ビアンエッセイ♪

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■20457 / 親階層)  幻の君
□投稿者/ 壱也 一般♪(1回)-(2008/01/18(Fri) 14:40:45)

    「もう!うんざりだわ」


    つい先ほどまで私の下で泣いていた子猫は、急に牙を剥き出しにした。


    『…』


    黙って見守る私に、子猫は苛立ったようで


    「私は貴方のおもちゃじゃないわ!」


    別におもちゃにしたつもりはないけれど


    「貴方の寂しさを紛らわせるだけなんて嫌!」


    確かに子猫は穴埋めだったかもしれないな。


    「さよなら」


    子猫は身支度をして、ホテルの一室から抜け出した。

    (携帯)
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■20458 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(2回)-(2008/01/18(Fri) 14:42:29)
    2008/01/18(Fri) 14:44:38 編集(投稿者)


    『まいったよ。ホテル代は私持ちだし、大事な子猫には逃げられるしで』


    ワイングラスを片手に、私は愚痴愚痴と昨日の話しをした。


    「チカが悪いんじゃない!まったく、学習能力0ね!」


    親友の奈々が私の顔に人差し指を突き出し、これで六回目の説教をする。


    「一体、いつになったら本当の恋を覚える気?」


    『本当の恋?私はいつだって本気だけど?』


    「ちがーう!逃げられた癖に、涙一つ見せない恋は本気とは言わないわ」


    それは奈々の勝手な解釈だ。なんて、口にはしなかったけれど、私はいつだって本気だ。


    受け手が、それを遊びだと受け取るかは自由だし、私は精一杯の愛は注いでいるつもりだ。


    『奈々は、新しい人見つかった?』


    「またー話しをはぐらかして!」


    奈々はより一層顔を赤くして怒る。


    可愛らしくて、幼さの残るルックスに世の中の男性は翻弄されているんだろうな。

    『彼氏、いるの?』


    奈々の言葉を無視して、質問を繰り返す。


    「…いるよ。チカと違って本気で結婚しようって思ってる」


    『私ら、25歳だもんね。結婚してもおかしくないか』

    自分がビアンだからか、結婚という単語とは無縁であった為に、多少驚く。


    『旦那様に奈々を取られるのは、妬けるなぁ』


    ふざけた口調で、言うと奈々は照れながら


    「チカの世話係りは引き続きやらせてもらうから!」

    なんて可愛く言う。
    奈々が親友じゃなければ食べてしまうかもしれない。

    私が同性愛者ということを知っても、引きもせずに、理解してくれた唯一の女。

    高校の時に、私の想い人と離れ離れになり泣いた時も、慰めてくれた親友。


    そんな親友に手を出すはずもなく、こうして私からの不規則な呼出しにも来てくれる大好きな親友。


    きっと、私が理性を保てているのは奈々がいるから。

    でなければ…あの夜、私は理性を失った犯罪者になるところだった。

    (携帯)
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■20459 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(3回)-(2008/01/18(Fri) 14:45:49)


    「ねぇ、チカ?私好きな人が居るんだぁ」


    高校三年の冬に、私が二年間片思いをし続けた、朱美が初めて恋を口にした。


    それまで、恋愛とは無縁なように、男性を避け、女友達にべったりだったのに。

    『マジで!誰よ!朱美も恋をしたんだぁ〜』


    本当は聞きたくなかったけれど、普通の友達なら流れ的にこう言うだろう。


    「…2組の秋山君」


    秋山は学年でかなり目立った奴で、言うならばヤンキーと言った所だろうか。お勧めは絶対しない。


    『マジで!?あれヤンキーでしょ?ヤバクない?』


    朱美のルックスなら、秋山なんてイチコロだろうな。ふんわりパーマのかかった天然オーラ全快の朱美は、自分では気付かないくらいのフェロモンがあった。


    「こないだ、少し話したら、噂より全然優しくてカッコ良かったの」


    ああ、完全に乙女モードだ。こうなっては、最後まで突き進むタイプだろう。


    『…そっか。。ん〜じゃあ応援しちゃる!頑張ってね!』


    「ありがと〜!チカ!頑張るよぉ」


    笑顔を全面的に放ち、痛々しい私の心は、完全に砕かれた。


    二年間の片思いは、はかなく散っていく。

    (携帯)
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■20460 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(4回)-(2008/01/18(Fri) 14:46:36)

    『奈々〜朱美が恋をしたぁ〜』


    泣きそうになりながら、よろよろと、席につく。


    「はぁ!?大ニュースじゃん!」


    そう、これは一大ニュースなんだ!


    一年の時から、男子の告白を片っ端から断り続けた朱美が!!恋をしたんだから。


    「秋山〜!?」


    同じ反応をする奈々に、静かにするように、指で口を押さえる。


    『ヤバイよな?もしも、付き合ったりしたら…』


    「ていうか、アイツ!タラシって噂だし」


    『あー…大事な朱美が取られるー』


    「でも、やっと好きな相手が出来たなら友達として応援しなきゃだね!」


    『それはもちろん…あぁ告白しよーかな。』


    ボソッと呟く私に、奈々が頭を叩く。


    「それが出来たら、今頃付き合えたんじゃない?ヘタレ君?」


    奈々が言う通り、一年の終わりから幾度となくチャンスがあったにも関わらず、私は想いを伝えなかった。今の関係を大事にしていたからである。

    それがこの結果。


    『失恋したんだから優しくしてよ!』


    「同情の価値もないね!」

    奈々が憎たらしい事を言い終わると同時に、廊下から噂の秋山君の声が聞こえた。

    (携帯)
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■20461 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(5回)-(2008/01/18(Fri) 14:47:43)


    「行くぞー朱美!」


    何てデカイ声だろうか。
    噂の秋山君は私の最愛の朱美を呼んで…


    ちょっと待てーーい!


    今は休み時間だが、あと一分程で授業が始まるというのに何処へ連れ去る気なのだろうか!


    一方、朱美は嬉しそうに、漫画で言うなら御花畑が浮かびそうな笑顔で走っていく。


    『奈々…』


    「ん?」


    『追うぞ!』


    「は!?」


    気がつけば、奈々の腕を引っ張り廊下を駆け出していた。


    チャイムが聞こえても、二人は教室に戻る気配はない。


    サボるなんて、朱美はしたことがない。


    「ちょっと…尾行はよくないって」


    『いい雰囲気なら、止めるよ。心配じゃないの?ヤンキーとサボりなんて』


    「心配だけど…」


    奈々は罪悪感を感じながらも、ソロソロと朱美達の後を付ける。


    二人はまもなく、体育館に入って行く。


    この時間は、どの学年も体育館を使用しない。


    サボるにはうってつけの場所だろう。


    『裏回るぞ?』


    奈々の腕を掴み、体育館裏の扉を少し開けた。


    二人は気付いておらず、そのまま体育館倉庫に入って行く。

    (携帯)
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■20462 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(6回)-(2008/01/18(Fri) 14:48:59)


    「何かヤバイ雰囲気じゃない?」


    奈々がおそらく、直感的に言う。


    奈々の勘はよく当たる。


    体育館倉庫の扉が勢いよく閉められ、音が響く。


    私たちは、忍び足で体育館倉庫に近づいた。



    「なぁ俺の事好きなんだよな?」


    「早くやろーぜ!!」


    「黙ってろよ!」


    ジタバタ暴れる音と、秋山以外の男の声…


    レイプ!?


    私は我を忘れ倉庫の扉を開いた。


    !?


    制服が乱れ、腕を押さえ付けられている朱美が泣きながら、床に倒れている。


    「何だてめぇ!!」


    秋山が吠えたと同時に、私は奴に飛び掛かった。


    昔から、空手を習っていた私は、飛び蹴りを食らわしてやった。


    「がはぁ」


    秋山が怯んだ、その隙に、もう一人の男に顔面向かって拳を突き出した。


    しかし、かわされてしまい、みぞおちに男のパンチが入った。


    その瞬間、視界は霞み、意識が途絶えた。

    (携帯)
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■20463 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(7回)-(2008/01/18(Fri) 14:50:06)


    「チカーチカー死なないでーチカー」


    意識が蘇った時には、誰かが私の隣で泣いていた。


    死んでないよ。
    勝手に殺すなよなぁ。


    返事をする気力もないくらい脱力していた私は、どうにか目だけは開く事に成功した。


    ベッド脇に啜り泣く女の子。


    朱美??


