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Nomal 歳の差から生まれる心の距離はありますか? /zoo (12/09/08(Sat) 23:29) #21629
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│                                                                    └Nomal 37 /zoo (12/12/09(Sun) 13:58) #21706 完結!
│                                                                      └Nomal お礼 /zoo (12/12/09(Sun) 14:10) #21707
│                                                                        └Nomal Re[38]: お礼 /miya (12/12/21(Fri) 19:16) #21708
Nomal 感想 /愛 (13/01/02(Wed) 21:10) #21711
Nomal お礼 /こねこ (13/01/11(Fri) 17:07) #21712
Nomal 感想^^ /miya (13/01/13(Sun) 13:53) #21713


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■21629 / 親階層)  歳の差から生まれる心の距離はありますか?
□投稿者/ zoo 一般♪(1回)-(2012/09/08(Sat) 23:29:59)
    江藤りこ、35歳、独身。

    見た目には一応気を遣ってる。
    女性らしさを失わないように、お化粧や美容室での手入れなど、怠らないようにはしている。
    背は153センチと小柄だけど、いつもヒールを履いて160センチくらいにはなっている(笑)。



    そんな私は女子高で英語の教師をしている。
    手のかかる生徒もいるけど、基本的には皆よい子ばかりで、毎日充実している。


    プライベートでは、友達の紹介で知り合った同い年の彼がいる。付き合い始めて1年くらい。
    彼を好きかどうかと聞かれると、好きなのかな・・一緒にいて落ち着くし、優しい。
    でも、昔からの友人は私の恋を、ドキドキがなくて刺激がないのはつまらないって言う。


    ドキドキかぁ・・・そんな歳でもないしなぁ。
    結婚も考える年頃だし、やっぱり一緒にいて落ち着けて信頼関係を築けるような相手がいい。



    そう思ってた。
    なのに、私は大きく動揺していた。
    ある一人の存在に。




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▲[ 21629 ] / ▼[ 21631 ]
■21630 / 1階層)  2
□投稿者/ zoo 一般♪(2回)-(2012/09/08(Sat) 23:32:40)
    私が受け持つクラスは、卒業を目前にした高校3年生。
    その私のクラスに、私を動揺させる存在がひとりいた。



    彼女の名前は、藤井咲希(ふじいさき)。
    他の生徒に比べて、落ち着いた大人の雰囲気。
    肩より少し長めのサラサラの黒髪ストレート。
    切れ長の綺麗な目で、人の心を見透かしているような視線。
    背は165くらいなのかな?スラッとしていて、綺麗な女の子であり、クールでカッコよくもあって、影ながら咲希に憧れている子は多い。


    3年生のクラス替えで、咲希の担任になった。
    無邪気にペラペラとお喋りする他の生徒と違って、咲希はいつも冷静で物静かだった。
    私からも必要以上に話すことはなかった。


    それに、他の人に対しては笑顔を向けるのに、私には笑った顔を見せたことがない。


    私って、咲希に嫌われてるのかも・・・


    手のかかる生徒よりも、咲希のほうが担任にとっては扱いにくい生徒だ。



    そんな彼女から突然、学校帰りの誰もいない教室の廊下で話しかけられた。





[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21630 ] / ▼[ 21632 ]
■21631 / 2階層)  3
□投稿者/ zoo 一般♪(3回)-(2012/09/08(Sat) 23:35:07)
    「先生、最近何かあった?」


    「えっ、えっ?どうしたの急に?!」


    急に話しかけられた私は、驚いて動揺していた。
    二人きりで話したことなんてなかったし、まさか咲希のほうから話しかけてくるとも思ってなかった。


    そんな動揺している私に、咲希はまた同じことを聞いてきた。



    「何かあったの?」


    「何かって?別に何もないけど・・・私、どこか変??」


    「別に。」


    「・・・・・」


    「何かしんどいことでもあるのかと、気になっただけ。ごめんね呼び止めて。」


    「あ、ううん・・ありがとう。何もないよ」


    「そっか。じゃ。」


    「あ、うん。気をつけて帰ってね」



    突然のことで驚いた。
    しんどいことかぁ・・・なんで咲希にはわかったのかな?疲れた顔してるのかな・・・
    生徒に気づかれるなんてダメだなぁ・・・
    教師失格。。。


    実は、付き合っている彼から、結婚を考えて欲しいと言われた。
    彼の仕事が転勤になる関係で、結婚するなら、仕事を辞めてついてきて欲しいと言われている。教師なら、また別の場所でもやろうと思ったら出来るし・・と。


    本当に彼のことが好きなら、迷うことなんてないはずなのに。


    決断出来ないでいた。




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▲[ 21631 ] / ▼[ 21633 ]
■21632 / 3階層)  4
□投稿者/ zoo 一般♪(4回)-(2012/09/08(Sat) 23:37:09)
    数日後、咲希から小さなメモを渡された。


    教室で、生徒がそれぞれ提出する課題を教壇に持ってくる時だった。
    咲希は提出物と一緒に、折り畳んだメモを黙って置いて行った。


    私は他の生徒に見られないように、そのメモをそっとポケットへしまった。



    今度は何?!
    他の生徒もいる手前、私は冷静を装いながらも、また動揺していた。
    咲希は全く何もなかったように知らんぷりしている。


    職員室に戻りメモを開いてみた。



    「放課後、少しだけ時間を下さい。
    みんなが帰った後の教室で。」



    何?!何?!
    何か相談?!
    この間のこともあるし、また何か聞かれる??


    はぁ〜・・・気になるなぁもう。
    それに、みんなが帰った教室って、何時頃に行けばいいんだろう。



    とにかく、放課後になればわかるよね。。。



[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21632 ] / ▼[ 21634 ]
■21633 / 4階層)  5
□投稿者/ zoo 一般♪(5回)-(2012/09/08(Sat) 23:40:24)
    放課後。
    少し時間をあけてから教室に向かった。
    教室には誰もいなかった。


    早すぎた?遅かった?
    それとも、もしかして、からかわれただけ?
    少し待ってみよう。


    しばらくして教室のドアがガラッと開いた。
    振り向くと咲希が立っていた。



    「待たせてごめんね」


    「ううん、それよりどうしたの?何かあった?」


    「とりあえず、コーヒー飲むの付き合って」


    「えっ?・・・あ、うん」



    よくわからないまま、缶コーヒーのプルダブをカチッと開けて手渡された。



    「ありがとう。あっ、お金払うね!」


    「コーヒー代なんていらないよ  笑」


    「ありがと・・・」


    「・・・・」


    何か私から話すべきなのかな?
    咲希から話すまで黙っているべき?
    どうして教師である私のほうが動揺しているの。。。


    「コーヒー好きなの?」


    「うん、好きだよ。」


    「・・・・」


    「・・・・」


    「・・・急にメモくれたから、びっくりした。何かあった?」


    「別に。先生と話したかっただけだよ。」


    「えっ?」


    「呼び出したりしてごめん。予定あった?」


    「ううん、大丈夫。」



    何だかよくわからないまま二人の世間話は続いた。
    気がつくと、教師である立場を忘れそうになるほど、ただ楽しく話している自分がいた。


    「先生の笑った顔が見れて良かったよ。そろそろ帰ろっか。」


    「あっ、うん・・・本当に、何か悩みとかあった訳じゃないのね?」


    「悩みかぁ・・・あるとしたら、先生の笑顔がなくなってたことかな 笑」


    「えっ?」


    「帰ろっか」


    「ねぇ!もしかして、私を元気にする為に呼び出したの?」


    「・・・そうだって言ったら?」


    「・・・・」


    咲希に真っ直ぐ見つめられて、今の私、きっとすごく赤面してる。
    自分の生徒相手に何ドキドキしてるの?!
    おまけに、咲希は女の子だし。
    しっかりしなきゃ、りこ!!


    気持ちを切り替え、教師らしく対応しないと!



    次の瞬間。



[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21633 ] / ▼[ 21635 ]
■21634 / 5階層)  6
□投稿者/ zoo 一般♪(6回)-(2012/09/08(Sat) 23:49:16)
    あのさ、そういう顔されると意地悪したくなるんだけど」


    咲希の腕が私の腰を引き寄せた。


     「ちょっ・・!☆●◇▽※★」



    キスされそうなくらい近い顔と顔。
    どうしよう!!心臓の音が伝わってしまうくらいドキドキしてる。
    咲希の腕に触れてる自分の手が震えていることに気付いた。


    「先生」


    「っっなに?!」


    顔を上げれなかった。
    だって顔を上げたら、キスしちゃうくらいの距離だから。



    「先生、顔真っ赤だけど」


    「っっっ離して!!」


    私は無理矢理、咲希の腕を払いのけて背を向けた。
    自分でもわかるくらい赤面してる。
    心臓が壊れそうなくらいドキドキしてる。


    咲希の目は危険。
    見つめられると、全て見透かされてしまいそう。
    落ち着いた色気のある声でささやかれると、変な気分になってしまう。
    私は教師のくせに何考えてるの!!
    別に、引き寄せられただけで、抱き締められた訳じゃないんだし!



    「コーヒーありがとう。帰るね。」


    それだけ言い残して、私は背を向けたまま急いで教室を後にした。



    年甲斐もなく本気で動揺していた。







[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21634 ] / ▼[ 21636 ]
■21635 / 6階層)  7
□投稿者/ zoo 一般♪(7回)-(2012/09/09(Sun) 09:42:26)
    翌日、なんとか咲希を意識せずに一日を過ごすことが出来た。
    自分は教師なんだから!と言い聞かせて。


    でも、正直言うと、昨日はほとんど眠れなかった。
    だって今まで私には笑った顔も見せない、必要なこと以外は話しかけてもこない咲希が、私の心配?
    咲希の考えてることがわからない。


    生徒にからかわれてるだけ?


    咲希の方は、昨日のことなんか何もなかったかのような素っ気ない態度。


    でも、私を元気づける為に気を遣ってくれたことは事実。
    何より、元気がなくなっている理由をとやかく聞いたりしない所が、咲希の大人な部分だったりする。
    気付いているのに気付かないフリする優しさが、咲希の魅力。


    ふと我に返ると、咲希のことを考えている自分に愕然とする。




    誰に対しても、あんなに慣れた手つきで抱き寄せたりするの?
    私をドキドキさせたのは、ただの意地悪?


    咲希の私生活って?
    恋人は?


    ダメ。。。
    私、何考えてるんだろう。


    自分の生徒でもある、しかも女の子に心が揺れてる!?


    その時、彼女がまた現れた。




[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21635 ] / ▼[ 21637 ]
■21636 / 7階層)  8
□投稿者/ zoo 一般♪(8回)-(2012/09/10(Mon) 09:08:05)
    「先生、ちょっとわからない所があるんだけど、放課後、聞きに行っていい?」


    英語の授業終わり、他の生徒がいる前で言われた。
    授業についての質問なのかはわからなかったけど、他の生徒達もいるし、OKと伝えた。


    昨日のことがあったから、またまた内心では動揺していた。



    放課後。
    職員室に咲希は現れた。
    教科書とノートを持って、明らかに勉強の質問のようだ。


    昨日のことが何もなかったかのように、勉強に対する質問だけだった。
    普段、優秀な咲希なら質問なんて有り得ないのだけど。
    何だか、勉強に対する質問だったことで、気が緩んだ。
    咲希の真面目な姿が少しかわいいと思った。



    「勉強、ありがと。じゃ。」

    「あっ、うん。気をつけて帰ってね。」



    咲希はあっさりと帰ろうとした。



    が、その時、咲希がこちらに一歩近づいた。
    咲希の唇が耳に触れるくらいの距離。



    「今度さ・・・デートしない?」


    「えっ!?!?」


    「・・・・」




    咲希にジッと見つめられる。
    動揺する私を咲希は黙って見ている。


    必死で返す言葉を探した。



    「なに〜急に(笑)。びっくりするじゃない(^-^) も〜先生をからかわないでよね(笑)」


    「・・・・」


    「も〜あなたが冗談なんて言うと、ほんとびっくりするんだから(笑)」





    「・・・・・
     今週末、空いてる?」


    「え?」


    「迷惑?」


    「あ、えっと・・・、急に・・どうしたの?」


    「迷惑?」


    「えっと・・迷惑とかそういうことじゃなくて・・」


    「じゃ、土曜日、空けといて。」


    「・・・・・
     えっ、あっ!ちょっと待って!」




    咲希は振り返ることなく帰って行った。



    一体どうなってるの?!
    デートって、本気で言ってるの?!
    必死で冗談ぽく振る舞ったけど、あんなに吐息が伝わるほど耳元でささやくなんて、ずるい。
    どうしよう。。。自分の生徒にドキドキして振り回されるなんて。


    デートって、どこへ??
    咲希ならデートする相手くらいたくさんいるだろうに、どうして私??
    この間から、からかわれているだけ?!
    休日に特定の生徒と外で会ったりしていいの?!


