ビアンエッセイ♪

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Nomal これからもよろしく。 /さぼ (06/11/19(Sun) 04:02) #17268
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Nomal これからもよろしく。11 /さぼ (06/11/19(Sun) 04:11) #17278 完結!
Nomal すごい! /るぃ (06/11/19(Sun) 12:11) #17279
Nomal るぃさん /さぼ (06/11/24(Fri) 02:02) #17311


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■17268 / 親階層)  これからもよろしく。
□投稿者/ さぼ 一般♪(5回)-(2006/11/19(Sun) 04:02:49)

    「私が死んだらどうする?」



    そのときは何を言ってるんだと、笑い飛ばした。



    「何言ってるのさ。」



    笑い飛ばしたあたしに、彼女はさみしそうに微笑んだ。



    今思うと、なんて愚かだったんだろう。





    いまさら悔やんだって仕方ないのはわかってるのに






    あぁ。さようなら さようなら。






    私は今も後悔をしてこの空を見つめる。






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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17269 / 1階層)   これからもよろしく。2
□投稿者/ さぼ 一般♪(6回)-(2006/11/19(Sun) 04:03:43)








    「ゆーーーず!」

    「うわっ!!びっくりした!」

    「えへへ〜」



    さやかはとても元気のいい子だ。
    いつもいつも笑っていて、悩みなんて無いんじゃないかと思った。

    もちろん、そんな事なかっただろうけど

    私は本気でそんな風に思っていたのだ。


    さやかとは違って、私は後ろ向きだった。
    もとから明るいほうではなかったけれど、高校になって、自分について気づいてからはさらに。


    そんな私にとって、さやかはとても輝いて見えた。

    自慢の・・・・本当に自慢の親友だった。


    「さやかはさ〜なんでそんなに明るいの?」

    「ん〜。明るいかなぁ」

    「明るいよ。明るい」


    いつだったか、学校の帰りに、校門前のベンチでそんな話をした。


    あの時は、夕日が綺麗で
    私たちの世界は永遠のものに感じられた。


    私の言葉に、さやかはちょっと考えてから、困ったように笑って


    「私はね明るいんじゃなくて、バリアを張ってるの」


    「バリア〜?」


    嘘だぁと思った。
    だって、彼女の周りにはいつも友人があふれていて
    それこそ分け隔てなく。

    ギャルもオタクもスポ根も根暗も真面目ちゃんも


    みんな彼女と友達だった。


    「さやかは友達も多いし、誰とでも仲がいいじゃない」


    さやかは、ゆっくりと立ち上がると

    校門から先に出た


    私たちを隔てるのは校門。


    「柚子。私はね、この世界で一番の偽善者だよ。本当にやさしいのはアンタみたいな人のことをいうの」

    「何言ってんの?」

    「アンタはいい人だから、私みたいな偽善者にだまされるの。」

    「さやか?」

    「騙されるのは私だけにしときな。ねぇ柚子」


    そのときのさやかの笑顔は夕日に照らされて、真っ赤だった。

    なんだか怖かった。



    それから数日後だ、さやかは私に


    「私が死んだらどうする?」



    そう聞いてきた。


    私が笑い飛ばして3日後。





    さやかは死んだ。





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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17270 / 1階層)  これからもよろしく。3
□投稿者/ さぼ 一般♪(7回)-(2006/11/19(Sun) 04:04:58)





