさんをあやす


    私とタケちゃんは相変わらずマニアックな体の話


    みんなで笑い転げて


    四季は嬉しそうに笑う


    あんなに嬉しそうに笑う四季を

    私は初めて見た



    そんな四季を見て

    「四季すんごい嬉しそうだよね」とボソッとタケちゃんに言うと

    「うん」とタケちゃんは笑った



    あぁ


    凄いな


    ここに居るみんな


    四季を愛してる



    それぞれの形で


    それぞれの温かさで


    それぞれの色で



    あぁ


    来てよかった




    飲み会が少し落ち着いた頃

    終電の時間が来る



    「そろそろ行かないと」

    腕時計を見てそう言うと

    タケちゃんが「帰らなきゃいいじゃん」とボソッと言った



    タケちゃんの可愛さに笑顔になる


    「ごめんね。マジ帰らないと姉貴がブチ切れるんだ。」


    本当は残りたいよ


    そう心で呟く



    無言のタケちゃんは

    少し拗ねた子供のようで



    四季を見て笑うと


    四季は静かに

    今日一番嬉しそうな笑顔をした




    会計を済ませると


    もう終電5分前


    急いで靴を履いたけど


    みんなが靴を履くまで待つ時間は無かった


    階段を駆け下り


    途中で


    「ごめん先に行く!!!!楽しんで!!!」と叫んで


    駅まで走った



    急いで切符を買い

    ホームの階段を駆け上がる内に電車が着いた



    ドアをぬうようにくぐり椅子に倒れ込む


    携帯が鳴り

    通話ボタンを押す


    「お前どこに居るの?」

    「間に合わないから先に行った。みんなに楽しんでって伝えて。あと先に行ってごめんって」

    「あいよ。気をつけてね」

    「ありがとうね。」


    電話を切っても

    走った息切れはまだ続いていた


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17440 / 1階層)  海鏡の月-49-
□投稿者/ 金丸 大御所(255回)-(2006/12/09(Sat) 01:49:48)
    あの日を思い出す


    優しさを隠したタケちゃん


    嬉しそうに笑う四季


    みんなを笑わせ、可愛いともさん




    あの場所に


    溢れた愛



    楽しくて


    温かくて


    それぞれがそれぞれを自然に受け入れようとする



    あの場所を思い出せば


    優しい笑顔になる



    ただ


    気づいた





    逢う前


    感じた恐さは



    タケちゃんへじゃなく



    私の中




    以前


    四季の彼氏の家に泊まった時


    感じたものに似たもの




    ただもっと



    形になった




    私の中


    変わることが恐かった



    ただもう



    それは形になり



    箱となる




    あの笑顔




    あの愛の




    形を崩したくない

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17441 / 1階層)  海鏡の月-50-
□投稿者/ 金丸 大御所(256回)-(2006/12/09(Sat) 02:20:00)
    これは


    私の悪いクセだろう



    四季とタケちゃんの幸せを願うと



    箱にしまわれるモノがある




    「キス」



    そっと箱にしまう



    「腕枕」



    そっと箱にしまう



    「旅行」


    そっと箱にしまう



    「共に過ごす夜」



    そっと


    箱にしまう





    「この前言ってた日、バイト入れるからバイト前に逢おうよ」



    「なんで?」



    「なんとなく」



    「みんながまた4人で遊びたいんだってさ」



    あぁ



    あぁ…




    「わかった。」




    そっと


    箱の蓋をしめようとした



    四季の腕枕を思い出す



    首を振る私が居る




    なんで と四季が言う気がする



    私は理由を言えずに首を振る




    腕枕をせずに


    ただ寄り添い


    眠りにつくことを願う私が居る




    でも


    あの腕を


    あの首を


    あの胸を



    あの体温を



    愛しいと


    恋しいと想う私が居る



    願いを箱にしまうことを

    四季は良いとは思わないだろう



    私は私


    そう思う部分もある


    タケちゃんが浮かぶ訳じゃない



    どうしても


    箱にしまいたくなる



    喉が苦しくなり


    涙が溢れた




    浮かぶのは



    温かい四季




    ボロボロと涙が溢れる



    声にならない嗚咽が


    毛布を揺らす




    波が


    退くように



    涙は止まる




    嗚咽も



    どこかに去る




    求めない



    極力



    最大限



    願う


    四季の笑顔



    矛盾が生まれる





    求めた願いは箱の中



    今でも蓋は出来ず


    心の中




    綺麗に並んだ箱の中



    箱の中も

    心の中全体も


    広がる愛情




    温かくて


    優しくて



    変わらず生まれる笑顔は優しいだろう




    こんなこと

    四季は願っていないだろう



    辛い訳じゃない


    苦しい訳じゃない


    寂しさが少し


    色を濃くしただけ




    これは


    こうなることは


    私が選んだ道


    こうなるかもしれないと


    あの日


    告白した日に頭の隅にあった




    求めることはしなくても


    四季と過ごす時間があればいい


    そこに誰が居ようと

    時間が短かろうと

    隣に居られ無かろうと



    私は


    四季の傍に居るだけで


    幸せになれる

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17442 / 1階層)  海鏡の月-51-
□投稿者/ 金丸 大御所(257回)-(2006/12/09(Sat) 02:54:21)
    一度

    箱の重みがピークに達した時



    私と逢う時間があるなら

    タケちゃんと過ごしてほしいくらいだと思った



    でもその瞬間


    怒る四季の顔が浮かんだ



    そうだ


    四季はそれを願っている訳じゃない




    タケちゃんを好きか聞かれたら


    うん と嘘偽りなく言える


    タケちゃんと逢いたいか聞かれたら


    うん と嘘偽りなく言える



    ただ

    私がそこに居ていいのかがわからない




    タケちゃんに恋人は居るのか聞かれたら

    私はなんて答えたらいいんだろう



    ごめん 聞かないで


    そうしか言えない



    嘘つきたくないよ



    でも

    聞かないで

    そう言ったら


    タケちゃんは聞かない気がする



    少し気まずそうにして


    俯くかな




    私は


    その姿を見て


    笑顔になって


    別の話をするだろう



    それで


    また笑えたらいい



    隠すのも嫌だけど


    嘘よりはいい





    タケちゃん



    言えないことはあるけど



    四季とタケちゃんが幸せになれるなら



    私は何でもするよ



    別れる以外なら


    何でも



    私に出来ることがあるなら


    私は全力でやるよ




    それが四季の笑顔になるなら



    それがタケちゃんの笑顔になるなら



    それが



    みんなの笑顔になるなら






    そこに笑顔が生まれるなら


    私は温かさを抱ける



    これが嘘なら



    胸が重くなるだろう



    私しか感じない重さだけど


    誰にも見えないけど


    胸の中には重さはないよ




    四季が


    全部を


    あの日からの想いを知った時



    どう思うだろうか




    浮かぶのは


    眉間にシワを寄せる姿




    今の想いは


    全てここに記した

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / ▼[ 17448 ]
■17447 / 1階層)  海鏡の光橋-1-
□投稿者/ 金丸 大御所(258回)-(2006/12/10(Sun) 01:16:48)
    2006/12/10(Sun) 01:18:43 編集(投稿者)

    -
    --
    ---
    ----

    君と繋がるこの橋

    無数の光が反射する

    温かさや愛が幾重にもなり

    宝石より美しく優しく光る

    何より近く

    何より遠い

    真実に沿えば距離などない

    抱かれるように

    繋がるこの橋

    無数の光は

    優しい笑顔で迎えてくれる

    ひとつひとつの光が

    ひとりひとりの光が

    この輝きに満ちた橋を照らす

    ----
    ---
    --
    -

    私は度々

    二人ということを忘れる


    三人ということを見すぎる



    私の居る位置を忘れる


    その度に

    四季に伝える


    四季は

    いつも私の位置をまた教えてくれる


    私は

    泣くとき

    誰にも見せない


    四季の傍で泣いても

    四季がその姿を目にすることはなかった


    一人部屋で泣くときもある


    でも

    今は

    四季と逢うとき

    化粧をしていかない


    いつでも

    泣いていいように

    何も気にせず

    ただ泣けるように



    ただ見つめ微笑むことしか出来ないかもしれないときがきても

    私も同じように微笑むだろう


    それでも気づける繋がりがあると

    存在すると思える



    あの

    子守唄のような

    優しい歌声のように


    ただ微笑むような温かさが

    ここにある


    少しの寂しさも

    少しの切なさも込めた

    この優しい歌のように

    優しく抱かれるような心地よさ

    そんな存在が

    君の中に


    そんな存在が

    私の中に


    位置しているのだろう



    赤子のように泣くときも

    赤子のように笑うときも


    ケラケラと笑うあのときも

    吹き飛ばすように大笑いしたあのときも


    互いをあやすように抱きしめたあのときも

    愛する人に向けたあの笑顔も


    二人だけのものであり

    みんなのものでもある

    この愛を


    君まとうこの愛を

    私まとうこの愛を


    強く抱くように包ませてくれるのは

    愛しいと想う

    あの人たち



    この物語には

    終わりがない気がするよ

[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 17447 ] / ▼[ 17449 ]
■17448 / 2階層)  海鏡の光橋-2-
□投稿者/ 金丸 大御所(259回)-(2006/12/10(Sun) 02:24:29)
    子供のように笑えることも