    頭がパニックでもうダメ。


    今日って、何曜日?
    火曜日・・・か。


    とりあえず、明日また学校で話をすることにしよう。







[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21636 ] / ▼[ 21638 ]
■21637 / 8階層)  9
□投稿者/ zoo 一般♪(9回)-(2012/09/10(Mon) 09:10:21)
    次の日、進路相談など含めて、クラスの一人ずつと面談をする予定があった。
    咲希はもう進路が決まっていたから、本来は特別話すこともないのだけど。
    昨日のことを話す為に、他の生徒と同じように時間を取った。


    面談をする部屋は、教室と違って小さな会議室のようなスペースで行っていた。
    咲希の順番になり、部屋に入ってきた。



    「あなたはもう進路が決まっているから、特別言うことがないわね。あなたからは何か言っておきたいことはある?」


    「いえ、特に」


    「そう、それなら良かった。」


    「・・・じゃ、次の人呼んでこようか?」


    「待って。」


    「・・・・」


    「昨日言ってたことなんだけど」


    「うん」


    「あれは冗談?」


    「生徒が先生とデートしたいって言ったら変?」


    「ううん、そうじゃないけど・・・どうして私なの?あなたなら、デートする相手がいっぱいいると思うんだけど」


    「いるよ。」


    「・・・あっ、そうだよねっっ・・」


    「先生とデートしたいだけなんだけど」


    「う、うん・・」


    「先生、土曜日は桜川駅に13時ね。来る来ないは先生の自由だしね。でも、待ってる。」




    ジッと見つめながら、そう言うと咲希は席を立って出て行ってしまった。


    本気で言われてるんだよね・・?
    土曜日、言われた通りの待ち合わせ場所に行くべき・・?





[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21637 ] / ▼[ 21639 ]
■21638 / 9階層)  10
□投稿者/ zoo 一般♪(10回)-(2012/09/10(Mon) 09:12:43)
    2012/09/10(Mon) 12:50:06 編集(投稿者)
    2012/09/10(Mon) 12:49:35 編集(投稿者)

    翌日。



    相変わらず、みんなの前では私に対して冷たい態度の咲希。
    必要以上に話さないし、ほとんど笑顔も見せない。


    二人になると、強引だけど優しいくせに。


    私って教師のくせに、からかわれてるだけなのかな?
    デートの相手が他にもいることは否定しなかったし・・・



    咲希のことは、軽い気持ちで考えよう。
    年頃の子が色々なことに興味を示すのは普通だ。
    ただ、他の子達より大人びたミステリアスな咲希に、少し動揺しただけのこと。
    大人げないなぁ〜教師のくせに。
    そう考えると、少し冷静になれた。


    彼との結婚についてもそろそろ決断しないといけない時期だし、ね。




    一日の仕事が終わり、そろそろ帰宅しようと駅に向かって歩いていると・・・


    ちょうど誰かの車に乗り込む咲希を見かけた。
    少し離れた場所からだから、咲希は私に気づいてない。
    運転しているのは、咲希より年上の女性?

    その女性は、咲希に優しく微笑み、そっと咲希の髪を触った。
    咲希は、髪を触っていた女性の手を掴み、女性の耳元で何かささやいた。
    それが合図のように、女性は微笑みながら車を発進させた。



    咲希の恋人・・?
    ただの知り合い・・?
    二人の雰囲気は、何だか恋人同士みたいだった。


    何、動揺してるんだろう私。


    デートの相手くらいいるって知ってるのに。


    二人が恋人同士のようだったから・・?
    相手が綺麗な人だったから・・?
    私にもしたように、耳元でささやいたりしたから・・?



    これって、嫉妬?!




[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21638 ] / ▼[ 21642 ]
■21639 / 10階層)  11
□投稿者/ zoo 一般♪(11回)-(2012/09/10(Mon) 23:15:54)
    土曜日になるまでの間、何も考えないように遅くまで仕事に集中した。


    でも時々浮かんでくる光景。


    あの後、二人はどこへ行ったのだろう・・。
    何時くらいに帰宅したんだろう・・。


    咲希が誰とどうしようと、私には関係ないことなのに。
    何だか、心の中がモヤモヤする。






    約束の土曜日。


    行こうか、やめておこうか、迷っていた。
    でも、断るにしても咲希の連絡先を知らないことに気付いた・・・。
    そんな訳で、言われた待ち合わせ場所まで行くことにした。


    咲希はデートだって言ってたけど、どこ行くんだろう。
    どんな服装で行けばいいのかな・・
    行き先だけでもきちんと聞いておけば良かった。


    とにかく悩んでいる時間はあまりなかった。
    カジュアル過ぎず、着飾り過ぎないように、シンプルなベージュのワンピースを選んだ。


    駅に向かうと、咲希はすでに待っていた。


    「ごめんね、待たせて」


    「行こっか。」


    「どこへ行くの?」


    「内緒」


    「えっ?・・・も〜秘密が多いんだから(笑)」


    「少し、歩ける?」


    「うん、大丈夫だよ」



    2、3分ほど歩いた所には駐車場があった。
    咲希は車で来ていたようだ。


    「あなたの車?」


    「うん、そうだけど?」


    「高校生って、免許取れたっけ?」


    「取れるよ。もう18歳だからね。」


    「そっか。そうだよね・・いい車だね。ご家族の?」


    「自分のだよ。先生を乗せる為に必死にバイトして買った。」


    「えっ?」


    「なんてね(笑)」


    「・・・・
    も〜 あなたは冗談ばっかりなんだから(笑)」


    「(笑)。
     じゃ、出発するよ」


    「うん」



    咲希の運転は上手だった。


    何だか行き先も告げられず、正直、ドキドキもしたし、子どものように少しワクワクした気分でもあった。

    でも、いいのかな・・生徒の車に乗せてもらってお出かけなんて。


    制服ではない咲希は、全く学生には見えなかった。
    ラフな感じに着崩した上下細身のスーツ、さりげなく首から下げてる長めのアクセサリーもクールで似合ってる。
    スタイルが良いし海外のモデルさんみたい。
    こんな綺麗でクールな子なら、そりゃあモテるよね・・・
    私なんかとデートしてていいのかな・・


    ふとこの間の女性のことがまた頭に浮かんだ。
    咲希の運転する車に、彼女も乗ったのかな・・


    気になる。。。
    でも、大人げないから、聞かない。


    しばらくの間、ドライブは続いた。






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■21642 / 11階層)  12
□投稿者/ zoo 一般♪(12回)-(2012/09/16(Sun) 23:59:04)
    2012/11/05(Mon) 09:28:01 編集(投稿者)

    1時間ほどして着いた場所は、都会から離れた高台にある建物だった。


    小さな美術館のようだ。
    こんな場所に美術館があるなんて知らなかった。
    咲希のデートスポットなのかな?


    「ここで写真展をしてるんだけどね。先生にも見せたかったからさ。」


    「そうなんだ。写真好きなの?」


    「素敵なものは何でも好きだよ。」


    「そうね。」



    私たちは建物の中へ入った。
    チケットは既に咲希が買ってくれていた。
    お金を払うと言ったのに、デートだからって拒否された。
    何だか、いつもはクールな咲希がかわいく思えてしまう。


    写真展は、空とか雲、海をメインにしたプロではないアマチュアの人ばかりを集めたものだった。
    私のような素人には、あまりプロとの区別がつかなかったんだけど。


    土曜日なのに人が少なくて静かな場所だった。
    写真をひとつずつ無言で見つめる咲希の横顔は、綺麗だった。


    一通りゆっくり写真展を見終わった。


    「先生には退屈だった?」


    「ううん、そんなことないよ。綺麗な写真を見て、癒された感じ。」


    「そっか。良かった。」


    「連れてきてくれて、ありがとうね」


    「うん
     あのさ、まだ時間いい?」


    「あっ、うん。大丈夫だよ。」


    「じゃ、コーヒー奢って(笑)」


    「うん、いいよ(笑)」


    クールなフリしている咲希に、コーヒーを奢ってと言われただけなのに、何だか甘えられているみたいで嬉しかった。
    見た目とのギャップがかわいくて、つい笑みが溢れてしまう。


    近くのカフェでコーヒーを飲んで、そこからまた車を走らせた。
    高台から少し走った場所に、夕日が綺麗に見える場所があった。
    車を少し止めて、外に出た。


    「こんな綺麗な場所なのに、人が少ないのね」


    「そうだね。たぶん、少し寂しい場所だからかな」


    「寂しい場所?」


    「なんとなく」


    「そうかもね」


    それから私たちは車に戻った。

    もう日が暮れて暗くなり始めていた。



    「先生、疲れた?」


    「ううん、私は大丈夫。あなたは運転してるから疲れたんじゃないの?」


    「先生といるのに、疲れたりしないよ」


    「も〜またそんなこと言う(笑)」


    「あのさ・・・」


    「ん?」


    「手、繋いでいい?」


    「えっ?!
     き、急に、どうしたの?!
     ・・・・・そういうのは誰にでもしちゃダメ。恋人としなさい、恋人と(笑)」


    「・・・・」


    「・・・・」



    少しの沈黙のあと、咲希の左手が私の右手を包んだ。
    離そうとしたら余計に強く繋いだ手を握られた。


    「嫌?」


    「・・・ううん」


    それ以上、何も言えなかった。
    すごくドキドキしていた。
    他の何かを考える余裕がなくなっていた。


    帰りの車の中は、手を繋いだまま二人とも黙っていた。


    家まで送ると言われたけど、近くの駅で降ろしてもらうことにした。

    「先生、お腹減ってるかもしれないけど、今日はここで帰すね。」


    「うん、ありがと」


    「あのさ・・・」


    「ん?」


    「先生の携帯、教えてほしいんだけど」


    「えっ、あ、うん・・」


    車から降りる直前に、お互いの携帯番号とメアドを交換した。


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▲[ 21642 ] / 返信無し
■21671 / 12階層)  Re[12]: 12
□投稿者/ miya 一般♪(1回)-(2012/11/02(Fri) 20:03:13)
    続きがすごく気になります。

    更新、首を長くして待ってます^^
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▲[ 21642 ] / ▼[ 21673 ]
■21672 / 12階層)  13
□投稿者/ zoo 一般♪(13回)-(2012/11/04(Sun) 00:38:41)
    土曜日のデートから数日、学校での咲希は普段通りのクールな素振りだった。


    メアドも交換したけど、メールが来ることは今のところない。


    もちろん私からもしない。


    咲希の車の中で、ひとり動揺していた私がバカみたい。
    手を繋ぐなんて、咲希にとっては何でもないことなんだろうなぁ・・・


    何だか歳の差を感じる。。。


    年甲斐もなくドキドキした自分がバカ見たいで情けない。




    それから数週間、何もなかったかのように日々は過ぎていった。


    極力、咲希を意識しないように平常心を装った。


    でも、正直なところ、咲希が気になって仕方なかった。


    相変わらず咲希は目立つようで、文化祭のこの時期、他校から来る生徒からは注目の的だった。


    咲希が特別、何かをする訳ではないのに、自然と女の子の視線を集めていた。


    そんな中、以前から咲希のことが好きだと言っていた2年生が、咲希に告白する場所へたまたま遭遇してしまった。


    咲希を好きだという2年生は、さすが告白するだけあって、綺麗で色気のある子だった。


    私がその場に遭遇してしまったのは、教員が交代で裏庭などを見回りしていた時のことだ。


    さすがに気まずい。。。


    気付かれないようにしたつもりが、しっかり咲希と目が合ってしまった(泣)。


    私ったらバカ!
    逃げるに逃げられず、校舎に隠れるようにして動けなかった。
    これじゃ立ち聞きみたい!(>_<)


    そんな私のことを知ってか知らずか、咲希は彼女に言った。


    「ありがとう。嬉しいよ。」


    私はそれだけ聞いて、その場から逃げ出した。
    自分には関係ない話のはずなのに、動揺していた。


    二人は付き合うのかな・・・?


    かわいい生徒同士の話だし、自分には関係ないはずなのに。


    動揺していた。


    咲希があの子に優しくしたり、手を繋いだり、抱き締めたり・・・?


    ヤダよ。。。


    これって嫉妬?



    私ったら何考えてるんだろ。

    咲希は少し大人びて落ち着いているけど、たくさんいる生徒の一人なんだから。

    若い子の恋愛は、応援してあげないとっ。





    それから数週間、受験を控えた生徒逹の進路指導や個別面談、講習や職員会議などハードな日々が続いた。

    おかげで、咲希のことを考えずに済み気が紛れた。





    そんなある日、私は久々の体調不良に陥っていた。
    ここ最近の秋の季節と、ハードなスケジュール続きで疲れてしまっていたのは事実。
    でも、生徒には気付かれないように注意していた。

    なのに・・・。











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▲[ 21672 ] / ▼[ 21674 ] ▼[ 21675 ]
■21673 / 13階層)  14
□投稿者/ zoo 一般♪(14回)-(2012/11/04(Sun) 00:43:33)
    一日の仕事が終わり、校門を出て駅に向かうところで携帯が鳴った。


    慌ててバッグから携帯を取りだそうとするけど、久々の体調不良でぼんやりしている為か、動作が鈍くなる。
    やっと取り出した携帯の画面には・・・


    咲希からの着信。


    どうしよう・・・!? 出るべき?!