    その後ろに泣きそうになるのを堪える奈々が見えた。


    モゾモゾ動こうとしたのに気付いたのか、朱美が涙を拭きながら、私に話し掛ける。


    「チカ?大丈夫??」


    微かに首を動かすと、安心したのか、笑顔を取り戻した。


    「チカ!生きてる?」


    奈々が私を揺らす。


    「アイツら退学になるから!安心しな?」


    ああ、アイツらマジでムカつく。


    私の大事な朱美を…
    未遂だから良かったけれど…。


    「チカありがとう!本当にありがとう!」


    朱美はまた涙を見せながら布団に顔を埋めた。


    『…な、泣くな』


    やっと出せた声に、動かせるようになった右手で頭を撫でた。


    「安静にしてなさいね?」

    そう言い残し、奈々は保健室を出て行った。

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■20464 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(8回)-(2008/01/18(Fri) 14:51:36)

    『朱美…大丈夫だから』


    「えっ?」


    『私が朱美を…守るから』

    振り絞る声に、朱美は頷き、手を握ってくれたね。



    「あの時の、チカは無謀だったわね?」


    時刻は夜の十時を回り、ワインも酔いが、いい感じに回って来た。


    『そうだね。頭の中は朱美でいっぱいだった』


    「まるでヒーローね」


    『本当にヒーローなら、今頃朱美とワインを楽しんでるさ』


    「もう忘れなさいよ」


    『誰を抱いたって…代わりにはならないよ』

    (携帯)
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■20465 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(9回)-(2008/01/18(Fri) 14:52:54)


    体調もよくなったのは三日後だった。


    学校は相変わらず噂が飛び交い、朱美はその度に、同情や卑しい目で見られた。

    奈々と私は出来るかぎり、守った。


    時間が許す限り、傍に居た。

    それでも、朱美の心は傷だらけだった。


    あの日から、二ヶ月が経った頃、朱美は屋上から飛び降りた。


    授業中に、抜け出して。


    本当に守れたなら、朱美は死ななかった。


    私は朱美を見殺しにしたんだ。


    何度も何度も自分を憎んだ。


    「チカは悪くないから」


    奈々はそう言ってくれたが、私はそう思わなかった。

    高校を卒業後、雑誌のフリーライターとして活躍の幅を広げて行った。


    朱美を忘れた日はなかった。


    私が取り上げたのは、自殺する若者や、いじめに苦しむ若者たち。


    朱美の傷を共有出来たら…浅はかな考えだけで動いていたが、それも行き詰まり、次第にただのフリーターに堕ちたのだ。


    『揚句の果てに、たくさんの女を抱いて気を紛らわせようとして…』


    「飲み過ぎよ。」


    奈々にワイングラスを取られ、私は頭をテーブルに落とした。


    『朱美に会いたい』


    「もう寝なさい。今日は泊まってあげるから」


    ベッドルームに、私を引きずり、ベッドに寝かせると奈々はリビングに戻ったようだ。


    そのまま意識は薄れ夢へとダイブした。

    (携帯)
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■20466 / 1階層)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(10回)-(2008/01/18(Fri) 15:37:46)


    朝、目覚めると隣には見知らぬ女が寝ていた。


    私の右腕に顔を埋め、幸せそうに眠っていた。


    『…だ、誰だ?』


    奈々の友人だろうか?
    いや、勝手に入れるような子ではないし、何故私の隣で寝ているんだろうか?


    「…んん」


    寝ぼけた声で、寝返りをうちたいのか、体を動かす。

    『おい、誰だ?』


    「…ふぇ」


    !?


    私の隣に寝ていたのは、朱美だった。



    『あ、あ…けみ?』


    「うーん…おはようチカ」

    本当に朱美なのか!?
    何で名前知っているんだ?

    ていうか本物だったら幽霊なわけで……。


    プシュー。


    思考は完全に停止した。

    (携帯)
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■20469 / 1階層)  すごい。
□投稿者/ サト 一般♪(1回)-(2008/01/20(Sun) 02:33:24)
    読み出したら止まらんくなってしまいました(^^)
    続き待ってます!

    (携帯)
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■20471 / 1階層)  10
□投稿者/ 壱也 一般♪(11回)-(2008/01/20(Sun) 13:47:57)


    「おはよう、チカ。驚いた?」


    いつの間に居たのか、ドアにもたれながら、奈々が言う。


    『奈々、これは朱美なのか?』


    「残念ながら違うわ。でもがっかりしないで?そっくりなのは外見だけじゃないから」


    「奈々、チカが困惑してるよぉ」


    朱美のそっくりさんはハニカミながら、私を見つめた。


    「…事情は奈々から聞きました!私は、朱美さんの生まれ変わりだと、奈々が言うくらい似ているらしく、ある条件付きで今日からここに住む事になりました」

    事態をうまく飲み込めないまま、また口が動く。


    「チカさんのお世話をするのが条件です。私、行く宛てがないので困ってたんです」


    「いつまでも、お世話出来ない私に代わって、愛里がお世話するの。」


    『勝手に決めないでよ!大体、私は別に世話なんてして欲しくないんだから』


    「あんなに朱美に会いたがってたじゃない?ここまで似ているなんて愛里くらいよ?」


    「チカ…お願い…」


    その時、愛里の顔と朱美の影がダブって見えた。


    『好きにしたら…』


    どうしよう。。私トキメいてる。


    これは朱美じゃなく愛里という別の女性なのに。

    (携帯)
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■20472 / 1階層)  11
□投稿者/ 壱也 一般♪(12回)-(2008/01/20(Sun) 13:58:45)


    「ありがとう!チカ!」


    愛里は私に抱き着き笑顔を見せる。


    「じゃあ成立ね!愛里?明日荷物を持ってまた来てね?」


    奈々は小柄な愛里に言うと素直に返事をして、忠実な犬のように、部屋を飛び出した。


    『おい、奈々。』


    「あら?ご機嫌ナナメ?」

    『当たり前だ。心臓に悪すぎる。』


    「知り合いの娘さんなのよ。年齢はハタチで、大学生。学校は今冬休みに入ってるの(笑)その間だけ泊まらせてあげて?」


    大学の休みは二ヶ月近くあるんではないだろうか?
    その間、他人との生活なんて耐えられるだろうか?


    「愛里も、ノンケだし?朱美にそっくりだし、昔を思い出して告白してもいいのよ?」


    『馬鹿言え!あの子は朱美じゃない!ただのそっくりさんだろ?そんなんで…告白したって…今までの子猫と何も変わらない。』


    「愛里にどう接するかはチカ次第。私は別に気にしないからさ」


    奈々は体を翻し、部屋に出る間際、一言漏らした。


    「チカ、元気になってね」

    そして、扉が閉められたベッドルームで、私は一人泣いた。


    頭では分かっているのに、体が反応する。
    朱美にずっと会いたかったんだって。

    (携帯)
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■20473 / 1階層)  サト様
□投稿者/ 壱也 一般♪(13回)-(2008/01/20(Sun) 14:02:03)
    お読み頂きありがとうございます。

    書き始めたばかりで、これから更新遅れるかもしれません。

    ですが、一所懸命書いて行くので、引き続き読んでくれたら嬉しいです。

    (携帯)
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■20474 / 1階層)  12
□投稿者/ 壱也 一般♪(14回)-(2008/01/20(Sun) 18:52:08)


    翌日、昼頃に愛里はキャリーバッグ一つ持ってきて、リビングに居た。


    いつの間にか作ったのか合い鍵を持っていたらしく、勝手にリビングにあるテーブルに昼食が置かれていた。


    「おはようございます!チカさん!」


    昨日とは違い、敬語を使いやけに礼儀正しい。


    自分の身分をわきまえているのだろうか。


    私はあっさり無視をして、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。


    昨日まで空っぽだった冷蔵庫は、食材が詰まっていた。


    『食事費』


    私は財布から、三万円を出して愛里に渡す。


    「いえ、結構です。愛里が勝手に買ってきたので。」


    『いや、とりあえず持ってなよ?年下に奢らせるわけに行かないから』


    愛里は苦笑いしながら三万円を財布にしまうと、テーブルにあるオムライスを食べるように促した。


    面倒臭いと思ったが、人が作ってくれた食べ物を粗末に扱うのはポリシーに違反するし、道徳的に許されない。


    席に着き、スプーンですくい食べる。

    (携帯)
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■20475 / 1階層)  13
□投稿者/ 壱也 一般♪(15回)-(2008/01/20(Sun) 18:53:36)


