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Nomal すこしづつ…U /桃子 (17/03/01(Wed) 15:22) #22199
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Nomal 感想 /涼 (17/05/23(Tue) 21:02) #22231
│└Nomal 涼さんへ /桃子 (18/02/17(Sat) 20:24) #22267
Nomal Re[1]: すこしづつ…U-19 /桃子 (18/07/18(Wed) 15:07) #22287
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■22199 / 親階層)   すこしづつ…U
□投稿者/ 桃子 一般♪(44回)-(2017/03/01(Wed) 15:22:56)
    長くなってしまったので

    新しくしました(^^♪
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22200 / 1階層)  Re[1]: すこしづつ…U-1
□投稿者/ 桃子 一般♪(45回)-(2017/03/01(Wed) 15:25:03)
    「ヒロって 自分の小さい頃の話 したりする?」

    お姉さんに訊かれて…

    「そういえば あんまり ないかも…」

    「あれでも 子どもの頃は よく笑うかわいらしい子どもだったのよ(笑)」

    「それが…」

    「いつの間にか 家族とも 殆ど口をきかなくなって…」

    「気がつけば 1匹狼…」

    Madamとお姉さんの掛け合いは テンポが良くて ユーモラスだ…

    だけど 話の内容は…

    「ハッキリしたことは わかんないし 本人も 言ったことがないから
    あたしの勝手な憶測だけど…
     自分のセクシュアリティを自覚し始めた頃からじゃないかな…距離を置き始めたのは…」

    お姉さんの言葉に 何かを思い出したように Madamが言った。
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22201 / 1階層)  Re[1]: すこしづつ…U-2
□投稿者/ 桃子 一般♪(46回)-(2017/03/01(Wed) 15:31:48)
    「中学3年の夏休みの終わり…明日から 2学期って言う時に…あの子 家族に宣言したの…」

    「そうだった そうだった(^.^)」

    「何を?…」

    恐る恐る訊いてみた。

    Madamもお姉さんも それまでの笑顔とは 打って変わって…

    「自分は 男性を好きになる人間じゃないって…
     そのことで 家族に迷惑をかけるようなことはしないから『 結婚しろ』とだけは 言わないでくれ…
     気持ち悪がらせて 申し訳ないけど あと半年 義務教育の間は 家に置いてくれって…」

    (そんな…)

    「高校は?って聞いたら…」

    「寮のある会社に就職して そこから 夜間高校に通うって…」

    「ビックリしたのは 父親で…ヒロ自身のことを どうしても受け入れられなかったのね…
     即座に 大学までの面倒は見てやるから 今スグ 出ていけ!って…啖呵切っちゃった…」

    「あの子も わかりました なんて言っちゃって…」

    「どうなったんですか?」

    (中学生の子どもに そこまで言う?)は 飲み込んだ…

    「ウチで引き取ることにした」

    いつの間にか ビールを取りに来たお兄さんが 後ろに立っていた。

    「えっ?」今度は 飲み込めなかった…

    「アレは ウチのお袋サンの兄さん…おれ達の伯父さんチの子…ホントは おれ達の従妹なんです(^.^)」

    「じゃあ ヒロ君に 啖呵切ったのは…マスターじゃなかったんですね?」

    「恭子さん 心配するところ そこ?(笑)」

    「あっ…」

    お姉さんのひとことで 緊張がほぐれた。
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■22202 / 1階層)  すこしづつ…U-3
□投稿者/ 桃子 一般♪(47回)-(2017/03/01(Wed) 15:36:11)
    「で 次の日…学校から帰って来たヒロを そのまま連れて来ちゃった(笑)」

    Madamが さりげなく言った。

    「伯父も伯母も いい顔しなかったけどね(笑) 」

    お兄さんが 話を続けた。

    「でも この人…子どもの必死な思いを ちゃんと受け止められない親と一緒に暮らすのは
     ヒロが気の毒だって 籍も ウチの子にするから!って 言い切っちゃって…
     さっさと養子縁組の手続きまでしちゃった(笑) 」

    「ついでに 名前もね(笑)」

    お姉さんが 何でもないことのように言った。

    「えっ?」

    「読み方は そのままで 漢字だけ…ウチは 2人とも 海 の字を使ってるから ヒロもね…」

    お姉さんは 美海さん お兄さんは 海人さん…そして…宏海…

    「多分 ヒロも 今の方が気に入ってると思うな」

    お兄さんが 自信満々に言った。

    「驚いた?」

    Madamに訊かれて…つい 訊いてしまった。

    「どうして スグ次の日に 動けたのですか?」

    「ああ…それは…あの子のお兄さんが 海人に 電話かけてきたの…親父をなだめてくれって…
     で こっちはこっちで緊急家族会議を開いて(笑) こういうのって スピードが肝心でしょ(^.^)」

    (何処か一つでも欠けていたら 私は コウちゃんに出会うことが出来なかったんだ…)

    「さっき あの子は ウチだと 殆ど話さない とか リビングに居ない なんて言ったけど…
     それって どこの家庭でもあることでしょ?(笑) 恭子さんも覚えない?」

    「あります…」

    「それと同じことだからね(^.^)」

    Madamの言葉の外の思い は 深い…

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■22203 / 1階層)  すこしづつ…U-4
□投稿者/ 桃子 一般♪(48回)-(2017/03/01(Wed) 15:39:25)
    「さぁてと 出来たよ〜(^-^) お肉も野菜もたっくさんあるから どんどん食べちゃって!」

    「ヒロ! テーブル片づけて 食事の用意して!」

    「ハイハイ…」

    「ハイ は1回!」

    何処の家庭でも見られる光景が ここにもあった。

    「恭子さん 何飲む?」

    お兄さんに声をかけられて 一瞬 言葉に詰まった。

    「いえ 私は…」

    「そんなコト言っても ダメですよ〜(笑)」

    「いえ ホントに…」

    「飲めない?」

    「いや 全然イケる…」

    私が答える前に コウちゃんが 言った。

    (コウちゃん そんな平然と言わないでよ!(>_<) )

    「じゃ 決まり(^.^) 親父さんの とっておき 開けちゃう?(笑)」

    「それ いいかも!」

    お姉さんが はしゃいだ声で言った。

    「水割り? ロック?」

    「あっ ロックでお願いします」
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■22204 / 1階層)  すこしづつ…U-5
□投稿者/ 桃子 一般♪(49回)-(2017/03/01(Wed) 15:40:58)
    いつの間にか コウちゃんが 人数分のグラスと氷とチェーサーを用意していた。

    「ヒロが作ってくれるの?」

    Madamが声をかけた。

    「うん」

    「コレの作るお酒って 美味しいでしょ(^.^)」

    お兄さんの屈託の無さに 思わず

    「ハイ」

    「選ぶワインも 間違いないでしょ?」

    「ハイ」

    「ガキんちょのクセに こういうとこ 敵わないんだよなぁ…」

    きっと コウちゃんも お兄さんのこういうストレートなところに脱帽しているはずだ…


    美味しいすき焼きと 美味しいお酒で 楽しい夜だった。
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■22205 / 1階層)  すこしづつ…U-6
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(50回)-(2017/03/01(Wed) 15:42:53)
    「ちゃんと 安全運転で帰りなさいよ」

    「わかってる…着いたら 電話するから…」

    「恭子さん いつでも遊びに来てね」

    「ありがとうございます」


    行きの時間を思うと 帰りは アッと言う間だった。

    部屋に戻るまで 2人とも あまり喋らなかった…

    「みなさんに よろしく伝えてね」

    「了解です(^^♪」

    「じゃ…」

    「うん…」



    お風呂の中で 色々思った。

    想像も出来ない世界の話だったような気がするが これは 私の大好きな人の身に起こった現実だ。

    コウちゃんは どんな風に耐えて 乗り越えてきたのだろう…

    無性にコウちゃんに会いたくなった。

    ずっと一緒に居たのに 心が コウちゃんを求めていた。
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■22206 / 1階層)  すこしづつ…U-7
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(51回)-(2017/03/01(Wed) 15:45:12)
    ドアのカギは 開いている。

    リビングは明るい。

    「コウちゃん…」

    コウちゃんは 窓際に立っていた。

    窓ガラスに映る私をみて ゆっくりと振り向いた…

    「おかえりなさい (^-^)」

    「何みてたの?」

    「特に 何 ってわけでもないんですけど…
     今日は お疲れさまでした…何か飲みます?」

    「ううん…今はいい…コウちゃん…」

    「はい?」

    「あたし…色々聞いちゃった…」

    「ん?」

    「その…コウちゃんが…ホントは…」

    「坂本家の子になったいきさつ?」

    「うん」

    「そっか… 聞いちゃいましたか…ビックリしたっしょ(^.^)」

    「うん」

    「気分 悪くさせちゃいました?」

    「ううん そんなことない…驚いたのは驚いたけど…
     ただ…コウちゃんの居ないところで聞いちゃってよかったのかなって…」
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■22207 / 1階層)  すこしづつ…U-8
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(52回)-(2017/03/01(Wed) 15:49:49)
    向き合ったままの会話に気が付いたコウちゃんが 私を 自分の方へ抱き寄せてくれた。

    ふたりでソファに座った。

    「ずっと黙ってるつもりはなかったんです。いつかは…って思ってました。
     けど…自分では そのタイミングが見つけられなくて…
    グズグズしている内に あの2人に 持ってかれてしまいましたね(^^; でも…そっちの方が良かったのかもしれません…」

    「うん…私もそう思う…2人っきりだったら…どうしたらいいか 混乱しちゃってたかも…」

    「ですよね(笑) 多分 Madamもミィも その辺 わかってたんじゃないかな…
     で…それを わざわざ?…」

    「ううん…それは言い訳…ホントは…コウちゃんに会いたかったの…」

    「うん…いつも思ってます…壁1枚 ドア1枚 が 高くて大きくて…困ってます…でも…」

    「でも?」

    「恭子さんが そのドアを開けて入ってきてくれるって 知ってるから…」

    「バカ…そういうことは ちゃんと言ってくれなきゃわかんないじゃない!」

    「すみません…言葉の足らないヤツで…」

    「あっ!今のひとことで思い出した!あたし…ちょっと 怒ってるんだった…」

    「なに?」

    「なに じゃないわよ! どうして教えてくれなかったの? マスターと親子だってこと…」

    「フフフ…」

    「フフフって…あたし…知ってたら…」

    「知ってたら?」

    「あんなに お店に通わなかったのに…明日から どうすれば…」

    「いつも通りでいいですよ(笑)」

    「そんなコト…」

    「出来ない?」

    「出来なくはないと思うけど…」

    「でしょ? 正直言うと…恭子さんを驚かせたかったんです(^^♪」

    「コウちゃん! それは いくらなんでも 黙り過ぎだと思う…」

    「以後 気をつけます(^.^)」

    「それでよろしい(笑) 」

    「はい(^-^)」

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■22208 / 1階層)  すこしづつ…U-9
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(53回)-(2017/03/01(Wed) 15:51:47)
    私の好きな静かな時間が流れ始めた…



    「コウちゃん…あたし…」

    言いかけて 冷静になった。これ以上は 口にしてはいけない…

    心の何処かでブレーキがかかる音がした。

    (帰らなくっちゃ!)