    「はい、もしもし」


    「先生?」


    「うん、どうしたの?」


    「そのまま駅まで来て」


    「えっ?」


    「今日、予定ある?」


    「えっ?!何、急に!?」


    「そのまま、とりあえず駅のほう向いて」


    「駅にいるの?」


    「うん。
     会いたい」


    「・・・も〜突然どうしたの(笑)」


    「・・・会いたい」


    「・・・・」



    正直、年甲斐もなくドキドキした。


    歩きながら駅に近づいたところで、道路脇に止めた車から降りた咲希が、携帯片手にこっちを見ていた。


    咲希はいつも突然だから、戸惑ってしまう。


    とにかく、携帯の通話を切って咲希の所まで近づいた。


    咲希は私を見るなり助手席のドアを開けた。



    「乗って」


    「どうしたの一体!?」


    「この後、予定ある?」


    「えっ?!別にないけど・・・ほんとにどうしたの急に?!」


    「とりあえず乗って」



    咲希の真剣な顔に何も言えなくなり、とりあえず助手席に乗った。


    そして咲希は、何も言わず静かに車を発進させた。



    さっき携帯で話してる時に言われた「会いたい」という言葉に、私はバカみたいに動揺していた。


    「どこ、行くの?」


    「先生の家」


    「えっ!?!?」


    「・・・・」


    「あの、ん〜と、・・・何かあった??」


    「別に。出掛けるついでに、家まで送るだけ。」


    「・・・・」




    そう言って、咲希は私の手を繋いだ。


    「!?!?」


    「先生、手が熱いね。」


    「あっ、うん。ちょっと風邪引いたのかも・・・」


    「・・・・」


    咲希は指と指を絡めるように手を繋ぎ直した。

    「っっん・・・!」


    咲希の指が絡んでくる感触に、声が漏れてしまった。

    ダメ。。すごく恥ずかしい。(>_<)

    どうしよう。


    咲希はきっと私の今の気持ちをお見通しなんだろうけど、何も言わない。
    いつものクールなまま。
    私ひとりがドキドキしているの・・??



    何を話したら良いかわからないまま、車は私のマンションの前で止まった。






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▲[ 21673 ] / 返信無し
■21674 / 14階層)  Re[14]: 14
□投稿者/ miya 一般♪(2回)-(2012/11/04(Sun) 01:06:54)
    更新されてる〜\(^^)/

    最終更新から時間が経っていたので不安だったのですが、
    続きが読めて嬉しいです。
    想像を掻き立てられると言うのでしょうか・・
    次の更新、楽しみにしています^^
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▲[ 21673 ] / ▼[ 21676 ]
■21675 / 14階層)  15
□投稿者/ zoo 一般♪(15回)-(2012/11/04(Sun) 23:01:05)
    「送ってくれてありがとうね」


    車から降りようと、繋いでいた手を離そうとした。
    が、咲希にもう一度捕まえられてしまった。


    「先生の部屋にまで押し入ったりはしないけど。でも、玄関まで送るから。」

    手を繋いだまま真剣な顔で言われた。


    私が何かを言う間もなく、咲希は車から降りた。
    そして、後部席に乗せていた紙袋を抱えて助手席側まで来た。



    「ここ、少しの間だけ車置いてても大丈夫だよね?」

    「あっ、うん・・・
     っていうか、一体どうしたの??」



    「行こっか」

    「も〜聞いてるのに。。。」




    私のマンションだというのに、咲希は私を誘導するかのように、歩き出した。


    「何階?」


    「えっ?」


    「先生の部屋。何階?」


    「あっ、10階・・・」



    咲希はエレベーターのボタンを押した。
    ただ無言でいるのが気まずくて、咲希の持っていた紙袋が何か聞いてみた。

    咲希は軽く笑うだけで答えなかった。



    エレベーターが10階で開き、部屋の前に着いた。
    何がどうなっているのか頭が混乱していた。
    慌ててバッグから鍵を出して、部屋を開けた。



    ぼ〜っとする頭で色々考えていた。

    どうしたらいいの?
    部屋に入ってもらうべき?
    送ってもらったんだし、コーヒーくらい出すべき??

    でも・・・・




    「送ってくれてありがとう。あまり片付いてないけど、コーヒー淹れるから入って。」


    「今日は病人を送ってきただけ。もう帰るよ。」


    「えっ?病人って私のこと・・・?」


    「違うの?」


    「なんだ〜 心配して送ってくれたんだ〜 ごめんね、心配かけて。私なら元気だよ!ありがと(^O^)」


    「・・・・」




    玄関にいる二人に沈黙が流れた。

    咲希にじっと見つめられて、動揺を隠す為に目を逸らした。



    とにかく靴を脱いで部屋に入ろうとした。



    「えっと・・・コーヒー淹れるから。少しなら時間あるでしょ?」





    次の瞬間。





    咲希に抱き寄せられた。

    離れようとしたけど、熱のせいで力が入らなかった。



    「それって、抵抗してるつもり?」


    「・・・・」


    「先生って、無防備だね」


    「・・・そんなことないし」


    「スキだらけだよ」


    「あなたが強引なだけでしょ」


    「・・・・」


    「・・・・」





    「先生、靴履いてなかったら、小さいね」


    「も〜あなたが大きいんでしょ(>_<)」





    もう一度、咲希の腕から離れようとした。

    心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいドキドキしていた。





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▲[ 21675 ] / ▼[ 21677 ] ▼[ 21678 ]
■21676 / 15階層)  16
□投稿者/ zoo 一般♪(16回)-(2012/11/05(Mon) 23:48:48)
    咲希は私を抱き締める腕を緩める前に、静かに言った。


    「先生の体、相当熱いよ。明日はちょうど土曜日で学校も休みだし、ゆっくり休んで。」


    それだけ言うと、咲希は優しく私を離し、玄関のドアを開けて出ていった。


    私は、ただその場に呆然と力無く座り込んだ。


    気付くと、咲希が置いていった紙袋が目に入った。
    中を覗いてみると、冷えピタや風邪薬、それからポカリスエットや野菜ジュース、ヨーグルトなど、ドラッグストアで買ったと思われるものが色々入っていた。

    そして、紙切れに“これは先生用”と書かれていた。

    私の為に??

    いつもクールで冷たいフリするくせに。。。
    かわいいことするんだから・・・。


    嬉しい。
    素直にそう思った。


    でも、その後、さっきまで咲希に抱き締められていたことを思い出し、顔から火が出るくらい恥ずかしかった。



    咲希は何考えてるの?
    デートする相手は何人くらいいるの?
    この間、告白された相手とはどうなったの?
    特定の恋人はいるの?

    私は、からかわれているだけ??


    色々なことが次から次に浮かんだ。



    こんなこと考える以前に、私と咲希は教師と生徒。
    おまけに、何歳離れてるの。。。

    私ったら何考えてるんだろう。。。



    でも、あの全てを見透かすような視線と、色気のある低く落ち着いた声で囁かれると、ドキドキするんだもん。。。

    咲希のバカーーー(>_<)


    その日は何もする気力がなく、化粧だけ落とすと、貰った薬を飲んで冷えピタ貼って、倒れるように眠りについた。




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▲[ 21676 ] / 返信無し
■21677 / 16階層)  Re[16]: 16
□投稿者/ miya 一般♪(3回)-(2012/11/06(Tue) 01:04:19)
    連日の更新、ありがとうございます<(_ _)>

    いったいどんな結末を迎えるのでしょうか?
    妄想が・・・(#^^#)

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▲[ 21676 ] / ▼[ 21679 ]
■21678 / 16階層)  17
□投稿者/ zoo 一般♪(17回)-(2012/11/06(Tue) 10:05:35)

    翌朝、目が覚めると、どうやら熱は下がっているらしく気分は良くなっていた。
    咲希から貰った薬や冷えピタのおかげかな。

    ありがとうね。

    心の中で呟いた。




    翌日の日曜日、久々に彼と会うことになっていた。
    会うことを避けていた訳ではないけれど、仕事が忙しくて時間がなかった。
    大概の場合、時間がないというのはただの言い訳で、会う気分ではなかったというのが本音だと思う。

    結婚・・・踏ん切りがつかない。
    今の学校で教師を続けたいし、離れた地へ着いて行くことにも不安・・・。

    理由はそれだけ・・・??

    もしかして咲希のことが気になってたりするの・・??

    馬鹿げてるよね。
    自分の生徒でもある若い女の子が気になって仕方ないなんて。
    現実をしっかり理解しなきゃ。
    35歳の私と18歳の若者では、何ひとつ話題だって合わないかもしれない。

    10年後、20年後のことを考えると、刺激はないけど優しい彼と結婚したほうが幸せなのかな・・・。

    そんなことを考えながら、彼との待ち合わせ場所へ向かった。



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■21679 / 17階層)  18
□投稿者/ zoo 一般♪(18回)-(2012/11/06(Tue) 10:09:22)

    彼との待ち合わせ場所へ向かう途中、偶然にも咲希を見かけた。


    お友達なのか知り合いなのか、間柄はわからないけど、数人でお店から出てくるところだった。
    外国人の女性も2人混ざっていて、みんな咲希よりは年上に見えた。


    楽しそうな雰囲気で、中でも外国人の女性は咲希にベッタリくっついている。
    外国流のスキンシップ??
    咲希はいつも通りクールな顔で接している。


    日曜日で賑わう通りの人込みに紛れて、咲希がこちらに気付くことはなかった。

    無意識のうちに、気付かれなかったことにホッとしている自分がいた。
    別に彼と会うことを知られたくない訳でもないのに。




    彼は待ち合わせ場所に車を止めて待っていた。
    自然と私は彼の車に乗り込んだ。


    久々に会う彼は、いつも通り優しくて穏やかだった。
    近くのお店で遅めのランチをして、しばらくドライブをした。
    彼は、色々と近況報告のように最近のことを話してくれていた。


    だけど、私はどこか上の空だった。
    咲希とベッタリくっついていた女性の光景が頭から消えなかった。



    突然、彼が人気のない場所へ車を止めた。


    「りこさ、さっきから上の空だけど、何かあった?」


    「えっ?ううん・・・何もないよ」


    「元気ないしさ・・・」


    「あっ、えっと、ちょっと最近体調が良くなかったからかな??
     ・・・ごめんね」


    「そっか。まだ調子よくないなら、今日は早めに送るよ」


    「・・・うん。ごめんね」




    「あのさ・・・そろそろ返事、聞かせてもらえない?」


    「・・・・」


    「まだ時間かかりそう?」


    「・・・ごめんなさい。正直、はっきり決められないの。今の学校で教師を続けたいし、離れた地へ行くことにも不安っていうか・・・」


    苦しい言い訳に言葉に詰まってしまった。



    「・・・・他に好きな奴でも出来た?(笑)」


    冗談ぽくそう言った彼は、優しく微笑みながらも、切ない顔をしていた。

    はっきり決断出来ない自分が腹立たしかった。





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▲[ 21679 ] / ▼[ 21681 ] ▼[ 21682 ]
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□投稿者/ zoo 一般♪(19回)-(2012/11/06(Tue) 10:40:02)

    彼は私の体調を気遣って、一緒に夕食をすることもなく早めに家まで送ってくれた。


    「今日は早めに休んで。また電話するよ。」

    「うん・・・ありがと」


    私は車から降りた。
    彼は、どこまでも紳士的で優しかった。




    その夜、お昼間に見た光景がまた思い出された。

    咲希は落ち着いているから、年上の友達が多いのかな?
    でも、年上っていっても私よりはみんな年下だよね・・・。
    咲希にくっついていた外国人の女性、綺麗な人だったな・・・。
    彼女が咲希の恋人なのかな。。。

    気になるけど、咲希に会っても聞かない。
    大人だし、教師だし。
    絶対、聞かない!!