    タバコがヂヂと音を立ててくすぶる。


    「いつからタバコすいだしたの?」


    後ろから声がかかった。


    「愛・・・」

    「昨日まで吸ってなかったじゃない」

    「吸っちゃいない。咥えてるだけだよ〜」

    「はぁ〜?」


    そう。別に吸っちゃいない。
    咥えてるだけ。

    なんていうか、雰囲気が出るかと思って咥えていたのだが

    タバコを吸いなれている人はどうだか知らないが
    吸わない私にとって、タバコを咥えるというのは
    唇に違和感以外何も与えてはくれなかった。


    「で?なんでタバコなんて咥えてたの?」

    「ちょっとね。感傷に浸りたい気分でして」


    吸わないタバコをギュっと灰皿に押し付けると
    私は空を見た。

    愛は同じ学部の同級生。
    なんでかうまがあって、たまにこうしてツルんでいる。



    「もうすぐ休みだね」

    「そうだね」

    「どうすんの?」

    「私はバイトだよ〜。今年も彼氏はいませんねぇ」



    愛はそういっておちゃらけた。

    そして懐を探ると



    「いい?」

    「ドーゾ」



    そう言ってタバコを吸いだした。


    愛は喫煙者だ。

    とはいっても一日2本吸ったら珍しいくらい。
    全然吸わない喫煙者。


    本日は二本目だった。



    「なんかあった?」

    「ちょっと・・。ムカツクことがあった」

    「そっか。」



    愛がタバコを2本吸うときは何かあったときくらいだ。
    だからといって詮索をするわけでもない。


    「あんたは?どうするの。休み」

    「私は・・・」







    私は




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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17271 / 1階層)  これからもよろしく。4
□投稿者/ さぼ 一般♪(8回)-(2006/11/19(Sun) 04:05:40)




    「おかえり」


    そう言って迎えてくれたのは、すこし年をとった母。
    最近になって急に年をとった気がする。


    「ただいま」

    休みに入って、私は結局実家に帰った。
    とくに何をするわけでもない。


    「今日はどうするの?このまま夕飯までダラダラする?」

    「いんや〜・・・あ、お墓参りいってくるよ」

    「さやかちゃんね。そうしてきなさい」



    適当に花を買って、私はさやかの眠る墓場に足を踏み入れた。

    沢山の墓石。

    綺麗なのもあれば、汚れたのもある。


    (住職め・・・・業者を呼ぶの怠けてやがるな)


    そんな事を思いながら、さやかの前についた。


    「寒いね。そっちはどう?やっぱ寒い?私は無事大学生だよ。」

    もちろん返答は無い。
    それでも、さやかに話しかける。

    「ねぇさやか。私は今でもアンタの事が不思議だよ。『偽善者』って言ってだけどやっぱりそうは思えない。」

    息を吐いた。
    白い。

    「アンタが死んでね、沢山の人が泣いてたよ。男も女も。親族はもちろん、学校の生徒、教師、商店街のおばちゃんおじちゃん」

    私は思い出すように笑った。


    「でもね・・唯一泣いてなかったんだよ。私」

    自嘲気味に笑った。


    「なんでだろうね。悲しくなかったわけじゃないけど・・泣かなかった。理由はちょっと思い出せないや」


    その時、ジャリと音がした。
    反射的に振り向く。

    「柚子ちゃん?」


    「・・おばさん」


    さやかのお母さんだった。


    「久しぶりね。元気だった?」

    「はい。おかげさまで。おばさんもお元気そうで」

    「ええ。ありがとう。」


    もちろん嘘だ。
    おばさんは見るからに変わった。
    元気そうでもない。むしろ肌は病的に土気色だ

    さやかの死を乗り越えていないのは明白だった。


    「ねぇ柚子ちゃん」

    「はい」

    「ちょっと寄ってもらえるかしら?渡したいものがあるの」

    「・・・・はい」



    おばさんはやつれた顔で微笑んだ。

    まるで死人が笑ったような顔だった。


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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17272 / 1階層)  これからもよろしく。5
□投稿者/ さぼ 一般♪(9回)-(2006/11/19(Sun) 04:06:20)




    さやかの家に入って
    まずはさやかにお線香を焚いた。

    さやかは写真の中で微笑んでいた。
    あの頃の明るいさやかだった。


    「さやかが逝ってしまってからね、いろいろな方がきてくれたわ」


    私が戻ってくると、おばさんがお茶を出してくれながら話し出した。


    「学校の先生に、お友達。近所の人とか・・あの八百屋のイッテツさんもきたのよ?」


    おばさんはおかしそうに笑った。

    イッテツのおじさんは商店街でも気難しくて有名だった。


    (イッテツさん。何気にさやかを気に入ってたからなぁ)