    「帰るね」

    コウちゃんは いつものように 優しく頷いた。

    それだけで十分だ。
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22209 / 1階層)  すこしづつ…U-10
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(54回)-(2017/03/01(Wed) 15:54:57)
    週明けの月曜日

    ルームシェアの件で Madamから電話をもらい コウちゃんに内緒で ランチタイムに会うことになった。

    Madamに

    「本当にヒロでいいの?」と 訊かれた。

    「はい」

    反対されるかも…と思ったけど 気持ちは揺るがなかった。

    「あの子と違って 恭子さんは 普通の恋愛が出来るでしょ?
     それに…こういう言い方は良くないけど…恭子さん ひとり娘 さんでしょ?
     おウチのこと考えたら…」

    「そうですねぇ…家のことはともかく…もし 普通の恋愛をしていたら…お母さんになって…
     ひょっとしたら おばあちゃんになる可能性もあるかもしれません…
     正直 ヒロ君が 初めて…と言う訳ではありませんし…若い頃は そういう未来を考えていました…」

    「だったら…」

    「本当なら そちらの方がいいというのはわかっています…でも…それだと 私 幸せじゃないんです…」

    「えっ?」

    「これからの時間を 一緒に過ごしたいのは ヒロ君だけですから…」

    Madamの目を見て言った。

    (これで反対されたら コウちゃんに言おう…)

    Madamは ニッコリ笑って

    「これから 恭子さんとは どんな関係になるのかしら?(笑)」

    「えっ?…」

    「恭子さんのご両親にとってヒロは どんな立ち位置? 」

    「それは…両親は 私よりも ヒロ君の方が ホントの息子みたいだ って言ってます…(笑)」

    「じゃ 決まりね(^^♪ 末っ子のお嫁さん ってことで…(笑)
     恭子さん…ひとつだけ 姑からアドバイスをしてもいいかしら?」

    「はい」

    「そんなに緊張しないで(笑) 『朝食は一緒に』ってことだけだから…
     前の晩 大げんかして…そのまま朝食がバラバラだと お互い 謝るキッカケを無くすでしょ
     でも…一緒のテーブルに着くと…どちらからともなく「ごめん」って言いやすくなるから…ね
     最初が肝心だから…初日に「これが我が家のルールです!」って ビシッとね(笑)
     ついでに「行ってきますのチュー」も 付け加えるといいかも(笑)
     主導権は 握った者勝ちだから 負けちゃダメよ(笑)」

     なんともたくましい姑だ(^-^)
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22210 / 1階層)  すこしづつ…U-11
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(55回)-(2017/03/01(Wed) 15:55:38)
    『我が家のルール』は コウちゃんと話し合って決めた。
     *朝食は 在宅する限り 必ず一緒に摂る
     *寝室は別々にしない
     *食事の支度は 私
       後片付けとゴミ出しは コウちゃん 
       掃除・洗濯は 手の空いている方がする
     *家計管理は 一応 私

    「ウチ…家賃ナシなんで 光熱費と食費の折半 ってことで…」
    コウちゃんが アッサリと言った時…耳を疑った。
    「家賃ナシ って…ココ 賃貸だよね?」
    「はい(^-^)」
    「だったら…」
    「でも 自分…オーナーなんで…(^^;」
    「それって…この部屋の?」 
    「と言うか…このマンションの…(^^;」
    「どういうことか わかるように 説明してくれる?」
    元々は 去年の3月まで この部屋に住んでいた「会社会長のじいちゃん」が オーナーだったらしい…
    「で その じいちゃんが 南の島に移住したんで もらい受けたんです」
    というのが コウちゃんの説明…
    「そんな…子犬をもらうようなカンジで 言われても…」
    「ですよねぇ(笑) 」

    そのまま相続となると いろいろややこしいことになるから
    コウちゃんが 成人した時に しかるべき収入がコンスタントに手元に届くようになっているらしい…
    「詳しいことは よくわかんないですけど まぁ 地道に暮らせ ってことです(^^;」


    「おじいさんの会社って?」
    コウちゃんが 口にしたのは 誰もが知っている大手建設会社だった…
    「ちなみに じいちゃんは マスターの親父さんです」
    (って…それは…)
    「本来なら じいちゃんが 自分のことを気にしてくれるのは おかしな話なんです…
     邪険に扱われて当然なんですから…なのに…孫には平等に…って言ってくれて…」
    「そうだったんだ…」
    コウちゃんが この部屋に来たのは
    おじいさんの「空けておくのはもったいない」の ひとことだったらしい…(笑)

    「あれっ?でも…去年まで この部屋に居たのは『鈴木のおじいちゃん』だったよ?
     あたし 何度か挨拶したことあるもん…」
    「鈴木は ばあちゃんの旧姓です(笑)」
    茶目っ気のある鈴木のおじいちゃんが ウィンクしている姿が 目に浮かんだ…

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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22211 / 1階層)  すこしづつ…U-12
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(56回)-(2017/03/01(Wed) 16:00:05)
    バレンタインの時期が来た。

    引っ越しは 2月14日に決めた。

    父の荷物は 実家に送り 自分の荷物は 少しづつ新しい部屋へ運んだ。

    元々 家具付きの部屋なので 身の回りのものだけを運べばよかった。

    勤め出してから初めて 1週間の有給を取った。

    夕方 コウちゃんが帰って来る頃には 部屋は すっかり片付いていた。

    「ただいま…」

    「おかえり(^-^)」

    「なんだか ずっとここに居るみたいなカンジですね(笑)」

    「うん 私もそんな気がする(^-^) コウちゃん それ…」

    コウちゃんは 有名お菓子ブランドの紙袋を持っている。

    「恭子さんへのチョコ 預かってきました(笑)」

    「えっ…?」

    「よくお店で 宿題している女子中学生グループ覚えてますか?」

    「うん」

    「彼女たちからです。恭子さんに渡してほしいって…」

    「えっ?…」

    「手紙も入っているそうです」


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■22212 / 1階層)  すこしづつ…U-13
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(57回)-(2017/03/01(Wed) 16:02:16)
    中を見てみると 箱の上に 封筒が…封を開けると かわいい文字が飛び込んで来た。

     『ヒロさんの彼女さんへ
       私たちは『駅裏』で 中1の時から ヒロさんに 学校の宿題をみてもらったり
       わからないところを 教えてもらったりしています。
       お店が終わった後 遅くなっても ヒロさんは 嫌な顔ひとつしないで
       理解出来るまで 教えてくれます。
       おかげで メンバー全員 希望の高校への進学が決まりました。
       ヒロさんは 私たちが頑張ったからだ と言ってくれますが
       私たちは そんな私たちを見ていてくれるヒロさんが 居てくれたから 頑張れました。
       この間 ヒロさんの『元気の素』は 何か って訊いたら…
       「彼女」って教えてくれました。
       彼女が居てくれるから 自分は自分の場所でベストを尽くすことが出来るって…
       普段 プライベートの話なんて 殆どしないヒロさんが ハッキリ言ってくれました。
       ホントは 彼女さんとの時間を もっともっと 大切にしたいはずなのに…
       「大事な時だから」って 私たちを優先してくれたヒロさんと それを受け入れてくれた
       彼女さんに 感謝しています。
       私たちも これから ヒロさんのように「元気の素は好きな人」って胸を張って言えるような
       パートナーを見つけます(^-^)
       ちゃんとご挨拶もしたことないのに こんな失礼な手紙を送ってごめんなさい。
       チョコ…食べてもらえると嬉しいです♪

                                      駅裏 女子中学生一同』


    「希望の高校に決まってよかったね」

    「うん…頑張ってたからね…」

    「コウちゃん 大変だったでしょ?」

    「ううん…恭子さんが居てくれたから…」

    コウちゃんは 手紙に書かれているのと同じことを言っている。

    でも…私は 特に何もしていない…

    「私…こんなに嬉しいありがとうは 初めてかも…」

    「うん…」

    「お互いを そんなに知らなくても ありがとう って言えるって…すごいね」

    「恭子さんの人柄だと思う…」

    「コウちゃんじゃなくて?」

    「最近 ヒロを あんなに柔らかくしたのは誰だ?って話が出てる って知ってた?(笑)」

    「この間 Madamがちらっと…」

    「そういうことです(笑)」

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■22213 / 1階層)  すこしづつ…U-14
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(58回)-(2017/03/01(Wed) 16:04:21)
    食後のコーヒーを飲みながらソファに2人並んで座った。

    「去年の秋から 色々 忙しかったですね(笑)」

    「ほんと…バタバタしたね(笑)」

    (告白して クリスマス・お正月…お互いの家族に紹介して…引っ越し…)

    「去年のバレンタインなんて…」

    「何してたんですか?」

    「ミカとふたりで ラーメン食べてた(^-^)」

    「ラーメン?」

    「うん…『寒い夜は チョコよりもラーメンだ〜』って…2軒 ハシゴした…(^^;」

    コウちゃんは 可笑しそうに笑っている。

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■22214 / 1階層)  すこしづつ…U-15
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(59回)-(2017/03/01(Wed) 16:07:52)
    「ところで コウちゃんのチョコは?」

    「えっ?」

    「1個も貰わなかったの?(笑)」

    「貰うの前提ですか?(笑)」

    「誰かにあげるイメージはないでしょ?(笑)」

    「ゼロってことはないですけど(笑) チョコは『駅裏』に置いてきました」

    コウちゃんの話によると…

    毎年 食べきれないほどのチョコをもらうのだそうだ。

    そのチョコで Madamが ブラウニーを焼いて お客様に試食としてお出しするとのこと。

    「ホントは 自分で焼くといいんだけど…なんせ量が多いから…(笑)
     お店で作業する方が 効率がいいんです…」

    「多いってそんなに?」

    「まぁ…友チョコ ってやつですけどね…(笑)」

    「友チョコ以外は?(笑)」

    「そりゃ…恭子さんから貰ったチョコは 誰にも公表しませんよ(^-^)」

    「ごめん…あたし…何も用意してない…」

    「謝られると困ります(笑)」

    「えっ?」

    「自分も同じですから…」

    そう言うと コウちゃんは 私をジッとみた…

    「もう永久に返品不可だよ…」

    「わかってます(^-^)」

    2人の顔が近づいた時…

    「お風呂が沸きました」…機械的な声が流れた。

    思わず 吹き出してしまった。

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■22215 / 1階層)  すこしづつ…U-16
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(60回)-(2017/03/01(Wed) 16:09:49)
    「コウちゃん 一緒に入ろ!」

    「えっ いきなりっすか…」

    「ビビった?」

    「はい…」

    「フフフ…ウソだよ〜」

    「勘弁してください…(>_<)」


    コウちゃんが お風呂から出てきた。

    ベッドサイドに腰かけている私を見て にっこり微笑んだ。

    「寒くないっすか?」

    「大丈夫…」

    「電気 全部消します?」

    「うん…」

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■22216 / 1階層)  すこしづつ…U-17
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(61回)-(2017/03/01(Wed) 16:12:02)
    コウちゃんが 先にベッドに入った。

    伸ばした右腕に頭を乗せた。

    コウちゃんの掌を右の乳房の上に置いた…

    コウちゃんは 驚いたみたいだったが…私は 気付いていないフリをした。

    「コウちゃん…」

    「ん?」

    「前から訊こうって思ってたんだけど…」

    「何ですか?」

    「もしかして…気付いてた?」

    「ん?」

    「その…」

    「ひょっとして…デコキス?」

    「うん…」

    「確信はなかったんですけどね…」

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■22217 / 1階層)  すこしづつ…U-18
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(62回)-(2017/03/01(Wed) 16:14:25)
    あれは…まだ コウちゃんに告白する前の頃だ。

    一緒に出掛ける約束をしていた日の朝…

    部屋のドアを開けたのは 2人同時だった。

    「おはよう」

    「おはようございます」

    コウちゃんの声がいつもと違った気がした…

    (あれっ?)