    明日からまた学校だし、今日も早めに眠ろう。



    そう思って、ふと考えた。

    そういえば、咲希にお礼言ってないままだったな・・・。
    学校では他の生徒もいる手前、言えないしな・・・。



    「こんばんは。
     お礼が遅くなりました。
     金曜日は迷惑をかけてごめんね。おかげで体調は回復しました。
     ありがとう!また明日、学校でね!」 


    迷った挙句、初めて自分からメールをした。



    しばらくして咲希から返信が来た。


    「体調が回復したなら良かった。
     あまり無理はしないように。
     See ya.          」



    も〜素っ気ないメールなんだから(笑)。


    でも、何だか満たされた気持ちになり、そのまま眠りについた。






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▲[ 21680 ] / 返信無し
■21681 / 19階層)  Re[19]: 19
□投稿者/ アリス 一般♪(1回)-(2012/11/06(Tue) 14:51:54)
    続き、楽しみにしています♪
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▲[ 21680 ] / ▼[ 21683 ] ▼[ 21684 ]
■21682 / 19階層)  20
□投稿者/ zoo 一般♪(21回)-(2012/11/06(Tue) 20:05:48)


    月曜日、また慌しい一週間は始まった。


    生徒の進路指導、面談、会議・・・ここ最近は時期的に忙しい。
    仕事が終わって学校を出たのが18時。


    満員電車に揺られながら、いつも通り帰宅。


    いつもと変わらない日々が続いた。




    そんなある日、出産を控えて産休に入る先生の代わりに、新しい先生がやってきた。
    私とは教える教科が違ったけど、若手の先生ということで私が色々面倒を見ることになった。


    彼女の名前は、前川さゆり。28歳。
    若手だけど、教育経験がないわけではない。
    しっかりした考え方をしていたし、生徒に対する態度も熱心だった。
    おまけに、どこか咲希と似たような雰囲気があるクールなカッコいい女性だった。
    外見的にもスラっと背が高く、スタイルが良くてお洒落だった。
    咲希と違うことがあるとしたら、年齢のせいか職業的な立場のせいか、誰に対しても物腰の柔らかい話し方をした。


    さゆりは、良く出来る優秀な教師なので、特別何か面倒を見るといったことはなかった。


    職員室での席も近かったせいで、さゆりとはすぐに打ち解けて仲良くなった。
    自宅も同じ方角ということで、時々帰りが同じような時間になる時は、途中まで一緒に帰ることもあった。


    そんなさゆりから、ある時、ご飯のお誘いがあった。


    ちょうと予定も入っていなかったし週末ということもあり、仕事帰りの夕方、軽く食事をすることになった。



    しっかりしているさゆりに任せっきりのまま、行ったこともなかった綺麗なお店へ入った。
    さゆりは慣れた様子でリードしてくれ、何だか私が年下のようで情けなくも思えた。
    落ち着いた雰囲気のお店で、おいしいお酒を呑み、久しぶりに少し酔っていた。
    何だか楽しかったし、気が抜けていた。



    お店を出ると、すっかり遅い時間になってしまっていた。


    駅から少し離れた場所にお店があった為、しばらく二人して静かに並んで歩いた。



    突然。


    さゆりが手を繋いできた。


    酔ってはいたものの、驚いた私はさゆりの顔を見上げた。



    「・・・!!???」


    「嫌ですか?」

    クールな顔で聞かれた。



    「あの、えっと・・・・」


    「江藤先生って、付き合ってる人いるんですか?」


    「えっ?! あっ、うん、一応・・・」


    「その人とはうまくいってますか?」


    「・・・・」


    「その人のこと、好き?」


    「・・・答えなきゃ・・ダメ??」


    「いえ、別に。」



    さゆりは冷静にそう言うと、私をリードするように手を繋いだまま歩いた。
    酔っているせいか、人通りが少ない道だったからなのか、手を繋がれるまま歩き続けた。


    駅に近づくにつれて、人通りが増えた為、自然と繋いでいた手をどちらからともなく離した。


    さゆりの雰囲気とか強引さ、誰かに似ている・・・。


    思い浮かんだのは、咲希のことだった。







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▲[ 21682 ] / 返信無し
■21683 / 20階層)  Re[20]: 20
□投稿者/ miya 一般♪(4回)-(2012/11/07(Wed) 18:29:09)
    更新、ありがとうございますm(__)m
    新展開・・ひと波乱ふた波乱ありそうですね。

    思いやりある積極性って好きです^^
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▲[ 21682 ] / ▼[ 21685 ]
■21684 / 20階層)  21
□投稿者/ zoo 一般♪(22回)-(2012/11/07(Wed) 21:13:33)

    週末の土曜日、ダラダラした朝を過ごしていた。
    昨日のお酒が少し残っている。

    その時、ベッドから起きれない私を起こすかのように、携帯が振動した。


    驚いたことに、咲希からのメールだった。


    「先生、おはよう。
     午後から時間ある?」



    いつも突然だから本当にドキッとしてしまう。

    どうしよう。
    なんて返信しよう。
    即返信するのもどうかと思うし・・・。

    ん〜・・・・でも・・・。


    「こんにちは。

     時間はあるけど、どうしたの?
     何かあった?  」


    しばらくして、今度は咲希から電話がかかってきた。


    「先生。今日、会える?」


    「えっ、あの・・突然どうしたの??」


    「会いたいだけだよ」


    「・・・も〜すぐまたそういうこと言うんだから(笑)」


    「本当のことを言っただけだよ」


    「・・・・」


    「会いたいんだけど。無理?」


    「も〜わかったから・・・(><)」


    「じゃ、13時頃迎えに行くから待ってて」


    「えっ?!迎えにきてくれるの?」


    「そうだけど。・・・迷惑??」


    「あっ、そういう意味じゃなくて。わざわざごめんね。」


    「じゃ、後で」


    「うん・・・」



    電話を切った後、時計に目をやると11時。
    え〜っと、え〜っと、そういえばどこ行くのか聞くの忘れた。。。
    どんな服装にしよう・・・。
    とにかくシャワー浴びて、お化粧して用意しなきゃ。
    も〜いつも突然なんだから。。。(><)


    少し早めに用意が出来たものの、咲希が来るまでの間、何だかソワソワして落ち着かなかった。


    そして、約束通りちょうど13時頃、咲希が車で迎えにきた。


    「先生、乗って」


    「あっ、うん」


    「何か食べた?」


    「ううん」


    「良かった。とりあえず何か食べに行こっか」


    「あっ、うん」





    「・・・・」


    「ところで、今日は急にどうしたの?」


    「ん?迷惑だった?」


    「そういうことじゃなくて・・・」


    「会いたかっただけだよ」


    「も〜・・・真面目に聞いてるのに。。。」




    ちょうど信号で止まったところで、咲希が真剣な顔でこっちを見た。


    「冗談で言ってるつもりはないけど」


    「・・・・」


    「先生に会いたかった。それだけだよ」



    目を逸らした私の心を引き止めるかのように、咲希は強引に手を繋いだ。


    どこまで本気で言ってるのか、わからなかった。
    会いたかったって、どういう意味で??
    つい聞いてしまいそうになったけど、大人げないから我慢した。
    きっと咲希なら、会いたいなんて誰に対しても、さらっと平気で言えるに違いない。


    昨日、さゆりに手を繋がれた時とは違う緊張。

    なぜだか、咲希に対しては、心臓の音が聞こえてしまいそうなくらいドキドキした。





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□投稿者/ zoo 一般♪(23回)-(2012/11/08(Thu) 22:25:02)

    軽くランチをした後、CD探しに付き合って欲しいと言われた。

    CD探し・・・??

    キョトンとしている私を見て、咲希はクスッと笑い、それ以上詳しくは言わなかった。


    しばらくすると、少し古びたビルが並ぶ怪しげな通りに出た。
    そんな怪しげなビルの地下駐車場に咲希は車を置いた。
    何だか、怖い。。。


    「こんな所にCD屋さんがあるの??」


    「うん、まあね」


    「ふ〜ん。。。何か、怪しげな場所だね・・・」


    「うん、まぁビルだけ見るとね。怖い?(笑)」


    「・・・なんとなく。。。」


    咲希は私の手を繋いで歩き出した。
    人気のない地下駐車場からエレベーターに乗り、7階で降りた。

    人がいるかもしれないのに、咲希は繋いだ手を離してくれなかった。



    「ねぇ、人に見られたら変に思われるわ。」


    「大丈夫だよ。」


    「でも・・・」






    「先生。」

    「ん?」



    エレベーターを降りたばかりの、死角になっている廊下の隅。

    咲希は、私の体を抱き寄せ、いきなりキスをした。


    「んっっっ・・・!!」


    突然のことに、強張った私の体が無意識に抵抗しようした。


    が、更に深いキスを繰り返され、力が入らなくなった私は、逆に咲希にしがみつく形になってしまった。。。


    「先生・・・」

    咲希に優しく抱き締められた。




    「・・・どうしてこんなことするの。。。」


    「・・・・」


    「私、結婚するかもしれない相手がいるんだよ。。。知ってるくせに・・・」


    「・・・知ってるよ。」


    「・・・・」


    「・・・・」


    「もう、こんなことしないでね」



    咲希の顔をまともに見れないまま、お店の方へ続く廊下を歩いて行こうとした。


    「先生、待って」


    後ろからきつく抱き締められた。



    「私のほうが、ずっと前から先生のこと想ってたよ」


    「・・・・」


    「先生のことは、高校に入学した時から知ってる。ずっと見てたから、いつ彼氏が出来たのかくらい知ってるよ。結婚するかもしれないことも、皆が噂してたから知ってる。」


    「・・・・」


    「ずっと片想いだよ。カッコ悪いね(苦笑)」


    「・・・・」


    「強引なことしてごめん。もうしないから。」




    どうしてこんなに切ないの?
    いつものクールな咲希が、今はただ強がって平気なフリして・・・
    弱々しくて見てられない。。。


    駅に車で迎えに来ていた綺麗な女性は誰?
    学校の裏で告白された後は、どうなったの?
    休日に寄り添っていた美人な外国人との関係は?


    いっぱい聞きたいことが心の中にあったのに、そんなことがどうでもよく思えた。


    咲希の真っ直ぐ過ぎる気持ちに、自分の心が今までにないほど揺れていた。



    「先生、今日限定でいいからさ、恋人になってよ(^O^) 先生が変な目で見られるような場所には連れていかないから、信じて」



    咲希は明るくそう言うと、私の手を繋いでお店へ向かった。

    でも、こちらを見ようとはしなかった。



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□投稿者/ zoo 一般♪(24回)-(2012/11/11(Sun) 13:07:40)
    そこには、私が想像していたような一般的なCD屋さんではなく、薄暗く照明を落としたカフェのような、雰囲気の素敵な空間だった。


    お店のオーナーがこだわりで海外から取り寄せなどするセレクトショップらしい。

    このセレクトショップのオーナーは、個性的な外国人女性だった。
    数少ないお客さんも、どうやら普段から外国人の割合が高いようだ。

    店員さんは咲希を知っているらしく、お店に入るとすぐに話しかけてきた。


    「久しぶりね」


    「そうですね」


    「ごゆっくり」


    「どうも」



    咲希が私の手を繋いだままでいることには全く無関心のようだ
    おまけに、他の数少ないお客さんも、他人のことなど興味がなさそうな雰囲気で、誰も私たちを気にしてない。

    お店には、明らかに日本のものではないレコードやCD、楽譜や楽器などが並んでいた。

    咲希は、CDを数枚と、いくつかの楽譜を買った。


    「ピアノ、弾けるの?」


    「うん、少しね」


    「へ〜 素敵だね」


    「・・・今度、良かったら聴きに来る?」


    「えっ?」


    「私のバイト先だよ」


    「あなたが演奏するの?」


    「そうだけど」


    「ほんとに??」


    「本当に(笑)」



    そう言って、咲希はバイト先のお店である名刺をくれた。
    全く知らないお店だった。


    「気が向いたら、おいでよ。バーだから、お酒は飲めるよ」


    「そんな場所で高校生のあなたが働いてるの?」


    「まあね」


    「そんなお酒を扱うお店で高校生のバイトは大丈夫なの?」


    「先生、さっきからさ、高校生高校生って、子ども扱いしすぎじゃない?確かに高校生だけどさ・・・」


    「あの、ごめんなさい。そういう意味で言ったわけじゃないの。ただ、心配っていうか・・・」


    「わかってるよ(笑)」


    「・・・・」


    「まぁ、気が向いたら、お酒飲みにおいでよ」


    「うん」



    そんな話をしながら、地下駐車場の車に戻った。


    車に乗ったところで、携帯のメールが振動した。
    咲希といるし、失礼だと思ってメールには気付かないフリをした。


    「先生、電話かメールじゃないの?」


    「あっ、うん。いいの」


    「別に気にしなくていいよ」


    「・・・うん。じゃ少しだけごめんね」


    「はい、どうぞ〜 車出すけど、いい?」


    「あっ、うん」



    咲希は黙って車を出した。


    メールが届いていた。


    「今はまだ仕事してるけど、
     18時には終わるから食事に行かないか?
     会いたい。              」


    彼からのメールだった。
    どうしよう。。。咲希と一緒にいるし。

    とりあえず、そのまま返信せずに携帯をバッグに入れた。



    しばらく窓の外をぼ〜っと見ていた私に、咲希もしばらく黙っていた。


    そして、再度バッグから携帯を取りだして返信した。


    「ごめんなさい。
     今日は友達と出掛けているの。
     また、電話します。      」  


    急いでそれだけ書いて返信した。








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□投稿者/ zoo 一般♪(25回)-(2012/11/11(Sun) 13:09:36)