    お茶を音をたてて飲む。
    熱いし、濃くて渋い。ハッキリいっておいしくない。

    顔をしかめないように注意して、お菓子を口に放り込んだ。


    「それでね、その後さやかの遺品の整理をしたの。いろいろ出てきたのよ」


    おばさんはそういうと、段ボールを私の前においた。

    お菓子がこぼれる。

    それでもおばさんは気にしていないようだった。

    (こりゃあ相当キてるね)

    他人事にそう思って、段ボールの中身を見た。

    学校で使ってた辞書。
    お気に入りの歌手のCD。
    アクセサリー。
    化粧道具。
    帽子。

    どれも見たことがあるものだった。


    「これをね。みつけたのよ」


    それはなんだか分厚い封筒だった。


    「あけようと思ったんだけどね、宛名が貴女宛だったものだから・・・」

    「私宛・・・?」


    分厚い封筒をひっくり返すと、そこには確かに私の名前が書いてあった。


    「あのこからよ。読んでほしい」

    「・・・・・」


    すぐに返事をする気にはなれなかった。

    おばさんは確実にここで読んで、内容を教えてほしと思っている。
    なんでか、私はそれが不愉快でならなかった。


    「・・・受け取っておきます。でも、今は心の整理ができないのでできてから読もうと思います」

    「・・・・・・そう・・・」


    おばさんは明らかに落胆した様子だった。
    それを無視して、私は帰ろうと立ち上がった。


    「あ・・・帰るの?」

    「はい。お邪魔しました」

    「柚子ちゃんはいつまで?」

    「そうですね。1週間くらい・・だと思います」

    「そう・・」


    しまったなぁと思った。

    きっとこのおばさんは一週間後に何を書いてあったか、聞きにくるに違いなかった。
    面倒くさいと思ったが、仕方ないのでそのまま放っておく事にした。


    家に帰る途中、空は真っ赤だった。


    昔感じた恐怖感が背筋をかけた。


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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17273 / 1階層)  これからもよろしく。6
□投稿者/ さぼ 一般♪(10回)-(2006/11/19(Sun) 04:07:09)



    実家の、かつての自分の部屋で私は封筒を開いた。


    手紙の中身は

    ほとんどが写真だった。


    「何・・・これ」


    写真は、全部さやかが切り抜かれていた。


    「自分で・・・やったんだよね。コレ」

    どれもこれも、さやかがいない。
    さやかはこの写真の世界に、一人として存在していなかった。


    ふと、何かが落ちた。


    「手紙!!」


    急いで紙を拾い上げて、広げる。





    『柚子へ。この手紙を読んでるとき、私はどうしてるかな。』





    そんな文章で、さやかの手紙は始まった。



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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17274 / 1階層)  これからもよろしく。7
□投稿者/ さぼ 一般♪(11回)-(2006/11/19(Sun) 04:07:56)