    腕を組んで歩き出した時も 何かが違った…妙に呼吸が早い…

    (もしかして…)

    コウちゃんの額に手を当てたら…びっくりするくらい熱かった。

    「コウちゃん!」

    「はい?」

    「熱あるんじゃない?…」

    「えっ?まさか…」

    「いいから とにかく 一回 部屋に戻ろう!」

    有無を言わさず 戻った…

    リビングのソファに崩れるように座ったコウちゃんに

    体温計の場所を聞き…計ったら…

    デジタルは 39.6℃ を表示していた。

    (このバカ…何考えてるの!)は 胸にしまって…

    「とにかく 着替えて すぐ寝なさい!」

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▲[ 22199 ] / ▼[ 22267 ]
■22231 / 1階層)  感想
□投稿者/ 涼 一般♪(1回)-(2017/05/23(Tue) 21:02:32)
    とても読みやすく、スラスラ読み進められました。続き楽しみにしています。

    (携帯)
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■22267 / 2階層)  涼さんへ
□投稿者/ 桃子 一般♪(1回)-(2018/02/17(Sat) 20:24:32)
    長い間 放置したまま 感想に気付かずごめんなさいm(__)m

    仕事が落ち着いたら 続きをUPしたいと思っています。

    その時には また 覗きに来て頂けると嬉しいです(^^♪
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22287 / 1階層)  Re[1]: すこしづつ…U-19
□投稿者/ 桃子 一般♪(2回)-(2018/07/18(Wed) 15:07:02)
    コウちゃんがベッドに入ったのを確認してから『駅裏』に電話した。

    今日のバイトを休むことだけは 伝えておかなければ…と思ったからだ。

    「一晩様子を見て 熱が下がらないようなら また 連絡します」

    電話の向こうのMadamは

    「面倒かけてごめんなさいね…今週は休むように伝えて」と言ってくれた。

    お昼頃 一度様子を見に寝室を覗いたら コウちゃんと目が合った…

    「汗 かいた? タオル持ってきたけど…自分で拭ける?」

    「はい…」

    コウちゃんは 上半身を起こしながら答えた。

    「着替えは どこ?」

    「そこのタンスの上から3番目です…」

    長袖のTシャツとハーフパンツが 何組かセットで入っていた。

    「下着は?」

    「右の抽斗です…」

    「じゃ 替えようか…」

    「はい…」

    「手伝った方がいい?」

    「いや 大丈夫です…」

    脱いだものを片付けるようにして コウちゃんに背中を向けたまま

    「拭けた?」

    「はい…さっぱりしました…ありがとうございます…」

    「熱 計って…」

    コウちゃんに体温計を渡した。

    「どう?」

    「これ…」

    デジタルは 38.7℃ さっきよりは 下がっているが まだまだ高い。

    「なんか食べる? それとも もう少し寝る?」

    「もうちょっと寝ます…」

    水分補給をして…

    「また あとで 見に来るけど…なんかあったら ワン切りでいいから電話して…」

    「はい…ありがとうございます」

    夕方 熱は37.8℃になった…

    「おなかどう?」

    「空きました(^^;」

    「おじや作ったけど 食べれそう?」

    「はい…」

    「ちょっと待ってて」

    サイドテーブルに 1人用の土鍋とお茶碗を乗せたお盆を置いた。

    お茶碗に軽くよそって コウちゃんに手渡した。

    「ゆっくりね…」

    「はい…」

    お茶碗は すぐ カラになった…

    「もう少し 食べる?」

    結局 コウちゃんは 全部 平らげた…

    「起きれそうなら 歯磨きしてから 寝た方がいいよ」

    「はい…」

    洗い物を済ませて 寝室を覗いたら

    コウちゃんは 安定した呼吸に戻っていた。

    この分なら 熱は 順調に下がるかも…と思ったら 体の力が抜けた…

    (明日は 休みだし…このまま ここに居ようかな… その前に 洗濯だけしておこう)

     
    一度 自分の部屋に戻り コウちゃんが脱いだ衣類を洗濯機に入れた。

    あとは 勝手に乾燥までしてくれる…

    (日に当てた方がいいけど…明日のお天気 雨だもんね…)

    食事を済ませ 乾いた衣類を持って コウちゃんの部屋に戻った…

    コウちゃんの寝顔を見て…思わず…デコキスをしたのは この時だ。

    コウちゃんが起きていたなんて 思ってもいなかった…
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■22288 / 1階層)   すこしづつ…U-20
□投稿者/ 桃子 一般♪(3回)-(2018/07/18(Wed) 15:11:31)
    「あの時 早くよくなぁ〜れ って言ってくれた?」

    「うん…」

    「やっぱり…(笑) ずっと起きてたわけじゃないんです…
     寝ている方が長くて…夢の中のことだったのか 現実のことか…よくわかんなかったんですけど…
     朝 目が覚めた時 恭子さんが 手 握っててくれたのをみて ああ アレは現実だったんだな…って」

    「それで ずっと デコキス だったの?」

    「ええ…まぁ…」

    「言ってくれたらよかったのに…」

    「いやぁ…」

    「ねぇ…」

    「ん?」

    「これからも ずっと デコキスだけ?」

    「えっ?」

    「この手も ぜ〜んぜん動かないし…」

    胸の上に置いた手を軽くたたきながら コウちゃんに覆い被さった…

    コウちゃんは 意を決したように 小声でひとこと…

    「何もかも ぜ〜んぶ 恭子さんが はじめてで めっちゃ ドキドキしてます…」

    それを聞いて 私の中のスイッチが入った。

    「コウちゃん…」

    「はい?」

    「力 抜いて…」

    あとは 私がコウちゃんにしたいと思ったこと

    コウちゃんにしてほしいと思ったことを繰り返し…

    人と肌を重ねて こんなに満ち足りた気持ちになったのは初めてだった。

    コウちゃんの腕枕の中で 思わず 涙が出てしまった。

    コウちゃんは 気がついているはずなのに 何も言わず 黙って 私の髪をなでていた。

    そして そのまま…寝つき良過ぎっ! でも…寝付きの良さなら 私も負けていない…
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■22289 / 1階層)   すこしづつ…U-21
□投稿者/ 桃子 一般♪(4回)-(2018/07/18(Wed) 15:14:38)
    目が覚めたのは 目覚ましが鳴る直前だった…隣のコウちゃんは まだ夢の中…

    軽く唇に触れてから ベッドから出た。

    朝食の準備をしながら お弁当も作ることにした。

    (コウちゃん 嫌がるかな…ダメだったら 今日のお昼にすればいいやっ)

    「おはようございますっ…」コウちゃんが起きてきた。

    「おはよう! 朝…パンにしたけど よかった?」

    「はい(^^♪ 美味しそうな オムレツっすねぇ(^^♪ コーヒー淹れますね」

    「うん おねがいっ」

    2人で 朝食を摂るのは お正月以来だ。

    「今日 遅くなる?」

    「バイトのあと まっすぐ帰宅なんで(笑) 7時半くらいかなぁ…

     それより遅くなるようなら 連絡します…恭子さんは いつまで休み?」

    「今週いっぱい…」

    「了解っす」


    支度を整えたコウちゃんが カバンにお弁当を入れている。

    「それ 持っていくの?」

    「はい…って言うか…作ってくれたんですよね? 違ってました?」

    「ううん…余計なことだったかも って思ったから 嬉しい&#9836;」

    「こういうの…愛妻弁当って言うんですよね(^^♪」

    「バカ…」


    「行ってきます(^^♪」

    「行ってらっしゃい(^^♪」

    ドアノブに手をかけたコウちゃんが振り返った。

    「なに?」

    「ちょっと忘れ物っす…」

    そう言いながら 私を抱き寄せた。

    「行ってきます の ハグと…」

    コウちゃんの唇が 私の唇に触れた。

    (えっ?)

    咄嗟に言葉が出なかった私を置いて コウちゃんは 笑ってそのまま大学に向かった。

    (こういうこと出来るんだ…)は 心の声にしておこう(笑)

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■22290 / 1階層)   すこしづつ…U−22
□投稿者/ 桃子 一般♪(5回)-(2018/07/18(Wed) 15:18:08)
    一緒に暮らすようになって1年以上が過ぎた。

    コウちゃんは 大学3年生…穏やかな時間が流れていた。

    ミカに言わせると

    「ケンカしないカップルなんてあり得ない!」そうだが…

    実際 私達は 殆どケンカをしたことがない。

    それは 私が 大人だから…なのではなく コウちゃんが 私を受け止めていてくれるからだと思う。

    もちろん コウちゃんだって スーパーマンではないから(笑) 時々は 意見の食い違いだって生じる。

    そういう時は お互い 納得するまで 話すことにしている。

    言葉に出すことで ストレスが溜まらないのかもしれない。


    GWを迎える頃 大学の友人 啓子の結婚式前に 友人たちと会うことになった。

    久し振りに 啓子・和美・聡美・私の4人が揃った。

    和美と聡美は すでに家庭を持っている。

    話題は 当然『結婚』になる。

    「恭子は どうなの?」

    「なにが?」

    「なにがって 結婚…」

    「ああ(笑)」

    「ああって…恭子は 昔から 浮いた話がないけど…今も?」

    「今は ちょっと変わったかな?」

    「彼氏出来た?」
    「というか 一緒に暮らしてる人が居る…」

    「え〜〜〜っ?」

    3人が 声を揃えて驚いた。

    「そんなに驚く?」

    「だって…今まで そんな話 聞いたことないもん!」

    「ねっ どんな人?」

    「どんなって…今日は 私じゃなくて 啓子が主役でしょ!」

    「いやいや 私も聞きたい…私は ホラ ずっと 変わらずのあの人だもん(笑) それより 恭子の相手は?」

    啓子・和美・聡美の目が 私に集中した…

    「さっきから訊こうと思ってたんだけど…その右手のリングは…」

    「うん…一昨年 付き合い初めて最初のクリスマスにもらった…」

    「そういうこと?」

    「うん…左は もうちょっと先になるかな(笑)」

    「それでいいの?」

    「うん(笑)」

    「具体的な話は 無いの?」

    「無い」

    「なんで? 一緒に暮らしてるんでしょ?」

    「だって…ヒロ君 学生だもん…今 大学3年生」

    人は 本当に驚くと 目がまん丸になることを思い出した。
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■22291 / 1階層)   すこしづつ…U−23
□投稿者/ 桃子 一般♪(6回)-(2018/07/20(Fri) 12:13:02)
    「6歳下?」

    「うん」

    和美が言った。

    「ねっ 会えない?」

    「えっ?」

    「ヒロ君に…」
    間髪入れずに 聡美が言った。

    「会いたい!」

    啓子は 当然 と言う顔で 微笑んでいる。

    逃げられなかった。

    下手な言い訳はしたくなかった。

    「電話してみる」

    スマホを持って ロビーに出た。

    聡美もついて来た。

    コール2回で コウちゃんが出た。

    「もしもし? どうしました? 今日 お食事会でしょ?」

    「うん…そのお食事会で…ヒロ君のこと話したら みんなが 会いたいって…」

    「アハハハ」

    「無理だよね?」

    「うん…だって…こっちも今から 夕食ですもん(笑)
     食事の後の2次会になら合流することは出来ますけど?(笑)」

    聡美に

    「2次会になら 顔出せるって…」

    聡美は 笑顔で 頷いた。

    「じゃあ 場所が決まったら 連絡するね」

    「了解!」
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■22292 / 1階層)   すこしづつ…U-24
□投稿者/ 桃子 一般♪(7回)-(2018/07/20(Fri) 12:17:36)
    2次会は 啓子のリクエストで 駅前のホテルの最上階のバーに決まった。