    子供のように喜べることも

    君のおかげだと想う


    君は拗ねた子供のようなオトナだと

    いつか四季が言った


    今でも

    その片鱗はあるけど

    君想うとき

    私の心は

    澄んだ水のような色になる


    緑に育まれ

    大地に恵まれ

    美しい風に吹かれ

    優しい雨が降り

    暖かい陽に導かれる


    気づけば湖になり

    助けを求めやってくる人が増えた


    ポツリポツリと

    傷を癒そうとやってくる


    私はただゆらゆらと揺れ

    その人をうつそうとする


    いつだか

    四季がわたしにしたように

    抱くように

    ただゆらゆらと揺れる



    ねぇ四季

    今まで

    あれだけ君のようになりたいと

    もがいていた私は

    少しは君に近づけたのかもしれない


    愛しいと思える人が増えた

    その人たちに生かされていることを気づいた


    まだ

    包むように触れることは出来ないけど

    愛しいと想うことを抱いて触れられるようになったよ


    ねぇ四季

    いつもひねくれている私の

    いまこの笑顔を

    いつか君に見せられる日は

    多分近いうちだと思うよ



    いつの日か

    木漏れ日の下

    言葉交わさず

    ただ微笑み

    君に寄り添い

    同じ時間を過ごしたい



    いまこのとき

    本当に受け入れたと思う

    ゆっくり

    ゆっくり

    それでいい


    時間は

    いくらかかってもいいんだ


    私にしかできないことは

    私の時間でやればいい



    待っていてくれる君が居るから

    そうできる



    遅いし

    遠回りばかりしている私だけど

    私にしか出来ない回り道


    ただ

    微笑み

    君が待っていてくれる


    そう信じれるから

    私はここまで来れたんだね



[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 17448 ] / 返信無し
■17449 / 3階層)  Re[3]: 海鏡の光橋-2-
□投稿者/ 麺子 一般♪(1回)-(2006/12/10(Sun) 17:16:07)
    初めまして!!
    いつも金丸さんのエッセイ楽しみにしてますw
    何かと共感できたり、「ああ、そうなんだ」って感じるのもあったりで、とてもおもしろいです。
    これからもぜひ書いていってください!応援してます!!
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17455 / 1階層)  麺子様
□投稿者/ 金丸 大御所(260回)-(2006/12/12(Tue) 17:35:25)
    読んでくれてありがとうございます!!!!

    更新の度合いがバラッバラなのに…有り難いです(ノД`)


    これからもまた

    気が向いたら読んでくださいな。


    久しぶりの感想で本当に嬉しかったです。

    ありがとう。


    金丸

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17478 / 1階層)  海鏡の光橋-3-
□投稿者/ 金丸 大御所(261回)-(2006/12/15(Fri) 11:10:40)
    優しい写真が撮りたいと想い込め

    シャッターをきる



    いつか近い日

    君と彼

    二人歩く道


    君と彼

    二人眠る姿


    君と彼

    二人後ろ姿


    愛しさ込め写したい



    君とあの子

    二人歩く道


    君とあの子

    二人眠る姿


    君とあの子

    二人後ろ姿


    愛しさ込め写したい



    君中心

    廻り廻りゆく花咲き乱れ

    笑い合う姿

    泣き慰める姿

    愛しき優しさ秘めた眼差し



    愛してると

    囁き合うよう寄り添う姿



    全て映し出せないとしても

    この古びたカメラで

    君と廻り廻りゆく花写したい



    全て咲き乱れ

    舞い上がる花びら


    散ることなく

    生まれ生まれ揺るぎない


    在りし姿



    包むように

    抱くように

    ただファインダーを覗く



    包むように

    抱くように


    ただシャッターをきる



    この心そのまま


    まっさらな

    この眼差しを



    ただ


    焼き写す

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17479 / 1階層)  海鏡の光橋-4-
□投稿者/ 金丸 大御所(262回)-(2006/12/15(Fri) 11:43:26)
    「私の黒パンがないっ!!!」

    「だからアタシが食べるって言ったじゃ〜ん。もうっ」


    バイト先の人に黒糖パンを食べられて落胆する夢をみた朝



    別に黒糖パン好きでもないのにな…と目が覚めた



    淡い朝陽が窓のカーテンから差し込み


    おもむろにカメラを手にする


    窓を開けると息はまだ白く

    寝ぼけた体を冷気が包む


    さぶっ


    とレンズを空に向ける


    ファインダーから覗いた空は淡く淡く流れる


    無心にシャッターをきる


    露出を変え

    場所を変え

    とどまらない光 雲を写す



    さて


    と上着を羽織る


    廊下板の冷たさに眠気は覚めていく


    陽をファインダーから見ていた目が少し痛い


    ボサボサの髪に手グシを通しゴムで結ぶ


    浴槽にお湯を溜める間また部屋に戻る


    窓からはまた顔の違う空が見える


    またカメラを持ち

    シャッターをきる



    どんな写真になるだろうかと

    色々いじってみる


    おまけでもらったフィルムはすぐなくなって

    100円ショップで買ったフィルムをカメラに通す


    まだぎこちない手つき


    幾度かカラうちする


    そろそろお湯たまったろうか


    カメラを置いて風呂場にいく



    服を脱ぐと朝の寒さが肌にしみる



    また さぶっ と嘆いて


    シャワーを浴びる



    今日はどうしようか

    頭と体を洗い
    浴槽に沈む



    温かさが包む



    高い所に行こう


    何も邪魔することなく

    空写せる場所へ



    しばらくして浴槽から出る



    服を着ながら


    今日は夕陽も夜空も綺麗だろうと考えると


    四季が浮かんだ

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17482 / 1階層)  海鏡の光橋-5-
□投稿者/ 金丸 大御所(263回)-(2006/12/16(Sat) 01:53:27)
    カメラを手にして

    外に出た


    雲と陽が遊ぶように見え隠れする

    その姿を焼き付ける


    自転車に乗り走り出した


    高い高い場所求め

    広い広い場所求め


    空写す為走り出す



    光探すこの姿は

    母を探す様


    愛を探し

    温もり探し

    必死に目をやる



    綺麗に写るだろうか


    夕陽を待ち

    焼き付けようとしたが

    あいにく出かけることになった


    電車から見える夕陽が綺麗で

    心の中握る掌



    撮れなくとも

    焼き付けよう


    心の中カメラ写す様

    淡い淡いこの空の

    優しさ切なさ

    愛しさ寂しさ


    流れる緑深くなり

    陽が色濃くなり

    輝き増す心の中



    帰る頃は陽も沈み

    輝く星は雲の向こう

    月は見えずに寒さが増す



    頬を撫でる風の冷たさが

    あまりに優しく

    一瞬遠い世界に飛んだような

    そんな気がした


    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17487 / 1階層)  海鏡の光橋-6-
□投稿者/ 金丸 大御所(264回)-(2006/12/16(Sat) 19:36:39)
    レンタルしたCDを返しに行った帰り

    兄がふとこんなことを言い出した。


    「なぁなぁ、もし今すぐ世界中の人が消えるとする。
    でも、うちの家族は残る。
    そして一人ずつ誰か生き残れる人を選べるとしたら、誰を選ぶ?みんな消えちゃうんだよ。パッて。ただ一人だけ選べるの。」

    「ん〜…」

    しばらく考えた後に出た答えは

    「私はいいから四季にその権利をあげると思う。」

    「そんなつまんねー意見はいらねーんだよ。
    そんな月9みたいなのはいらねーんだよ。
    昼ドラみたいなのがほしいんだよ昼ドラが。
    どろっどろした昼ドラがいいのっ!!!」

    なんじゃそりゃ と改めて考える。

    「誰も選ばない。」

    「なんで。」

    「もし四季を選んだら、そのことを多分四季は一生悩み続けて、苦しむだろうから。

    友達だってそう。」


    それなら私が全部背負うだろう。

    生きたいとゆう欲じゃなく

    消えた人たちのことを考え

    その人たちを選ばなかったことを背負う

    私が選ぶのは

    背負うもの。


    「で、けんちゃんは誰選ぶの?」

    「ゆき…かなぁ…」

    ゆきとは元彼女だ

    自己中な兄を愛して

    けれどあまりの精神的なものと言葉と考え方の暴君に

    ついていけなくなった


    あそこまで兄についていける人は多分

    ゆきちゃんしか居ない。

    兄もそのことを知りながら身勝手に別れた。



    ゆきちゃんもう彼氏居るのにな

    幸せなの知らないんだよなぁ



    「でも今ゆきに恋人や好きな人が居たら意味ないよな。」

    あら

    わかってらっしゃる

    「そうだねぇ。好みの人選べば?」


    「何。もうすぐみんな消えちゃうんだけと俺と残らない!?って言う訳?」

    「すんげーナンパだな。」

    二人で車の中で大笑いする。



    この質問ででた答えは

    私の性格や思い方をよく表してるだろう

    正しいかどうかなんてわからない


    私が出来ることは


    こうゆうことだろう

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17526 / 1階層)  海鏡の光橋-7-
□投稿者/ 金丸 大御所(265回)-(2006/12/23(Sat) 23:15:20)
    少し早めのクリスマスプレゼントを手に

    私は駅の近くの物件を眺めていた。


    「いい物件でもありましたか?」

    振り返ると自転車にまたがった四季が居た

    「んー今見たばっかだった。」

    にへっ と笑い言った

    「あそ。」

    そう言って四季は笑った。


    さほど歩かない場所にある喫茶店に入り

    「はい。」と紙袋を渡す

    「おっ。ありがとうございますっ」

    四季はニヤッと笑って受け取った。

    最初に出したのはフォトアルバム二冊と煙草1カートン。それは開けずにテーブルの上に置いた。

    二つ目は袋の中で半分以上陣取っていた箱。

    その中にはキャノンの一眼レフ。



    以前何か欲しいものはあるかと聞いたとき

    「カメラ。」

    そう四季が言って

    私はそれでもどんなカメラがいいか解らず迷いに迷った

    私の好きな写真と四季の撮る写真が撮れる、トイカメラのLOMOを手に入れた後に

    中古のカメラ屋で一目惚れして

    それからそのカメラを買うお金が貯まるまで度々カメラ屋に行き

    カメラ屋のヒゲオヤジに相談をして買ったカメラだった。


    箱からカメラを出し

    「おー。こんなカメラが欲しかったんだよね。」と笑いながらカメラをいじる姿を見て

    私も嬉しくなった


    次にLOMOの入った小さな包みをあけた。

    「またカメラ!?」

    「うん。それいい写真が撮れるんだよ。トイカメラって言うんだけどね。要は玩具のカメラさ。もう製造されてないから大事に扱ってね。」

    「っへぇー。これは?」

    「それはフィルム。AGFAってフィルムも入ってるんだけど、これすげーいい色が出るんさ。で、これも製造してないから、あとに入ってるフィルムで練習して、慣れたら使って」