    とても…おいしかった。


    「お口に合いますか?」


    愛里が心配そうに見るので、


    『ああ…おいしい』


    無愛想に答えてしまう。


    慣れない人間に、どうリアクションすればいいか分からなかった。


    「良かった〜♪奈々からチカさんは食生活乱れてるって聞いてたので、これから毎日愛里が作ります!」


    その瞳は、健気で、純粋だった。


    まだ恋に恋をしていそうな純粋な少女の眼。

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■20476 / 1階層)  14
□投稿者/ 壱也 一般♪(16回)-(2008/01/20(Sun) 18:54:40)


    「チカ〜!またコンビニ弁当??」


    『あ?作れないから買うしかないでしょ?』


    「体壊すよぉ〜一人暮らしなんだからさぁ」


    朱美は心配そうに口を尖らせて言うと、何かを閃いた様に、目を輝かせていた。


    「じゃあ!明日からチカの分も作って来る!誰かにお弁当作って持っていくの夢だったんだぁ〜」


    べ、弁当!?


    あ、愛妻弁当って奴ですかい←違う


    『あ、ありがとう。じゃあ宜しくです』


    「はぁい!」


    朱美はメモ用紙を机から取り出し、いくつかの質問をした。


    「じゃあ明日のメニュー考えながら帰ろうっと」


    キラキラした瞳で、いつもの分かれ道で私は別れた。

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■20477 / 1階層)  15
□投稿者/ 壱也 一般♪(17回)-(2008/01/20(Sun) 18:56:01)


    「チカさんは何か嫌いな物ありますかぁ〜?」


    愛里は、メモ用紙を取り出し、オムライスを食べ終わった私に質問してきた。


    『え゛ぇ!?』


    戸惑う私に不思議そうな眼差しを送り、どうしました?と心配された。


    あぁ、何でこんなにリンクするんだろうか。


    『特にないよ』


    本当はあるけれど、もし朱美と中身まで似ているならあの方法で私を困らせてくるにちがいない。


    「本当ですかぁ〜?奈々はチカさんが食わず嫌いさんだから、聞くよーにって言ってましたよ?」


    くそー奈々め。
    いちいち報告しやがって。

    『…ピーマン食べれない』

    「ぷっっあははは」


    『…何だよ?』


    「あは、いえ可愛い人だなって思って」


    『…馬鹿にしてるだろう?』


    「そんなことはないです♪夕飯のメニュー考えるのが楽しくなりました♪」


    そして…私の予感は的中するのである。

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■20478 / 1階層)  16
□投稿者/ 壱也 一般♪(18回)-(2008/01/20(Sun) 18:57:23)

    『愛里…一体これは?』


    「はい♪ピーマンの肉詰めですよ?ピーマン嫌いはこれで解消出来ます!」


    はぁ…まったく。
    愛里といい朱美といい何も分かってない。


    『あのねぇ…ピーマンを全面的に剥き出しにしちゃったら何も意味ないの!肉の中にピーマンを詰めるならまだ解るんだがな?』


    「あは!ですよね!でも食べて見て下さい!」


    私は心底嫌な顔をした。


    ピーマンは人生において最大の敵だからだ!


    「…しょうがないですねぇ〜♪はい、あーんvV」


    朱美の瞳と愛里の瞳が重なり、そしてピーマンの肉詰めは私の口にほおりこまれた。


    高三のあの時、まったく同じ方法で朱美はピーマンの肉詰めを口に入れて来た。

    あのピーマンの苦みと、朱美の甘い行為は、今も忘れていなかった。


    「ちゃーんと食べてくれたら、デザートは手作りプリンを出しますね?」


    愛里は嬉しそうに、肉詰めを食べていた。


    毎日外食ばかりしていた私には何故か新鮮で、最初こそは、嫌悪感でいっぱいだったが、私の事を考えてくれている愛里に対して、少しは優しくしようと思い始めた初日だった。

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■20480 / 1階層)  17
□投稿者/ 壱也 一般♪(19回)-(2008/01/21(Mon) 17:26:35)


    翌日、目覚めると、昨日隣に寝ていたはずの愛里が既におらず、布団の温かみは消えていた。


    リビングの戸を開くと、愛里は丁度、コーヒーポットを手にしていた。


    「おはようございます」


    『おはよう、早いな』


    時刻はまだ6時を回り、朝から物騒なニュースが流れていた。


    「いえ、チカさんのお世話を任せられたので当然です。さ、トーストとコーヒーが出来ましたよ?」


    テーブルには喫茶店に出てきそうなモーニングセット風な朝食が並べられており、朝からお金持ちのお嬢様になった気分だった。


    『愛里、今日は私は仕事があるから、昼ご飯はいらないよ』


    「えっ?それだったらお弁当を作ったのに!何で昨日言わなかったんですか?」

    『あ…すまない。』


    何故か私は年下の小娘に説教されて、頭が上がらなかった。


    私らしくない。
    愛里は私を狂わせていく。

    「じゃあ、昼間は掃除と洗濯しときますね?天気もいいですし♪」


    『…お願いします』


    私はトーストを食べ終わると、そそくさと支度して家を出た。


    愛里の寂しそうな目を後にして。

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■20481 / 1階層)  18
□投稿者/ 壱也 一般♪(20回)-(2008/01/21(Mon) 17:27:50)


    『もう、ダメだ。』


    お昼頃に、奈々を呼び出し、ランチを食しながら、弱音を吐いた。


    「あら?まだ二日目じゃない?」


    奈々はパスタをフォークに巻き付けながら、返答する。その目は楽しそうで、私をからかっている目でもあった。


    『確かに似ている。つか似ているレベルじゃなくて本人だと思いそうになる。』

    「あら、尚更良かったじゃん?会いたがってたんだから」


    『傷口に塩を刷り込む奴だなぁ』


    「荒治療かもしれないわね。でも、チカは朱美の死に捕われすぎだわ。何年も前に逝ってしまった朱美は、チカが悲しんでいる姿を見たくないと思うわ」


    『わかっている…けど、朱美は私の青春であり、最愛の人だった。愛里はいい子だけれど…朱美じゃない。愛里と付き合えたとしても、私は愛里の中に朱美を見るだろう』


    それは、とても失礼であるし、そんな私と付き合う事すら嫌がるだろう。


    「今までの子猫は無条件で抱いて、朱美似の愛里は無理。じゃあ今までの子猫には失礼ではなかったの?」

    確かに、自暴自棄になっていた私はたくさんの女を抱いた。


    それ相応に愛していたつもりだった。


    でも、心はいつも朱美を求めた。


    『失礼だったな』


    「だったら、償いとして愛里を幸せにしなさい?愛里を守ってあげて?」


    奈々は愛里について、教えてくれなかった。


    知人の娘、大学生、ハタチ。


    たったこれだけの情報しか得られないのに、どう幸せにすればいいと言うのか。

    だったら、本人に直接聞くしかない。


    そんな勇気、私は持ち合わせていない。


    それが出来たら、朱美に告白だってすぐに出来ただろう。

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■20482 / 2階層)   18
□投稿者/ きゅん 一般♪(1回)-(2008/01/22(Tue) 04:13:36)
    言葉選びと文章がすぅーと読みやすくて、
    戸惑う主人公のやり取りがなんか良くて、好きです。
    今のところ天真爛漫な愛里さんと心に深い痛みを抱え持つチカさんが
    これからどうなっていくのか、楽しみにしています。
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■20483 / 1階層)  きゅん様へ
□投稿者/ 壱也 一般♪(21回)-(2008/01/22(Tue) 12:04:03)

    お褒めの言葉ありがとうございます。

    長々と、序章を書いてきましたが、もうしばらくしたら、変化をつけたいと思うので、最後までお付き合い出来たら嬉しいです!