    「ここから見る夜景が好きなの」

    「プロポーズもここ?」

    「ううん…プロポーズは…駅のホーム(笑)」

    「加藤君らしいね」

    席に着いて 10分程経った頃 入り口に コウちゃんの姿が見えた。

    係の人と 一言二言 話したあと まっすぐに 私たちのテーブルにきてくれた。

    「初めまして 坂本と申します。遅くなって申し訳ありません」

    「橋口と言います。今日は ありがとうございます。どうぞ お座りください」

    啓子が挨拶してくれた。

    「ありがとうございます。失礼します」

    6人掛けのボックス席に 3:1で座っていた私の隣に コウちゃんは座った。


    和美と聡美は コウちゃんを見つめたまま 何も言わない。

    コウちゃんは ミネラルウォーターをオーダーした。

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■22293 / 1階層)  すこしづつ…U-25
□投稿者/ 桃子 一般♪(8回)-(2018/07/20(Fri) 12:23:15)
    和美と聡美は コウちゃんを見つめたまま 何も言わない。

    コウちゃんは ミネラルウォーターをオーダーした。

    和美と聡美は まだ 黙っている。

    「恭子とは何処で?」

    啓子が会話を仕切り始めた。

    「図書館で 声をかけられたのが最初です(^^♪」

    「えっ 恭子から?」

    和美が 声を出した。

    コウちゃんは 和美の方に向かって

    「はい」

    「恭子って そんなタイプだった?」

    つられて 聡美が言った。

    「そんなタイプって どんなタイプよ?」

    悪態をついたら

    「自分から声をかけるなんて…ちょっと 想像がつかないというか…」

    「3年も片思いしてた人が お隣さんになって 図書館に1人でいたら 声かけるでしょ」

    「いやいやいや‥職場はどうかと思うよ(笑)」

    和美が反論した。

    「だって…ホントに好きだっただもん…」

    コウちゃんが 間に入ってくれた。

    「そんなこんなで お付き合いさせて頂いています(^^♪
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■22294 / 1階層)  すこしづつ…U-26
□投稿者/ 桃子 一般♪(9回)-(2018/07/20(Fri) 12:28:26)
    「一緒に暮らしているというのは 本当ですか?」

    聡美の質問に

    「はい 本当です」

    「どうして?」

    コウちゃんの答えを待たずに聡美が続けた。

    「…社会人と学生さんとじゃ どうしても 恭子に負担がかかるでしょ?
     それくらいのこと 考えたら スグわかるのに どうして 一緒に住むという発想が出来るんですか?

    「恭子さんに 生活の面倒を見てもらって平気なのか?ってことですか?」

    「ええ まぁ…」

    「ちょっと! 何てこと言うの!」

    思わず 語気が荒くなった。

    コウちゃんは 穏やかに そしてサラリと

    「話を切り出したのは 自分です。
     恭子さんと一緒に居たい という気持ちを ストレートに言葉にしました。
     それに… ウチの場合 家賃がかかりませんから(^^♪」と 言い切った。

    3人の目が 私を見た。

    「マンションのオーナーなの」

    私のひとことに さすがの啓子も 言葉を失った。

    そこから続いた和美と聡美の身辺調査のような遠慮の無い質問に コウちゃんは ひとつひとつ丁寧に答てくれた。

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■22295 / 1階層)  すこしづつ…U-27
□投稿者/ 桃子 一般♪(10回)-(2018/07/20(Fri) 12:34:57)
    「納得した? それとも まだ 何か不満ある?」

    私のひとことに 啓子が 真剣な声で コウちゃんに言った。

    「ひとつだけいいですか?」

    空気が 締まり 一瞬 緊張が走った。

    「はい」

    コウちゃんは 変わらない。

    「失礼ですが 坂本さん…」

    言い淀んだ啓子の言葉の続きを コウちゃんが拾った。

    「お察しの通り 男性ではありません」

    「えっ?」

    聡美と和美が 同時に小さく呟いた。啓子は 顔色を変えることなく

    「そのこと 恭子のご両親は?」

    「ご挨拶させて頂いた時は 驚かれましたけど 今は 可愛がってもらっています」

    「坂本さんのご両親は 恭子のこと…」

    「ウチは 両親も姉も兄も 恭子さんへの信頼度 半端ないです(^^♪」

    コウちゃんの言葉に 啓子は 安堵したように頷いた。

    「恭子 昔から 誠実な人が理想だ って…言ってたけど 坂本さん その通りの人じゃん!
     おまけに 超カッコ良いいし…(^^♪」

    「うん」

    「坂本さん! 恭子は 私たち4人の中では いちばん落ち着いていて 長女的な存在なんです(^^♪
     その分 自分のコトは 後回しにすることが多くて…これからも 恭子のこと よろしくお願いします」

    「はい お任せください」

    コウちゃんは 穏やかに 力強く言い切ってくれた。

    和美も聡美も 微笑んでいた。

    3人とは ホテルのロビーで別れた。

    車で送ると言うコウちゃんに 啓子が タクシー呼ぶから…と断ったので 私たちは 先にホテルを出た。
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22296 / 1階層)  すこしづつ…U-28
□投稿者/ 桃子 一般♪(11回)-(2018/07/20(Fri) 12:37:26)
    「駐車場…満車だったので ちょっと歩きます」

    「うん」

    2人とも無言だった。

    駐車場から出て マンションに向かった。

    まっすぐ部屋に帰る気になれなかった。

    「コウちゃん…」

    「ん?」

    「寄り道したい」

    「何処へ?」

    「何処でもいい」

    「ホントに何処でもいいですか?(笑)」

    「うん」

    明日は 休みだ。急いで帰る必要は無い。

    「了解しました(^^♪」


    走ること30分

    コウちゃんが 車を止めた。
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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22297 / 1階層)  すこしづつ…U-29
□投稿者/ 桃子 一般♪(12回)-(2018/07/20(Fri) 12:41:46)
    「着きました!」

    「琵琶湖?」

    「はい(^^♪ 降りますか? それとも このまま?(笑)」

    「降りる!(笑)」

    車から降りて 2人で遊覧船乗り場の桟橋に立った。

    「ホントは 海に行こう思ったんですが さすがに…で 近場にしました(笑)
      今日は 水の音の方がいいと思って…」

    「うん…」

    寄せる波の音の他は 何も聞こえない。

    時々 対岸の道路を行き交う車のヘッドライトが見える。

    コウちゃんが 私の体を抱き寄せる。

    「コウちゃん ごめんね」

    「何が?」

    「急に呼び出して…あんなに 根掘り葉掘りになるなんて…知ってたら 電話なんかしなかったのに…」

    「大丈夫ですよ(笑) 少しだけ 覚悟して行きましたもん(笑)
     『あんたなんか 恭子の相手として認めない』って言われなくてよかったです(笑) 」

    「私が選んだ人に そんなこと言わせるわけないじゃない…」

    「恭子さん 長女だもんね(笑)」

    「そうよ(笑)」

    「自分のことは後回しにする…(笑)」

    「そうそう(笑) でも コウちゃんには 押しの一手で突き進んでる(笑)」

    「なんで?」

    「だって…待ってたら いつまで経っても 何も起こらないでしょ(笑)」

    コウちゃんは 声をあげて笑った。

    「お友達は こんな強気の恭子さん しらないんだろうなぁ(笑)」

    「多分…けど…もしかしたら 啓子は 気付いているかも…」

    「そっか…啓子さんに 謝っといてください。せっかくのお食事会に しゃしゃり出てしまって…」

    「気にしないで! 彼女も コウちゃんを呼び出すことに乗り気だったんだから…(笑)」

    「だったらいいんですけど…」

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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22298 / 1階層)  すこしづつ…U-30
□投稿者/ 桃子 一般♪(13回)-(2018/07/20(Fri) 12:45:32)
    「ここにはよく来るの?」

    「最近は 全然ですけど… モヤモヤしてた頃はよく来てました(笑)」

    「モヤモヤって?…」

    「『佐々木さんが好きだ〜』って…(笑)」

    「大声で叫んでた?(笑)」

    「まさか…(笑) 心の中で です(^^♪」

    「…直接ぶつけてくれたらよかったのに…」

    「ぶつけるだけじゃ済まなくて 押し倒してたかもしれません(笑)」

    「押し倒されたかったなぁ(笑)」

    「すみません…自分 チキンなんで…」

    「バカ…ホントのチキンは 友だちの呼び出しになんか応じないよ(笑) 」

    「それだけ みんな 恭子さんが大好きで 大切に思ってる ってことじゃないですか」

    「そうかなぁ…」

    「だと思います」

    コウちゃんに言われると 本当にそうなのかも…と思えてくるから不思議だ。

    湖岸に寄せる波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきた。
     
    「そろそろ帰ります?」

    「うん」


    コウちゃんは 運転の時 いつも以上に無口になる。

    赤信号で止まった時 左の太腿に そっと手を置いてみた。

    コウちゃんは 何も言わず 自分の左手を重ねてくれた。

    信号が青に変わった。

    「夜道は スピード出すから(笑)」

    「うん」

    コウちゃんは 左手をハンドルに戻した。

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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22299 / 1階層)  すこしづつ…U-31
□投稿者/ 桃子 一般♪(14回)-(2018/07/20(Fri) 12:50:13)
    部屋に戻ったのは 日付が変わる頃だった。

    「お風呂…シャワーでいい?」

    「はい」


    寝室に入ったら…コウちゃんは 寝息を立てていた。

    ベッドに腰かけて 寝顔に向かって

    「バカ…」

    「誰がバカですか?(笑)」

    「起きてたの?」

    「起きてますよ〜(笑)」

    コウちゃんは 腕を伸ばして 私を自分の方に引き寄せた。

    力を抜いていた私は そのままコウちゃんの胸に倒れこんでしまった。

    「この場合 押し倒されたのは どっちになるんですかねぇ…」

    「バカ…」

    コウちゃんは 黙って 私の髪を撫でている。

    コウちゃんの心臓の音を聞きながら

    「ねぇ…コウちゃんって 私の過去の恋愛 気にしたことある?」と 訊いてみた。

    「何をいまさら…(笑)」

    「だって…一度も訊かれたことないし…」

    「訊かないのは 気にしてないからです。年齢差を考えると…恋愛の ひとつやふたつ みっつやよっつはあったと思います。
    そういうのがあって 今 こうして一緒にいられるんだから…
     恭子さんの中で “いい思い出” になってたら それでいいんです。
     あっ でも…今も続いている人がいる ってことなら 話し合わなくちゃいけませんね(笑)」

    「バカ…そんな人いるわけないじゃないっ! それに…みっつもよっつも無いから!」

    「だったら…問題ナシです(笑)」

    「うん…それと…今日 嬉しかった…」

    「えっ?」

    「啓子に『お任せください』って言い切ってくれた時…」

    「ちょっとカッコつけちゃいました(笑) でも…マンションの件は…カッコ悪かったですね(^^;」

    「ううん そんなことないっ! 惚れ直しちゃった(笑)」

    「あとで「こんなハズじゃなかった」になったりして…(笑)」

    「フフフ…そうなったらどする?」

    「ふたりで どうしたいかを考えましょ(笑)」

    「うん…」
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▲[ 22199 ] / ▼[ 22301 ]
■22300 / 1階層)  すこしづつ…U-32
□投稿者/ 桃子 一般♪(15回)-(2018/07/20(Fri) 12:54:12)
    髪を撫でるコウちゃんの手が止まった。

    コウちゃんの顔を見た。

    「恭子さん…」

    「なに?」

    「キスしましょうか?(笑)」

    「わざわざ訊く?(笑)」

    「そこは 一応…(笑) 『今日は そんな気分じゃない!』 だったら 申し訳ないんで…(笑)」

    「バカ…そんな日 あるわけないじゃない! いつも…待ってるんだから…さっきの琵琶湖でだって…」

    「あそこは めっちゃガマンしました(笑)」

    「えっ? なんで?」

    「恭子さん…イライラしてたでしょ(笑)」

    確かに…コウちゃんへの和美や聡美の質問攻めには 腹を立てたが…顔には出ていなかったハズだ…

    「気が付いてたの?」

    「うん…うまく言えないんですけどね…あそこでキスしちゃうと なんか 誤魔化すカンジがして…イライラは ちゃんと解消しないと…(笑)」

    波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきたことを思い出した。

    だから コウちゃんは 余計なことは言わなかったんだ…

    この子は 本当に年下なのだろうか…時々 分からなくなる(笑)