    「今はどこに向かっているの?」


    「内緒」


    「内緒??」


    「もうすぐ着くから」


    「も〜いつも教えてくれないんだから。。。」





    「・・・先生、何かあった?」


    「ううん、何もないよ」


    「・・・・」


    「・・・・」


    「メール、彼氏?」


    「あっ、うん。ごめんね」


    「いいの?」


    「ん?何が?」


    「まだ一緒にいて」


    「うん、今日はあなたとお出掛け中よ」


    「・・・先生、無理しなくていいからね」


    「無理なんてしてないよ」


    「そう。ならいいけど」



    さっきのお店を出て車に乗ってから、咲希は手を繋いで来ない。


    なんでだろう・・・寂しい。
    何考えてるんだろう、私。。。



    そろそろ日が沈み始める頃。
    咲希が車を止めた場所は、休日で静まり返った工場地帯のはずれ。


    「あっ、あれって空港?」


    「そうだよ」


    「すごい!飛行機が見えるね」


    「うん。この時間は、飛行機の飛ぶ本数が多いから次々見れるよ」


    「すごいね〜 よくこんな場所知ってるね」

    「まぁ、ね」


    しばらくの間、ただぼ〜っと、夕暮れ時の空を見ていた。

    気が付くと、辺りはもうすっかり真っ暗だった。


    「先生、お腹減ってない?」


    「ん〜・・・ちょっとお腹減ったね」


    「じゃあ、軽くご飯行く時間ある?」


    「うん」


    「食べたいものある?」


    「ん〜・・・あなたに任せる」


    「はい、了解」



    咲希が連れて行ってくれたお店は、多国籍料理の雰囲気良いお店だった。
    高校生のくせに、色々なお店を知っていることに関心してしまう。
    デート慣れしてるのかな・・・

    料理もお酒も、全て咲希にリードしてもらってる。

    私のほうが年上なのに、不思議と咲希には甘えてしまいたくなる。

    咲希は、運転だし何より未成年だし〜と、冗談ぽく言ってお酒は飲まなかったが、きっと飲めるんだとは思う。


    咲希といると、何だか落ち着く。
    でも、どうしようもなくドキドキさせられることもある。


    はぁ〜・・・どうしよう。
    間違いなく、咲希のことが好き。。。恋愛対象として。
    でも、自分の立場や歳の差を考えると、簡単に好きだなんて言えない。。。。


    お店を出る頃には、心地よい酔い具合で気分が良かった。


    でもやっぱり、お昼間のCD屋さんを出てから、明らかに咲希から距離を置かれてる・・・

    いつも通り優しいことに変わりはないけど。
    お昼間のことを思い出した。



    彼氏との結婚なんて言ってしまって、きっと傷つけたよね。。。

    だって急にキスしたりするんだもん。。。(>_<)


    でも・・・嫌じゃなかった。
    あの場所が二人きりの室内だったら、抵抗出来る自信がなかったかもしれない。


    こんなこと考えるなんて、教師失格。


    生徒の前でお酒まで飲んで、こんなことしてていいのかな・・・
    咲希といると、自分が教師であることとか、咲希が生徒であることを忘れそうになってしまう。

    どうしよう・・・


    色々考えていると、咲希の携帯が鳴った。







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□投稿者/ zoo 一般♪(26回)-(2012/11/11(Sun) 13:19:55)
    咲希は私に気を遣ってか、電話に出ないまま切ろうとした。


    「私に気を遣わないで、出て。ねっ?」


    咲希はじっと私を見つめると、切ろうとしていた電話に出た。

    おそらく内容からは、明日?誰かと会う約束。
    デート・・・なのかな??

    はぁ〜・・・どうしよう嫉妬したりして。
    自分から咲希を突き放したくせに。

    咲希は用件だけ言うと、すぐに電話を切った。


    「先生、ごめんね」


    「ううん・・・」


    そうして、お店から少し離れた場所に止めていた咲希の車の所に着いた。



    少し酔っているせいかな。
    家まで送ってもらう車の中で、自分から咲希の手に触れて指を絡めた。
    咲希に軽蔑されるかもって思いながらも、不安で仕方なかった。


    咲希は冷静だった。


    「先生、どうしたの?」


    「今日の私はあなたの恋人なんでしょ?だから・・・」


    「なんだ、そういうことか(笑)」



    はぁ〜・・・バカ。
    こんなこと言ったら、また咲希を傷つけるだけなのに。

    咲希と同じ立場なら、素直に言えたのかな・・・

    咲希は大人びてる。
    いつも私を尊重した接し方をしてくれる。

    きっと、心の中は読まれちゃってるのかもな・・・




    私のマンションに着くまで、咲希は黙って手を繋いでくれていた。


    「今日はありがとうね」


    そう言って繋いだ手を離そうとした。



    「先生・・・」


    「ん?」


    「まだ日付け変わってないし、先生は私の恋人だよね?」


    「えっ・・・?あっ、うん。そうね・・」



    狭い車の中で抱き寄せられた。



    「強引なことはしないって言ったけど、これも強引?」


    「・・・・」


    ただ首を横に振った。

    そして、左手を捕まえられた。

    咲希はこちらをじっと見つめたまま、力の抜けた私の左手首にキスをした。


    「んっ・・・//////」


    恥ずかしくて目を逸らした。



    「どういう意味か知ってる?」


    「えっ?何が?」



    今度は同じ場所を少し強く吸われた。


    「っっあっ・・・!」


    手首にキスされたことなんてない。
    心臓がドキドキ止まらない。

    手首にキスされたくらいで感じてしまったことがバレているかも。。。(>_<)

    咲希のバカ。。。


    やっと咲希が離してくれた。


    「えっと、、、それじゃ、帰るね!」


    「うん」


    「帰り、気を付けてね」


    「うん」



    逃げるように車を降りた。

    ドキドキが止まらなかった。


    部屋に入ると、魂が抜けたようにソファに座り込んだ。
    ふと手首を見ると、薄いキスマークが残っていた。

    何だか色々なことがあった一日だった。



    お風呂から上がって、そろそろ寝ようかと思った時、咲希が言ってたことを思い出した。


    どういう意味か知ってる?って、何のこと?

    キスされたこと?
    それともキスされた場所の意味??

    ん〜・・・

    なんとなく携帯で検索してみた。

    “ 手首にキス ”



    えっ?!?!

    検索結果を見た私は、激しく動揺した。







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▲[ 21688 ] / 返信無し
■21689 / 25階層)  Re[25]: 25
□投稿者/ miya 一般♪(5回)-(2012/11/12(Mon) 01:20:04)
    更新、ありがとうございます<(_ _)>

    ”手首にキス”
    思わずネットで調べてしまいました
    情熱的(#^^#)

[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21688 ] / ▼[ 21692 ]
■21690 / 25階層)  26
□投稿者/ zoo 一般♪(27回)-(2012/11/15(Thu) 00:01:17)

    翌日、夕方から彼と会うことになった。
    今のままじゃ結婚なんて考えられない。。
    きちんと彼には伝えよう。

    家を出るまでの時間、昨日のことを思い出していた。



    “ 欲情 ”


    気になって携帯で検索した結果。
    手首にキスするのは、欲情を示す合図。


    咲希は何食わぬ平気な顔で私をドキドキさせる。
    でも、自分から求めて手を繋いだりして、私のほうが欲情してたのかも・・・

    とにかく、昨日限定の恋人だったから、あんな大胆なことが出来たのかも。

    なんて・・・咲希の気持ちを知ってるのに、私ってひどい。

    それでも、自分の立場を考えると、そうやって気持ちにブレーキをかけるしかない。
    咲希なら若いし魅力的だから、すぐにまた好きな人くらい出来るだろう。



    夕方、気の進まないまま彼と会った。
    彼が予約してくれていた個室のお店で、夕食をした。
    久しぶりに会って、嬉しそうな顔をする彼に、なかなか言い出せないでいた。



    「りこ、今日はこの後もう少し一緒にいられる?」


    「あっ、うん・・・でも、明日は朝早いから早めに帰るね」


    「りこに触れたい」


    「・・・うん」


    「抱きたい」


    「・・・・」



    真剣な顔で見つめられて、言葉がすぐに出てこなかった。
    そんなに愛しそうにされると、どうしたらいいのかわからなくなる。



    でも、
    心は変わらなかった。

    気持ちを落ち着かせてから、彼に打ち明けた。
    仕事を辞めるなんて考えられないこと、だから結婚は出来ないこと、それから・・・好きな人がいること。

    彼は黙って聞いていた。
    しばらく沈黙の後・・・



    「・・・そいつに、もう抱かれた?」


    「あの、そういう関係じゃないの・・・ただ、私が好きなだけだから。」





    「・・・待つよ。」

    「えっ?」


    「今はめちゃくちゃ腹立ってるけどね。でも、りこを他の奴に渡したくない。」


    「・・・・」


    「そんな困った顔するなって。俺が勝手に待つだけだから(^_^)」


    「だって・・・」


    「勝手に待つくらい、自由だろ?」


    「でも。。。(>_<)」


    「何かあった時は頼ればいいからさ」



    彼はほんとお人好し過ぎる。
    幸せになって欲しいのに。
    全部、私のせいだ・・・。


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■21692 / 26階層)  27
□投稿者/ zoo 一般♪(29回)-(2012/11/15(Thu) 00:13:04)
    週末の疲れが取れないまま、新しい一週間が始まった。
    いつもと変わらない忙しい学校生活。
    受験を控えている3年生のラストスパート。
    生徒指導や学校行事で、時間はあっという間に過ぎていった。


    咲希はあの日以来、冷たい。
    というより、おそらく普段通りなんだと思う。
    私がバカみたいに咲希を意識しているだけなんだと思う。

    あれから必要最低限の会話以外は交わしてない。
    これで元通りになったんだから、良かったんだよね・・・

    咲希のことを考えないようにと、仕事を増やして遅くまで頑張った。



    咲希と最後のデートをしてから、1ヶ月近く過ぎた。
    連日の残業続きに疲れていた。

    そんな週末、一緒に仕事で残っていた前川さゆりからご飯のお誘いがあった。


    「江藤先生、最近残業続きですね。明日は休みだし、この後、ご飯でも行きませんか?」


    「あっ、うん。ありがとう。前川先生は金曜日なのに予定ないの?(笑)」


    「ひどいですね〜江藤先生とご飯行けるかと今、期待してるのに(笑)」


    「・・(笑)。わかりました。じゃ、少し終わるまで待ってね。」


    「はい、ゆっくりどうぞ(^_^)」



    そうしてさゆりと一緒に学校を出て食事に行った。
    お互いお酒も好きだし、同じ教師同士で共通の話題も多く、楽しい時間だった。


    ふと、財布に入れていた名刺に目がいった。
    行ってみたいけど、一人で行く勇気はない・・・。
    それに、行ったところで咲希に会うのも気まずいような・・・。
    普段学校で顔見れてるしな・・・


    でも、会いたい。。。

    ピアノを弾く咲希を見てみたい。


    迷いに迷って、さゆりに言ってみた。
    正直に、生徒がバイトしているお店なんだと。
    でも行ったことがないし、一人で行きづらいことを素直に伝えた。

    さゆりは何の迷いもなく、即OKしてくれた。


    着いたお店は、カウンター越しのバーにBOX席、テーブル席、薄暗い照明の落ち着いた場所だった。
    お店の奥には、グランドピアノが置かれ、演奏スペースになっていた。
    店内にいるお客は、年齢層が少し高めの大人が目立った。


    私とさゆりは、あまり目立たないBOX席を選んで座った。
    適当にお酒を注文して、店内を見回した。


    2杯目のお酒を口にしようとした時、咲希が演奏スペースに現れた。


    私の鼓動が早くなった。


    一緒に演奏すると思われる男性が2名、ドラムとベースの位置についた。
    咲希は全く客席を見ていない。

    そして自然と演奏は始まった。
    ピアノジャズらしい。


    上手・・・


    ピアノを弾く咲希の綺麗な指。
    繊細な音。

    さゆりが傍にいることも忘れて、思わず見とれてしまいそうになる。

    何曲か演奏しつつ、近くに座っているお客さんと話したり、リクエストに答えたり、何だか咲希が大人に見えた。


    演奏が一旦終わり、咲希が客席に目を向けた。
    手を振るのもバカみたいだし・・・と思いつつ、目が合った時に軽く微笑んだ。

    咲希は、気付かなかったかのように、すぐに違う場所へ視線を逸らした。
    そして、咲希の傍に歩み寄って馴れ馴れしく話す女性がいた。

    あっ、たぶん、前に駅で咲希を車に乗せた人だ・・・
    咲希に触ってる。



    ズキッと胸が痛んだ。

    来なければ良かった。。






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■21693 / 27階層)  28
□投稿者/ zoo 一般♪(30回)-(2012/11/15(Thu) 00:26:00)
    「あの子ですね、江藤先生のクラスの子」


    「あっ、うん」


    「彼女はどこかミステリアスというか、目立ちますよね」


    「うん、そうね」


    「江藤先生、彼女とそんなに親しかったんですか?意外ですね〜」


    「一応、担任だから・・・」




    さゆりの話すことがほとんど耳に入ってこなかった。
    こんな場所まで来たりして、私ったらバカみたい(>_<)。
    すぐにお店を出ようかと思ったけど、何だか少し酔っていた。
    おまけに私に対する咲希の態度が冷たくて、辛かった。
    すぐに立ち上がる気力もなかった。