    書き込みが意欲を駆り立てるので、近々UPしますね(^-^)

    (携帯)
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■20484 / 1階層)  19
□投稿者/ 壱也 一般♪(22回)-(2008/01/22(Tue) 15:56:06)

    薄ぐらい帰り道、私は愛里に、聞かなければならない情報を、どうやって聞き出すかに悩んでいた。


    歩くスピードは次第に遅くなり、どうにもならない苛立ちを覚えた。


    考えたって閃かない。


    率直に聞くしかないんだ!

    私は小走りになり、マンションまで向かった。

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■20485 / 1階層)  20
□投稿者/ 壱也 一般♪(23回)-(2008/01/22(Tue) 15:58:38)

    自宅に着くと鍵を開けて中に入った。


    中からは、シチューのいい匂いが漂って来て、今晩の夕飯はシチューだと確信出来た。


    「おかえりなさい!」


    明るい笑顔で出迎えられ、まるで新婚の旦那様を待っていたようで、何故か胸が踊った。


    『ただいま、今夜はシチュー?』


    「はい!あ、嫌いでしたか?」


    『…いや、大好きだよ?』

    「良かった…じゃあ今並べますから、椅子に座ってて下さい!」


    『ああ、分かった。』


    ベッドルームに一旦入り、部屋着に着替え、リビングにあるテーブルにつく。


    些細な事だが、私はこのご飯を待っている瞬間が好きで、幸せを感じた。


    それは、学生時代に朱美が作って来てくれた弁当の蓋をあける瞬間に似ていて、きっと愛里も私の好きな物を作り、そして申し訳なさそうに嫌いな物も入れてくる。


    『愛里…シチューにブロッコリーなんていらないだろ?』


    「我が家では普通に入っていますよ?おいしいんで食べて下さいね?」


    首を傾げて可愛い振りをわざとする。


    はいはい、食べればいいんだよな。食べれば。


    もう、何もかも見透かされていそうなくらい、愛里は的確に私のツボをつく。


    それは、愛しくもあり、また痛々しくもあった。

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■20486 / 1階層)  21
□投稿者/ 壱也 一般♪(24回)-(2008/01/22(Tue) 16:50:12)


    夕飯を食べてる間中、愛里はひたすら今日の出来事を話していた。


    ベランダにカラスが止まって、怖くて洗濯物は部屋干しにしたことや、買い出しの最中に、ジャガイモの詰め放題を見つけて、冷蔵庫はジャガイモだらけなこと。


    愛里は少しだけ、おっちょこちょいで、行き当たりばったりな性格のようで、まだ冷蔵庫には昨日買った食材がたくさんあるにも関わらず、今日も食材を買い過ぎて冷蔵庫に入り切らなくなったりだとか、何とも笑える性格だ。


    「あんまり笑わないで下さいね?」


    『くくっ…悪い。久しぶりに笑った気がする。』


    「私も初めて笑った顔をみました。綺麗な笑い方なんですね?」


    『はい?普通だけど…』


    「笑った顔、好きですよ?」


    『そっか。あ、ありがと』

    愛里は満足げに、シチューを啜り始めた。


    それは、まだ幼さの残る子猫の様に見える。


    ああ、聞かなくては。
    素性を知らない女性と、あまり長く居ては駄目だ。


    ちゃんと理由を聞いて、説得しよう。


    実家に帰るようにって。


    『愛里、聞きたい事がある。』

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■20487 / 1階層)  22
□投稿者/ 壱也 一般♪(25回)-(2008/01/22(Tue) 16:50:59)


    「何ですか?」


    『愛里は、何でこの家に泊まり込みに来た?冬休みなら、友達とも遊びたいだろうし、親御さんも、成人したとはいえ、心配しているでしょ?』


    「…心配なんてしてません。友達は、あまり居ないし…」


    『一晩、部屋を貸したんだ。理由が知りたい。場合によっては帰ってもらう。』

    冷たい言い方かもしれない。


    でも、元々奈々が勝手に決めた話しで、私は朱美に似ている愛里に、振り回されている。


    朱美と何の関わりもない、この子を、私は近い内に傷つけてしまいかねない。


    私の勝手な想いを、愛里にぶつけてしまいそうだった。


    「…解りました。お話します。しかし、私は出ていく気はありません。」


    初めての愛里の真剣な眼差しが、強い意志を滲み出していた。

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■20488 / 1階層)  23
□投稿者/ 壱也 一般♪(26回)-(2008/01/22(Tue) 16:52:13)


    「私の父は、大手電気メーカーの社長をしています。
    部下からの信頼も厚く、温厚でとても優しい人でした。

    そんな父を、母親は裏切ったんです。

    父と結婚する前に、母は一人の子供を授かりました。
    その時には、まだ結婚はしておらず、付き合っていた男も結婚する気がなかったみたいです。

    母は、そんな男に愛想をつかせ、浮気をしてしまいます。

    その相手が私の父親です。
    父親は、母に子供が居るのを承知の上、結婚をしました。

    ですが、母は付き合っていた男と中々縁を切らず、二重生活を送っていたんです。」


    『複雑…だな。一緒に住めばいいのに。』


    「はい。そんな生活が五年続いた時に、父と母の間に私が生まれたんです。

    さすがに、母も男と縁を切って、一緒に暮らすかと思ったんですが、残念ながら母は二重生活を続けていました。

    私が中学二年も終わり頃、付き合っていた男は覚せい剤所持で捕まり、ようやく一緒に暮らせると思った矢先、私の姉に当たる、人が自殺してしまったんです。
    現在は、母と父の三人暮しなんですが、父は母の今までの態度が気に入らず、戸籍からは外しています。

    私が悲しまないようにと、一緒には暮らしていますが。家庭内別居と言った感じで…毎日息が詰まりそうで、せめて冬休みの間は抜け出したかったんです。」


    昼ドラのような愛里の家庭内を聞いて、私はひどく落ち込んだ。

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■20489 / 1階層)  24
□投稿者/ 壱也 一般♪(27回)-(2008/01/22(Tue) 16:53:55)


    誰でも、そんな家から抜け出したいに違いない。


    私とは違う傷を愛里は背負って生きているんだ。


    それなのに…私はなんて酷い言い方をしたんだろうか。


    『ごめん、ここに居ていいよ。話してくれてありがとう』


    「いえ、こちらこそありがとうございます。」


    『…でも私の話を聞いて気が代わるかもしれない。それでも居たいと思うなら、居てくれて構わない。』


    「解りました。」


    私は、愛里に朱美の話をした。


    私が朱美を好きで、いつもつるんでいた事や、朱美に恋愛感情を抱いた事による不安や、辛さ、楽しさ、そして朱美を死に追いやった全ての原因を。

    包み隠さず話した。


    「私はこの先、朱美を引きずらない日はないと思う。もし、愛里とこのまま生活をするというなら、私は愛里に対して朱美を重ねるだろう。そうして、仲良くなればなるほど、愛里を欲しくなるだろう。同性愛者と共に生活するなんて気味が悪くないか?もしかしたら、愛里を求めてしまうかもしれない。私は怖いんだ。愛里を傷つけてしまいそうで…』


    愛里は目をまっすぐ私に向け黙って見つめていた。

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■20491 / 1階層)  25
□投稿者/ 壱也 一般♪(28回)-(2008/01/24(Thu) 14:37:21)

    「同性愛については、あまり知らない世界なので、何とも言えませんが、無理矢理襲うようなマネはしないでしょう? そんな人には見えません。私は、この二日間でチカさんにとても興味があります。

    私はチカさんを救いたいんです。心に深い闇を抱き、不器用にしか生きられない貴方を、私が何とかしたい。」


    『…簡単に言わないで。私の何を救う?いくら願ったって朱美に会えないんだから。』


    「朱美さんは、チカさんのご友人であり最愛の人。
    朱美さんは、貴方の傷になんてなりたくないと思いますよ?綺麗な思い出の中で生きていたいと思います」

    愛里の言葉に涙を落とす。

    救われたいとか、忘れたいとか思った事はない。


    ただ、朱美に会いたかった。

    そして謝りたかった。
    守ってやれなくてごめんね、と。


    私は、朱美が人生で1番忘れたい過去を今も引きずり続けていたんだ。


    ごめんな、朱美。


    「チカ…さん?」


    『…ごめん。しばらく独りにして欲しい』


    私は、ベッドルームに入り鍵をかけた。

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■20492 / 1階層)  26
□投稿者/ 壱也 一般♪(29回)-(2008/01/24(Thu) 14:39:41)


    あれから、幾日が経っただろうか。


    携帯には、バイト先からの電話や、奈々が着信を残し、そのどれにも出なかった。


    愛里は私を心配するが、一日に一回ご飯を食べてまた部屋に篭った。


    私は分からなくなったのだ。

    朱美を引きずる事で、天国に居る朱美は、幸せになれてないのではないか。


    私はこれからどう生きていけばいいのだろうか。


    もう全て投げ出したい。


    このまま死んだら、愛里や奈々は泣いてくれるかな?