    「ほぉ。あざーっす」

    「いえいえ」

    二人とも深々とおじぎをする。


    ふふふっと私は照れくさくなって煙草に火をつける。

    「あっ、あのSDに入れてほしいって言った曲、千の風になってだっけ?」

    「あぁ、そうそう。歌詞がすげーいいんだよ。」

    「深夜のあのチャンネルだよね?」

    そう言いながら携帯で調べてみる

    「そうそう。」

    「…あぁ。これか。んー番組には誰が歌ってるかわかんないな。」

    「お前紙ない?」

    「んぁ?んーないねぇ」

    「じゃぁこれでいいや。ペンない?あ、あたしが持ってるわ」

    「おぅ。」

    四季は紙に何かを書き出す

    「んー今思いだしてみる。」と頭を抱える四季の向かいで私は携帯で歌詞を調べる

    「お。これ?」

    「ん?…あ、そうそう。少し違うけどこれ。」

    「まぁ訳は人によって変わるからね。」

    そうい言うと四季は何かを書いていた紙をクシャクシャにした

    書き出していたものが歌詞だと解り

    「歌詞探さなきゃよかった…」とションボリすると

    四季は笑った



[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17528 / 1階層)  海鏡の光橋-8-
□投稿者/ 金丸 大御所(266回)-(2006/12/24(Sun) 02:03:42)
    2006/12/24(Sun) 02:04:10 編集(投稿者)

    ともさんとも合流して

    居酒屋に向かった


    ともさんと四季

    二人並んだ姿を

    心温かくしながら

    カメラのシャッターをきる


    後ろからバイクでタケちゃんがきた


    バイクおいてきなよ と四季の家にバイクを置きに行ったタケちゃんをおいて歩く二人の後ろを

    少しうろたえながら歩く

    お…おいてっちゃっていいの?

    チラチラと後ろを振り返ってみるけど

    タケちゃんの姿は一向に見えない

    心配になって立ち止まると

    四季はタケちゃんを迎えに行った



    少ししてタケちゃんが合流して

    「おつかれ」と声を掛け合った


    4人ともバラバラに歩く

    なんつー協調性のないやつらだろう と少し笑った


    四季

    ともさん



    タケちゃん


    その順番で歩く


    途中四季がATMに寄るというので先に行くことにした

    タケちゃんは立ち止まり

    無言で四季を待つ

    その姿をみて

    あえて歩き出す


    あいにく目指していた居酒屋が休みで

    隣の駅の居酒屋に行くことになった


    歩いて居酒屋の近くまで行くと

    ともさんが言った

    「あそこ来た事ある?」

    「うん。」私は照れくさくなって

    「あそこで言ったんだよ。」そう言って笑った。

    あの居酒屋は

    私が四季に

    付き合おうと言った場所

    あの席になるのかな と考えたら

    少し面白かった


    階段を上がり

    座敷に通されると

    懐かしい曲が流れていた

    四季が部屋に入る直前私をみて笑いながら



    「懐かしいな。」とコソッと言った



    タイムリー…と 笑いをこらえられず

    私は一人で笑っていた。


    タケちゃんとともさんは どちらが端に座るかでうろうろしていたが

    結局ともさんが譲歩してタケちゃんが端に座る


    タケちゃんの隣はともさん

    四季の隣は私


    乾杯をして

    飲み始めた

    タケちゃんは二日酔いでウーロン茶だった



    この前みたいに

    ここに居ていいのかわからない思いと

    言い表せぬ不安は無くて

    ただ少し具合の悪そうなタケちゃんが心配で

    この場に居ることが嬉しくて

    カメラを取り出してパシャパシャと無断で撮った



    と顔がこちらにむくと

    えへへへへ と最上級にニヤけてみた


[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17529 / 1階層)  海鏡の光橋-9-
□投稿者/ 金丸 大御所(267回)-(2006/12/24(Sun) 03:07:26)
    タケちゃんを抜かして

    女3人がほろ酔いになった頃


    タケちゃんが四季の煙草の量を注意した

    そこから

    タケちゃんは四季への不安と不満を言い始めた

    静かに聞く四季と

    全てを言い切らないような

    でもちゃんとわかってほしいような

    そんな言い方を四季に向ける


    二人の姿を

    なんの不思議もなく

    恋人同士ならば普通のことと


    少しこの二人のこうゆう姿を見れて嬉しく思った。


    あぁ

    すごい好きなんだなぁ と

    私はタケちゃんの話を聞いていた


    私は

    タケちゃんに

    四季は本当にタケちゃんが好きなんだよ と伝えたかった


    最近酒に弱くなった四季は途中でグラグラしはじめて

    眠そうだったので「ここで寝ればいいよ」と頭を膝に誘導した


    四季が本当に寝たのかわからないうちに

    タケちゃんは言い出さなかったことを話し始めた


    不安をかかえて

    でもグチグチ言いたくなくて

    もどかしくて

    イライラして


    そんな姿をみて


    あぁ

    本当にまっすぐな人なんだと

    本当に熱い思いのある人なんだと思っていた


    でも

    私は助言することを躊躇った

    これは

    この二人の

    この恋人達の問題であり

    私は
    私がここで何かを言うことを許さなかった



    一通りタケちゃんが吐き出すと

    一息ついて

    こんなだけどこいつが居てくれてありがたいと思っていると

    ともさんに向かって言った。


    深読みしなければ解らないこと言うともさん

    時折深読みする余裕もなくタケちゃんは思いのたけをぶつけるのだろう


    少しすっきりした顔をしたタケちゃんをみて

    少し安心した


    四季を「そろそろ帰るよ」と耳元で言う

    タケちゃんとともさんは「揺り起こしていいよ。そうなったら全然起きないから」と笑って言った

    でも低血圧だしなぁ と

    なんだか起すのがもったいなくて

    出来るだけ優しく起した。


    起き上がった四季がグデグデで

    初めてこんな酔ってる姿を見た と

    内心すごく嬉しかった。




    グデグデで立つのもやっとな四季をタケちゃんに任せ

    会計を済ませた。


    階段を降りるのもやっとな四季をタケちゃんが支え

    その後ろを私が歩く


    こいつ一人で立ててねぇよ と笑いながら

    近くのコンビニに入った

    四季があまりにグデグデすぎて迷惑になるので

    タケちゃんと四季と私は外に出た


    後ろから支えられてるのにまだグラグラして

    初めて見る表情にも

    二人の姿も

    寒い寒いと嘆く四季に

    この寒空のなか自分の上着を四季に着せるタケちゃんの姿



    嬉しくて

    愛しくて

    四季を見つめると

    四季がいきなり抱きついてきた



    四季の眼差しには

    なんだか想いが溢れているようで

    幸せな気分になり

    少し照れくさくなって笑ってしまった


    ともさんが飲み物を買ってコンビニから出てくると

    すぐ横にあるカラオケボックスに入った


    そのボックスは狭くて

    ともさん四季わたしで一列になって

    私の前にタケちゃんが座り

    L字になる

    しかも四季はブーツを脱いで

    タケちゃんは四季の足を自分の膝の上に乗せ



    やっべぇ。狭いし動けねぇ

    と私はちっちゃくなった


    四季以外が歌って

    時折四季を見ると

    すごく優しい目で

    寄り添いたいと思った



    あいにく動けず

    私はただ目で伝えるしかなかった


    タケちゃんの歌声は少し高くて

    優しい声だった


    そんな歌声で歌う歌がものすごい古い曲ばかりで

    しかも上手くて

    アンバランスなはまりが

    少しおかしくて

    有る意味すごいと思った


    私も負けじと古い曲を選曲し

    ラブミーテンダーを歌った

    何これカナふってねぇじゃん!!と少しあせりながら

    悪い目を凝らして

    わからないところはニュアンスで歌い

    サビは想いをこめて歌った


    あいらぶゆーだぞこんにゃろめ

    と歌い終わった後に四季を見ると

    何故だかみんなが拍手して

    えぇー音痴だったのに何故?!

    と疑問を抱いた




    一時間ほどでカラオケを出てタクシーを拾った

    四季とともさんが家の階段を上がると

    階段の前でタケちゃんは飲み物の入ったビニール袋を私に渡し

    「帰るね。今日はごめんね。」と少し気まずそうに言った

    「ううん。全然いいよ。」

    「入っちゃっていいよ。」

    「うん。」

    そう答えたけど私は最後まで見送りたかった

    「今日はありがとう。」

    「私こそ。気をつけてね。」

    「本当に入っていいよ。」

    「ううん。」

    タケちゃんがバイクを走らせ

    バイバイをして階段をあがった


    無事に帰れるといいな


    ドアを開けると二人はもう着替えてメイクを落としていた

    「はえーな。」

    「あれ?タケちゃんは?」

    「帰ったよ。」

    「そか。」


    私も恐らく泣かないどろうとしてきたメイクを落とし、着替えた


    歯を磨いて部屋に戻ると

    「5分海貸して」

    と四季が言うので

    布団の上にいる喋り足りないともさんを残し

    四季のベッドにもぐりこんだ

    いつから箱は放たれたのかわからないが

    四季の出した腕に

    すんなりと潜り込み

    腕枕で寄り添った


    大きく毛布をかぶせ

    見えるのは四季の顔と

    部屋の光だった
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17533 / 1階層)  海鏡の光橋-10-
□投稿者/ 金丸 大御所(268回)-(2006/12/25(Mon) 01:46:43)
    包まれる感覚