    「もう1杯だけ飲んでいい?」


    「私は構いませんけど・・・大丈夫ですか?」


    「・・・うん。あと1杯だけ飲んだらすぐ帰る」


    「わかりました」



    さゆりは近くを通ったウェイターに注文してくれた。
    1軒目から数えると、今日は結構な量を飲んでいるかもしれない。

    咲希はお客さんのリクエストを聞き、また演奏を始めた。


    薄暗い店内は、みんなそれぞれ周りなんて見ていない。
    BOX席なんて特に見えずらい空間になっている。


    隣りに座っているさゆりが、そっと手を繋いできた。
    咲希にされている訳じゃないのに、さゆりのクールな雰囲気が咲希と重なってしまう。


    「前川先生は、付き合ってる人とかいないの?」


    「いないですよ」


    「モテそうなのに」


    「江藤先生なら、恋人にしてみたいけど」


    「も〜モテる人はみんな口がうまいんだから(笑)」


    「本気で言ってます」



    耳元で囁かれた。

    さゆりは、繋いでいた指をゆっくり絡めるように触れた。


    「・・・あのっ、前川先生・・・誰かに見られたら困るわ。。(>_<)」


    「誰かって?」


    「・・・」


    「そろそろ出ましょうか」


    「あっ、うん」



    演奏が終わったところで、私たちは席を後にした。
    咲希とは全く話せなかった。
    私は何を期待してたんだろう。
    おまけに見たくもない光景まで見てしまって。

    酔ってるせいで、少し足がふらつく。
    私の体を自然と支えるように、さゆりが背中に手を回した。

    清算を終えてお店を出ようとしたところで、咲希に呼び止められた。



    「こんばんは。お店に来てくれたんですね。ありがとうございます」


    咲希は礼儀正しく前川先生に言った。
    そして私のほうを見て、言った。


    「もう仕事終わるから少し待ってて。車で送るよ」


    「ううん、前川先生が一緒だし電車で帰れるから」


    「送るから。少しだけ待ってて」


    有無を言わせず、咲希は一旦その場から消えた。
    どうしよう・・・さゆりとそのまま帰るほうがいいよね。

    結局、さゆりは気を遣って、自分は電車で帰ると言って咲希の車には乗らなかった。




    久しぶりに咲希の車で二人きり。
    何を話したらいいのかわからなかった。


    「なんでそんなに酔うまで飲んでるの?」


    冷たい言い方。


    「ごめんなさい・・・酔っぱらって生徒に送ってもらうなんて教師失格ね」


    「あのさ、先生の彼氏って、先生には合わないんじゃない」


    「何、急に・・・」


    「先生みたいな無防備でスキだらけの人を放ったらかしにしてるんだからね」


    「・・・私、頼りないよね」


    「前川先生だっけ?あの人に手握られたりして、感じた?」


    「何、言ってるの・・・」


    「あの人も今日限定の恋人か何か?」



    こんなに機嫌が悪い咲希は初めてだった。
    ショックで何も言えなかった。

    会いたかっただけなのに。

    バカ。。。



    マンションの前に着いた。


    「送ってくれて、ありがとね」


    「・・・・」


    「気をつけて帰ってね」


    それだけ言って車を降りた。
    咲希はまだ機嫌が悪い。

    ふらつく足取りでマンションのロビーまで歩いた。
    今にも涙がこぼれてしまいそうだった。

    気付くと、咲希が車を止めてエレベーターのところまで追いかけてきた。
    やだ・・・泣きそうな顔を見られたくない。(>_<)

    咲希の顔を見ないように背を向けた。

    咲希は私の手を繋いで開いたエレベーターに乗った。


    「部屋まで送るだけだから」


    咲希はそう言った。

    バッグから鍵を出して部屋を開けた。
    玄関を入ったところで、咲希は謝った。


    「ごめん、ひどいこと言って」


    「ううん、私が頼りないだけだから」


    咲希は私の顔を手で触れて、親指で私の唇をそっとなぞった。

    それだけだった。


    「・・・おやすみ」


    「・・・うん」


    出ていこうと背を向けた咲希を引き止めるかのように、私は後ろから咲希の手に触れた。


    「・・・・気をつけてね」


    声が震えてしまった。

    咲希は私のほうを振り返り、泣きそうな顔で目を合わせない私を抱き寄せた。









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▲[ 21693 ] / 返信無し
■21694 / 28階層)  Re[28]: 28
□投稿者/ miya 一般♪(6回)-(2012/11/18(Sun) 01:40:51)
    更新、ありがとうございます^^

    なかなか揺れ動きますね。
    今は、みんな切ない・・

    更新、心待ちにしています。

[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21693 ] / ▼[ 21696 ]
■21695 / 28階層)  29
□投稿者/ zoo 一般♪(31回)-(2012/11/20(Tue) 23:50:29)


    「先生・・・」

    強く抱き締められる。


    「先生・・・あんまり無防備にならないで」


    「・・・・」


    咲希に抱き締められたまま、泣いているのを知られないように、うんうん、と黙って頷いた。

    そんな私の顔を見るように、咲希は抱き締めていた腕をゆるめた。
    私は慌てて顔を見られないよう、クルッと咲希に背を向けた。


    「遅くまでごめんね。気をつけて帰っ・・・!」

    言い終わらないうちに、後ろから咲希に抱き締められた。



    「先生・・・諦めようって思ってるのに、好きで仕方ないよ・・・」


    「・・・・」


    「子どもだって思われるかもしれないけど・・・先生のこと、自分のものにしたい」


    「・・・・」


    「嫉妬で頭が変になりそうだよ・・・」


    私を抱き締める咲希の腕が震えていた。


    全て素直に言ってしまいたかった。

    咲希を好きになってしまったこと、会いたくてお店まで行ったこと、彼には結婚出来ないと伝えたこと、その他にも色々話したいことはあった。

    でも、教師であることや歳の差、性別、色々考えると、ダメだと自分に言い聞かせるしかなかった。

    苦しい。


    「先生・・・」


    「・・・・」


    「先生の心が欲しいよ・・・」



    咲希が愛しくて仕方ない。
    もう嘘ばかりつけない・・・

    私は咲希に向き直って言った。


    「もう・・・心はだいぶ前からあなたに惹かれてるわ」


    「・・・・」


    咲希はじっと私を見つめた。


    「でもね、私は頼りないけど一応教師だから・・・一人の生徒を特別に考えちゃダメなの」


    「・・・・」


    「それに歳だって違いすぎるわ。あなたは若くて魅力的だし、それに・・」


    咲希はまた私を強く、今度は振りほどけないほどに抱き締めた。


    「・・・苦しいよ」


    「先生、部屋入っていい?」


    「えっっ!?」


    「お邪魔します」


    「えっ!!ちょっと待って!!」


    咲希は靴を脱いでさっさと部屋に入って行った。
    私は一瞬のことに、我に返ったような焦りぶりだった。
    慌てて靴を脱いで、咲希のいる部屋へ行った。



    「あの、えっと・・・、部屋片付けてないのに(>_<)」


    「いい部屋だね」


    咲希は部屋を見回して言った。


    「散らかってるのに・・・も〜ヤダ(>_<)」


    っていうか、どうしたらいいの!!
    二人っきりになると危険だってわかってるのに。
    心臓が壊れそうなくらいドキドキしていた。
    咲希は何考えてるの?!
    強引なことはしないって言ったのに。。。
    頭がパニック。お酒の酔いなんて一気に吹っ飛んでしまった。








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▲[ 21695 ] / ▼[ 21697 ] ▼[ 21699 ]
■21696 / 29階層)  30
□投稿者/ zoo 一般♪(32回)-(2012/11/20(Tue) 23:57:44)
    「・・・えっと、とりあえずコーヒーでも淹れるねっっ!」


    とにかく咲希の傍から離れようとした。
    が、簡単に咲希の腕に捕まってしまった。

    今度は、切なくなるくらい、優しく抱き寄せられた。


    「コーヒー淹れるから・・・」


    「いらない」


    「・・・・」


    「先生・・・やっぱり靴脱ぐと小さいね(笑)」


    「も〜!ひどい!」






    「・・・キスしていい?」


    「ダメっ」


    「絶対?」


    「・・・・とにかく、ちょっと・・っっ!」


    咲希はそっとキスをした。


    「・・・ダメってば(>_<)」


    「先生、黙って」


    咲希はまたキスをした。


    「んっっ!・・・」

    歯列をなぞるようにゆっくり、かと思えば舌を絡めて息が出来ないような深いキス。


    咲希の手が腰から背中を撫でるように動いた。

    「あっ・・・ダメっ」


    言葉とは裏腹に体が反応して、咲希にしがみついた。

    そして、咲希は私の耳から首筋にかけて、唇が触れるか触れないくらいの焦れったいキスをした。
    私の体の感触を味わうように、首から鎖骨、次は・・・腰、背中・・・咲希の綺麗な細い指で順番に愛撫されていく。


    もうその場に崩れ落ちるかのように、力が入らなかった。

    咲希はそんな私の体を支えて、耳元で言った。


    「ベッド行く?」


    「ダメ。これ以上はダメ(>_<)」


    「・・・・」


    「お願いだから・・・」


    「先生のこと、抱きたい」


    「ダメ!・・・あなたにはもっと若くてふさわしい子が・・・」


    「もう黙って」


    「本当にダメっ(>_<)」


    「我慢出来ない」


    「お願い(>_<)・・・卒業まで待って」





    「卒業したら、抱いていいの?」


    「・・・・(>_<)」


    つい・・・勢いあまって、卒業したらOKのような言い方をしてしまった。
    もうどうしたらいいのかわからない。。。


    「あのね・・・あなたのことは、好きよ・・・」


    「恋愛対象として?」


    「・・・・きっと」


    「じゃあ、」


    「えっとね、傍にいるだけじゃ・・・ダメ?」


    「・・・」


    「心が繋がってるだけじゃ、ダメかな・・・」





    「先生がしたくないなら我慢するよ」


    「そういう意味じゃなくて・・・」


    「もういいよ」


    「怒らないでよ。。。」


    「別に怒ってないよ」


    「怒ってるくせに・・・(>_<)」


    「あのさ、先生の気持ちが決まるまで待つよ。でも、卒業までは待てないかもしれない。だから、あんまり焦らさないで。」


    「そんなに怒らないでよ。。。」


    「先生、あのさ・・・もっと私のことをちゃんと一人の人間として見てよ。立場の違いとか歳の差とかさ、そんなことばっかり言われると、子ども扱いされてるみたいで悔しいよ」



    咲希は吐き捨てるように一気にそう言うと、目も合わせることなく部屋から出ていった。








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▲[ 21696 ] / 返信無し
■21697 / 30階層)  Re[30]: 30
□投稿者/ miya 一般♪(7回)-(2012/11/26(Mon) 19:27:43)
    更新、ありがとうございます^^

    切なさ全開になりつつありますね。
    続きを楽しみにしています。
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▲[ 21696 ] / ▼[ 21700 ]
■21699 / 30階層)  31
□投稿者/ zoo 一般♪(33回)-(2012/12/04(Tue) 22:46:27)
    あれから数週間、咲希とは学校での必要最低限程度しか話さなかった。

    そろそろ2学期も終わりに近づき、冬休み前のテスト期間になった。

    街はクリスマスの雰囲気でいっぱいの時期だ。
    恋人同士がアクセサリーを一緒に見ていたり、相手を思い浮かべながらプレゼント選びをしていたり。
    なんとなく、街歩く人がみんな幸せそうに見えた。

    ひとり、デパートをふらついていると、ふと目に止まったものがあった。

    レザーのシンプルな手袋。
    一目惚れするくらい、心が惹かれた。
    咲希に似合いそう・・・
    無意識に咲希のことを考えていた。

    クリスマスプレゼントかぁ。。。

    でも、
    渡すタイミングもないし・・・
    第一、恋人でもないし・・・ね。


    「プレゼントですか?(^_^)」


    店員さんに笑顔で聞かれ、咄嗟に否定した。
    見ず知らずの人に、バカ正直に答える必要もないのに。


    結局、買わずにその場を離れた。



    期末テストが終わり、慌ただしい12月も半ばを過ぎ、終業式。
    生徒は皆、嬉しそうにクリスマスの予定や冬休みの話をしながら帰宅した。


    学期終わりは毎回、教師にとっては忙しい時期。
    帰宅時間も遅くなる。


    今年はクリスマスの時期が3連休かぁ。。

    別にクリスマスなんて気にする歳でもないんだけど・・・
    でも、咲希が誰かと過ごしたりするのかな・・・なんて、気になって仕方ない。


    素直に会いたいって、言える立場なら良かったのにな・・・。





    クリスマスイブの日曜日。

    特別な予定もない私は、朝からゆったりした時間を過ごし、美容室へ行って気分転換した。
    外を歩くと、寒い中を寄り添って歩くカップルが目につき、なんだか寂しくなった。
    美容室だけ行くと、さっさと家に帰ってきた。
    一人でワインをあけ、観ないで放置していたフランス映画のDVDをつけた。
    ただ、ぼ〜っと観ていた。