    朱美に…会えるかな?


    「チカさん、起きてますか?」


    いつの間にか、眠っていた私を扉の向こうから愛里が、声をかけた。


    『ああ、何?』


    「出掛けませんか?外の空気を吸った方がいいですよ?」


    それも、そうだな。

    私は、部屋を出て、愛里を見つめる。


    『愛里…』


    「シャワー浴びますか?お風呂沸いてます」


    『済まない。。』


    シャワーを浴び、支度を済ますと、愛里は小さく笑い、

    「見せたい物があります」

    静かに呟いた。

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■20493 / 1階層)  27
□投稿者/ 壱也 一般♪(30回)-(2008/01/24(Thu) 14:40:40)

    マンションを出て、近くの駅に行き、二つ駅を過ぎた時に、降りるらしく愛里は私の手を引いた。


    「もうすぐで着きます。駅から歩いてすぐです。」


    『何処に行くんだ?』


    「私の実家です…」


    電車はキキィっと音を鳴らし停車すると、たくさんの人が階段を目指して歩き始めた。


    人波に揉まれ、はぐれないように愛里は手を強く握る。


    『何で実家に?』


    「見たら解ります。」


    理解出来ない状態に、頭が混乱しそうだった。


    愛里の実家は高層ビルの最上階らしく、入るにはカードが必要だった。


    「どうぞ?」


    『お邪魔します』


    玄関は大理石で出来ているし、壁には牛の頭が飛び出していて、お金持ちの家を絵に書いたような造りだった。


    「二人とも昼間は居ないわ。愛里の部屋に行きましょう?」


    愛里についていき、ソファーに座る。


    愛里は棚から、古ぼけたノートを出して来た。


    『これは?』


    「姉が生前書いていた日記です。母に内緒で持ってきていたんです」


    愛里の姉…。


    『私が見ていいのか?』


    「その為に来たので…」


    私は、その日記の一ページ目をめくる。

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□投稿者/ 壱也 一般♪(31回)-(2008/01/24(Thu) 14:41:43)


    11月5日


    変な日から日記を書いちゃいます。


    これからの私や、毎日の事書いて、お母さんに見せてあげたいな。


    話しをまともにしてくれない貴方に読ませたい。


    まずはここまで。



    何だろう。このモヤッとした気持ちは。


    母親と仲が悪かったのか?

    私は次のページをめくる。

    11月10日

    早速書くのを忘れた(笑)
    今日は、体育祭があった。
    走るのが苦手な私は、

    友達に迷惑かけまくり(汗
    でも、嫌な顔しないで

    助けてくれた子がいたよ?
    嬉しかったなぁ!


    11月11日

    私には二人の親友がいる。
    頭が良くて優しい子と

    運動神経が良くて、子供っぽい所がある子。

    この二人は私の中で大切で
    ずっと一緒に居たい。

    離れたくないよ。。


    『愛里…この日記は…』


    「12月3日を見て」


    私は愛里が日記をパラパラとめくり終わるのを眺めていた。

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■20495 / 1階層)  29
□投稿者/ 壱也 一般♪(32回)-(2008/01/24(Thu) 14:44:40)
    12月3日

    お父さんが捕まった。

    お母さんは泣いていた。

    でも、お母さんには、

    旦那がいる。

    お父さん以外の男が。

    私だけ一人なんだ。

    でも、親友が居れば

    何もいらない。

    家族さえも。



    「姉は、私の存在を母から明かされてません。姉は苦しんでいたみたいです。」

    12月15日

    初めて好きな人が

    できました。

    いい噂をきかないけれど

    私を必要としてくれたから
    信じてみました。

    親友は応援してくれたよ?

    だけど裏切られた。

    暗い体育館倉庫。

    怖かった、助けて欲しい。

    親友のね、チカが

    助けてくれた。

    殴ってくれた。

    優しい奈々は先生呼んで

    くれたね?

    嬉しかった。

    チカは殴られて倒れて

    しまった。

    私を守って。

    ありがとう。

    ありがとう。


    『…うぐっ』

    涙が溢れて溢れてノートが汚れた。

    それでも止まらなかった。

    「朱美は私の姉です。会った事もない人ですけど」


    「このページ見て下さい。姉の気持ちです」

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■20496 / 1階層)  30
□投稿者/ 壱也 一般♪(33回)-(2008/01/24(Thu) 14:45:42)


    2月18日

    この日記も今日で最後。

    私は、学校でたくさんの

    罵声や同情を受けた。

    苦しかった。

    でも親友たちが守って

    くれた。

    最後まで、迷惑かけて

    しまった。

    でも、私は二人が好き。

    私を認めてくれて

    私を大事にしてくれた。

    嬉しかったよ?

    私が死ぬのはね、

    学校が辛いからじゃない

    お母さんが私を

    私が居た事を忘れない為に

    私は死ぬの。

    親友を残して死ぬのは

    とても辛い。

    でも、決して私は

    忘れない。

    チカ、奈々。

    ありがとう。

    そしてチカ?

    私を好きで居てくれて

    ありがとう!

    気付いてました。

    でも三人の仲がギクシャク
    するのが怖くて

    言えなかった。

    チカ?忘れないで。

    貴方が誰を好きに

    なっても

    私は貴方の中で生きる。

    奈々の中でも生きる。

    それぞれの道を進んで?

    これを見るかは分からない
    けれど、書いておきます。

    朱美

    (携帯)
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■20498 / 1階層)  NO TITLE
□投稿者/ タロ 一般♪(1回)-(2008/01/24(Thu) 21:59:28)
    めっちゃ感動しました!
    涙が止まりません!!
    読みやすいしストーリーも素敵で‥‥‥続き楽しみにしてます!!
    頑張ってください☆

    (携帯)
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■20500 / 1階層)  タロ様
□投稿者/ 壱也 一般♪(34回)-(2008/01/25(Fri) 07:45:00)

    読んでくれてありがとうございます。

    感動して頂けて光栄です。
    無理矢理な文章ですが

    最後までお付き合い

    頂ければ幸です。

    頑張ります!

    ありがとうございます!