    伝わる温もり


    久しぶりに感じた

    この染み込むような幸せ



    四季がおでこにキスをする


    コッソリと

    優しく

    柔らかい温もりが伝わる



    なんだか恥ずかしくて

    でも幸せで

    嬉しくて


    四季の背中に回した腕で

    噛み締めるように抱きしめる



    髪を撫でる四季の手は

    愛おしむように髪を滑る



    また優しく


    唇から愛が伝わる



    染み込んだ幸せは

    キスをしたいと願わせる



    苦しい程切なくて

    躊躇いも鳴り止まない



    このベッドの上は

    たった二人の世界



    切なさと

    染み込むような幸せと

    心地良い愛が渦を巻く



    ともさんがトイレに立ち上がって


    部屋の中が本当に二人きりになった時


    四季がまぶたにキスをした



    キスしたいと


    強く願った時


    躊躇いを振り払うように起き上がる


    この二人きりの時間は短い



    でも


    やっぱり勇気が無くて


    また四季の腕に潜り込む




    何故だか


    躊躇いがあるにも関わらず


    何かに背中を押され


    四季を見つめ


    キスをした



    一瞬の


    儚い感触



    躊躇いも

    渦巻く幸せと愛も

    恐怖も

    切なさも

    何かが解き放たれた感覚も


    全てが


    嵐のように襲う



    震えた私が


    抱き締めた時


    四季が耳元で


    そっと



    静かに



    優しく




    「ありがとう」



    そう言って抱き締めた




    色んなものが込み上げて


    今にも泣きそうになる



    この数年

    葛藤し

    苦痛に包まれていたものが解放される



    それが渦の中に入り


    威力が増す




    強く



    強く抱き締めた後


    顔を上げ


    意識もしていないのに笑顔になる




    さっきよりも優しく


    四季は髪を撫でる




    恥ずかしくて俯くと


    「もう一回」


    と四季が呟く




    次は躊躇うことなく


    確かめるように



    唇を合わせる

    すがるように

    重ねた唇は


    儚く儚く


    強くなる愛情に合わせるよう





    心臓が締め付けられ


    背中が熱くなる




    一瞬


    今背中触られたら絶対声でるからお願いだから触らないで。と頭をよぎる



    すぐさまそんな考えは吹き飛び


    切なさが波になる




    唇を離し


    ただ四季を見つめる



    ただ純粋な想いが伝わってほしいと

    見つめた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17536 / 1階層)  海鏡の光橋-11-
□投稿者/ 金丸 大御所(269回)-(2006/12/26(Tue) 01:30:24)
    とても寒い日

    熱い飲み物を飲んだ時

    口から喉へと熱が降りるように


    高まる感情が

    体の中を駆け巡る




    それに反発するように

    心の中は

    優しく


    温かくなっていく




    ただゆったりと


    好きという感情が

    体の中も心の中も

    流れ流れて

    もう

    四季しか見えなくなる



    渦巻いていたものは

    はじくように散り散りになり

    熱となる



    こだまするように

    不安も響く



    沢山たくさんの言葉が


    一つの言葉になり

    口から出そうになる



    けれど

    その言葉は


    頑なに箱から出なかった



    だから

    言えない代わりに見つめた


    言えない代わりに抱きしめた


    言えない代わり

    唇に込めた




    私が保っていた距離


    キスを怖がり


    頑なに守った壁が無くなる



    いつも


    いつも


    四季の頬に手を触れたくなる



    寄り添うように

    傍に居たいと想う



    この限られた時間


    この二人寄り添う時間



    包み込むように

    心に色づけし描く




    違和感も

    恐怖もないこの温かさ届く距離



    心の中


    寄り添う



    髪や頬を撫でる四季の手に

    手を触れたくなる



    目を閉じる間

    四季を見つめる間

    四季の腕の中目を閉じる間


    柔らかな

    柔らかな

    優しく温かい想いが

    包み込む






    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17537 / 1階層)  海鏡の光橋-12-
□投稿者/ 金丸 大御所(270回)-(2006/12/26(Tue) 01:51:44)
    朝目が覚める


    昨夜飲んだアルコールのせいで喉が渇いている



    ペットボトルに入った麦茶を音を立てて飲んだ


    けれど足りなくて喉はすぐ渇く


    タバコに火をつけ

    深く吸いこむ


    夜のことを思い出し

    フッと幸せがまた咲き誇る




    しばらくして二人共ちゃんと目を覚まし

    四季が麦茶を飲むと

    私も とペットボトルを手にする


    ようやく渇きは無くなった



    「どこ行くかぁ。」

    「んーどこでも。」

    「ピアスだろー…。新宿か中野だなぁ」

    「んー。」


    くっついた腕から伝わる温もりが心地良い


    「ピアス開けるのに戻ってくるなら中野かなぁ。」


    四季にピアス開けてと頼んだからだ


    何故だかピアスを開けたいと思った時

    四季に開けてほしいと思った


    「んー。」


    行くところが決まったのに

    二人共動こうとしない



    私は離れたくなくて

    四季が起き上がるまでくっついていた


    四季が起き上がると私も起き上がる



    抵抗なくくっついた


    あぁ

    距離がなくなったんだと

    嬉しくなる



    「お前ほっぺた柔らかいなぁー」

    そう言って四季は頬をスリスリする

    私は何も言わずに微笑む



    「ぶーにぶーにぶーにぶーに」

    スリスリしながら四季が言う


    「ぶにぶに言うなや」

    頬を離さずに笑って言う



    ゆったりと

    ゆったりと

    優しく

    心地良い雰囲気が二人を包む



    こんなイチャイチャすんの初めてやなぁ

    と内心少し恥ずかしくも嬉しくなる



    この時間

    こんな時間を過ごせるならば私は

    何にでも耐えられる


    何よりも


    愛おしいこの時間を

    過ごせるならば






    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17581 / 1階層)  海鏡の光橋-13-
□投稿者/ 金丸 大御所(271回)-(2006/12/31(Sun) 20:56:03)
    離れ難かった

    いつまでも

    いつまでも

    くっついていたかった。


    けど

    ピアスを買いに行くのは中止にしたくなかった。

    自分のピアスを買うだけなら、すんなりやめにしただろう。

    四季が

    「シンプルなピアスがほしい」と前に言っていて

    ピアスを買いに行く本当の理由はそれだった。


    アクセサリーを贈る主義ではないのだけれど

    何故だか望む物を贈りたいと思った。


    財布の中には

    二人分のピアスを買うお金と

    私が開ける為のピアッサーを買うお金が入っていた。


    しぶしぶながらも用意をして四季の家をでる

    中野の駅に着き、近くのビルでピアスを眺めた


    なんとまぁ可愛らしいピアスばかり。

    うーんと唸りながら二人でピアスを見る。


    案外安いことに驚いた。

    なかなか気に入るものがなくて

    四季がお父さんへ贈るプレゼントを見ることになった。


    「たっけ」値札を見て呟く四季

    階を変えて、和物を置く店で買うことにした。


    ラッピングを待っている間

    プラプラと店内を見てまわる。


    二人の間にあった距離が


    私が保っていた距離がないことに気づいた



    ラッピングが終わり、ご飯を食べることにし、近くのパスタ屋に入り

    注文したものが来るまで話していた




    「お前と居ると可愛く見えて仕方ないんだよね。」と笑って話す四季


    恥ずかしくて仕方ない私


    昨日のタケちゃんが言っていたことも話し

    あんまり心配かけんなよ と心の中で呟いた。


    パスタが来て

    「和風のが食べたいって言ってたくせに私もろチーズたっぷりじゃんね」

    鶏肉とチーズのパスタ混ぜながら言った

    「ほんとにね。」と笑って四季はタラコのパスタを一口パクッと食べる


    四季が食べ終わるころには

    まだ私は4分の1残っていて

    「食べるの遅いね」と言われてしまった

    「パスタは遅いねぇ」少しだけ箸を早くする

    音と巻きつけるパスタの量を気をつけていると、どうしても遅くなってしまうのだ

    若干固まり始めたチーズに苦戦しながらも食べ終わり

    ウーロン茶を飲み干し、煙草に火をつける


    少しお腹が落ち着き

    レジへと向かった。

    財布を出すと

    「いいよ。」と四季はお金を出した

    私は納得いかないような顔をすると

    「これ昨日のやつだから」と

    昨日置いていくつもりでテーブルに置いたカラオケのお釣りだった

    しぶしぶ財布をしまい、パスタ屋を出た
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17582 / 1階層)  海鏡の光橋-14-
□投稿者/ 金丸 大御所(272回)-(2006/12/31(Sun) 21:25:41)
    少し歩き、ジュエリーショップのショーケースを眺めているとき

    財布がないことに気づいた。


    「財布がない。」

    「は?」

    バッグの中もポケットの中にも財布は無かった。


    「やっぱりない。」

    「パスタ屋か?」

    「わかんない。」

    二人で歩いてきた道を戻る


    なるべく早く

    目を凝らし

    早く

    早く



    パスタ屋に戻り、「財布落ちてませんでしたか?」と店員に言う

    「いつごろですか?」

    「10分も経ってないです。」

    店員は引き出しを開けたり、かごを漁る

    「ないみたいですね。」と言うと上役の人に伝える

    「もし見つかった場合ご連絡致しますので、連絡先とお名前を書いていただけますか?」と白い紙を出す

    書き終えた番号と名前は

    焦りとパニックのせいか少し歪んでいた。


    もう見つからないかもしれない

    と店を出たときにフッと考えた


    「交番にいこう」と向かった

    歩いている最中

    「なんか焦りはあるけど危機感ないわ。」と笑って言った

    「あー、あたしも落としたときそんなだった。」と四季と二人で早足で歩く


    交番に着き「財布落としたんですけど、とどいてませんか?」

    そう言うと若い警察官は用紙を出して「記入してもらえますか?」と

    ボールペンを出した

    四季は外に出て待っていてくれた


    自分では大丈夫だと思っていても

    字は歪んで

    漢字はまったく出てこない。

    「どんな字でしたっけ?」と聞くと

    若い警察官は丁寧に教えてくれた。


    用紙に書き終り、手渡すと若い警察官は電話をかけ始めた

    頭の中は混乱しているのか

    冷静なのかわからない


    四季は外に居る

    あぁ

    待っててくれている

    とボーっと考えていた


    「はい、じゃぁこれもし見つかった時に管理センターにもって行けば渡されますから。あと、保険証の再発行のときに必要になるかもしれないので、ちゃんと保管しておいてください。」