    12月25日、クラブ活動の生徒以外はいない学校へ、教師は普段通り出勤した。
    仕事納めの忙しい時期。
    結局、学校を出たのは、夜18時を過ぎていた。
    明日もう一日頑張れば、今年の仕事は終わり。
    あと一息。


    学校を出る直前、さゆりに声をかけられた。


    「江藤先生、今日は彼氏とデートですか?」


    「・・・ううん」


    「あっ、もしかしてもうクリスマスデートは済んだ後でしたか?(^_^)」


    「・・・(笑)」


    適当に笑ってごまかした。
    ご飯のお誘いを頂いたけど、体調があまりよくないからと、丁重に断った。
    別に体調が悪い訳じゃない。ただ、気分が乗らなかった。

    とにかく、早く家に帰って一人になりたかった。


    家に着くと、昨日と同じようにワインをあけ、大して興味もないフランス映画をつけた。




    夜22時過ぎ、電話が鳴った。


    “ 着信  咲希 ”


    胸の鼓動が早くなった。
    出ようかどうか、迷った。
    しばらく携帯は鳴り続けた。




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▲[ 21699 ] / ▼[ 21701 ] ▼[ 21702 ]
■21700 / 31階層)  32
□投稿者/ zoo 一般♪(34回)-(2012/12/04(Tue) 22:50:22)
    「・・・もしもし」


    「先生?」


    「うん」


    「遅くにごめん。・・・今、何してる?」


    「別に何もしてないよ」


    「今、ひとり?」


    「うん」


    「行っていい?」


    「・・・・」


    「会いたい」


    「うん・・・でも、もう今日は遅いし、」


    「少しだけでいいから・・・時間貰えない?」


    「・・・わかった」


    「じゃ、すぐ行く」



    咲希はそれだけ言うと、すぐに電話を切った。


    電話が切れた後、私は我に返ったように慌てて着替えをして、軽く化粧をした。
    咲希が来るまでの間、何をしていいのかわからず、落ち着かなかった。


    少しして、部屋のチャイムが鳴った。
    玄関のドアを開けると、咲希が立っていた。


    「遅くにごめんね」


    「ううん・・・寒かったでしょ?入って。」



    うまく咲希の顔を見れなかった。


    「お腹減ってない?」


    「大丈夫」


    「じゃあ、コーヒーでいい?」


    「うん」


    この間のことがあったせいか、咲希が部屋にいるだけでドキドキしてしまって落ち着かない。
    そんな私とは対照的に、咲希はいつもと変わらずクールで冷静。
    私が淹れたコーヒーを静かに飲んだ。


    「・・・・」


    「・・・・」


    「間に合って良かった」


    「ん?」


    「手、出して」


    「えっ?」



    咲希は、戸惑っている私の手を掴んで、手首にブレスレットをつけた。


    「昨日と今日は、バイト先が忙しくてさ」


    「・・・・」


    「でも、日付が変わる前に間に合って良かった」


    「・・・・これ、私に?」


    「うん」


    「・・・・」


    「ごめん・・・気に入らない?」



    首を振った。
    何て言ったらいいのかわからなかった。


    「こんなの、貰う資格ないよ・・・」


    「・・・彼氏の前でつけなかったら問題ないでしょ」


    「違うの、そういう意味じゃなくて・・・」


    「ん?」


    「えっと・・・彼とは別れたの」


    「え?」


    「・・・好きな人がいるから、結婚出来ないって伝えたの」


    「・・・・」


    「会えると思ってなかったから、プレゼント、何も用意出来ていないの。だから、私だけこんなの貰ったら・・・っっ!!」


    咲希に抱き締められた。


    「・・・先生の好きな人って?」


    「・・・・」


    なかなか素直に言えなくて、咲希を抱き締め返した。


    「先生、勘違いして・・・いいの?」


    「勘違い・・・なんかじゃないよ」


    「私のものだって、思っていいの?」


    「・・・うん」


    咲希に長い間、抱き締められていた。





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▲[ 21700 ] / 返信無し
■21701 / 32階層)  Re[32]: 32
□投稿者/ miya 一般♪(8回)-(2012/12/08(Sat) 11:42:34)
    更新ありがとうございます^^

    どきどきしながら読んでいます。
    歳に差って、色々大変だろうなって思います。
    特に、年上の方は躊躇しがち・・・なのかな?(^^ゞ

    続きを楽しみにしています。
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▲[ 21700 ] / ▼[ 21703 ]
■21702 / 32階層)  33
□投稿者/ zoo 一般♪(35回)-(2012/12/09(Sun) 13:52:53)


    その後、咲希と落ち着いて少し話した。

    お互いのこと、これからのこと。
    正直に感じていることを正直に、咲希に話した。

    歳の差は関係ないって、簡単に言う人はいるけど・・・。
    いつか、同じくらいの若い子のほうが魅力的だと感じて別れが来るんじゃないか、
    いつか、歳の差が二人の心に距離を作ってしまうのではないか、
    そんなことはない!大丈夫!って自分に言い聞かせても、不安で仕方ないこと。
    咲希の将来を私が遮ってしまっているんじゃないか、
    女の子と付き合ったことがない私にとって、周囲の人間にも大っぴらに言えない関係・・・
    色々な場面で寂しさや苦しさが付きまとうのではないかと、自信がなくなること。


    咲希は黙って聞いていた。
    そして、真剣に私の目を見て言った。

    歳の差が心の距離を作るんじゃないと。
    どんなカップルにも、その二人にしかわからないことがある。
    外見だけで判断すると、どう見ても釣り合わないカップルなんて世の中にはたくさん存在する。
    でも、なぜ幸せそうなのだろう?
    それは、その愛し合っている二人にしかわからない何かがあるのだろう。
    その何か・・・を、他人に説明する必要など更々ない。



    「先生は、私に想われていると感じる?」


    「・・・うん」


    「そう感じる気持ちが真実なんだよ」



    自分がどう感じるか、感じている心を素直に信じることが大切なんだと、咲希は言った。

    お互いの不安は、その都度二人で解決していこうと、約束した。
    絶対に一人で悩まないこと、悲しいとか寂しいという気持ちも隠さず正直に伝え合おうと。
    どちらか片方の機嫌が悪かったり、包容力がない態度しか出来ない時は、
    もう片方が大人な対応が出来るように努力しようと。

    簡単にいかないことはたくさんあるかもしれないけれど、
    そんなことは、男女のカップルでも同世代同士のカップルでも、有り得ることに違いない。

    今、必要とし合っている二人の気持ちを大切にしようと、約束した。



    「先生、明日は仕事だよね?」


    「うん。明日が仕事納めなんだけどね」


    「仕事終わったら、デートしない?」


    「うん。夕方以降になるけど、いい?」


    「終わったら電話して。迎えに行くから」


    「うん」



    「先生・・・ところで、キスはしていいの?」


    「えっっ!?」


    「エッチは卒業までダメなんでしょ?」


    「・・・・だって。。。(><)」



    咲希はいつも唐突だから戸惑ってしまう。
    安心させてくれたり、ドキドキさせたり・・・


    どうしよう・・・と、考えた末、
    背伸びして咲希のほっぺにチュッてした。


    「・・・これで、いい?(><)」


    「・・・先生、小学生じゃないんだからね(笑)」


    「も〜・・・ひどい。。。(><)」



    咲希は私の顔を引き寄せて、唇を合わせた。


    「んっっ・・・!!」


    力が抜けてしまう程、息も出来ないくらいの深いキスだった。
    咲希にされると、キスだけで感じてしまう。。。


    「先生、そんな顔しないでよ」


    「えっ?!ヤダ〜。。。変な顔してた?(泣)」


    「感じてる顔してる」


    「えっ!!してない!」


    「してるよ。私をもっと欲しいって顔してる」


    「してない!!」


    「(笑)」


    咲希に強く抱きしめられた。


    「先生、これ以上は我慢出来なくなるから、そろそろ帰るよ(笑)」


    「も〜・・・(><)」


    「明日、仕事終わったら連絡してね」


    「うん」



    咲希はそう言って帰って行った。

    手首には、咲希がくれたブレスレットがついていた。
    部屋の隅には、ブレスレットが入っていたんであろう紙袋と、その中に空の箱が入っていた。

    キスだけで我慢出来なくなりそうなのは、私のほうだよ。。。
    明日は仕事終わりにデートだって。

    私、こんなに幸せでいいのかな。



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▲[ 21702 ] / ▼[ 21704 ]
■21703 / 33階層)  34
□投稿者/ zoo 一般♪(36回)-(2012/12/09(Sun) 13:54:24)

    翌日、今年の仕事納めとして学校へ行った。
    咲希に会う予定があったから、いつもより少しだけお洒落した。
    楽しみがあるからか、最後の仕事は無事スムーズに終わった。

    帰ろうと席を立ったところで、さゆりに声をかけられた。


    「江藤先生、今日は何か予定ありですか?」


    「あっ、うん。」


    「そうですか。また近々食事に行きませんか?」


    「うん。そうだね」


    「今日はデートですか?いつにも増して色っぽいですよ」


    「えっ!?あっ、別にそういう訳じゃ・・・」


    「また今度、改めて誘いますね」


    「あっ、うん。ありがと」



    心臓がドキッとした。
    さゆりは、どこか咲希と雰囲気が似ているから、時々戸惑ってしまうことがある。
    色っぽい・・・かぁ。
    咲希の為に少しお洒落したから、そう言われて素直に嬉しい。
    咲希もそんな風に思ってくれるかな・・・。


    学校を出る前に咲希に電話した。
    電話に出た咲希は、既に学校近くのカフェでコーヒーを飲んで待っていた。

    咲希はいつも通り、車で迎えにきてくれた。
    学校を出たところの人目につかない場所で、咲希の車に乗り込んだ。

    咲希はいつもと変わらず、シンプルな服装だけどお洒落で、さりげなくつけるアクセサリーが素敵だった。

    車に乗ると、すぐに咲希は手を繋いできた。
    初めて手を繋がれた訳じゃないのに、まだドキドキしてしまう。


    「今日は、何して過ごしてたの?」


    「先生のことを考えてたよ」


    「も〜 真面目に答えてよ〜」


    「本当だよ。デートでどこに行こうか、先生とのことばかり考えてたよ」


    「(笑)。どこ行くか決まった?」


    「私の家」


    「えっ?!」


    「・・・・」


    「本気で言ってるの?!家族もいらっしゃるのに、私、一応教師なんだよ!?」


    「一人暮らしだよ」


    「えっ!?どういうこと!?」



    咲希の家族は、両親と妹の4人家族。
    仕事の都合で咲希以外の3人は海外暮らしらしい。
    担任である私がそんなことも知らないって、どういうこと!?
    3年になってからの保護者会には、一時帰国していた母親が来ていたらしい。
    お金に余裕がある家庭らしく、咲希には一人で生活する用のマンションが以前から用意されているらしい。
    という訳で、咲希は普段から自由気ままに生活しているという話。
    何だか現実離れした話で、頭が混乱してきた。
    学校には、説明がややこしいからと、あえて伝えていなかったようだ。


    「食事はいつもどうしているの?」


    「親戚が色々お店をしているから、適当に食べてるよ」


    「そうだったの」


    「それに、私、料理うまいんだよ」


    「そうなの?意外・・・」


    「だろうね(笑)。でも、結構上手なんだよ。自分で言うのも変だけど(笑)」



    そんな話を車の中でしながら、咲希と二人っきりになることに戸惑っている自分がいた。

    何もしないよね・・・
    卒業まではしないって言ってたし・・・
    どうしよう・・・ドキドキする。。。
    私一人がこんなに緊張して、どっちが年上なのかわからない。


    咲希のマンションに着いた。
    何だか、高級そうなマンション。
    こんな所に、高校生の子が一人で住んでるの??!