    「でも…そろそろ限界です…」

    限界は 私も同じだ。

    黙って コウちゃんに被さって唇を重ねた。

    コウちゃんの舌が 私を誘った。

    そこから先は お互い ノンストップだった…

    心も体も充実した夜だった。
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▲[ 22300 ] / 返信無し
■22301 / 2階層)  すこしづつ…U-33
□投稿者/ 桃子 一般♪(16回)-(2018/07/20(Fri) 13:46:24)
    「来週の木曜日から ゼミ合宿です」

    コウちゃんが そう言ったのは 梅雨が明けてすぐのことだった。

    「土曜日の午後に帰って来ます」

    「今年はどこに行くの?」

    「日本海のどっかだそうです(笑) 」

    「楽しそうだね(笑)」

    「毎年恒例 合宿という名の飲み会ですから(>_<) 」

    「学生の特権でしょ(^^♪ 」

    「ですね…帰ったら デートしましょ(笑) お店決めといてください(^^♪」

    「わかった!」



    金曜日の朝 Madamから電話がかかってきた。

    「急な話なんだけど…今夜 家に来れない?」

    コウちゃんが居ないことは Madamも知っている。

    「はい 大丈夫です」

    「よかった〜(^^♪ じゃ 今夜7時にね」



    「坂本クン帰るのって明日だよね? 今日 時間ある?」

    職場で お弁当を食べながらミカに訊かれた。

    「ごめん…今日はちょっと…」

    「合コン?(笑)」

    「まさか! それだったら ミカも一緒でしょ(笑)」

    「そりゃそうだ(^^♪ で ホントは何?」

    「Madamと…」

    「呼び出し?」

    「う〜ん…そうなるのかなぁ…仕事終わったら Madamんチに行くことになった…」

    「なんだろうね? 別れ話?…坂本クン 自分では言えないからって…Madam経由にしたとか?(笑)」

    「そんな情けない人じゃないよ…っていうか…ウチ ラブラブなんですけど?(笑)」

    「うん それは 言われなくても知ってる( *´艸`)」

    「まっ ここでアレコレ考えても仕方ないよね…(^^♪ さっ 仕事 仕事!」
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■22302 / 1階層)  すこしづつ…U-34
□投稿者/ 桃子 一般♪(17回)-(2018/07/20(Fri) 13:51:02)
    Madamのお宅には 7時丁度に着いた。

    リビングには 先客と思われる女性が居た。

    (うわっ 何事?)

    内心の焦りを隠しながら

    「遅くなりました」

    「ううん…急に呼び出してごめんね… 恭子さん…こちら…」

    「国木田と言います」

    「ヒロの母親」

    Madamが あまりにもアッサリと言ったので 聞き間違えたかと思った。

    (えっ?)

    すぐには言葉が出なかった。

    「ヒロが お世話になっています。 佐々木さんのことは りっちゃんから よく聞いています」

    (Madam りっちゃんって言うんだ…)


    「佐々木です。ご挨拶もせぬまま…」

    すっとこどっこいになってしまった…

    「驚いた?」

    Madamが いたずらっぽく笑いながら言った。

    「はい…初めて こちらにお邪魔した時よりも 驚いています…」

    「恭子さん 今 声 出なかったよね(笑)」

    「思考が停止するって ホントにあるんだなぁって…」

    「フフフ ごめんね(^^♪」

    「今日 私がご一緒すること りっちゃんからは…?」

    「ごめん 言わなかったんだ…」

    Madamが答えてくれた。

    「そうだったの?…びっくりさせて ごめんなさいね…」

    「いえ…」

    「とりあえず 食事にしよう!」

    Madamが言った。
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■22303 / 1階層)  すこしづつ…U-35
□投稿者/ 桃子 一般♪(18回)-(2018/07/20(Fri) 13:56:26)
    食事をしながら 国木田さんに

    「あの子がこちらに来たいきさつは…」

    と 訊かれた。

    「聞いていますが ご家族のことは 何も…訊けば 宏海さんは 教えてくれたかもしれませんが正直…そこまでは…」

    「知る必要ない?」

    「はい…そう思っています」

    「どうして? 気にならない?」

    「どうして…と言われても…宏海さんが経験してきたことで 今も苦しんでいるなら 話を聞いたり 自分に出来ることを考えるかもしれませんが…実際は…私が知る限り そうではありません。
     Madamやマスター・ミィさん・カイさんと いい関係を築いています。
     大学生活も 充実していますし…宏海さんが消化してきたことを ほじくり返すことは無いと…」

    「でも…好きな人のことは 全て知りたいって思わない?

     ヒロも…全部話したいと思っているかもしれないのにあなたがそんな態度だから 話したくても 話せないで居る とは思わない?」

    「宏海さんのことは どんなことでも知りたいです」

    「だったら…」

    「でも…それは こちらから 問いかけることでしょうか?
     私は…宏海さんが 自分のタイミングで 話してくれたらいい と思っています」

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■22304 / 1階層)  すこしづつ…U-36
□投稿者/ 桃子 一般♪(19回)-(2018/07/20(Fri) 14:05:56)
    (あたし ケンカ売ってる?)と思った瞬間

    「恭子さん 嫌な思いさせちゃってごめんね…」

    Madamが声をかけてくれた。

    「この人 ヒロが大学卒業したら 手元に呼びたいって言いだして…」

    「えっ?」

    「でね…あの子には 生涯をかけてお付き合いしている人が居るから そっちには帰らないよって
     言っちゃったの( *´艸`)
     そしたら 今度は その人に会わせろって…(笑) とうとう根負けしちゃって…ホント ごめんね…」

    「いえ…」

    「あの子の中では 私たちのことは もう…無かったことになっているんですね」

    国木田さんは 大きなタメ息をついた。

    「あの…宏海さんは ご家族のこと 本当に 何も言っていませんが それは 恨みや憎しみからでは
     ありません」

    「どうして あなたが そんなこと言えるの?」

    「宏海さん 一度だけ言ったことがあるんです。
     こっちに来てすぐの頃 大切なことを教えてくれた人が居るって…」

    国木田さんだけでなく Madamも 私をみつめている。

    「色々な手続きが済むまで 学校に行けなかった時 毎日 昼休みに コーヒーを飲みに来るおじいさんの
     相手をするようになって…
     そのおじいさんは 宏海さんのことを『ボン』と 呼んで コーヒーを1杯 飲む間だけ 他愛ない話を
     して 仕事に戻られていたそうです。
     お店に来るようになって 1ヶ月が過ぎた頃 宏海さんに
     『おまえさんは 何もかも失くして この街に来たと思っているかも知れんが…
     ここに来たことで おまえさんは 自由に生きられるようになったんじゃないか?
     おまえさんを手放した家族・受け止めた家族…両方の家族から もらった自由を大切にしなさい』って
     おっしゃったそうです。
     そこで初めてそのおじいさんがマスターのお父さんだってことがわかって
     『道理で 自分のこと よく知ってるハズですよね』って…笑ってました…
     宏海さん 今でも おじい様の言葉を忘れていないから ご両親のこと何も言わないんだと思います…」

    そこから先は 言葉が続かなかった。
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■22305 / 1階層)  すこしづつ…U-37
□投稿者/ 桃子 一般♪(20回)-(2018/07/20(Fri) 14:09:20)
    「あの子は15歳で独立して 家を出て行ったって思えばいいかしら?」

    国木田さんが 前を向くカンジで言った。

    「ヒロは きっと いろいろ考えて 連絡を取らないって決めたんだと思うよ…
     親は死んだことにして 学校に行き始めたのも 余計な詮索を避けるためだったんだろうし…
     うちは あの子が決めたことは よほどのことが無い限り 口出しはしないって決めてるから…
     今でも ヒロの両親は 亡くなったままになってる(笑)」

    Madamが 続けてくれた。

    「今までに 口出したことあった?」

    少し元気になった国木田さんが Madamに訊いた。

    「1度だけね…」

    「訊いてもいい?」

    「お店のお客さんとお付き合いを始めたことについて いつ問いただそうかと思っていたら…
     先方のご両親に会いに行くことになったって…珍しく 自分から報告してくれたの…
     多分 あの子も 不安だったんじゃない?(笑)
     だから…親御さんには 何を言われても あなたの誠意を伝えなさいって…
     その覚悟が無いんだったら 今スグ別れちゃいなさいと言って送り出した…」

    「それでどうなった?」

    Madamが目で合図を送ってきた。

    「相手の両親は 娘に これからは 坂本君と2人で遊びに来るように…って…」

    「今の話 佐々木さんのこと?」

    「はい…両親は 宏海さんと出会えただけでも 私を育ててきて良かった…って言っています」

    「そう…あの子 そんな風に言ってもらえるんだ…」

    「はい…国木田さんが 手放してくれたおかげです」
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■22306 / 1階層)  すこしづつ…U-38
□投稿者/ 桃子 一般♪(21回)-(2018/07/20(Fri) 14:14:25)
    翌日 コウちゃんは 出かける時より 日焼けして帰ってきた。

    「泳いだの?」

    「ううん…泳ぐには まだ早くて…足だけ(笑) 日焼け止め塗ったんですけどね…」

    「なんか…ちょっとワイルドになった?(笑) 来週には あっちこっちで噂になってたりして…(笑)
     で!今日のお店…予約は7時なんだけど…その前に『駅裏』に寄ることになったから…
     コウちゃん 汗流したら すぐ出発できる?」

    「了解です」


    コウちゃんが浴室に向かったのを確認して MadamにLineを入れた。

       順調です

    返事はすぐに来た。

       こちらも 整いました


    1時間後…

    『駅裏』で 6年振りの親子対面が行われた… 
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■22307 / 1階層)  すこしづつ…U-39
□投稿者/ 桃子 一般♪(22回)-(2018/07/20(Fri) 14:19:35)
    昨夜 帰ってから Madamに電話をしたのは 私だ。

    「国木田さんが 明日もこっちに滞在しているなら 夕方5時頃 駅裏に来てもらうようお伝えください!
     もし 迷ったら「美味しいコーヒー飲む機会 逃したくないでしょ」って(笑)」

    Madamは

    「それって…」

    「はい コウちゃんに コーヒー淹れさせます(笑)
     今度…なんて言ってたら いつになるかわからないですから…(笑) 善は急げ です」

    「恭子さん…ありがとう…由美子には 絶対来るように言うから…あとは 任せます」



    コウちゃんは スタッフの出入り口を使っている。

    お店のドアに「貸し切り」の札が出ていることには気付いていないハズだ。

    店内には Madamと国木田さんが居るだけだった。

    いつもと違う店内の雰囲気に 怪訝な顔をするコウちゃん…

    奥のテーブルに座っていた国木田さんが 振り向いた。

    一瞬の間のあと

    「なんでここに…」

    つぶやいたコウちゃんに Madamが言った。

    「詳しい話は あとでちゃんとするから…こちらにコーヒーひとつお願い」

    「あっ はい…っていうか…マスターは?」

    「居ない…オーダーは ヒロのコーヒーだから…」

    「えっ? 自分 まだ お客様にお出ししたことは…」

    「大丈夫! 私の古い友人だから(笑) お代は頂かないけど その代わり 練習台になって って言ってある」

    「そうですか…で 何を?」

    「『駅裏オリジナル』をお願いします」

    国木田さんが 凛とした声で言った。

    「少々お待ちください」



    コウちゃんは いつも部屋で淹れてくれる時と同じように

    真剣で 優しいまなざしで コーヒー豆と向き合った。

    コーヒーのドリップの音と絞ったBGM以外は 何も聞こえなかった。

    「お待たせしました」

    「ありがとうございます」

    国木田さんの言葉を背中で受けながら コウちゃんは カウンターの中に戻ってきた。

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■22308 / 1階層)  すこしづつ…U-40
□投稿者/ 桃子 一般♪(23回)-(2018/07/20(Fri) 14:22:36)
    「どう?」