    (携帯)
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20501 / 1階層)  31
□投稿者/ 壱也 一般♪(35回)-(2008/01/25(Fri) 13:44:37)

    『あぁぁぁ…』


    私は泣いて、頭は朱美との思い出が走馬灯の様に思い出される。


    「チカさんは、姉を守ってあげれなかったと言いますが、姉は十分守られた事に感謝しています」


    愛里は優しい声でそう言うと、頭を撫でてくれた。


    「この日記はチカさんがお持ちになって下さい」


    『…えっ?』


    「この日記には姉とチカさんたちの思い出ばかり書かれています。私の事は一行も書かれていませんから、私が持っていても意味ありませんし」


    『でも…』


    「姉とは面識がありませんし、寂しいとかってあまり思いませんでしたから。」

    『…ぐずっ…じゅ…ありがとう』


    鼻を啜りながら、私は礼を言う。


    ノート一冊に掛かれた朱美の字が愛しくて、たまらなかった。


    「さ、そろそろ帰りましょうか?夕方には母が帰って来ますから」


    時刻は午後3時。


    『…ああ』


    その時だった。


    「愛里?居るの?」


    玄関から、女性の声が聞こえて来た。

    (携帯)
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■20502 / 1階層)  32
□投稿者/ 壱也 一般♪(36回)-(2008/01/25(Fri) 13:45:42)


    「お母さん…」


    「いつ、帰って居たの?あら、そちらは?」


    『愛里さんをお預かりしています、橘チカです。』


    「もう帰るから」


    愛里は立ち上がり、部屋を出ようとした時、愛里の母親が恐ろしい形相で私の手元を見た。


    「貴方…それは…」


    手に持っていたのは、朱美の日記。


    「お母さん!それは私があげたの!」


    パシン。


    渇いた音が響き、愛里は平手を受けた。


    「他人にあげるなんて、私の娘の遺書なのよ?愛里の姉なのよ?」


    「私に姉を逢わせなかった癖に!今まで姉を大事にしなかった癖に!今更母親面しないで!」


    私はただ見ていた。
    昼ドラ並の内容と、親子の喧嘩に目を奪われていた。

    私には両親が居ないから、だろうか。


    「もう、嫌。お父さんまで傷つけて。」


    愛里の涙を初めて見た。
    目の奥には強い意志と悲しげな気持ちが見える気がした。


    『すいません。』


    私はこの緊迫した空気を破るように、声を出した。


    案の定、よそ者は黙ってて!みたいな目を母親は向けた。

    (携帯)
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■20503 / 1階層)  33
□投稿者/ 壱也 一般♪(37回)-(2008/01/25(Fri) 13:46:45)

    『愛里さんは、私の借りているマンションで今は生活しています。電車で二駅の〇〇という所です。今、話し合ってもお互い冷静になれないと思うので、引き続き愛里さんはお預かり致します。愛里さんが、もう一度この家に戻りたいと思うまで。大学はきちんと通わせますし。あと、この日記はお返しします。血の繋がった貴方が持っている方がいいでしょう。貴方に気付いて欲しくて書いたものだから…。それでは失礼します』


    私は愛里の手を引いてマンションを出た。


    「嫌な所見せちゃったね」

    『いや、それよりも』


    愛里は私を見上げ言葉を待っている。


    『お父さんに会えないかな?大事な娘さんを預かる事をきちんと説明してから私の家に来て欲しい。』


    「解った。でも、チカさんはもう不安はないの?」


    『…ああ。朱美の気持ちが解った今、何も迷いはない。愛里は大事な友人の妹だから。私が守るよ』


    愛里は少しだけ、チカにも分からない程に、寂しげな表情を見せた。


    「…じゃあ父の会社に行きましょう」


    愛里は明るい笑顔で、駅に向かい歩き始めた。

    (携帯)
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■20504 / 1階層)  34
□投稿者/ 壱也 一般♪(38回)-(2008/01/25(Fri) 13:47:31)


    愛里の父親は電気会社の社長という事もあって、自宅のマンションよりも高いビルが会社で、社長室は最上階だと言う。


    受け付け嬢に、娘が来た事を知らせると、愛里にはすぐにエレベーターへ向かうように言われた。


    私は、身分証明書を提示する様に言われ、ポケットにあった運転免許証を出すと手際良くコピーを取られ、笑顔でエレベーターに行くように指示された。


    『厳重だな』


    「念には念を…みたいな人ですから、セキュリティに関してはうるさいんです。」


    3分程エレベーターは上昇し、チンっと鐘の音を鳴らした。


    『緊張してきたな』


    「父は、変わった人ですから。大丈夫です」


    変わった人とはどういった事でだろうか?


    不安交じりに、社長室のドアを愛里がノックした。


    「お父さん、私です」


    小さく入れと聞こえたので愛里の後ろからそそくさと中に入った。

    (携帯)
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■20505 / 1階層)  35
□投稿者/ 壱也 一般♪(39回)-(2008/01/25(Fri) 13:48:33)


    ドラマの社長室みたく、応接室セットがあり、奥には社長のデスクが見えた。


    「おぉ〜♪愛里!よく来たなぁ♪」


    「話しがあって来たの」


    「そちらは?」


    『橘チカです。現在、愛里さんと一緒に生活させてもらっています。』


    「おぉ〜♪君がチカチャンね?」


    何だ?このひょうきんなおっさんは。


    「お父さん、私冬休みだけじゃなく、ずっとチカさんの家に居たいの!」


    「何でだよ〜お父さん寂しいじゃないか!」


    「あの家には居たくないから…」


    「ん〜…チカ君?」


    『はい』


    「娘をしばらく頼むよ」


    『…えっ、あ、はい』


    意外にあっさり決まった事に私は驚いた。


    「その代わり、月一で自宅訪問する。それが条件だ」

    急に真剣な顔付きになった社長は、私に握手を求めた。


    「この子を頼むな。私は来月にでも、あの子の母親と別れるつもりだ。」


    「お父さん…」


    「愛里…お前が母を好きでないのは分かってる。だから私がお前を引き取る。朱美の分まで幸せになるんだよ?」


    愛里は、それまで崩れかけそうだった体を、社長に預けた。


    社長室は愛里の泣き声と、社長の優しい笑顔で溢れていた。



    「それじゃあ…私は会議があるから。」


    社長と別れ、私たちは社長が手配した車に乗り込む。

    運転手に家の住所を教えると、勢いよく発車した。


    「変な父親でしょ?」


    『確かに…でも優しい人だね』


    「うん…」


    『今晩は、奈々も呼んで三人でご飯食べるか!』


    「わーい♪奈々に会える」

    子供のようにはしゃぐ愛里を横目に、私は携帯で奈々に連絡した。


    奈々は、了解と返事して、午後九時に集まる事にした。

    (携帯)
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■20506 / 2階層)  ロマンテックな感じ、いいですね。
□投稿者/ きゅん 一般♪(2回)-(2008/01/26(Sat) 04:20:06)
    読んでて一瞬きゅんと切なくなりました。パパはいい人で良かった。
    やっぱり愛里さんとチカさんの出会いは必然的な運命だった!
    ますますこの先の展開が楽しみになりました。

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■20507 / 1階層)  きゅん様
□投稿者/ 壱也 一般♪(40回)-(2008/01/26(Sat) 12:02:51)

    カキコミありがとうございます。

    何だか暗い話しばかりだったので、お父さんは明るく書こうと…(笑)


    愛里とチカの関係は変わるかもしれませんし、変わらないかもしれません(笑)

    また浮かんだらUP致します。

    (携帯)
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■20513 / 1階層)  36
□投稿者/ 壱也 一般♪(41回)-(2008/01/29(Tue) 13:54:36)
    今夜の愛里は、格別に張り切っていた。


    「だって、ここに住めるんだもん♪」


    そういえば、私はふさぎ込んで、うやむやになっていたな。


    『何を作ってるの?』


    キッチンに立つ愛里の横から顔を覗かせる。


    「オムライスです♪奈々もチカさんも好きでしょう?」


    屈託のない笑顔で答えられて、少し気恥ずかしい想いをした私は、頷く事しか出来なかった。


    『…あ、愛里?敬語辞めないか?何で私だけ敬語なの?』


    「あ、すいません。お世話になる人ですから。」


    『…今更だけど、辞めていいよ、堅苦しいだろ?』


    「…うん♪分かった」


    その後も順調に調理を終え、奈々が来るまで、二人でテレビを見る事にした。


    ソファーに二人きりで座ると中々密着感があり、少しドキッとする。柔らかなシャンプーの匂いが風に流れる。


    「チカ、ありがとうね」


    ふいに、愛里が小さくつぶやいた。


    『どういたしまして』


    私は、この子が今までどれだけの傷を抱えて来たのか知らない。


    けれど、少しでも良い方向に進んでくれるなら、私は何だってすると思う。


    きちんとした職にも着くし、まとまったお金だって貯金しよう。


    愛里の父親の金には頼りたくない。


    全てにおいて、私が守る。

    そう心に誓った頃、奈々が玄関のベルを鳴らした。

    (携帯)
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■20514 / 1階層)  37
□投稿者/ 壱也 一般♪(42回)-(2008/01/29(Tue) 13:56:00)