    「はい、わかりました。ありがとうございます」

    外に居る四季に「終わったよ。」と声をかけた


    「あーあ。」と呟くと

    「まぁこんなこともある。」と四季は優しく言う


    もう一度通った道を行く

    今度はゆっくり

    隅々まで


    「明日銀行行ってお金おろさなきゃなぁ」

    「なるべく早い方がいいからね」

    「あー…いてぇー」

    頭を抱えるように言った後

    財布に入っていたものを思い出した





    四季が新宿のパスタ屋で

    紙ナプキンに

    「お前の子供の名前考えたんだよね。」と

    書いてくれたもの


    四季がトイレに行ったとき

    そっと財布にしまったあの紙



    生まれない子供の名前を

    書き出したあの紙は

    私の悲しみや寂しさを増幅させ

    時間が経つにつれ温かさをくれ

    私の中で強さをくれた


    四季の温かさや優しさ

    私の願いや悲しさ

    混ざり合い

    いつしか

    かけがえのないものとなっていた



    大切に

    大切に

    なくさないように家においておきたいけど

    傍においておきたかったあの紙



    その紙をなくしたことに気づき

    そこから私は「いたい」としきりに言うようになった
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17583 / 1階層)  海鏡の光橋-15-
□投稿者/ 金丸 大御所(273回)-(2006/12/31(Sun) 21:45:59)
    いたい




    いたい




    心が静かに叫びだす


    「あの紙なくした。」

    「紙?」

    「前に四季がパスタ屋で書いてくれた紙。」

    「あぁ…。」

    「いたい…みんなが言う痛いじゃなくて、ほんとに心が痛い。」

    んーと四季は手を差し伸べた

    その手を握り

    「泣きそう」

    もう

    止められなかった


    人の行きかう混雑した道で

    私は歩きながら涙をこぼした


    もう止まらない


    いつも人前では絶対泣かない私が

    こんな混雑した道で

    気にする余裕もなく泣き出す


    ぬぐっても

    ぬぐっても

    流れ出てくる


    四季が不意にわき道に入り

    抱きしめてくれた


    もう

    少しだけ我慢していたものがあふれ出す


    なくした

    なくした

    傍から居なくなった

    失った



    自分の中

    自分より大切な想いのつまったものが


    もう

    ここにはない



    四季から離れ

    涙を拭いた

    「どうする?どっか入る?飲みにいく?」

    「…あるきたい」

    「ん。」


    また手を握り締め歩き出す


    私は


    もう

    あれがどこにあるのか

    ここには無いことを知っていながら

    解っていながら

    目は宙を彷徨いながら探していた




    心が閉じようとする



    それより強く早く

    なくしたものを求める想いがあふれ出す


    「こうえんいきたい」

    「ん。」


    何を見ているのかわからない






    なくしたものへの想い以外の感覚がなくなったようになっていた


    寒いのか

    この手から伝わる体温は温かいのか

    光はあるのか

    闇はあるのか






    公園に着くと

    四季は缶コーヒーをくれた

    私の好きなカプチーノ


    一口飲み

    息を吐き出すと

    涙が溢れた
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17584 / 1階層)  海鏡の光橋-16-
□投稿者/ 金丸 大御所(274回)-(2006/12/31(Sun) 22:49:08)
    「なくしたことへの後悔でも自分への怒りでもない。ただただ喪失感なんだよ」

    止まることなく流れ続ける涙


    存在しないものへの

    とめどない喪失感

    溢れてくる悲しみ


    あの紙へではなく

    あの紙にこもっていた

    四季の想い

    私の想い

    形なきものの

    あの温かさ



    声を上げず

    静かに

    静かに

    叫ぶように涙は流れる


    「なんでなくさなきゃなんなかったんだろう」

    遠くを見つめそう言うと

    「昨日までのお前を見守ってくれたのかもね。」

    「どうゆうこと?」

    「もう一人で頑張りなってことじゃないか?」


    なんでさ

    なんでいっちゃうのさ

    ひとつ達成できたからって

    いっちゃうようなそれだけの想いしかつまってた訳じゃねぇだろう



    怒りが湧く


    なんでいっちゃうのさ

    なんで置いていっちゃうのさ

    傍に居てくれてもよかったじゃないか

    ずっと見守ってくれてもいいじゃないか

    なんで傍から離れる必要があったのさ

    どうして

    どうして

    どうして傍から居なくなったんだよ


    「もう執着するなってことなのかな。」



    ずっと

    ずっと傍に居るものだと

    ずっと傍にあるものだと思ってた


    なくすなんて

    これっぽっちも思ってなかった

    ずっと

    ずっと温もりをくれるものだと

    そう思っていた



    なんでここに無いの



    全てが叫ぶように湧き出てくる


    全てが探すように湧き出てくる

    求めるように

    抱きしめようと

    もがいている


    怒りと悲願

    悲しみと懇願

    喪失感

    探すように

    もがくように

    求め続ける


    なんで

    なんで産むのを諦めた上になくさなきゃならなかったんだろう

    間違ったことだったのか

    私が何かしたんだろうか


    あのとき四季に抱いた愛が

    あまりにも大きくて

    だから

    いってしまったんだろうか





    もう




    戻ってこないだろう



    いくら待っても



    いくら探しても


    あれは


    もう私の元へは戻らない





    私と

    あの場所をつなげていた

    あの紙を失って

    私はまた

    あの場所を抱きしめることはできるのだろうか


    切れた手綱は

    姿形もなく消えた


    なくなったんだ


    もう





    ない

[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / ▼[ 17587 ]
■17585 / 1階層)  海鏡の光橋-17-
□投稿者/ 金丸 大御所(275回)-(2006/12/31(Sun) 23:23:01)
    2006/12/31(Sun) 23:23:29 編集(投稿者)

    もう傍にないことを受け入れた時

    自然と涙は止まった


    呼吸を整え


    「もう落ち着いたよ。」

    「そか。」

    「ありがとう。」

    「寒くない?いく?」

    「そうだな。」


    また歩き出す


    寒さを感じているのかわからない

    それなのに震える



    「みてみて。歯がカチカチいってる。」

    「ふっ」



    寒いんだろうか


    よくわからない


    「あ、水分買ってかな。」

    「ん。」


    コンビニに入ると

    暖房が全身にあたる


    これは果たして暖かいんだろうか


    「お前は?」

    「ううん。」


    コンビニを出て歩く

    家に着き

    着替えた

    ベッドに入り

    四季を抱きしめる

    すがるように

    強く抱きしめる

    虚無感が

    喪失感がまた襲う

    けど

    体は震えるのに

    涙は出ない


    四季を見上げると

    包むように

    私を見つめた


    全てを

    今ここに居る私の全てを

    その目の奥へ

    連れて行ってほしいと

    そこへ行きたいと

    願った



    抱きしめる度

    強く還ってくる


    温もりを探すように

    私は四季を抱きしめる



    かえりたい

    そこへかえりたい


    あの場所を探すように

    抱きしめる


    心の中

    削ぎ取られた場所をつなごうと


    また

    その場所を受け入れようと

    抱きしめた



    フッと我に返り「今何時?」と聞いた

    「10時」

    終電で帰るならもう用意しなきゃならない

    でも

    探したいものがある


    ここに居たいと

    心の中呟く


    まだ

    離れたくない



[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 17585 ] / ▼[ 17590 ]
■17587 / 2階層)  お久しぶりです☆
□投稿者/ 夏菜 一般♪(1回)-(2007/01/01(Mon) 04:01:09)
    明けましておめでとうございます♪

    いつもいつも金丸様の言葉が胸に沁みこんで・・・共感ってこぉゅことなんだなって思います。
    今、私はすごく辛い時期にあります。
    でも、金丸様の言葉を支えに頑張りますww

    これからも更新頑張って下さい(*^□^*)

[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 17587 ] / 返信無し
■17590 / 3階層)  夏菜様
□投稿者/ 金丸 大御所(276回)-(2007/01/01(Mon) 15:53:07)
    明けましておめでとうございます。

    一番乗り!!!!ですね(笑




    辛い時期に私の言葉が支えになってくれたら

    そう思うと文章に想いがまたひとつ重なります。

    そんな時期に読んでくれてありがとうございます。


    まだ書き表したいことの4分の1も書けません。
    けど、まだ伸びることができると信じて書いていきます。

    不完全だからこそ

    まだまだガキだからこそ

    先に

    前に進むことが出来ます。


    もし明日死んでしまうとしても

    あと一時間で死んでしまうとしても

    そのときまで進めると信じて

    歩んでいきます。


    どうかその姿を見守ってください。

    私が描いた何かが夏菜さんに届くことを祈ります。


    ありがとう。


    金丸
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17591 / 1階層)  新年のご挨拶
□投稿者/ 金丸 大御所(277回)-(2007/01/01(Mon) 16:00:26)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    明けましておめでとうございます。

    昨年は拙い私のエッセイを読んでいただき

    ありがとうございました。

    どうぞ今年も宜しくお願い致します。


    金丸
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17594 / 1階層)  海鏡の光橋-20-
□投稿者/ 金丸 大御所(280回)-(2007/01/02(Tue) 03:03:02)
    月は見えず

    星は遥か遥か遠く



    ポケットの中握り締めた手の体温を感じない

    決して冷たい訳ではなく

    決して温かい訳ではなく

    ただただ

    感じない




    またいつかこの時を思い起こした時

    記憶はあまりないのだろうか

    そんなことをふと考えた



    あぁ


    瞼が重い

    真実から逃げるように睡魔は襲う



    本当は眠りたくない


    いつまでも


    いつまでも


    考えていたい




    無機質



    そんな今

    どこかに温かさを探している




    気がつけば家に着いていた



    鉛のように


    冷たく動かなくなった体を無理やり動かし着替える



    ベッドに倒れるように潜り込んだ




    眠りたくない



    見つけたい




    私にしか



    見つからない何かを






    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17593 / 1階層)  海鏡の光橋-19-
□投稿者/ 金丸 大御所(279回)-(2007/01/02(Tue) 02:57:32)
    電車に乗っている間は


    何も見ちゃいなかった


    ただ黙々と電車を乗り換える



    果てしなく長い道のりのような


    たった一瞬の幻のような感覚だった。



    私の家の最寄り駅に着くと


    寒空の中歩き出した



    フードを被り


    イヤホンからは音楽が流れる



    全てを


    遮断するように





    帰りの道のり

    歩くたび

    歩くたび

    喪失感が増す


    寒さも

    温かさも感じない


    クリスマスイルミネーションも

    澄んだ星空も

    街灯も

    歩く道も何もかも見えていなかった


    イヤホンから流れる音楽さえ聴こえない

    足元はおぼつかなくて

    力が入らない

    定まらない

    今にも膝から落ちてしまいそうになる




    どこを歩いているのか

    どこを目指しているのか

    何を見ているのか

    何を感じているのか

    何を聴いてるのか


    わからない



    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17592 / 1階層)  海鏡の光橋-18-
□投稿者/ 金丸 大御所(278回)-(2007/01/02(Tue) 02:50:50)
    探しているものが

    見つかりそうだと思っていた

    もう少し

    もう少しでいい


    あと少しなんだ




    時間は容赦なく過ぎて行く



    始発で帰ろうか


    でも迷惑になったら…




    四季を見つめた



    その奥に答えがありそうな気がした



    この瞳の中


    あの場所と私を繋ぐものがあるかもしれないと


    迫り来る時間の残酷さが


    私を動かさない




    「帰った方がいいと思う?