    「美味しい♪」

    「でしょ?」

    「うん…ありがとう…」

    「お礼なら 私じゃなく 恭子さんに…」

    「えっ?」

    「昨夜 あの後 電話くれて とにかく国木田さんを呼び出してって!
     もし渋ったら『美味しいコーヒー飲む機会を一生逃しますよ』って脅せって(笑) ねっ?」

    「一生なんて言ってません…それに 脅せだなんて…」

    「でも そんな迫力感じたけど?」

    「まぁ…気持ちは…それに近いものが…」

    「でしょ?(笑)」

    Madamとのやりとりを聞いていた国木田さんが

    「そうだったの…本当に ありがとう…」

    コウちゃんが 国木田さんの顔を見て言った。

    「自分は ここで元気にしてます。これからも ここで元気にやっていきます。
     また こっちに来ることがあったら 顔を出してください。
     その時には 練習台ではなく ちゃんと お代を頂けるようになってますから…」
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■22309 / 1階層)  すこしづつ…U-41
□投稿者/ 桃子 一般♪(24回)-(2018/07/20(Fri) 14:27:17)
    帰る国木田さんを外まで見送ったMadamが お店に入ったのを見て

    「どういうことか 説明してもらいましょうか!」

    コウちゃんが口火を切った。

    「恭子さんが 1枚噛んでいるのはわかりました。でも…接点がみつかりません」

    「簡単なことよ。昨夜 ウチで一緒に食事したの…」

    Madamが 何でもない顔をして言った。

    「なんで? どうしたら こういう組み合わせになるんですか?」

    「普通に考えたらわかるでしょ…親が子どものことを心配して 様子を見に来たって…」

    言葉に詰まるコウちゃんを見るのは 久し振りだった…

    「まさか 思いもしなかったとか?」

    どうやら 図星だったらしい…

    「あんたねぇ…いきなり卵から産まれたわけじゃないでしょ(笑) 産んでくれた人がいたから 今 ここに居るんでしょうが…」

    「はぁ…」

    「そりゃ…大抵の場合 産んでくれた人と育ててくれる人は同じだけど 何かの拍子で
     そうならない親子なんて 世の中には 山ほどあるでしょ…中には 会いたくても会えない状況に
     なった人だっている…たまたま あんたの場合は 別れることにはなったけど
     会えなくなったわけではない…会いたくなって会いに来た…それだけのこと… 何か 文句ある?」

    「文句はないけど…」

    「けど?」

    「どうして 恭子さん…」

    思いが言葉にならないコウちゃんを見たのも 久し振りだ…

    「ヒロじゃなく 恭子さんを呼んだか?」

    「うん」

    「そりゃ 子どもが付き合っている人が どんな人か 気になるのは 当たり前でしょうが…
     話には聞いてても ホントにいい人かどうか…6歳も年上なんて たぶらかされてるんじゃないか…
     ここは ひとつ 私が 相手の本性を暴かなくっちゃ…って決死の覚悟で乗り込んできたのよ(笑) 」

    「それで?」

    「本性を暴くどころか 我が子の『人を見る確かな目』に圧倒されただけ(笑)
     どんなに難癖つけても ひるむことなく堂々としてて…全然 太刀打ちできなかった(笑)
     それどこころか 二度と会うことは叶わないって思ってた我が子との再会まで 演出してくれて…
     完全に 頭が上がらなくなったかも(笑) 」

    「そんなにすごかったんですか?」

    コウちゃんが 私に話を振った。

    「ううん…そんなことない…」

    「恭子さん 謙遜し過ぎ(笑)
     『私は 宏海さんのことは どんなことでも知りたいです
      でも…それは…宏海さんのタイミングで 話してくれたらいいんです…』って言い切った姿は
      ヒロにも見せたかったな(笑)
     そのあとのひとことが…
     『国木田さんが 手放してくれたおかげで 宏海さんに会えました』
     テレビドラマみたいだった(笑)」

    Madamの言葉に コウちゃんも 少し 落ち着きを取り戻したみたいだった。
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■22310 / 1階層)  すこしづつ…U-42
□投稿者/ 桃子 一般♪(25回)-(2018/07/20(Fri) 14:29:59)
    「それが どうして 今日 ココに来ることになったんですか?」

    「 Madamが『ヒロのコーヒー飲みたいね』って言った時 国木田さん ちょっと寂しそうだったの…
     “この人はヒロ君が淹れたコーヒー 1度も 飲んだことが無いんだ…”って思ったら
     どうしても 1杯飲んでほしくなって…」

    「そうだったんですか…」

    「うん…」

    Madamが 私達が お店に到着した時の国木田さんの様子を話してくれた。

    「ホントは ヒロに会うのは怖いって…でも コーヒーを飲んだら…この先 二度と会えなくても
     生きていく支えになると思って来たって…」

    お店を出た国木田さんからの伝言は

    「今度は ちゃんとお客として来ます」だった。

    「そうですか…じゃ…こっちからも伝言お願いします…
     いきなり来られると 動揺するので 前以て連絡お願いしますって… (笑)」

    「わかった(笑) ちゃんと言っとく…これからデートでしょ…楽しんできなさい(笑)」
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■22311 / 1階層)  すこしづつ…U-43
□投稿者/ 桃子 一般♪(26回)-(2018/07/20(Fri) 14:32:06)
    2人で『駅裏』を出た。

    車のエンジンをかけながら

    「昨日 ビックリしたでしょ?」

    コウちゃんが言った。
    「うん…あたし…一生分 驚いた気がする(笑) まさか お母様に会うなんて…想像してなかったもん…
     でも…コウちゃんの御両親は マスターとMadamの方が しっくりする…不思議だね(笑)」

    「それだけ 自分も馴染んできた ってことでしょうか?…
     ところで恭子さん! 我々は 何処へ向かえばいいんですか?」

    「ごめん…お店は予約してないの…コウちゃん 何食べたい?」

    「何でもいい?」

    「うん」

    「冷製パスタとスープ!」

    「それって…」

    「はい(笑) コレを食べないと 夏が始まりません( *´艸`) 買い物した方がいい?」

    「ううん…大丈夫…」

    「じゃ 帰りましょう(^^♪」

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■22312 / 1階層)  すこしづつ…U-44
□投稿者/ 桃子 一般♪(27回)-(2018/07/20(Fri) 14:35:34)
    食事の後…

    「まだ早い時間ですね(笑) 恭子さん 何か呑みます?」

    「今日は アルコールはダメだよ」

    「えっ?」

    「えっ じゃないでしょ(笑) たまには 肝臓も休めなさい(笑)」

    「はいはい…どれ…お茶でも淹れましょうかねぇ…恭子さんも飲みますか?(笑)」

    「ありがと&#9825;」

    「優しいんだか優しくないんだか…(笑)」

    「こんなに優しい人は 居ないと思うけど?(笑)」

    「そういうことにしておきましょうかねぇ…」

    「不服?」

    「いえいえ とんでもございません(笑) 奥様 お茶がはいりました(笑)」


    2人で ソファを背もたれにして フローリングに座った。

    コウちゃんの肩に頭を乗せる…私の一番好きな瞬間だ。

    ふいに コウちゃんが 思い出し笑いをした。

    「どうした?」

    「いや…Madamの言葉を思い出して…」

    「えっ?」

    「国木田さんに言い切った ってやつ…(笑) ホント 生でみたかったなって」

    「バカ! 必死だったんだからね(>_<) 」

    「でも Madam は 負けてなかったって…(笑)」

    「そんなこと ないない(笑)」

    「ホント?」

    「うん…勝ち負けじゃなく…ただ…あたしが コウちゃんをどう思っているか 正直に伝えようって…
     それが ちょっと 強気に…(笑)」

    「そっか…」

    コウちゃんは 急に真顔になって

    「恭子さんのお陰で 久し振りに国木田さんに会えました。ありがとうございました」

    「そんな…」

    「だって…あんなだまし射ちのアイディア考えるのって 恭子さんくらいっすよ(笑)」

    「コウちゃん それ ほめ言葉になってないっ!」

    「フフフ(^^)」

    「バカっ! …シャワーしてくるっ」

    コウちゃんは ただ 笑っていた…
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■22313 / 1階層)  すこしづつ…U-45
□投稿者/ 桃子 一般♪(28回)-(2018/07/20(Fri) 14:37:33)
    リビングに戻ると コウちゃんは ダイニングテーブルで ノートパソコンを開いていた。

    「課題?」

    「合宿のレポート(^^♪ 来週提出なんで ちっと まとめておこうと思って…」

    「呑んだくれていたわけじゃないんだ(笑)」

    「8割は 呑みだったんですけどね(笑) 残りの2割が…」

    「そうなんだ…あんまり 遅くならないようにね(^^♪」

    「了解っす」

    「よっし できたっ」

    コウちゃんが 声を出したのは 1時間後だった。

    「終わった?」

    「はい(^^♪ あとは プリントするだけです…シャワーしてきますっ」

    「うん」
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■22314 / 1階層)  すこしづつ…U-46
□投稿者/ 桃子 一般♪(29回)-(2018/07/20(Fri) 14:40:20)
    コウちゃんが寝室に戻ってきた。

    「やっぱ ココがいちばんホッとします(笑)」

    ベッドに大の字になりながら言った。

    「眠れなかった?」

    「枕が変わったら眠れない ってタイプじゃないんで(笑) 睡眠は取れてました(^^♪ でも…」

    「でも?…」

    コウちゃんの伸ばした右手に頭を乗せながら訊いた。

    「去年も 同じこと思ったんですが…落ち着かなかったです(笑)」

    「うん…あたしも 落ち着かなかった…どこに頭を置いたらいいのかわからなくて…(笑)」

    3日ぶりのコウちゃんのキスは いつもと変わらない優しいキスだった。

    コウちゃんの舌が 私の下唇を舐める…この瞬間が 私は 好きだ。

    わずかに出来た隙間から覗く私の舌を コウちゃんは見逃さない。

    優しく 力強く入ってくる。

    私は 自分からコウちゃんの舌を迎える。

    どちらが自分の舌かわからなくなる…

    コウちゃんは 普段 口数が多い方ではないけれど ベッドの中では 饒舌だ。

    激しくしてほしい時は 激しく 優しくしてほしい時は 優しく…

    何も言わなくても 私の欲求を満たしてくれる。
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■22315 / 1階層)  すこしづつ…U-47
□投稿者/ 桃子 一般♪(30回)-(2018/07/20(Fri) 14:43:52)
    突然コウちゃんの動きが止まった。

    体を離して 静かに言った。

    「恭子さん 何かありました?」

    「えっ…」

    「なんか ヘンに力が入っているような気がします…」

    (このコには隠し事出来ないな(笑) )

    「何がってわけじゃないんだけけど…」

    「うん…」

    「ねぇ…コウちゃん…」

    「はい?」

    「いいや…やっぱりいい!」


    こういう時 コウちゃんは いつも 静かに待っていてくれる。

    「ねぇ…」

    「はい」

    「あたし達のセックスって どうなのかな?」

    「へっ? すみません…素っ頓狂な声になってしまいました(^-^;」

    「裏返ってたね(笑)」

    「いつから そんなこと 考えてたんですか?」

    「ずっと考えていたわけじゃないの…実は…木曜日に 和美とランチしたのね…」

    「はい…」

    「で…そんな話になって…」

    「うん…」

    「週に…何回…とか…」

    「うん…」

    「誘うのはどっちだ…とか…」

    「うん…」
    「彼女の話聞いてたら…ウチとは全然違うなって(笑) あたし…求めすぎてるのかなって…
     そもそも組み合わせが違うから 比べるのはヘン ってわかってるんだけど…」