    「奈々ー♪いらっしゃい」

    愛里は、威勢よくソファーから飛び出し奈々に抱き着く。


    「久しぶり〜!元気そうだねぇ♪」


    『いらっしゃい』


    「…その顔は全部分かったみたいね?」


    奈々は満足げに、ブーツを脱いで、部屋に上がった。

    私は愛里の作ってくれたオムライスを前に、奈々に問い掛けた。


    『一体いつから気付いてたんだ?』


    「チカがワインで潰れる一週間前に、愛里の父親に夕飯を誘われたの。会社の付き合い程度に、ついていったら、お酒のおかげで、ベラベラ話してくれたわ?」

    『まったく…手の込んだ事しなくたって、普通に言いなよ?』


    「調度、愛里が家を出たがっているのを聞いて、チカの家を薦めたの。朱美の友人ならって承諾してくれたわ。だから、これは愛里の為でもあるから」


    奈々の優しい物言いに、私は黙り、オムライスを食べ始めた。


    「おいしい?」


    愛里が可愛い声で尋ねてくるので、おいしいよって、優しく返した。


    「まるで、新婚ね」


    奈々が笑いを堪えながら、私たちを見る。


    『バーカ!』


    愛里も笑い、私も笑った。

    温かな食卓、何年振りだろうか。


    こんなに楽しい夕飯は、久しくなかった。


    このまま、時間が止まればって何度願っただろう。

    (携帯)
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■20515 / 1階層)  38
□投稿者/ 壱也 一般♪(43回)-(2008/01/29(Tue) 15:43:20)
    愛里が私の部屋に来て一ヶ月が経った頃、私と愛里の中で変わった事が幾つかある。


    始めは、愛里に朱美を照らし合わせたりしていたが、最近は“愛里らしさ”というか、朱美とは違う部分が出て来た。


    それは、とてもほほえましい事であり、ようやく素を見せて来たのだという安心感で満たされる。


    愛里は、私の中で大事な人になってしまった。


    要は、手を出してはいけない人。


    そう感じた。


    何も恋人として、幸せにしなければならない義務はないし、私は私なりのポジションで支えて行けたらいいと思う。


    姉妹、といった関係に近いかもしれない。


    愛里は、私に対して何を想っているのかイマイチ掴めないし、こんな幸せをわざわざ自分から壊す事もない。


    愛里は奈々が最初に言った様にノンケなのだ。


    これからたくさんの男性に出会い、恋をしていく。


    その都度、恋愛相談に乗ったり、応援したり。。


    朱美に対してもやったとおり、1番近い場所で見守ればいいんだ。


    例え、愛里を愛してしまったと私自身が気付いても、私の中で押し潰し隠せばいいんだ。


    もうすぐで年が明ける。

    (携帯)
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■20516 / 1階層)  39(愛里Side)
□投稿者/ 壱也 一般♪(44回)-(2008/01/29(Tue) 15:46:20)


    奈々の紹介で、居候させて頂く家は、住宅地の中にある、普通のマンションで、部屋の主は中性的な女性だった。


    名前はチカ。


    姉の日記によく出て来る親友の一人。


    奈々とは、父親を通して前々から仲良くなっていたんだけど、姉が朱美だと知ったのはごく最近。


    最初は驚いてたし、日記を見せたら号泣しちゃうしで、大変だったのを覚えている。


    居候する上での約束事を奈々は幾つか話した。


    一つは、朱美に近いように話す事。


    もう一つは朱美の妹だってのは内緒にする事。


    姉に会った事がない私は、とても困ったけれど、日記を読み返していけば何となく雰囲気くらいは似せる事ができたみたい。


    そんなややこしい生活を始めて一ヶ月が経ち、もうすぐで年が明ける。


    「チカ、仕事でしょ?起きなさい!」


    目覚めが悪いチカを起こすのが私の日課。


    低血圧なチカの為に、コーヒーを入れ目を覚まさせる。


    『うまいな』


    優しい目で、毎日同じ言葉を発する。


    「ありがとう」


    チカが柔らかくなったのは、姉の日記を見せてから。

    比較的口数が少ないチカが今じゃ毎日たわいもない話しをしてくれる。


    『今日は遅くなるから、先に食べてて?』


    「分かった!いってらっしゃい」


    チカが居なくなると、この部屋はやけに静かになる。

    それはきっと、必要最低限の物しかない部屋だからだと感じた。

    (携帯)
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■20517 / 1階層)  40
□投稿者/ 壱也 一般♪(45回)-(2008/01/29(Tue) 15:47:26)


    「ん〜掃除するかぁ♪」


    几帳面な性格な事もあっと、私は毎日掃除をした。


    他にする事もないし。。


    大学に友達は居ない。


    人見知りで話す事が出来ないのが原因。


    なのに…どうしてチカは話せたんだろう。


    奈々の友達だから?


    そんな理由で話せたら、今頃一人くらいは友達が居ただろうな。


    私は少しばかり寂しくなって、掃除を終えたら近所の喫茶店に行くことにした。


    「いらっしゃいませ〜」


    チリンとドアに取付られたベルが鳴り、来客を知らせた。


    「あ、愛里ちゃん!いらっしゃい!」


    奥から出て来たのは、奈々の友人で、この店のオーナーの藤田さん。


    「…いつもので」


    「はぁい♪待ってて」


    藤田さんは、人見知りの私をよく分かってて、あまり話し掛けて来ない。


    ここは私にとって居心地が良かった。


    「はい、カプチーノ」


    カウンターに置かれたそれを手に取り、少しばかり眺めた。


    「今日はウサギちゃんね」

    藤田さんは、そう言って奥に入って行った。


    私はそんなに、寂しそうに見えたのかな?

    (携帯)
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■20518 / 1階層)  41
□投稿者/ 壱也 一般♪(46回)-(2008/01/29(Tue) 15:48:31)


    藤田さんは、洞察力が凄いから、私の気持ちを動物や花に例える。


    見透かされた気持ちと、分かってくれる気持ちが合わさって、いつしか自分から藤田さんに声をかけてしまうのが、パターンだ。


    チカや奈々の次に話せる相手だった。


    「友達ってどう作るんですかね?」


    藤田さんは悩みながら、口を開く。


    「…んー。人それぞれだけど、話しかけやすいオーラを出してみたら?」


    オーラですか…(汗)


    「焦らなくていいんじゃない?自分と馬が合う友達なんて中々見つけれないわ。見せかけの友達なんていらないでしょ?」


    「たしかに…そうかもしれませんね」


    「あたし的には話し相手が居なくなるの嫌だから、作って欲しくないわね♪なーんてね?」


    藤田さんは笑顔を見せて、私の頭を撫でた。


    「チカだって、奈々と朱美ちゃんくらいしか友達居なかったわ。チカって近寄りがたくてねぇー。奈々が声を掛けたのがきっかけなのよ」


    「へぇー…チカさんもそういう感じなんですか。」

    「人見知りもあるけど、あまり他人と関わりたがらなかったみたいよ?あたしは奈々の先輩だから、奈々からしか聞かされてないからよく解らないけどさ。」


    「…だからなのかも」


    「えっ?」


    「あ、ううん独り言です。今のチカさんは優しくて楽しいです。一緒に居て。」

    「そう?なら良かった。チカ愛里ちゃんの事を気にしてたから。」

    (携帯)
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■20519 / 1階層)  42
□投稿者/ 壱也 一般♪(47回)-(2008/01/29(Tue) 15:49:59)


    何を気にするの?


    私は疑問だらけだった。


    「自分は愛里にとって、いつか邪魔な存在になるんじゃないかって。愛里に好きな人が出来たらあの家を出るだろうし、そしたら自分は祝福して見送れるのかなってさ。父親みたいね?」

    私はチカを邪魔なんて思った事はないよ?


    これからもそうだし…


    なんでそう思うのかな?


    チカは私を…。


    そういえば、前に私を求めてしまいそうで怖いって言ってた。


    そっかぁ…。


    チカは私でも恋愛対象に入るんだよね。


    何となく、くすぐったい。

    何でだろ??