    何か見つかりそうな気がするんだ」


    そう投げかけると


    静かに目を閉じ

    四季は頷く



    あぁ…




    「お前にしか見つからないものがある。」



    その瞳の奥にみたものは

    ただの私の願望なのだろうか




    もう一度



    心の中で

    静かに叫ぶ


    ここに


    お前の傍に居たい


    慰めてほしい訳でも

    ただ温もりがほしい訳でもない



    その


    瞳に


    繋がる鍵があるかもしれない




    でも


    やはり私にしか見つからないものがあるのかもしれない



    ここに居ては見つからないものが





    「わかった。」


    静かに立つ




    無言で着替える


    「送ってくる。」



    そう四季がともさんに伝える



    玄関で靴を履き終えると

    ともさんが見送ってくれた


    「ありがとう。またね。」


    笑顔で言う



    ごめんね が言えなかった





    早足で歩く


    いくつか交わす言葉は


    終電の時間




    これから待ち構えているものは



    果たして何なのだろうか



    「ありがとう。」



    「ん。気をつけて。」


    「ん。」



    改札を通り


    一度後ろを振り返る


    四季は手を振った



    私は一瞬手を振り



    きびすを返し前へ進む



    振り返らず



    これから待ち構えているものに


    向かうように



    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17601 / 1階層)  海鏡の光橋-21-
□投稿者/ 金丸 大御所(281回)-(2007/01/04(Thu) 10:17:56)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    冷たい毛布を握り締め

    目を閉じる





    何故無くさなきゃいけなかったんだろう


    執着するなってこと?

    本当に諦めろってこと?

    居ない存在を求め続けるなってこと?



    形もない


    宿したこともない


    存在すら


    していない



    願いと愛情

    そんな想いが作り上げた心のあの場所



    見えない存在を

    少しでも形作ったあの紙



    二人の想い込めた紙

    いつのまにか

    温かさをくれるようになっていたあの紙



    私を守るように

    私に守られるように

    傍に居た



    ごめんね


    守り上げてあげられなかったよ



    急に涙が込み上げ

    溢れ出す




    君は今独りなのだろうか


    君を独りにしているのだろうか



    温もり探すように抱きしめた


    もう少しで温もり届きそうで


    けれど


    私は独りで

    君を抱きしめてあげられるようにならなきゃ意味がないのかもしれない






    君はどこに居るんだろう


    心の中


    私は君を見失った



    抱き寄せ

    抱き締め


    もう離さないと伝えたい


    私の心の中


    君は今

    どこに居るのだろう



    声すら聞こえない


    姿も見えない


    ただわかるのは


    温かさを求める


    たったひとつの

    温もりだけ




[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17602 / 1階層)  海鏡の光橋-22-
□投稿者/ 金丸 大御所(282回)-(2007/01/04(Thu) 10:53:46)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    目が覚める

    いつのまにか夜は去り

    朝陽が差し込む


    「貯金引き出さなきゃ…」


    生気のない体を起す


    兄に電話をかける

    「もしもし?あのさ、昨日財布落としたから銀行行って貯金引き出したいんだけど、車で送ってくれない?」


    自分でも驚くほど声のトーンが低かった

    でもそれをコントロールするほど

    私には余裕がなかった。


    「あっらぁ。なぁに?財布落としちゃったのぉ?そりゃ残念ねぇ〜。」

    兄がふざけて、いつものおねぇ言葉をしゃべる


    「うん。」

    「自業自得ってやつよねぇ。そ・れ・は。」

    一瞬殺意が湧く

    「銀行つれてって。」

    「高いわよぉー。」

    「うん。」

    「わかったよ。すぐいけるから用意しな。」

    「ありがと」


    兄のおふざけに付き合う余裕はない。

    車の中では相変わらず

    「財布落とすなんて馬鹿のやることよねー。」

    「送り賃いくらにしようかしらぁー。」

    など、毒舌オンパレードで

    私はいくらも反応しなかった


    すると

    「お前いい加減笑えよ。」

    と少し怒る


    あぁ

    笑わせようとしてくれてたのか

    不器用な兄の一所懸命な励ましだったことに気づく


    ってゆうかお前のブラックジョークは今笑えねぇもんばっかなんだよ と

    あまりの兄の不器用さに笑っていた


    感謝するように

    少しづつ笑い出す



    貯金は全額無事で

    それを一円残らず引き落とす


    貯金が無事なことは

    少しの安心を呼んだが

    あの紙を無くしたことを超えるものじゃなかった。


    帰り道

    また同じように兄がブラックジョークと毒舌で笑わせようとする

    奈落の底に落ちたような妹を

    兄なりに励まそうとする姿に

    なんとなく愛しさが湧く


    優しい言葉をかけられない捻くれ者の兄

    過去の恋愛もこうだったんだろう

    兄弟だからこそ

    長い年月を共に過ごしたから理解できるけど

    彼女にこんな不器用だったら長く続かないだろうなぁ と

    窓の外を眺めていた



[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17633 / 1階層)  海鏡の光橋-23-
□投稿者/ 金丸 大御所(283回)-(2007/01/10(Wed) 03:34:14)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    あれから数日


    私はまだ傷が癒えず


    その痛みに時折、別世界へ飛び立つ


    自分の中

    さまよい

    探し回り

    届かないあの場所を

    途方に暮れながら眺めていた



    それでも朝は来て

    家族と話し

    バイトに行かなきゃならない



    バイトに行けば

    お客さんを相手に笑い


    店の女の子に笑う



    それが『働く』ということだと思っているから。



    店で一番の仲良しのゆかさんに

    財布を落とし

    大切なものを失ったことを話した



    「また書けばいいよ。また作ればいいよ。」


    違うと叫びたくなる


    「もう同じものは作れないんです。

    同じ場所で同じように

    同じ紙に同じペンで書いても、それはあれじゃない。

    もう今出来るのはなくしたものを受け入れることだけです。」



    静かに

    静かに

    そうじゃないんだと伝えたかった



    蒸し返さないでくれ


    代わりはないんだよ



    長い沈黙の中


    私とゆかさんは待機席から別々のテーブルに呼ばれ

    終業まで顔を合わせることはなかった。



    家に帰り

    電話が鳴る


    着信はキョウ


    「はいもしもし」


    「お前大丈夫?財布見つかった?」

    「見つからない。多分もう帰ってこない。」

    「他に何なくしたの?」


    今までの経緯を

    吐き出すように話し出した



    「そっか…あたしは下手に何も言えない」

    「それでいいんだよ。」


    「なんかお前の…なんてゆうか…そうやって弱い所をさらけ出してくれた事が嬉しい。なんかドキドキしてる」と

    キョウが笑う


    「そうかもね。そうだね。初めてかもね。」


    苦笑するように私も笑った



    ここまで


    何にも包まずさらけ出したのは


    幾年も付き合いのある、しかも深い繋がりのあるやつにすら

    初めてのことだった。



    それほど私は





    もがいているのかと知った



    後日

    ゆかさんは「ごめんね」と謝ってきた


    「いいんです。私も八つ当たりに近かったし。こっちこそごめんなさい。ありがとう」


    そう返事をし



    キョウは

    「お前が少しでも元気になってよかった。この前は本当に死んだような声だったよ」と笑い

    「そんなに?」と聞くと再現してくれた


    その声のトーンや遅さに驚き


    「そんなだった?」笑って聞くと


    「ほんっとにこんなだったから!!!」と念を押した

    今少しはマシになったのかもしれない

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17660 / 1階層)  海鏡の光橋-24-
□投稿者/ 金丸 大御所(284回)-(2007/01/14(Sun) 00:10:53)
    昔大嫌いだった私の笑顔は

    いつしか誰かの心に響くものになっていて


    笑うことへの嫌悪感は

    誰かを救う力になるのだと思えるようになった。



    心に届けと願い笑い

    心に素直に笑い


    いつからかその笑顔が誉められるようになった。



    『笑顔がいいね。』

    『ほっとする。』

    『子供みたい。』




    そう言われるようになった。



    笑うことが愛情表現

    笑うことが最大の武器

    笑うことが誰かを救う



    宿命のように笑い続け

    幸せを握り締めるように笑った。



    けど


    『無理して笑わなくていい』と言われた時


    何故だか安心した



    あの日失った事実が

    あの日失った時の痛みが



    私を無くそうとしている



    『このままの状態を続ければ、お前が居なくなる。』



    自分が自分でなくなり

    誰かの何かに気づいてあげられないこと

    それは私が一番恐れていること



    誰も気づかない些細なことを


    拾い上げることが


    私にできることだと思っている



    けど


    今の現状を保たなければ

    私のできることは無くなり


    私の意味が無くなる気がする



    でもそれを保ち続ければ

    いつしか私は潰れ

    それすら出来なくなる。



    私はこうじゃなくちゃいけない


    私はこうしなきゃいけない


    私はこうあるべきじゃなきゃいけない


    私はこうなってはいけない


    私はやらなきゃいけない



    沢山のプレッシャーを自分に課せてきた


    プレッシャーが大嫌いなのは

    既にプレッシャーというキャパがいっぱいいっぱいだからだろう



    そのプレッシャーを何か外さなければ


    今の私は耐えきれず潰れる。



    仕事では


    笑わなきゃいけない

    喋らなきゃいけない

    気を配らなきゃいけない


    やることは沢山ある


    家では

    やることが沢山あり

    独りになることさえままならない



    ならば何を省けるのか



    はっきりと区切りをつけ

    独りの時は無になること



    でもそれは


    私が分裂してしまうんじゃないか


    そんな不安がよぎる



    日々の記憶が薄くなり


    何か書き記すのもままならない今


    どうすればいいかわからない混乱と


    これからどうなるのかという不安と


    なりたくない自分が浮かぶ




    私は一体


    どうしたらいいのか

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17661 / 1階層)  海鏡の光橋-25-
□投稿者/ 金丸 大御所(285回)-(2007/01/14(Sun) 01:53:40)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    全てを壊したいと