    「うん…」

    「あのね…正直言うとね…昔 お付き合いした人とは…」

    「うん…」

    「こういうものなんだろうなってカンジで 淡々としてたの(笑)
      全てにおいて そうだったから…最後は 愛想尽かされちゃったんだけど…
     コウちゃんとは…好きな時にキスして くっついて…あたし コウちゃんのこと 貪ってるよね…」 

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■22316 / 1階層)  すこしづつ…U-48
□投稿者/ 桃子 一般♪(31回)-(2018/07/21(Sat) 11:03:29)
    言いながら コウちゃんに覆い被さった。

    「恭子さんの経験値には勝てませんが 自分だけが 食われてるなんて思ってませんよ(笑)
     貪ってるのはお互い様です(^^♪」

    コウちゃんは 穏やかに言い切った。

    「うそ…」

    「うそって何ですか?(笑)」

    「だって…」

    「焦らないでちゃんと考えてください…それでも信じられない?(笑)」

    コウちゃんの言う通りだった…

    私が求める時 コウちゃんの反応が おざなりだったことは 一度も無い。

    もちろん その逆も無い。

    「思い出しました?」

    「うん」

    「数えきれないくらい重なって…何回 不完全燃焼でした?」

    「いつも完全燃焼…」

    「でしょ? お互いを拒んだことは?」

    「一度も無い」

    「でしょ?(笑) どっちが誘うかなんて…関係あります?(笑)」

    「ない…もうひとつだけ訊いていい?…コウちゃん…満足してる?」

    「自分は…隣に恭子さんが居てくれるだけで めっちゃ 幸せです…
     ところで…続きどうします?(笑) 明日にします?」

    「バカ…」

    コウちゃんの唇を塞いだ。

    コウちゃんの両手が 私の乳房を掴んだ。

    「…」

    声にならない声が出た。

    コウちゃんに 乳房を掴まれたまま 私は 唇から離れてコウちゃんの固くなった乳首を口に含んだ。

    コウちゃんの体が ビクンと跳ねた。

    コウちゃんが私を知り尽くしているように 私もコウちゃんを知っている。

    お互い 言葉は要らない。

    2人で 大きな波に 何度ものまれた。

    「激しかったね(笑)」

    「恭子さんが…でしょ(笑)」

    「バカ…」

    「もう一回 シャワーします?」

    「ううん…シャワーは明日の朝でいい…」

    「1回じゃ 終わんない?」

    「バカ…」

    「フフフ…」

    「何?」

    「いや…恭子さんに 何回 ″バカ″って言われたかなって思って…」

    「バカ…」

    結局 3回 重なって…眠りに就いた。


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■22317 / 1階層)  すこしづつ…U-49
□投稿者/ 桃子 一般♪(32回)-(2018/07/21(Sat) 11:06:41)
    ミカから電話があったのは 夏の高校野球の代表が決まった日の夜だった。
     
    「ごめん…今 何処にいる?」

    「部屋だよ」

    「今から行ってもいい? 1人じゃないんだけど…」

    「うん 大丈夫! 気を付けて来てね」


    マンションの入り口のインターフォンが鳴ったのは 30分後だった。

    ロックを外しながら

    「そのまま上がってきて!」


    ドアが開いた音がして ミカが入ってきた。

    恋人の南郷さんも一緒だった。

    「はじめまして 南郷と言います」

    「佐々木です…こっちは パートナーの…」

    「坂本です。 どうぞごゆっくり…」

    コウちゃんが 席を立とうとしたら ミカが

    「坂本クンも 一緒にいて」

    「えっ?」

    「お願いします」

    南郷さんが 言った。
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■22318 / 1階層)  すこしづつ…U-50
□投稿者/ 桃子 一般♪(33回)-(2018/07/21(Sat) 11:09:33)
    2人で話を聞いた。

    お付き合いを始めて1年…2人の気持ちは『結婚』で固まったとのこと。

    問題は ミカのお父さんが反対しているとのこと。

    「どうしたらいいのかわからなくなって…」

    「南郷さんのご両親は?」

    「両親は 僕が高校2年の時 交通事故で…その後は 兄貴が僕と年子の弟の面倒を見てくれました」

    (兄弟3人で頑張ってきたんだ…)

    同学年の南郷さんは 学生時代 柔道選手として活躍していた。

    高校で注目されるようになり 大学2年の時 オリンピックの代表選手に選ばれた。

    その強化合宿中に大きなケガをして オリンピックには出場出来ず そのまま引退したことは

    新聞記事で知っていたが 地元に帰ってきていることは ミカから聞くまで知らなかった。

    「お仕事は やっぱり 柔道関係ですか?」

    「いえ こっちに帰ってきてからは 会社員してます」

    「営業?」

    「総務です」

    意外だった。

    「このガタイと名前は 外回り向きなんですけど(笑) 自分は 内勤の方が性にあってるんで…」

    南郷さんは 頭をかきながら 優しく微笑んだ。

    真面目な人柄は ミカから聞いている通りだった。


    2人の出会いも 図書館だった。

    「手作り手芸品系の本」の場所を訊いた南郷さんに ミカが興味を持ったらしい。

    「だって あんな大きな手で 編み物したり 裁縫したりって…ちょっと気にならない?( *´艸`)」

    後で訊いたら「本屋さんに買いに行くのは恥ずかしくて…」だったそうだ。

    その時に借りた本で お兄さんのお子さんと弟さんのお子さんに 揃いのベストを編んだそうだ。

    「今では 両方のお嫁さんのリクエストを軽く捌ける腕前になった」と言って笑った。

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■22319 / 1階層)  すこしづつ…U-51
□投稿者/ 桃子 一般♪(34回)-(2018/07/21(Sat) 11:16:34)
    ミカのお父さんは 南郷さんに会おうとしないらしい。

    「一度も会ったことないの?」

    「ううん 1回 ご飯食べてる」

    「だったら…」

    「彼の人柄とか性格に難癖つけているわけじゃない っていうのはわかるんだけど…
     結婚は別で…自分の選んだ相手じゃないのが気に入らないみたい(笑) 」


    ミカのお父さん 深山教授は 教育界の第一人者として よくメディアにも出ている。

    ミカの名前は 深山香織と言う。

    「自分が選んだ相手との結婚生活が上手くいかなかったら…ってことは考えてないのよ(笑)
     そもそも 子どもが選んだ相手を否定するって おかしいでしょ?」

    ミカは お父さんに対して辛口だ…

    「お母さんも?」

    「母は 最初は『あんたの思う通りにしたら?』って言ってたんだけど
     最近は『南郷さんの気持ちを大切にしなさい』って言ってる」 

    「そっか…で… 南郷さんのご家族には会ったの?」

    「うん。お兄さん夫婦が 食事会を開いてくれて…弟さんも家族で駆けつけてくれた」

    「反対されてない?(笑)」

    「多分…大丈夫だと思う(笑) すぐ 名前で呼んでもらったし…」

    「兄貴も弟も お嫁さんや甥っ子たちも 僕には勿体無いって 香織のこと べた褒めでした(^^♪」

    「よかったね」

    「うん…ねぇ 坂本クンは どうやって 恭子のお父さんに認めてもらえたの?」

    「どうやってって…自分の場合は…恭子さんから『お父さんが会いたいって言ってる』って連絡もらって… 会いに行きました」

    話が 自分に回ってきたコウちゃんは 少し戸惑いながら言った。
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■22320 / 1階層)  すこしづつ…U-52
□投稿者/ 桃子 一般♪(35回)-(2018/07/21(Sat) 11:24:00)
    「怖くなかった?」と訊くミカに コウちゃんは

    「怖かったです(>_<) 緊張で 朝まで眠れませんでした…
     玄関のチャイム押す前にも 逃げ出したくなりました(笑)」

    「うそ…すごく落ち着いてたじゃない」

    思わず 口を挟んでしまった。

    「恭子 気付かなかったの?」

    「うん。今 初めて聞いた」

    「でも 逃げなかったんですよね?」

    南郷さんが コウちゃんに訊いた。

    「はい」

    「何故?」 

    「それは…ただ…恭子さんと一緒に生きていきたいっていう思いだけです(笑)
     ココを超えることが出来なければ 先は無い って思ってました…
     自分の場合…お父さんの立腹は尤もなことですから…正面からじゃないと わかってもらえないですし…
     それと…母親に「誠意を伝える覚悟がないなら 今すぐ 別れちゃいな」って言われたのも大きかったです…」

    「坂本さん その時 何歳でした?」

    「19歳になってスグでした…」

    南郷さんは コウちゃんの年齢に一瞬 驚きを見せたが その後 深く頷いていた。


    「坂本クン ひとつ訊いていい?」

    ミカが 言った。

    「はい…」

    「私…恭子が 坂本クンに惹かれていく様子は 隣でずっと見てたから わかるんだけど…
     坂本クンにとって 恭子は どんな存在なのかなぁ…って…」

    「それは…ミカさんにとっての南郷さん 南郷さんにとってのミカさんの存在と同じだと思いますが… 
     大切な存在です…守る とは ちょっと違うんですけど…」

    「うん…ホント そうだよね…年齢差は気にならない?」

    「ウチは 年齢よりも大きなモノがありますから(^^; 恭子さんに大変な思いをさせていると…」

    「それは 大丈夫だよ(^^♪ 恭子は ずっと 坂本クンしか見てないから…」

    「そうですか…」

    コウちゃんは 照れたように微笑んだ。 

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■22321 / 1階層)  すこしづつ…U-53
□投稿者/ 桃子 一般♪(36回)-(2018/07/21(Sat) 11:27:18)
    「私に足りなかったのは『覚悟』だったんだ…」

    ミカが 吹っ切れたように言った。

    「南郷君は 私のことを考えて 父に会うって言ってくれているのに 私は 一度 ダメを食らっただけで逃げ出して…
     自分の親なのにね…」 

    「ウチはたまたま 1回で 認めてもらえたけど もし ダメ出し食らってたら コウちゃん どうした?」

    コウちゃんに訊いた。

    「認められるまで お父さんのところへ 何度も通ったと思います…って言いたいところですが
     普段 お父さん ドイツですもんね(笑) あの時 OK貰えて よかったです(^^♪」

    「でも 坂本クンなら 飛行機に乗って足を運んだんじゃない?(笑)」

    ミカのひとことで なんとなく重かった空気が和んだ。
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■22322 / 1階層)  すこしづつ…U-54
□投稿者/ 桃子 一般♪(37回)-(2018/07/21(Sat) 11:34:44)
    コウちゃんがコーヒーを淹れてくれた。

    「駅裏とは ちょっと違うカンジがする…」

    ミカの感想に

    「違いがわかる程 ごひいきにして頂き ありがとうございますm(__)m」

    コウちゃんがおどけながら言った。

    「最近 二人で よく行ってるんだ(^^♪」

    「そうなの? 全然知らなかった…」

    「坂本クンから聞いてなかった?」

    「この人 お客さんのことは 何にも言わないから…」

    「そうなんだ…フフフ」

    「何? あたし 何かヘンなこと言った?」

    「恭子 今 坂本クンのこと “この人”って…奥さんが板についてきたね(笑)」

    「そんなつもりじゃ…」

    南郷さんもコウちゃんも 私達のやり取りを 楽しんでいるようだった…



    「親父にぶつかってみるわ…時々 グチ言いに来てもいい?」

    「ウチでよければ いつでも!
     南郷さんも くじけないでください…
     ミカは 私の親友で恩人なんです…彼女が背中を押してくれたから『今の私』が あるんです…」