    「チカにとって、愛里ちゃんは、ただの友達じゃないのかもね?」


    「え?」


    「…親友って感じかな?」

    「…どうなんですかね?聞いてみます」


    「恥ずかしがって言わないかもね。フフ」


    あぁ、藤田さんと話す時、私は藤田さんをお母さんみたいだって思えた。


    本当のお母さんはひどい人だったからなぁ。


    こんな人がお母さんなら。

    喫茶店に約、4時間近く居座り、昼ご飯まで出してもらった。


    「生活大変だろうから、タダでいーよ!」


    そう言ってくれたけど、悪いからってカプチーノ代は出してきた。


    夕方のスーパーはごった返してて、安売りがされている。


    スーパーで、買い物なんて、チカと住むまでしたことなかった。


    最初はあまりに安くて買い込み過ぎて冷蔵庫に入り切らなかったんだよねぇ。


    今じゃ、更に安い物を見極めちゃったりしてさ。


    まるで主婦だった。


    あ、今日はチカ遅いんだった。


    早く喋りたいな。。

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■20520 / 1階層)  43
□投稿者/ 壱也 一般♪(48回)-(2008/01/29(Tue) 17:35:37)


    一人で帰るのには慣れている。


    誰も居ない家に帰るのも、一人の夕食も、一人でテレビを見るのだって、寝るのだって慣れている。


    小さい時からそうだったのに。


    どうしてこんなに泣いてしまうんだろう。


    まるで、子供みたい。


    私はもう、成人して大人になったはずなのに。


    一人用のベッドに二人がくっつきながら、寝ていたこのベッドが異様に広くて、まだ23時なのに、起きているのが辛かった。


    チカは何時に帰ってくるんだろうか。


    チカの好きなハンバーグを今日は作ったの。


    早く食べて欲しいな。


    チカ…寂しいよ。。

    (携帯)
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■20521 / 1階層)  44
□投稿者/ 壱也 一般♪(49回)-(2008/01/29(Tue) 17:36:29)


    ガチャ。


    ドアの方から音がした。
    ベッドルームに差し込むリビングの光りでチカの顔が真っ暗だった。


    それでも、私は飛び付いた。


    チカに会いたかったから。

    『うぉ、どした?泣いて…んの?』


    チカは優しく抱きしめてくれて、背中を摩ってくれた。


    「うっうう…寂しかったの…」


    『ごめんな、残業でさ』


    分かってるのに。

    生活の為、私が居るから必死に頑張ってる事も。


    お父さんの援助を受けないのも、全部知ってるのに。

    「チカぁ…傍に居てね」


    それなのに


    こんな我が儘を吐いてしまうんだから。


    私はどうかしてるんだよ。

    (携帯)
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■20522 / 1階層)  45(チカside)
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(50回)-(2008/01/29(Tue) 17:37:53)


    残業を終えて、マンションに戻ると、テーブルにはサランラップがかかったハンバーグが置いてあった。


    早く食べたい衝動を抑え、部屋着に着替える為にベッドルームの扉を開いた。


    部屋の中で愛里は寝ているのかと思っていたら…


    大泣きで抱き着いて来た。

    『うぉ、どした?泣いて…んの?』


    「うっうう…寂しかったの…」


    愛里が寂しいって言うのは初めてだったし、何より泣くのだって…。


    『ごめんな、残業でさ』


    今までだって、遅くなる日はあったのに…今日何かあったのか?


    「チカぁ…傍に居てね」


    こんなに甘えてくる愛里は、見たことがない。


    『傍に居るよ?心配するなよ』


    ホームシックにでもなったのか?


    もう一ヶ月は経つのに。


    理由を聞けばいいのだろうけど、愛里から話すまで、このまま抱きしめていたい。


    温もりが、愛里に対する愛のような気がして、私は愛里が好きになったんだって自覚させられた。


    本当は震える愛里に優しくキスをして、頭を撫でてやりたい。


    でも、大事な人だから。


    今は愛里の涙が止まるまで抱きしめよう。

    (携帯)
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■20523 / 1階層)  46
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(51回)-(2008/01/29(Tue) 17:38:46)


    「チカ、ごめんね?」


    10分くらい立ちながら泣いて、今は二人でベッドに腰を落とした。


    『何で謝るんだよ。』


    「…分かんないけど。」


    『何だそれ?(笑)どうした?昼間何かあった?』


    「藤田さん所行ってきた」

    愛里が、いつの間にか藤田に懐いてたのは、奈々から聞かされていた。

    藤田も、また私の性癖を知っている。

    「チカが心配してたって教えてくれて…」

    愛里は藤田が話した全てを、ゆっくり教えてくれた。

    「邪魔だなんて、思った事ないよ?」


    『…ああ。悪かった、変な心配して。』


    藤田の奴、ベラベラ話しやがって。


    愛里に心配かけさせて…。

    『大丈夫。今は心配してない』


    愛里は少しだけ笑い、私を見つめた。


    「…ねぇ?チカは私を好き??」


    突然の質問。


    それは胸が締め付けられる様に痛みを伴った。


    「姉じゃなく、私を好きですか?」


    恋愛対象として…って事だろうな。


    何故こんな事を聞いて来るのかは、愛里の表情を見れば解る。


    多分…両想い。


    なのに、言葉が出ない。


    君が好きなのに。


    どうして言えない?


    まだ君の中に、朱美を見ているのか?


    …違う。私は愛里を…



    愛してる。

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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20524 / 1階層)  47
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(52回)-(2008/01/29(Tue) 17:39:38)


    『愛してるよ?愛里が必要だと思うし大事だ』


    愛里は涙がまた溢れ、私にしがみつく。


    「…私も、チカが好きです。愛してるんです。」


    か弱い愛里。


    君は私の中に簡単に入り込んだ。


    魔法をかけられたように、いつしか惹かれたんだ。


    いつ愛里と朱美を別物として考えたかなんて、解らない。


    でも、愛おしいんだ。


    朱美、もう会えない幻の君よ?


    私は愛里を欲しい。


    私が愛里を幸せにする。


    君の分まで想いをぶつけてみるよ。


    朱美、愛里は君を大事に想ういい子だ。


    いい、妹を持ったね。

    (携帯)
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20530 / 1階層)  48
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(53回)-(2008/01/30(Wed) 15:11:21)



    愛里は私の腕の中で幸せそうに笑う。


    「両想いだね?」


    『…ああ。』


    「女の人と付き合うの初めてだから…その」


    『優しくする。愛里、愛してる』


    優しくベッドに愛里を寝かし、深いキスをする。


    愛しくて、キス出来た喜びと幸せが涙になり、落ちる。


    「…んぐっ、チカぁ?」


    『もう離さないから』


    私は誰も失いたくない。


    天国の朱美、聞いてる?


    私は朱美を今も愛してる。

    同時に、愛里をも。


    欲張りだって言われるかもしれないけど。


    もう会えない朱美の分まで幸せにすると誓うよ。



    END

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完結!
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20531 / 1階層)  感涙
□投稿者/ 朱 一般♪(1回)-(2008/01/30(Wed) 19:02:06)
    こんなに、読むのをはまった小説は久々でした(;_;)
    本当に面白かったです!!!

    また楽しい話待ってます♪
    お疲れさまでしたm(__)m

    (携帯)
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20532 / 1階層)  朱様
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(54回)-(2008/01/30(Wed) 19:59:39)
    感想ありがとうございます(^-^)


    そう言って頂いて嬉しいです。

    また書いたらお願いします(^O^)/

    (携帯)
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20543 / 1階層)  壱也さん♪
□投稿者/ 昴 大御所(425回)-(2008/02/04(Mon) 02:02:41)
http://id34.fm-p.jp/44/subarunchi/
    素敵な作品をありがとうございました

    特に朱美の日記のシーンでは
    感情移入し過ぎてウルッとしました

    次回作も楽しみにさせて頂きますね
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▲[ 20457 ] / 返信無し
■20546 / 1階層)  昴様
□投稿者/ 壱也 ちょと常連(56回)-(2008/02/04(Mon) 11:28:33)

    お読み頂きありがとうございます。

    昴様のHPは知っていて、ご主人様シリーズも読破していたのでまさか書き込みを貰えるとは思いませんでした♪


    実に嬉しく思います。


    是非また書かせて頂く時はよろしくお願いします。

    (携帯)
完結!
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