    一瞬頭をよぎる


    誰にも何も気を使わずいこうかと




    誰かが悲しそうな顔をして俯き

    無言で誰かに助けを求めている時



    何かにイラつき口をへの字にして悶々している時



    何か言いたくてもなかなか言い出せない時



    全てに気づかなくなってしまおうか、と。


    張り巡らした神経を

    誰かに向ける温もりも


    笑顔も


    眼差しも


    全てOFFにし


    何も気づかない

    何も応えない

    手を差し伸べることすらせず

    目を閉じ

    耳を塞ぎ

    拳を握り腕を組み

    口を紡ぐ



    そうしてしまえば

    楽になるだろう



    出来るか出来ないかは別として


    そうすれば


    楽になるだろう




    そんなことを考えていたら気分が悪くなった


    吐き気もする



    自分が一番なりたくない姿


    自分がされたら嫌なことを人にする人間になるということ




    壊れたい

    壊したい


    そう願いながら


    反比例するように

    そうなりたくないと願う



    全てを捨ててしまえば

    背負っていたものが無くなり

    その分楽になれる



    けど

    そうなっても恐らくそれだけじゃ終わらない


    その嫌悪感が

    私を取り巻き


    嫌悪感と開放感が入り混じる


    それでもまた道を探し続ける


    楽な方へと

    楽な方へと。



    楽な方へと行くにつれ嫌悪感は増幅し絡みつく



    苦しみは軽くなるどころか邪悪になる



    それから逃げるように


    今自分を追い詰めているのかもしれない


    足枷から逃げれば

    重く冷たいタールの海に沈み、もがき、嘔吐を繰り返しながら自分の身を切り刻む



    足枷を外そうと鎖に立ち向かえば


    何重にも絡まり

    数え切れない程に足に括りつけられた鎖を見ながら途方に暮れ

    掴んではその複雑さに虚しくなり、手をはなす




    そんな状態で唯一届くのは



    四季の声




    今は

    四季からの痛みさえも

    漆黒の闇に落ちているような私には

    光に等しい




    冷えてかじかみ鎖を持つことすら出来ず
    動かぬ手に


    感覚がもどる




    ふと


    迷惑じゃなかろうかと頭によぎる



    また一つ鎖は重くなり


    手が冷えていく





    あぁ…と力のない声が漏れた気がした

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17662 / 1階層)  海鏡の光橋-26-
□投稿者/ 金丸 大御所(286回)-(2007/01/14(Sun) 02:23:24)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    吐き気がのどの奥に詰まり

    胃酸が込み上げる



    そんな中


    元から無かったものなのだ

    執着しすぎていつしか形になっていただけなのだ

    追い求めてもなにしても

    元から無かったものをどうして掴めようか

    『無い』は『無い』なのだ

    変わりようがない

    今苦しんでいるのは

    ただの―







    ならば

    あの母性愛も無かったものなのか


    私の大半を占めるこの母性愛を消去することになる


    一番私を作っている中心を

    消去した時

    私には何が残る?


    自分自身の中で一番大切なものを

    無くそうとしているのか


    苦しみから逃れたいがために



    吐き気が増す




    のどが渇く



    首筋は熱く痺れて重い




    何をしたいのか

    わからなくなってくる



    私は一体


    どうしたいのだろうか







    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17680 / 1階層)  海鏡の光橋-27-
□投稿者/ 金丸 大御所(287回)-(2007/01/15(Mon) 18:18:25)
    「どうしたの?」


    「大丈夫?」


    そう言われても私は

    枯れた笑い声を喉から出すだけ



    何を言っても

    今は相手を黙らす程

    何も言えなくなることしか言えない



    無意識に

    入るな

    解るはずがない

    私だけの問題なのだ


    と思っているかのように。



    それでも

    当たり散らすようには言わない。


    それが今できる精一杯の気遣いだから。


    何を言われても

    今の私には届かない。


    届かないと思っている。


    でも

    考えが堂々巡りな今

    助けを求めていることも事実。


    その矛盾にさえ

    苛立つこともある。


    最近聞き取りにくくなった左耳も

    紙を前にペンを手にしても何も浮かばないことにも

    笑えない自分にも

    薄れていく記憶にも

    周りの状況が把握できないことも



    心の中も



    悲しみにも似た苛立ちが湧く。




    全てを投げ出し

    貯金を握り締め

    青い海に白い砂浜に行けたら と


    思えば自分の情けなさが余計に苛立たせる。



    なんの意味もない。



    環境から逃げても自分からは逃げられない。


    探すしかないのだ


    自分の中


    何かを。



    それをわかっていてもまだ



    鎖に途方に暮れることしか出来ていない


    光を見つめようとする余力さえ


    今の私の手にはない


    現実を見つめることすら出来ていないのだから

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17720 / 1階層)  海鏡の光橋-28-
□投稿者/ 金丸 大御所(288回)-(2007/01/20(Sat) 22:54:31)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    また時を戻すようなことが起こった

    強い光が目を潰し
    耳を切り裂き
    全身を引き裂くような

    そしてそれが鮮烈であり

    鈍く

    一瞬のようで

    永久のように



    痛みが生き返る

    そして重なり

    頭の中が白くなる


    白なのか黒なのかわからない世界が

    私を引きずり込む


    叫びだしたくなる

    崩れ落ちたくなる

    気を失ってしまえば楽なのに



    こうして私は

    閉じ篭った


    自らに引きずり込まれ

    幽閉され


    立ちはだかる壁の中に

    狼狽する余裕もなく

    倒れ込んだ
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17721 / 1階層)  海鏡の光橋-29-
□投稿者/ 金丸 大御所(289回)-(2007/01/20(Sat) 23:10:53)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    笑うことさえ

    話す事さえ

    何かを目にすることさえ

    出来なくなるほど

    力を失った



    私の仕事は

    お客さんを相手に聞き、話し

    笑い、笑わせ

    その人の何かを読み取らなきゃいけなくて

    お酒をつくり

    灰皿を換え

    様々なことに気を配り

    頭をフル回転させなきゃならない


    仕事が休みの日は

    家事や生後半年の甥っ子の子守

    生活用品や、食材の買い物


    本当に独りになれるのは

    仕事の日の寝る前2時間


    今の自分の現状を受け入れようと意識するので精一杯で

    それ以上のことは出来ずに過ごしていた


    やらなきゃいけないことが多い

    投げ出せばたちまち仕事でも家庭でも非難されるだろう


    この先やりたい事の為にも投げ出したくはない


    何の気力も湧かぬまま

    時間は過ぎる
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17722 / 1階層)  海鏡の光橋-30-
□投稿者/ 金丸 大御所(290回)-(2007/01/21(Sun) 00:37:00)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    四季へメールすることさえ出来なかった


    苦しい時

    もがいても、もがいても行き着く場所は四季だったのに


    もがくことさえしなかった



    堂々巡り出来ればまだいい


    その気力を失った時

    ここまで何も出来なくなるのかと漠然と思っていた。



    ただ

    私が命を絶つような真似はしないと四季がわかっていても


    生きていると

    それだけでいいから伝えなきゃならないと


    仕事に行く途中

    一行のメールを送った

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17723 / 1階層)  海鏡の光橋-31-
□投稿者/ 金丸 大御所(291回)-(2007/01/21(Sun) 01:06:58)
    [気力がギリギリ]


    なぜそう送ったのかは自分でもわからない


    [メールできないけど心配いらない]

    そう送れば済むのに、メールを送ることさえやっとな筈なのに

    私は返事を待つように

    送信画面を見届けて携帯を閉じた。


    コーヒーショップに行くと

    大学の試験の為に店を休んでいた優奈が
    試験勉強をして居た


    「元気ないね。大丈夫?」

    私は生返事をして枯れた笑い声をだした


    テーブルの上には教科書やプリントが並び、ダーバンを巻いた男が弦楽器を持っている姿が見えた



    「なんかあったの?」


    泣きそうな顔をして私の腕に触れた


    「んー…」

    目線をプリントに落とし私は今の状態を話し始めた


    少しでもわかりやすく説明することで精一杯で表情までは気がいかなかった


    話し終え優奈を見ると


    もう目から涙が出そうになっていた


    「そっちは?」


    私も今辛いと話し始めた


    みるみるうちに余計に泣き顔になっていく


    唇が震えて

    眉間にシワが寄っている



    「海は独りになりたくて私は独りが嫌で、真逆だね。取り替えられればいいのに。」と優奈は笑った

    「そうだね。試験勉強は嫌だけど。」と笑うと


    安心したように優奈は笑った


    「コーヒー買ってくる。」と席を立ち



    今この状況すら少し辛い

    笑うことさえ無理やりで

    たった独りでどこかに閉じ込もりたい

    幽閉されるくらいでもいい


    けど



    「携帯鳴ってたよ。スタン。」

    「ありがと。」


    スタンは四季専用の着信音


    あのメールの返事が来たのだ



    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17724 / 1階層)  海鏡の光橋-32-
□投稿者/ 金丸 大御所(292回)-(2007/01/21(Sun) 01:34:41)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    [なら、やめてしまいなさい]


    頭が回らない


    やっと出てきた言葉をやっとの思いで打つ


    [店を?考えるのを?