    柚子へ。この手紙を読んでいるとき、私はどうしてるかな。


    死んでるかもしれないね。

    とかいって、生きてたら恥ずかしいったらない。
    私は柚子に、私は偽善者だって言ったよね。
    あれ、きっと柚子には意味がわからなかったと思う。

    確かに私は学校のトモダチは多かった。
    でもね、本当に友達なんていなかったと思う。

    写真。見たと思う。

    私がいない写真。

    切り後があるから、不自然に思えるかもしれないけど
    その空間がないと思って、しばらく写真を眺めてほしいの。

    多分5分もすれば、違和感なんてなくなるよ。


    それが・・・・私なんだと気づいたのは中学生くらい。


    よく「自分が死んでも世界は変わらない」
    なんて暗い思想を抱いた人間が言うよね。
    あれさ、てっきりそういう人間の逃げの言葉でしかないって思ってた。

    でも実際そうなんだよね。


    私がいなくなっても何も変わらない。

    何も変わったらいけない。


    だから私はこの手紙を書いてるの。


    柚子。私は偽善者だよ。

    手紙を書いてるくせに、私は柚子に私を忘れてほしいって思ってる。

    ねぇ柚子。
    私がいなくなって、一番影響受けるのアンタだと思ってるんだ。

    自惚れかもね。
    でも、そう思うんだ。

    だから私がいなくなったら、写真みたいに私を切り捨てて
    私を忘れてほしいんだ。



    そして、今までと同じように生きて。



    最初は違和感があるかもしれない。

    それでも



    多分一週間もしたら、違和感なんてなくなるよ。








    タバコに火をつけた、少し煙を吸ってみる


    「ぅえほっげほっげはっ・・・!!」


    思いっきり咳き込んだ。


    「まっずーーー。何コレ」


    タバコを吸わないように、口に咥える。
    唇に感じる違和感。

    泣きもしない。悲しくも無い。

    ただ心にポッカリとあいた穴があるのを感じた。

    もう一度タバコを吸ってみる。


    「・・・・・まず」


    やっぱり咳き込んだ。



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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17275 / 1階層)  これからもよろしく。8
□投稿者/ さぼ 一般♪(12回)-(2006/11/19(Sun) 04:08:42)




    私はおばさんの所にいって(気まずかったけれど)段ボールをまるまる借りてきた。


    辞書をまず開いてみる。


    そこにはピンクのマーカーで色々なところが記し付けられていた。

    その中に青で記されているところが一つだけ。



    think:思う。感じる。考え。信じる

    例:I think of you forever

    があった。







    「ねぇ柚子。これどう思う?」

    「"I think of you forever"?私はあなたをずっと思ってるって事?」

    「うん」

    「ん〜。なんだか映画みたいなセリフだねぇ」


    そういってさやかに辞書を返した。


    「いきなりどうしたの?」

    「ん?別に。目に付いたの」

    「そう。でも何。好きな人でもできた?」

    「どうかな?」


    意味ありげに笑うと、さやかは辞書を閉じた。

    「でもさ。実際本当に思っているなんて、まるで死に際の言葉みたいだよね」

    「何それ」

    「そう思わない?生きていれば、かならず心は変わるものだから」

    「でも、実際にそうかもしれないじゃん。」


    私がそう言うと、さやかは微笑んで


    「やっぱり柚子はいい人なんだね。」






    「あの時のさやかの意味。やっぱり今でもわからないよなぁ」


    私は辞書を閉じた。

    次にCD。

    すべて彼女の好きだったグループばかり。

    唯一のグループでないソロ歌手。

    その歌手以外のCDはすべてグループの曲だ。







    「さやかってこの人以外にソロは買わないの?」

    「うん」

    「なんで?」

    さやかはCDケースをなでると


    「この人の曲以上に共感できる曲は、存在しないと思うから」

    「他にもってるCDにはそれないの?」

    「グループとソロってだけでもう比べる対象間違ってるよ」

    「なんで?」


    私が聞くと、さやかは微笑んで


    「ソロ歌手以上に、孤独を歌いこなすのは無理。だってグループは多人数。孤独を歌うこと自体が間違ってるんだよ」


    「厳しいね」

    「まぁね」




    さやかは意地悪そうに微笑む。








    CDから歌詞カードを取り出して、読んでみる。


    誰からも なにからも 
    束縛されない 私が望むもの


    それでも 
    何かを束縛したい

    矛盾してる



    (・・・・・変な歌詞)


    パタンと閉じて、元に戻す。




    次はアクセサリー


    どれも格好いいものばかり。
    さやかはシルバーを好んでつけていた。

    でも、シルバーに多いデザインのクロスを
    彼女は決して買おうとはしなかった。






    「なんでクロス買わないの?」


    「ん〜。基本的に嫌いなんだよね。アレ」

    「なんで?」

    「あれって、キリストの象徴って感じでしょ」

    「うん」

    「私にとって神様の教えは強制的な擦り付けにしか過ぎないからね」



    自嘲気味に笑って、さやかはアクセサリーを投げる。


    「それに。それで否定されてしまうと、壊れてしまうものもあるから」







    「はぁ・・」


    思い出にひたりすぎて、少し疲れてしまった。
    その場でごろんと仰向けになった。

    それにしても、さやかはやっぱり不思議な人だ。

    今思うと、さやかはこういう話のとき、いつもと様子が違った。


    手紙を開いた。


    (これって遺書だよね・・・やっぱ)