    とにかく、予想もしていなかったデートになってしまった。


    咲希の部屋に入ると、広いリビングと寝室、外の景色が綺麗に見える大きなガラス窓、
    何だか、本当に現実離れしていた。

    窓から外を見ていると、咲希に後ろから抱きしめられた。


    「先生、今日のデートコースは、先生のせいで変わってしまったってわかってる?」


    「えっ?どうして?」


    後ろから抱きしめられたまま、首にキスされた。


    「んっっ・・・」


    咲希の腕から逃げようとした。
    が、強く抱きしめられた。


    「先生さ、今日、鏡見た?」


    「えっ!?何??」


    「いつもおろしてる髪、あげてるから首にキスしたくなる」


    「・・・・」


    「服装だって、体の線がすごい出てる」


    「そんなつもりじゃ・・・」


    「上品なデザインのワンピースなのにね、そのあげた髪のせいで見える鎖骨とか、どうにかしたら見えそうな胸元とか」


    そう言って、咲希は私の体をゆっくり触った。


    「あっっ・・・ダメっ・・・!」


    「先生がそんな格好して来るから、二人きりになりたくなった」


    咲希は自分のほうへ私を向き直らせると、私の腰を引き寄せてキスをした。
    私の唇を味わうように、何度も深いキスをした。


    もうダメ・・・力が入らない。。。



    「先生、何飲む?」


    「へっ・・・!?」


    「ワイン?ビール?リキュール類、何でもあるよ」


    「あっ、えっと・・・じゃぁワインにしようかな」


    「適当に料理するけど、嫌いなものとかある?」


    「ううん・・・何でも食べれるよ」



    あんなに深いキスしたくせに・・・それだけだった。
    まだ、私はドキドキしているのに。。。




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▲[ 21703 ] / ▼[ 21705 ]
■21704 / 34階層)  35
□投稿者/ zoo 一般♪(37回)-(2012/12/09(Sun) 13:56:09)

    料理を手伝おうとしたけど、必要ないと言われてしまった。
    料理が出来るまで、咲希がつけてくれたテレビを見ながら、ワインを飲んでいた。
    さっきのドキドキがまだ続いていて、目の前のテレビの映像は全く頭に入ってこなかった。
    気持ちを落ち着かせる為に、入れてくれたワインを飲んだ。

    咲希が作ってくれた料理は、本当に上手でおいしかった。
    簡単なものだと言っていたけど、センス良くイタリアンな感じに仕上がっていた。
    料理がおいしかったこともあって、ワインの量が結構進んでしまった。
    咲希は、1杯だけ一緒に飲んだ。
    高校生に飲ませるなんて、教師失格なんだけど。
    お酒は強いんだと言っていた。

    食事の後、咲希がつけてくれたDVDからは、海の映像が流れてきた。
    ワインで程よく酔いがまわった私は、ソファにぼ〜っと座って力が抜けていた。

    隣りに座ろうとした咲希の体が私に触れた瞬間、何かされた訳でもないのに過剰に反応してしまった。



    「あっ・・・ごめんなさい。。。」


    「・・・・先生」


    「・・・・」


    「先生に触れたい」


    「うん・・・でも。。。(><)」



    咲希は、軽く私の唇にキスをした。
    それから、私の手を繋いでソファから立ち上がり、寝室のドアを開けた。



    「あのっ、ちょっと待って(><)」


    「・・・・」



    咲希は、私をベッドに押し倒すと、舌を絡めて何度も深いキスをした。
    それだけでいつも感じてしまう私は、もう抵抗なんて出来なかった。


    「先生、卒業までは待てない」


    「・・・恥ずかしいわ」


    「先生がほんとに嫌ならやめる。どっち?」


    そう言いながらも、咲希は私の体を触りながら首筋にキスをした。


    「あっっ・・・やぁ・・っ」


    「先生の体、熱いね」


    「だって・・・あなたが触るからっ(><)」


    「まだ全然触ってないよ」


    「・・・んっ・・・だめっ・・・」


    咲希は私の服を慣れた手つきで脱がした。


    「あっ、あのっ、シャワー浴びるまで待って・・・」


    「ダメ。先生の匂いが消えるから嫌だよ」


    「イジワルなんだから。。。。(><)」



    咲希は私が履いていたすストッキングもスムーズに脱がせると、自分の服を脱いだ。
    焦らすような咲希の手つきと、味わうように私をじっと見つめる瞳。
    最後の下着まで簡単に取られてしまった。
    あまりの恥ずかしさに、目を閉じた。

    咲希の体が触れただけで、女性の柔らかい体の感触に感じている自分がいた。
    体中にキスをされ、綺麗な指で全身を撫でられた。


    「やぁ・・・っ////」

    敏感になって硬くなった乳首を強く吸われ、咲希の頭を抱き締めた。


    「先生、濡れてる」

    咲希は、私の濡れている部分に指を這わせた。
    ゆっくり擦るように触りながら、硬くなった乳首を何度も吸った。


    「あっっ・・・だ・・・めっ・・・」



    もうイってしまいそうだった。

    咲希は意地悪にもそこで手の動きを止め、私の濡れている部分へ顔を下ろした。


    「やだっ・・・それはダメっ・・・・(><)」


    咲希は私の足を開いて、濡れている部分に顔を埋めた。


    「はぁ・・・あっ・・・ だめっ・・・・」

    咲希の舌が執拗に私の濡れている部分を舐め上げた。
    どうしよう・・・もう、頭が変になりそう。
    足がガクガクと震えた。


    「先生、すんごい濡れてる」


    「やだっ・・・言わないで(><)」


    咲希は私を抱き締めながら、今度は濡れてる部分にゆっくり指を入れた。
    足を大きく開かれて、何度も指を出し入れされた。
    耳元で何度も好きだと言われた。


    「もう・・・だめっ・・・ イッちゃ・・・う・・」

    咲希の指の動きが早くなるのと同時に、頭が真っ白になって果てた。
    体中が痙攣したように、ぐったり力尽きた私の体を咲希はしばらく抱き締めていた。


    「先生、大丈夫?」


    「・・・うん」


    「先生、好きだよ」


    「・・・あなたが気持ちよくなるには、どうしたらいいの?」


    「先生は何も考えなくていいんだよ。私は先生の感じてる姿を見るだけで気持ちいいんだから」


    「そうなの?」


    「うん」


    女の人と付き合ったことがない私は、咲希にどうすれば良いかわからなかった。
    今は咲希の言う通りにしたらいいんだよね?
    こんなに幸せなのに、ふとしたことで不安になる。

    裸のまま、咲希に抱きついた。


    「先生?」


    「・・・・」


    「どうしたの?」


    「なんでもない」


    「裸の先生に抱きつかれたら、またしたくなっちゃうよ」


    「も〜エッチなんだから・・・////」



    結局、その日は朝まで一緒にいた。





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■21705 / 35階層)  36
□投稿者/ zoo 一般♪(38回)-(2012/12/09(Sun) 13:57:30)

    朝起きると、私を後ろから抱き締めたまま眠っている咲希がいた。
    起こさないようにベッドから出ようとしたら、咲希が目を覚ましてしまった。


    「起こしちゃったね。ごめんなさい」


    「おはよ」


    「おはよう。シャワー浴びてきていい?」


    「うん。一緒に入る?」


    「だめっ!」


    「なんで?(笑)」


    「だって・・・もう朝だし、明るいし・・・」


    「先生の体がよく見えていいね」


    「だからダメって。。。(><)」


    咲希は私を抱き締めると、すぐに離してくれた。


    一人でシャワーを浴びながら、色々なことを考えた。
    結局、お泊りしちゃった。
    卒業までは・・・って、偉そうに教師ぶってたのに。

    でも、後悔はない。
    何だか、悩んでいたことが馬鹿ばかしいくらい、幸せだと感じた。


    リビングに戻ると、咲希がコーヒーを淹れていた。
    簡単にトーストとスクランブルエッグを作ってくれた。


    「先生、食べれる?」


    「うん」


    「朝はいつも簡単にしか食べないから、こんなのしか出来ないけど」


    「ありがとう」


    二人でダラダラ朝の時間を過ごした。


    咲希は夕方からバイトの予定だった。
    それまでの時間、少し外出しようという話になった。

    そういえば、私から咲希にはクリスマスプレゼントを渡してなかった。
    もうクリスマスは過ぎてしまったけど、一緒に選びに行けばいいかな?



    「もうクリスマスは終わっちゃったけど、何かプレゼントに欲しいものはない?」


    「ん?ないよ」


    「も〜 何か欲しいって言ってよ・・・。」


    「先生が欲しいだけだよ」


    「も〜。。。。」


    「(笑)。じゃあ・・・欲しいCDがある」


    「ほんと?CDでいいの?」


    「うん」



    咲希の車に乗って、街へ出た。
    今日は、以前に行った怪しいCD屋さんではなく、普通の大手のレコード店。
    今回、咲希が欲しいCDは、ひと昔前の普通のヒットソングらしい。

    咲希が選んだのは、海外アーティストのもので、あまり洋楽に詳しくない私でも、どこかで見たことあるようなジャケットだった。

    その1枚だけでいいと咲希が言い張るから、結局それだけを買った。
    安いクリスマスプレゼントになってしまったけど、咲希曰く重要なのは金額じゃないと。


    CD選びの後、少し遅めのランチをした。
    年末で混み合っている街中だけど、咲希は人が少ない場所を良く知っている。
    連れて行ってくれたお店は、ランチタイムのピークを過ぎているせいか、空いていた。


    夕方に近づき、家まで送ってもらうことになった。
    咲希は車を出す前に、買ったCDを一緒に聴きたいと、子どものように袋を開け始めた。
    昔から好きな曲だけど、CDは持っていなかったらしい。

    帰りの車の中では、ずっと手を繋いでいた。

    流れているBGM は、Angel of mine / Eternal


    幸せいっぱいだった。



[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

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■21706 / 36階層)  37
□投稿者/ zoo 一般♪(39回)-(2012/12/09(Sun) 13:58:45)

    二人の関係が今後、どれくらい続くかはわからない。
    でも、ダメになることを考えるより、今の幸せを大切にしたい。


    年が明けて卒業が近づいた。
    お互い、人目につかないように外で会うことは極力避けた。
    どちらかの家で一緒に食事をしたり、音楽を聴いたり、映画のDVDを観たり。
    一緒にいられるだけで幸せだった。


    卒業式の日。
    朝からバタバタしていた。
    生徒達は、卒業式が終わった後も教室で写真を撮りあったりお喋りしたり、
    教師もなかなかすぐに帰ることが出来ない日である。
    泣いたり笑ったり、無邪気な高校生はまだまだ子どもらしさが垣間見える。
    自分の教え子が卒業していくちょっぴり寂しい瞬間。
    でも、一人一人が大人になっていく姿を見届けることが出来る、教師は素晴らしい職業だと感じている。

    咲希は、相変わらず大勢で騒ぐことなく、卒業式が終わると静かに教室を出た。
    教室を出たところで、数人の後輩が咲希のところへ駆け寄っていた。
    やっぱり咲希はモテるらしい・・・。
    こういう場面を見ると、毎回不安になってしまう。。。
    でも、信じるって決めたんだもんね。


    卒業式の夜、私の家で咲希と食事をした。
    卒業のお祝いってことで、咲希にプレゼントを用意した。
    車の鍵につけるキーホルダー。
    気に入るかわからないけど、咲希に似合いそうなブランドを選んだつもり。


    「これ、気に入るかわらないんだけど・・・卒業のお祝いに」


    「・・・ありがと。絶対に失くせないね」


    「大袈裟だよ(笑)」


    「先生から貰ったんだから大事に決まってるでしょ」


    咲希にぎゅって抱き締められた。
    何だか、自分がすごく大切にされていると感じる。

    咲希は、私が不安な時、いつもぎゅってしてくれる。
    いつだって不安を取り除く努力をしてくれる。
    咲希のことがすごく好き。


    歳が離れていても、立場が違っても、性別が同じであっても、
    世間一般的な普通の恋じゃなくてもいい。




    ただ、声を聞くだけで切なくて、抱き締められるだけで満たされる。

    あなたには、いますか?そんな人。





    私は、そんなどうしようもなく愛しい人に出会って、恋をした。

    幸せいっぱいの恋、現在進行中・・・




    誰もがそれぞれの形をした、素敵な恋に出逢えますように。

    心から。





    END


完結!
[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21706 ] / ▼[ 21708 ]
■21707 / 37階層)  お礼
□投稿者/ zoo 一般♪(40回)-(2012/12/09(Sun) 14:10:19)
    2012/12/10(Mon) 09:33:54 編集(投稿者)

    Thanks To:
     このお話を何人の方が読んでくれていたのかはわかりませんが、
    最後まで読んで頂けた方、コメントをくださった方、本当にありがとうございます。

    感謝。


    Special Thanks To:
    頻繁にコメントをくださっていたmiyaさん、期待にお応え出来るような結末だったでしょうか?
    毎回のコメント、ありがとうございます。とても嬉しかったです。
    心からお礼を申し上げます。




[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21707 ] / 返信無し
■21708 / 38階層)  Re[38]: お礼
□投稿者/ miya 一般♪(9回)-(2012/12/21(Fri) 19:16:51)
    完結まで、ありがとうございましたm(_ _)m

    催促ばかりで申し訳ないな〜と思っていたのですが、
    応援できていたのなら、安心しました(^^ゞ
    しかし、後半のくだりは、気になりますねぇ〜(笑)

    また素敵な物語(実話?)を紡いでください^^

    来る年が、zooさんにとって更に輝いた年になりますように...
[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21629 ] / 返信無し
■21711 / 1階層)  感想
□投稿者/ 愛 一般♪(2回)-(2013/01/02(Wed) 21:10:50)
    とっても素敵でした。
    次の作品も期待しています♪
[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21629 ] / 返信無し
■21712 / 1階層)  お礼
□投稿者/ こねこ 一般♪(1回)-(2013/01/11(Fri) 17:07:22)
    ステキなお話しありがとうございます。
    m(__)m

    では、失礼いたします。

    (携帯)
[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/

▲[ 21629 ] / 返信無し
■21713 / 1階層)  感想^^
□投稿者/ miya 一般♪(10回)-(2013/01/13(Sun) 13:53:30)
    面白かった〜^^
    また、書いてくださいね^o^v
[ 親 21629 / □ Tree ] 返信/引用返信 削除キー/


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