    「大丈夫です! 僕も “このひと” って言ってもらえるように時間を重ねたいですから(笑) 逃げません」

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■22323 / 1階層)  すこしづつ…U-55
□投稿者/ 桃子 一般♪(38回)-(2018/07/21(Sat) 11:41:52)
    その後 ミカは 何度か ひとりでやって来た。

    『恭子のお父さんの爪の垢煎じて飲ませてやりたい(-.-)』 が ミカの口癖になっていた。

    「そんなに言うなら 会ってみる?(笑)」

    「でも…ドイツでしょ?…」

    「あたしの実家なら大丈夫でしょ?…来週 出張で ちょっと帰ってくるんだ(^^♪」

    「ホント?ホントに会える?」

    「うん…コウちゃんに会いに こっちに来るから(笑) その時でも どう?
     あたしとコウちゃんが居ない方がいいんだったら 南郷さんと2人で実家に行ってくれたらいいし…」

    「恭子と坂本クンが良ければ 一緒がいいな…」

    「わかった…都合の悪い日ってある?」

    「あたしは無いけど…南郷君は 木曜日以外がいいと思う…木曜日は 夜 ジムに通っているの」

    「じゃ木曜以外でね(^^♪ ジムって…南郷さん 復帰?」

    「まさか(笑) 膝の筋肉を鍛えるんだって…あのケガ 相当ひどかったみたいで…歩けなくなっても
     不思議じゃなかったんだって…筋肉も スポーツしていない人の半分以下くらいに落ちて…
     今も まだ 完全には戻ってなくて…だから『標準』をキープするために行ってるんだって…」

    「そうなんだ…」

    「身長185pもあって 肩幅もガッシリしているのに あたし お姫様ダッコしてもらえないんだよ(笑)  
     まっ 実際は お姫様ダッコ どころか…ってカンジなんだけどね(笑)」

    「えっ?」

    「うちは どっかの誰かさんとこと同じで 清いお付き合い ですから…(笑)」

    「どっかの誰かさんって…」

    「違った?(笑)」

    ミカが私の顔を見た。

    「あたし そんなこと言った覚えないけど…」

    「1回だけ…いつだったか 2人で飲んだ時…あたしが 茶化して訊いたら すっごいマジな顔で
     『そういう気持ち ないわけないじゃない!』って怒ってさ…
     『でも まだ 流されちゃいけないって思ってる』って…その時は ふたりの気持ちも同じで
     双方の親も認めているって言うのに 何を迷っているんだろうって思ったんだけど…今ならわかる…
     ちゃんと足場を固めたかったんだなって…それは 人それぞれだろうけど…
     恭子の場合は ルームシェアだったんだなって…
     恭子…坂本クンと暮らすようになってから 前よりもっと穏やかになったし 本当に幸せいっぱいってカンジだもんね…
     だから あたし 恭子を見倣うって…南郷君に言ったんだ(笑)」

    ミカが そんな風に見ていてくれたことに驚いた。
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■22324 / 1階層)  すこしづつ…U-56
□投稿者/ 桃子 一般♪(39回)-(2018/07/21(Sat) 11:46:08)
    「南郷さん 大丈夫だった? そんなこと言って…」

    「最初は びっくりしてた…(笑) でも…わかるって言ってくれて…
     あたし…出掛けても11時には帰るんだよ(笑)
     シンデレラよりも早いんだから!けど…さすがに…指1本も触れないっていうのは…ね(笑)
     だから 歩く時は 腕組んでる(笑) 」

    コウちゃんと腕を組んで歩くだけで嬉しかった頃を思い出した。

    「だからさっ あたし…焦る気持ちはないんだ…
     ゆっくりゆっくりしあわせになっているモデルが 目の前にいるから(笑)
     ただ…南郷君と話をしようとしない親父の態度が 腹立つんだよなぁ」



    食事会は 翌週の土曜日に決まった。

    「土曜日…おば様は?」

    ミカから打診されたのは 水曜日だった。

    「留守番(笑) ちょっとムクれてるけど… 」

    「おじ様と一緒は無理かな?」

    「そんなことない! むしろ 喜んで来ると思うけど…いいの?」

    「うん…実は…ウチの母が 恭子のご両親に会いたいって言いだして…厚かましくて ごめん…」

    「そんなの 全然 気にしないで! コウちゃんに 『腕によりをかけるように』 言っておくから(笑)」

    「“ウチの人” じゃないの?(笑)」

    「まだ そこまでは熟してないっ!(笑)」

    「そうなんだぁ( *´艸`) 」

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■22325 / 1階層)  すこしづつ…U-57
□投稿者/ 桃子 一般♪(40回)-(2018/07/21(Sat) 11:54:42)
    土曜日は 総勢7人の食事会になった。

    メニューは 手巻き寿司にした。コウちゃんは 文字通り 酢飯から具材まで準備してくれた。

    私にはよくわからないが 父や南郷さんは「このひと手間が…」と言っていたから なにかしらの工夫があったのだと思う。

    女性陣は「美味しいね」を繰り返すだけだった( *´艸`)

    コウちゃんが用意した寿司ネタは 殆ど カラになった。



    お腹がふくれたところで 父が口を開いた。

    両親には 予め 今日の目的は話しておいた。

    「恭子から聞きましたが お二人は どうして 私が 坂本クンと恭子の仲を認めたかを聞きたいとか?」

    「はい」ミカと南郷さんは 声を揃えて言った。

    「ミカさんのお父様は 南郷さんに会おうとしないとか?」

    「はい」ミカがはっきりと答えた。

    「私は 父親として お父様の気持ちがよくわかります。これは…理屈ではなく 感情が拒絶するんです」

    ミカが 静かに頷いた。

    「娘の相手が 同性で しかも 大学生になったばかりだと聞いた時は 耳を疑いました。
     一瞬 娘がふざけているのかと思いましたが 坂本クンの話をする娘は 真剣そのものでした。
     私は 自分の育て方を否定されたような気がして 娘を怒鳴ることしかできませんでした。
     『会わせられるもんなら会わせてみろ』と…正直に言うと…私は 意地の張り方を間違えたんです…」

    「えっ?」

    ミカが 小さな声を出した。

    「お父様のように『会わない』と言うべきだったんです…そうすれば 少しは時間が稼げたのに…
     でも 私は 娘には 私の言葉を相手に伝える度胸は無いと思い込んでいました…
     それに…もし 伝えることが出来たとしても…聞かされた相手は 当然 怯むだろうと…
     だから まだ 態勢を整える時間はあると…(笑)
     ところが 娘は スグに相手に伝えてしまった。おまけに正直に…
     それを聞いた相手は 怯むどころか 真正面からぶつかってきた…」

    父は 一度言葉を切ってから 続けた。

    「娘から『明日 坂本クンが ウチに来てくれるから』と 告げられた時は 腰が抜けそうになりました…
     まさか そんな迅速に話が進むとは思っていなかったんです…
     若干 追い詰められはしましたが それでも まだ 勝ち目はあると思ってました。
     相手は19歳になったばかり こちらは 百戦錬磨の企業人…分が悪いハズないじゃないですか…」

    南郷さんが 納得した顔で頷いた。

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▲[ 22199 ] / 返信無し
■22326 / 1階層)  Re[1]: すこしづつ…U-58
□投稿者/ 桃子 一般♪(41回)-(2018/07/21(Sat) 12:01:48)
    「でも…約束の時間に 手土産を持って現れた19歳は 私の想像を超えていました。
     和室で 座布団を外してキチンと挨拶するのを見た時点で 気後れしたのは 私の方でした。
     和室に通したのは 『足崩していいよ』で余裕をみせる という腹積もりだったのですが…
     これが 見事に玉砕で…(笑)」

    「坂本クン 全然 姿勢が崩れなかったの(^^♪ 『足崩していいよ』は 最後まで言えなくて…
      だから この人も ずっと正座のまま(笑)」

    母の言葉に ミカが少し微笑んだ。

    「結局…私は 坂本クンの『凛とした佇まい』と 理路整然とした発言に 圧倒されて 父親としての威厳を
     見せることが出来なかったんです。
     その代わり 坂本クンが 娘のことを 真剣に思っていてくれる姿を見ることができました。
     そこに賭けることにしたんです。もし 2人が上手くいかなくなったとしたら それは 坂本クンに
     非があるのではなく 娘が 坂本クンの気持ちに応えることが出来なかったからだろう…と…」

     父は そこで ひと息ついた。

    「ミカさん 南郷さん…私は 私の意地を通した結果 早々に坂本クンと会う羽目になりました。
     娘の気持ちを大切にする理想の父親 なんかじゃないんですよ。
     今 お父様は ご自分の意地を通そうとしていらっしゃる。
     お二人が その『意地』に対してどう向き合うのか…もしかしたら そこを見極めようとして
     いらっしゃるのかもしれませんね…」

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■22327 / 1階層)  すこしづつ…U-59
□投稿者/ 桃子 一般♪(42回)-(2018/07/21(Sat) 12:28:54)
    「南郷さんは 娘を送ってきてくれると 必ず 主人の様子を訊いてくれます。
     私が応えている間に 娘は 必ず 主人に「顔 出す?」と訊きに行きます…
     結果は いつも同じですが…」

    ミカのお母さんが 言った。


    「会いたくない意地 と 会わせたい意地 の 根比べね…」

    母が言った。

    「勝敗をつけるとしたら… 会いたくない意地 が 負ける」

    父が言い切った。

    「でも…会いたくない意地が 会う と言った時 しり込みしたら 会わせたい意地 の負け…
     次の機会は 2度と来ない」

    南郷さんが しっかりと 父の顔を見た。

    「ふたりは 今のままでいい。何も気負わず ただ 真剣であることだけを伝えればいい…
     坂本クンが 私の意地に応えたように おふたりも お父さんの意地を 正面から受けなさい」

    「ありがとうございます」

    南郷さんとミカが 父に頭を下げた。 
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■22328 / 1階層)  すこしづつ…U-60
□投稿者/ 桃子 一般♪(43回)-(2018/07/21(Sat) 12:37:58)
    みんなが帰ったあと

    コウちゃんが バーボンのロックを作ってくれた。

    「珍しいね…」

    「たまには…こんなカンジもよろしいのでは?(笑)」

    「うん」

    「あの2人 うまくいくよね」

    「大丈夫ですよ」

    コウちゃんの「大丈夫」には 不思議な安心感がある。

    「なんかおつまみ持って来ましょうか?」

    立ち上がったコウちゃんに…

    「うん…コウちゃん!」

    「はい?」

    「これからもよろしくね(^^♪」

    「恭子さん… そういうのは…冷蔵庫開けてる時じゃない時に言ってくださいよ(笑)」

    「バカ…もう言わないっ」

    戻ってきたコウちゃんが言った。

    「拗ねた顔も好きですよ(笑)」

    「あっ!」

    「何ですか?」

    「今…何て言った?」

    「えっ?…」

    「好き って言ったよね?」

    「ええ…言いましたけど…」

    「初めて聞いた!」

    「そんなことは無いと思いますが…(笑)」

    「ううん…初めて!だって…私…告白の時も 好きって言われてないもん!」

    「そうでしたっけ?(笑)」

    「うん! ねっ もう1回言って(^^♪」

    「言いません(笑)」

    「なんだ…つまんない…」

    「お風呂入ってきますっ(笑)」

    「うん」



    寝室に戻った時 コウちゃんは スヤスヤと寝息をたてていた。

    今夜は 本当に眠ったらしい。

    (お疲れ様でした…)

    私は コウちゃんの額に軽く触れてから 伸ばされた右腕に頭を乗せた。


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