    文面からするに、さやかは本当に死のうとは思ってなかったのかもしれない。

    それでも、彼女が死んでしまったのは事実。
    それでも、確かに生活は続いてる。


    まさに彼女の言ったとおり。



    そして




    私は今彼女の書いたとおり、彼女に影響されている。






    (一番束縛されてるのは・・・・・私じゃないか)





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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17276 / 1階層)  これからもよろしく。9
□投稿者/ さぼ 一般♪(13回)-(2006/11/19(Sun) 04:09:19)






    手紙の通り、私は彼女の影響を一番に受けている。

    でもなんで?


    泣きもしなかったし、薄情なやつだとさえ思ったくらい
    私は冷静だった。


    どこが影響を受けてるといえる。


    皆泣いてるのに・・私だけ泣かないなんて。




    もう一度手紙を見た。





    (私の部分だけ切り抜け・・・かぁ)




    昔のアルバムから写真を取り出して眺めた。

    ああ、さやかはとても楽しそうに笑ってる。

    この世界で、さやかは生きてるんだ。



    さやかを切り取ってみた。



    (違和感バリバリ・・・)



    それを5分くらいながめた。



    さっきまでさやかは、たしかにこの世界で生きてた。


    でも5分前、さやかはこの世界から消えた。



    ”死んだ”んだ。





    パタタッ






    そう思ったら、涙が出た。

    今まで出てなかった涙が出た。

    今までの分を出し切ろうとするみたいに、次から次から出てくる。



    (ああ・・・そうか。そうだったんだ)




    私はやっと気づいた。

    さやかの死を泣けなかったのは、私が誰よりもその死を受け入れてなかったから


    さやかは、それを見越してたんだ。

    これは最後の気遣いだったのか。




    『私はね、偽善者だよ』




    (偽善者・・・まさか。誰よりも優しいのは、さやかじゃないか)



    彼女の死から4年たって、私は始めての涙を出した。






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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17277 / 1階層)  これからもよろしく。10
□投稿者/ さぼ 一般♪(14回)-(2006/11/19(Sun) 04:09:58)


    次の朝

    さやかのいない写真をながめた。


    やっぱり違和感があった。


    心にポッカリと穴があいたままだった。

    それから3日間は何をする気にもなれず、ただ伏せった。


    そして4日目。
    明日で帰る。

    最後にさやかに挨拶しておこうと、お墓に足を運んだ。






    「さやか。偽善者だなんて、よく言ったものだね。誰よりも優しいくせに」


    私は墓石をなでる。
    冷たい感触しかもたらしてはくれなかった。


    「私が落ち込むのわかってたんだね・・」


    そこまで言って、違和感を感じた。



    確かに、写真の意味はそうだったのかもしれない。

    けれど、ならなぜまだ胸にポッカリ穴が空きっぱなしなんだろう。
    あの辞書やCDのことばかりを思い出すのはなんでだう。

    私は墓石を見つめた。







    『私はね偽善者だよ。大事なものに嘘をついてるんだもの』



    さやかに偽善者について聞いたとき、たしかにさやかはそういった。



    (大事なものに嘘?・・・どんな?)



    『気づかなければよかった。でも気付いたから、気付かせないようにするの』



    (どういう意味。気付かせない?誰に)



    そこでCDを思い出した。

    キーワードは孤独。

    次にクロス

    キーワードは宗教。


    そして辞書

    きっとあれは・・その人へのメッセージ。



    (そうか・・!!さやかはだれかが好きだったんだ)



    そして同時にわかった

    孤独を感じる
    宗教がからむ恋

    つまりさやかの思い人は同性。


    「・・・・ああ・・そっか。」


    そして私は核心を見つけた。






    「さやか・・さやか。さやかは気付いてたんだ」


    私は石に額をつける。

    冷たかった。


    「さやか・・さやか・・・・。私・・わたしね」


    冷たい石に水滴が落ちた。
    すぐに冷やされて冷たくなった。


    「さやかがすき・・。好きだよ・・さやかぁ・・・っ!!」



    私は気付かないうちにさやかに恋してた。

    そしてさやかは気付いてて、私を好きだった。




    『私は偽善者だよ』





    やっと意味がわかった。

    さやかは私でさえ気付かない気持ちを見抜いて、教えなかった。

    私を守るために。
    自分を守るために。


    誰にも言えない孤独とか、そういうのにいつも悩まされてたんだ。



    「私を気遣って・・・本当はだれよりも苦しかったくせに・・ごめんさやか・・」




    私は額をつけたまま泣き続けた。




    「ごめんねさやか。ごめん・・。大好き」



    冷たい石に口付ける。


    少し、暖かい気がした。








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▲[ 17268 ] / 返信無し
■17278 / 1階層)  これからもよろしく。11
□投稿者/ さぼ 一般♪(15回)-(2006/11/19(Sun) 04:11:14)







    「ゆず〜」

    「ああ。やっほ」



    愛が近づいてきて、私を覗き込む。



    あのあと、私の生活はやっぱり続いてる。

    大学にいって、講義を受けて、たまにこうしてサボる。

    これも彼女の望みどおり。

    唯一望みと違うのは


    「何見てるの?」

    「写真」

    「何それ。だれ切り抜いたの?」

    「好きだった人」


    さやかを、私は忘れてない。

    私がそういうと、愛は変な顔をした。



    「フラれたの?」

    「違うよ。」


    愛はなんとも言えない顔をして、私の隣に座って



    「あのさ。突然で本当に申し訳ないんだけど」

    「うん?」

    「好きっていったらどうする?」

    「・・・・へ?」


    面食らった顔をしていると、愛は真剣な顔で私を見た。
    いつもヘラヘラしてる愛。

    不思議な気分だった。


    「え〜と・・恋愛対象として?」

    「そっ・・・そりゃあ」

    「付き合いたい?」

    「できれば」



    そういう愛に、私はしばらく考えて



    「私はね、この写真の人のことが忘れられないし、忘れる気も無いよ」

    「・・・・」

    「それでもいいの?」

    「もちろん」



    愛は鼻息荒く私を見た。



    「もう一つ条件」

    「何でしょう?」



    構える愛に、私は微笑んで



    「その好きな人の話を聞いてもらいたい。とても大切で貴重な日々だから」




    私はさやかを忘れない。

    それが、少しでも彼女を救うことになる気がしたから。





    あぁ、ああ さようなら。



    そして




    これからもよろしく。
完結!
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■17279 / 1階層)  すごい!
□投稿者/ るぃ 一般♪(1回)-(2006/11/19(Sun) 12:11:18)
    たった1日でこんなに!!ビックリしました〜
    話も面白いです(^-^)
    読んでて、子供のいる私にはさやかの家での場面はさやかの母親の気持ちの方が解るので柚子が冷たい人間に感じちゃいました(苦笑

    これからも頑張って下さい(・ω・)/

    (携帯)
[ 親 17268 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 17268 ] / 返信無し
■17311 / 1階層)  るぃさん
□投稿者/ さぼ 一般♪(16回)-(2006/11/24(Fri) 02:02:30)
    どうもありがとうございます。
    あ〜・・・まぁ確かに冷たいですね(苦笑
    なんというか、彼女はまださやかを失ったとき
    つまりは、17歳のときの彼女が成長しきっていないんです。
    なので、子供っぽさ残る・・というか、とにかく個人を覗き込まれるのを嫌がってしまうんです。
    私がまだまだガキだからってのもあるんでしょうが(苦笑

    なにはともあれ感想どうもありがとうございました。
    次もよろしければお付き合いくださると光栄です。

[ 親 17268 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/


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