    メールもやっとだよ]



    優奈が心配そうな目をしていた


    スタンが鳴る


    [ぜーんぶ。
    そこまでして立ってる必要ある?]



    叫びたくなった


    [目標を失いたくない]そう打って携帯を閉じた



    悟られまいと息を深く吐いて優奈を見ると


    未だに泣きそうな顔をしていた


    ポツリポツリと優奈が話し始めた


    「あのね。友達に「優奈は仕事に逃げすぎだよ」って言われたの。」

    「うん」

    「実際に辛いことがあると仕事に行くことが多くて、逃げ場なんだと思う。現実逃避なんだよ。」

    「それも必要だと思うけどね。」

    「友達はもっと頼りなよって言ってくれたけど、迷惑なんじゃないかって思ってできない。」

    「高校の時のトラウマじゃない?また裏切られるんじゃないかって心の底にあってできないんじゃね?」

    「そうかもね…。でも友達は今会いたいって言っても来れないのが当たり前だけど、お客さんなら必ず来てくれるから…」

    「トラウマで甘えることが出来ないんだよ。同い年だからっていうのもあるかもしれないけど、相手に果たして自分を受け入れる余裕があるのか解んないんじゃない?余裕が無ければ拒否されるんじゃないかって思ってんじゃね?」

    「うん…」

    「もしかしたら実際にそのキャパはないかもしれないよ。でも友達がいくら手を差し伸べても、その手を拒否してたら何も変わらないよ。踏み出さなきゃその人の器さえ見えないままだよ。」


    「…うん…」


    あ、優奈が泣く


    その時スタンが鳴り響いた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17810 / 1階層)  海鏡の光橋-33-
□投稿者/ 金丸 大御所(293回)-(2007/01/29(Mon) 02:22:06)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    [そのままでたどり着けんのかよ
    休む事を覚えろ]


    憤りが襲った


    [完全に休めて塞ぎ込めるならば、したいよ]


    家庭の事情


    それが大きい原因だった。


    休みの日も独りになることすら難しい状況


    休めるなら


    独りになって己と向き合えるなら




    「そろそろ行かなくて大丈夫?」


    「あ…うん。そろそろ行かなきゃね。」


    心配そうに優奈が見ていた


    「トイレ行くから私も行くよ。」

    「おう。」


    優奈がぴったりと寄り添ってきた


    「ありがとうね。」

    「私もだよ。」


    「じゃぁ…ね。」


    「うん。無理しないでね。」


    優奈が私の服の袖をギュッと掴む


    「ありがとう。君も無理しないように。」


    そう言って抱き締めてバイバイした。



    私の中は


    憤りでいっぱいで


    落ちるのか怒りにまかせたいのかわからなかった



    店に着き、着替え、化粧をして髪をセットする


    店のボーイ達が大声で笑っている横を通り抜け

    待機席に座った


    店の女の子達と一言も交わさぬ内に朝礼が始まる



    夜の7時前に響く「おはようございます」


    朝礼の内容は筒抜けで気がつけば終わっていた



    溜め息も出ない位

    私の中は静かに嵐になっていた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17811 / 1階層)  海鏡の光橋-34-
□投稿者/ 金丸 大御所(294回)-(2007/01/29(Mon) 02:39:19)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    サイレントマナーにした携帯が光る

    画面を開くと四季が笑っていた


    [仕事だけ辞めちゃえば?]


    かき乱される


    仕事をやめれば貯金が出来ない


    貯金が出来なければ1人暮らしの資金がなくなる


    1人暮らしが出来なければ



    四季の傍に行くことは出来ない




    [もーどうしていいかわかんね]



    そう打ってる最中


    「あーもー携帯へし折りたい」

    そうもらすと「どうしたの?」と笑って店の女の子が聞く


    私は笑いながら「携帯壁に投げつけるんでもいいんですけどね。」と気力の無い声をだした


    携帯が光る


    [お前が選んでここまで来たんだから、これからもお前が決めるしかないだろ
    ]



    私は


    早くお前の傍に行きたいんだ



    家庭からも解放されて


    早く自由になりたいんだよ


    早く



    [逃げたいけど逃げたくない

    もう既に自分の中で自分から逃げようとしててそれすら嫌気がさす


    誰でもかれでも罵倒したくなる]



    [休む事がなんで逃げになんの?
    そんな状態で働かれるのも八つ当たりされるのも迷惑だよ]



    [現実から逃げるように感じる


    仕事はちゃんとやってるよ。
    仕事以外でなりそうになる
    無反応かブチ切れそうになる

    今四季に八つ当たりするのもすげーやだ]


    [別に八つ当たりされてるとは感じないけど、今はまだいいけど周りがその内耐えられないで離れていく人も出てくるんじゃないか。
    ちゃんとやってるようでも、これから仕事でも支障が出てくると思うよ。
    背負う性分なら、背負って潰れる事も覚悟しろよ。お前は悩みだすといつも中途半端なんだよ。本気で嫌ならどっちかに転がり込めばいいだろ。中途半端だから今は苛立ちしか覚えないよ。]



    私はいつもこうなんだろうか


    中途半端だから

    悩んだり悲しかったりすると周りが苛立つんだろうか



    そう考えると

    憤りと共に悲しみが湧いた




    [とりあえず来月前期は休む方向で考える

    今月後期は店と家以外で人に逢わないようにする


    多分メールも日記もする気力ないと思う


    それが今私が出来ること]



    悲しみを断ち切るように目を閉じると


    ボーイに呼ばれ


    仕事が始まった

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17822 / 1階層)  海鏡の光橋-36-
□投稿者/ 金丸 大御所(296回)-(2007/01/30(Tue) 02:17:25)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    涙を拭わずに返信ボタンを押す


    [四季が何か悪いことした?
    苦しい時、辛い時、悲しい時、怒ってる時、私が限界に来て四季に吐き出す時私は救われてるんだよ。
    あの紙が意味を持った時、私はどん底近くに落ちた。
    でも私を救ったのもあの紙なんだよ。
    『あの場所を愛してくれる人が居る』って想いが心の中じゃなく、目に見えて、触れられるってことが私には痛みと同じ位、安心と幸せが存在した。
    それに甘えてたのは私なんだよ。
    四季はただ私に痛みと安心と幸せをくれた。
    抱きしめてほしいって、たった2人きりになりたいって、すがりついて泣きたい叫びたいって思っても口にしないのは私で、四季が感じても私が言わない限り、泣き出さない限り四季はしない。
    それをわかっていながら口にしないのは私。
    伝えてないのに、わかれなんて言わない。
    出来ない状態なのにしろなんて言わない。
    わかる?お前は傍に居ることが出来ないのを悔しがってるけど、ただ存在するだけで他の誰も出来ないことをしてる。
    ただ行動にしないのは私なんだよ。

    どんなになっても四季は見放さないって心に刻まれてる。
    衝動的に車に飛び込みたくなっても、お前が浮かんで冷静になって運転手の人生を崩すことは出来ないって、そこまで考える。
    確かに今笑うことも喋ることすら苦しいよ。
    けど笑いたいって、また心に素直に笑いたいって、お前の中に押し付けがましく温かさをあげたいって思ってる。
    またあぁゆうふうに笑える日が来るのかって不安になる。
    そしたら私はお前に他に何が出来るうって不安になる。
    自分の居る意味さえわからなくなるんじゃないかって不安になる。

    お前に何かあった時受け入れる余裕がなくなることが一番こわい。
    現に今、そうなりつつあるから。

    お前が愛してくれた部分から逃げようとしてるのが辛い。


    謝る必要はないよ。お前からの痛みは私の感覚を戻そうとしてくれるから。
    痛みすら今の私には救いなんだよ。
    私を潰す位の痛みでもお前からなら今の私には救いなんだよ。]



    打ち終え送信ボタンを押す頃には

    涙は引き温かさが心全体に広がっていた。


    後に気づいた



    優しく抱き締められた時のような感覚が

    見えない橋になり


    私とあの場所を繋ぐように感じ


    四季は私とあの場所を抱き締めてくれているのだと


    安堵するように肩の力が抜けたことを。




    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 16753 ] / 返信無し
■17821 / 1階層)  海鏡の光橋-35-
□投稿者/ 金丸 大御所(295回)-(2007/01/30(Tue) 02:05:08)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    ヘルプから戻ると四季から[はいよ]とゆうメールがきた。



    私の中では

    不安と憤りと悲しみが渦巻いていた


    本当に独りになり

    私は何かを見つけることは出来るんだろうか


    四季は見放さないとわかっていても

    呆れられた、と自分の不甲斐なさに腹が立ち落胆する


    いつまでも私は中途半端なんだろうか


    逃げに行こうと

    楽な方に行こうとしている今


    その意志への怒りとこれから立ち向かうことへの不安が心いっぱいになる。



    待機席からテーブルに行く際、仮面をつけるように切り替える度


    疲れが増した。



    仕事が終わる頃には疲労困憊になり、笑う顔も引きつっていた。


    無表情で「お疲れ様でした。」と吐き捨てるように言い家路につく



    着替えて顔を洗い部屋に戻ると携帯がチカチカと光っていた

    なんだろうか


    パスワードを打ちメールフォルダが開かれると、四季のフォルダに一件の数字



    [あたしがお前に出来る事は、とても限られてる。こういう時、まざまざと思い知る。
    笑顔にしてやる事も、苦しい時側に居てやる事も、出来ない。
    お前の屈託のない子供みたいな笑顔が好きなんだ。あんなものを作らなければって、お前から笑顔が消えていく度に心底思うよ。
    どんなになってもいい、あたしの為に乗り越えてくれないか。
    あんな風に当たったけど、お前の笑顔を作れない自分が苛立たしいんだ。
    辛い時にあんな風に言ってごめんな。
    お前がバカみたいに幸せな笑顔を早く見たいよ]



    かじかみ痺れた心の深く奥が

    滲むように温かくなる


    その温かさは

    あの紙が持っていた温かさ



    気がつくと涙が出ていた

    (携帯)
[ 親 16753 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/


Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -