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Nomal すこしづつ…V-1 /桃子 (18/07/21(Sat) 12:58) #22329
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■22329 / 親階層)  すこしづつ…V-1
□投稿者/ 桃子 一般♪(44回)-(2018/07/21(Sat) 12:58:12)
    3か月後…

    ミカのお父さんは 突然「南郷君に家に来てもらいなさい」と言った。


    バイトから帰ったコウちゃんに

    「南郷さん 明日 ミカのお父さんに会うって…」

    と報告したら コウちゃんは

    「なんか…自分の時のこと 思い出しました。
     南郷さん 今夜 眠れないかもしれないですね…」

    「大丈夫だよ! 南郷さんだって 心の準備はしてたと思うし…」

    「ですよね(^^♪」

    「でね…明日なんだけど…遠出のドライブ 次回にしてもいいかな?」

    「はい(^^♪」

    「理由聞かないの?」

    「気になって ドライブどころじゃないでしょ(笑) 日曜日はミカさんとお食事会?」

    「何でわかったの? ミカに訊いた?」

    「まさか(笑)」

    「南郷さんから連絡あった?」

    「ミカさんの携帯番号は知ってますが 南郷さんと番号の交換はしてませんよ(笑)」

    「じゃ どうして?」

    「ミカさんの記念すべき日を 恭子さんが無視することはないだろうなって…
     明日は 南郷さんやご家族と過ごすだろうから…声かけるとしたら 日曜日かなって…」

    「うん…コウちゃん ごめんね…」

    「何が?」

    「友人を優先して(笑)」

    「恭子さんが そこを蔑ろにする人になったら 困ります(笑)
     早起きの予定が変わった分 今夜は 夜更かし出来ますね(^^♪」

    「ふたりの前祝い やっちゃう?」

    「いいですね(^^♪」


    食事の後 2人で ゆっくり過ごした。

    ソファに座って…窓から夜景を見ながら…

    「なんか ドキドキしてきた…」

    「うん」

    「コウちゃんが ウチに来てくれた時だって ここまではドキドキはしなかったのに…」

    「そうなんですか?」

    「うん(^^♪」

    「どうして?」

    「だって…あの時 コウちゃん 電話で 大丈夫 って言ってくれたでしょ…
     それと…恭子さん 一人で泣かせるわけにはいかない って…だから…安心してた…」

    「覚えててくれたんですか…」

    コウちゃんは 少しはにかんだ。

    「バカ…忘れるわけないじゃない …」

    コウちゃんの胸に顔を埋めた。

    「コウちゃん…」

    「はい」

    「あたし あれから ひとりで泣いてないよ…
     うれし泣きはあるけど(笑) あの時のような涙は流してない…」

    コウちゃんは 黙って私の髪を撫でている。

    「ねぇ…コウちゃんは?」

    「ん?」

    「1人で泣いてない?」

    「泣いてないっすよ(^^♪ いつも 隣に 大好きな人が居るから…」

    「うん…」

    コウちゃんが言ってくれた「大好き」のひとことが 嬉しかった。

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22330 / 1階層)  すこしづつ…V-2
□投稿者/ 桃子 一般♪(45回)-(2018/07/21(Sat) 13:05:21)
    ミカから 結婚式の招待状をもらったのは 春の声が聞こえてきた3月だった。

    式は GWに決まったとのこと。

    封筒の宛名は 私とコウちゃんの連名だった。

    コウちゃんに招待状を見せた。

    「めっちゃ嬉しいです(^^♪」

    その時 インターフォンが鳴った。

    「どうぞ! カギ開いてるから 入ってきて!」


    ミカと南郷さんが入ってきた。

    「このたびは お招きいただきありがとうございます」

    コウちゃんが かしこまって挨拶した。

    「そのことについて 坂本さんにお願いがあって来ました」

    南郷さんが 切り出した。

    「単刀直入に言います。披露宴の司会を引き受けて頂けないでしょうか?」

    「へっ?」

    コウちゃんが 私の顔を見た。

    コウちゃんの驚く顔を見るのは 3度目だ…

    ミカが説明してくれた。

    「結婚式は どうしても 花嫁がメインになるでしょ…
     南郷君も そんなカンジで あたしの好きなように…って言ってくれたのね…
     でも…2人の式だから…南郷君の希望も聞かなくっちゃ って思って…
     何かある?って訊いたの(^^♪ そしたら…ひとつだけある って…で…何?って訊いたら…
     披露宴の司会を どうしてもお願いしたい人がいるって…」

    「僕…自分が披露宴をする時は 自分達のことを知っている人に頼みたいって ずっと思ってたんです。
     それを 坂本さんにお願いしたいんです」

    南郷さんは言い切った。

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22331 / 1階層)  すこしづつ…V-3
□投稿者/ 桃子 一般♪(46回)-(2018/07/21(Sat) 13:16:22)
    「南郷さんのお気持ちは嬉しいですが…冷静に考えて 本当にそれでいいんですか?
     大切な門出のお披露目ですよね? それを 何の経験もない若造に任せて…後悔しませんか?
     それに…ミカさんのお気持ちは?…」

    「あたしは…最初…正直言って…式場の人に任せてもいいんじゃないかなって思ったのね
     いくら何でも 坂本クンには 荷が重いって…」

    ミカは 言葉を続けた。

    「でも…南郷君は 頼むだけ頼んでみるって言って 一歩も引かなくて…(笑)
     直接本人に訊いて それでダメだったら諦めるって…それで 2人でお願いに来たの…
     だって…本音言うと あたしだって 坂本クンにやってほしいもん(笑)」

    「ミカさんのご両親・南郷さんのご兄弟は何て?」

    「我が家は 大賛成(^^♪」

    「ウチは 兄も弟も 最初は驚いてましたが…僕たちが決めたことなら…って…
     香織の友人なら 大丈夫だって…」

    「その友人が まだ大学生だってことは…?」

    「兄は それがどうした と…」

    「もうひとつお伺いしてもいいですか?」

    「はい」

    応える南郷さんは 真剣そのものだ。

    「披露宴の司会を ご自分達でセットすること 式場の方は…」

    「相談したら 何の問題もないって…二次会ではなく披露宴の司会だと念を押しましたが 大丈夫です」

    「ずいぶん 手回しがいいですね(笑)」

    「坂本クンなら そう言うだろう って香織が言うので 2人で手分けして 確認取りました」

    コウちゃんは 小さく息を吐いた。

    「どうやら 断る という選択は残されていないみたいですね(笑)」

    「それじゃ…」

    「正真正銘の未熟者ですが 精一杯務めさせて頂きます」

    南郷さんは 本当に嬉しそうだった。

    その顔を見つめるミカも ホッとした表情だった。

    「よかった〜…恭子は 大丈夫って言ってくれたけど…ドキドキした〜」

    「恭子さん 知ってたんですか?」

    「うん…ゴメン…今日の昼休みに…」

    「あたしが 恭子から頼んで って言ったら…そういうことは引き受けられないって…」

    「だって…」

    「それは 恭子さんが正解です(笑)」

    南郷さんが 笑いながら言った。
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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22332 / 1階層)  すこしづつ…V-4
□投稿者/ 桃子 一般♪(47回)-(2018/07/21(Sat) 13:20:07)
    2人が帰ったあと コーヒーを飲みながら

    「なんか すごいことになってしまいましたね…」

    「ホント…(笑) でも あたし コウちゃんは 断らないって思ってた…」

    「どうして?」

    「なんとなく(笑)」

    「その根拠の無い自信は どこから湧いてくるんですか?(笑)」

    「わかんない(笑)」

    「でも…ミカさんも南郷さんも ホントは 大変だったんじゃないかな…」

    「えっ?」

    「式場とのやりとりは そう珍しいパターンじゃないかもしれないから 無難に進んだと思いますが…
     ご両親やご兄弟には…寝耳に水 だったハズだから…」

    「そうだよねぇ…でも…ミカのお母さんは コウちゃんに会ってるし…」

    「とは言え…ミカさんのお父さんは あの教授ですからねぇ…
     南郷さんのご兄弟にも ご挨拶した方がいいのかなぁ…まっ その辺は もうちょっと考えますっ(笑)
     恭子さん!」

    「何?」

    「お風呂…一緒に入りましょう(^o^)」

    「うん 先に入ってて…すぐ追いかけるっ♪」
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■22333 / 1階層)  Re[1]: すこしづつ…V-5
□投稿者/ 桃子 一般♪(48回)-(2018/07/21(Sat) 13:23:47)
    私は バスタブの中で コウちゃんに後ろから抱えられるのが好きだ。

    体を洗ったあと コウちゃんに背中を向けてお湯に入る。

    コウちゃんの手が 前に回る。その上に 自分の手を重ねる。

    それだけで 1日の疲れが取れる。


    いつものように バスタブに体を沈めたら

    突然

    コウちゃんの唇が 私の首筋を這い始めた。

    すぐに 体が反応した。

    首から背中へと コウちゃんの唇が移動する…両手は いつの間にか 私の乳房を弄んでいる…

    こらえ切れずに 声が出る…コウちゃんは 止まらない…

    体の向きを変えて コウちゃんの唇を追いかけた。

    長いキスのあと

    「コウちゃん…ベッド…いこ…」

    体を拭く時間がもどかしかった。

    バスローブを羽織って 寝室に入った。
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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22334 / 1階層)  すこしづつ…V-6
□投稿者/ 桃子 一般♪(49回)-(2018/07/21(Sat) 13:27:35)
    コウちゃんは 私を ベッドに寝かせると 静かに 覆い被さって 私の顔全体に キスをする。

    額・鼻筋・両頬・顎・耳朶…

    コウちゃんに触られた胸は 既に限界まで硬くなっている。

    コウちゃんの右太腿が私の中心を静かに刺激しているのを感じながら

    コウちゃんのキスに焦れていた。

    漸くコウちゃんの唇が 私の唇に触れた…

    「離れないで…」

    私は コウちゃんにしがみついたまま 体を入れ替えた。

    コウちゃんの全身に 舌を這わせた。

    「恭…子…さ…」

    コウちゃんの息が続かない。

    コウちゃんの両腿を開き 顔を近づけて 一気に舐めた。

    普段 アルトボイスのコウちゃんの声が 1オクターブ高くなった。

    コウちゃんの蜜は 吸っても吸っても 尽きることなく溢れてくる…

    「ここ…擦られるのが 好きなんだよね…」

    耳元で囁くと 私の指に合わせてコウちゃんの腰が浮き始める…

    呼吸が荒くなる…

    頂点に達する寸前に指を抜いた。

    そして…コウちゃんに自分を重ねた。

    あとは 本能に任せるだけだった…

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■22335 / 1階層)  すこしづつ…V-7
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(50回)-(2018/07/21(Sat) 13:29:52)
    お互いの呼吸が整うのに どれくらいかかっただろう…

    「フフフ」

    「何ですか?」

    「いや…コウちゃん 可愛いなって思って( *´艸`)」

    「どういう意味です?」

    「普段は 冷静沈着なのに…あたしだけが知ってる顔だよね(^^♪」

    「当たり前ですっ」

    「あたしだけが知っている声…だよね(^^♪」

    「今更 そんな確認しないでくださいっ」

    コウちゃんが照れた…

    「そっか…あたしだけかぁ〜」



    シャワーのお湯が 体を流れるのを見ながら ふと思った…

    コウちゃんは いつか 私のことを『恭子』と呼んでくれるのだろうか…

    多分…一生『恭子さん』だろうな…

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■22336 / 1階層)  すこしづつ…V-8
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(51回)-(2018/07/21(Sat) 13:36:13)
    寝室は ベッドのシーツが 取り替えられて 先刻までの熱気も 消えていた。

    コウちゃんの足音が 静かに 寝室を通り過ぎた。

    (あっ…リビングに行ったな)

    ゆっくりと追いかけた。

    「コウちゃん…」

    「ん?」

    「シーツありがとう…」

    「あのままでもよかったんですけどね(笑) コーヒー飲みます? アイスですけど…」

    「うん ありがとう…」

    コウちゃんが グラスを渡してくれた。

    「ねぇ…飲ませて?」

    「何言ってんですか(笑)」

    「だって…」

    言い出した手前 引っ込みがつかなくなってしまった…

    「今夜だけですよ(笑)」

    コウちゃんが 私の頭をポンポンとたたきながら言った。

    そして グラスのアイスコーヒーを口に含むと 私の顎を少しだけ持ち上げた。
     
    コウちゃんの口から 注意深く コーヒーが流れてきた。

    (これ…クセになるかも…でも…コウちゃん 今夜だけって言ってたから…)

    「もう1回!」

    (コウちゃん どうするかな?…)

    コウちゃんは 頷きながら 同じようにしてくれた…

    「アイスがアイスじゃなくなりますね(笑)」

    「ううん…そんなことないっ」

    思わずムキになってしまった…

    コウちゃんは 優しく微笑んで 残りのコーヒーを飲んだ。

    私のグラスが 空になったのをみて

    「そろそろ休みます?」

    「うん…」

    洗いたてのシーツが 肌に気持ち良かった。

    隙間が無いくらい コウちゃんにぴったりとくっつきながら

    「ねぇ…さっき…どうして…コーヒー飲ませてくれたの?」と訊いた。

    「あのまま 拒否し続けたら 恭子さん 困っちゃうでしょ?(笑)」

    (わかってたんだ…)

    「じゃあさっ…どうして 2回目…」

    「それは…」

    コウちゃんが 私の目を見て言った。

    「1回目が 気持ちよかったからです(笑)」

    「うん…」

    それ以上 言葉が出なかった。

    「さっ ホントに寝ないと…恭子さん 明日 早番でしょ?」

    「うん…おやすみ」

    「おやすみなさい」
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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22337 / 1階層)  すこしづつ…V-9
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(52回)-(2018/07/21(Sat) 13:39:57)
    アイスコーヒーの所為か それとも まだ コウちゃんの余韻が残ってるのか なかなか 寝付けなかった。

    その気配を感じたコウちゃんが

    「眠れない?」

    「うん(^^; コーヒー飲んだからかなぁ…」

    「眠れるおまじない してあげましょか?(笑)」

    「そんなのあるの?」

    「あるんです(笑) 静かに目をつぶってください。
     大きく息を吸って…吐いて…ハイ もう1度…」

    言われるままに深呼吸をして 肺の空気を出し切った瞬間

    コウちゃんの唇が 私の唇に触れてスグに離れた。

    「そのまま 目を開けずに 心の中で ゆっくり100まで数えてください…」

    少し眠くなってきたような気がした…でも…まだ…

    気付いたら 朝になっていた。


    アラームが鳴る前に ベッドから出た。

    いつもの時間に コウちゃんが起きてきた。

    ふたりで 朝食の支度をしながら

    「あれから 眠れましたか?」

    「うん…50くらいまで数えたのは 覚えてるけど…あとは…気が付いたら 朝だった(笑)」

    「それは よかったです(^^♪」

    「ねぇ コウちゃん ひとつ訊いていい?」

    「なに?」

    「昨夜の…あの…深呼吸の後のキスって必要なの?(笑)」

    コウちゃんは 真顔で

    「恭子さんには不要だったかもしれませんが 自分には必要だったんです」と言った。

    「バカ…コウちゃんのキスが不要なわけないでしょ!」

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■22338 / 1階層)  すこしづつ…V-10
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(53回)-(2018/07/21(Sat) 13:46:36)
    4月になった。

    コウちゃんは 大学4年生になった。

    履修科目は 殆ど3年間で取ったらしい。

    今は ミカ達の結婚式の準備の手伝いをしている…



    ミカのご両親と南郷さんのご兄弟に会ったのは 春休みに入ってすぐだった 。

    お宅に伺うのがいいのか 電話にするか…アレコレ考えて

    「時間差で『駅裏』に来て頂くことにしましたっ」


    最初に会ったのは ミカとミカのご両親…

    コウちゃんとの関係は ミカが説明した。

    黙って聞いていた教授は

    ひとこと

    「よろしく」…は ミカからの報告。

    南郷さんのお兄さんと弟さんにも 正直に打ち明けたらしい。

    お兄さんは「弟が『坂本クン』と言うから てっきり…」と笑い

    弟さんには

    「兄貴の話を聞いて 若いのに ずいぶんしっかりした子がいるんだなぁと思っていました」 と言われたらしい。

    ミカによると(笑) お兄さんも弟さんも 「よろしくお願いします」 と言ってくれたそうだが…

    「何かトラブったの?」

    恐る恐る訊いてみた。

    「そういうわけじゃないけど…(笑)」

    「なに? 勿体ぶらないでよ!」

    「奥さん達が『坂本さんってイケメン!』で盛り上がってた(笑)
     あの二人も坂本クンのファンになるよ( *´艸`) 」



    1日で ミカのご両親・南郷さんのご兄弟に会ったコウちゃんは さすがに疲れた顔で帰宅した。

    「大変だった?」

    「そんなことはなかったんですが…緊張しました(^^; 」

    「ミカが 色々報告してくれたよ…」

    「ご両家から 『やっぱり代わりの人を』って?…」

    「どちらも 『よろしく』 だって(^^♪」

    「そうですか…ちょっと ホッとしました」

    そう言って コウちゃんはソファに寝転んだ。

    私は 食事の支度中だった包丁を置いて 上から被さった。

    「お疲れ様でした(^^♪」

    「うん…」

    そのまま…ハグ…

    「よっしっ エネルギー充電 完了(笑) お腹空きましたっ 今日のメニューは?」

    「チキンのクリーム煮」

    「久しぶりっすね(^^♪」

    「もうすぐ出来るから ちょっと待ってて!」

    「はいっ」
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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22339 / 1階層)  すこしづつ…V-11
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(54回)-(2018/07/21(Sat) 13:52:07)
    結婚式は いい式だった。

    コウちゃんは 初めてとは思えなくらい堂々としていて 2人がお色直しで中座している間

    南郷さんの職場の女性たちから 写真攻めにあっていた。

    フト見ると 私達の同僚も同じように スマホをかざしている。

    後輩から 「佐々木さんも一緒に!」 と声をかけられて 断ることも出来ず…一緒にカメラに収まった。

    最後の花束贈呈は 南郷さんから ミカの両親へ ミカからは 南郷さんのお兄さん夫婦だけでなく弟さん夫婦にも贈られた。

    辞退する弟さんに ミカがどうしても譲らなかったと お兄さんが 親族代表の挨拶で仰っていた。

    押し通すミカの顔が 想像できて 微笑んでしまった。

    コウちゃんとは 殆ど話す時間のないまま 私は 2次会に向かった。


    帰宅すると コウちゃんは リビングで 引き出物のカタログを眺めていた。

    「おかえりなさい(^^♪」

    「ゴメン…遅くなっちゃった…」

    「2次会 楽しかったですか?」

    「うん…南郷さんとミカが コウちゃんによろしくって…」

    「うまく出来てたんでしょうか…」

    「あたしが 今まで出た 披露宴の中では ダントツだったよ(笑)」

    「ダメな方で?」

    「バカ…その反対に決まってるでしょ(笑) 汗流してくるね♪」

    「あっ お風呂沸いてるんで ゆっくりどうぞ(^^♪」

    「ありがと(^^♪」


    リビングに戻ったら コウちゃんは 寝室に引き上げていた。

    「南郷さんが コウちゃんによろしくって 何度も言ってたよ…ブーケトスの件…」

    そう言いながら コウちゃんの右腕に頭を乗せた。
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■22340 / 1階層)  すこしづつ…V-12
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(55回)-(2018/07/21(Sat) 13:56:21)
    ブーケトスをする しない で 南郷さんと意見が分かれている話は ミカから聞いていた。

    「どうせしないんだから ブーケは持たないって言ったら 式場の人どころか南郷君にも
     それはちょっと… って言われてさっ…」と ぼやいていた。

    何故そこまで ブーケトスを拒否するのかについて ミカは ひとことも言わなかった。

    最終打ち合わせに出かける時にも 「これだけは 絶対 折れないんだ!」 と言っていたが…

    翌日…前日とは 打って変わって 晴れ晴れとした表情で

    「やっぱり ブーケは持つことにした」と 報告してくれた。

    何があったのかは 「当日のお楽しみっ♪」で 教えてもらえなかった…


    披露宴が始まる直前

    新郎友人への サムシングブルートスが行われた。

    次は いよいよ…と女性陣が なんとなくざわつき始めた時…コウちゃんのアナウンスが流れた。

    「新婦香織さんの持つブーケは ご本人たっての希望で 新郎 夏喜さんのご両親の墓前に届けられます」

    会場は 水を打ったように静かになった。

    静寂を破ったのは

    ひとりの拍手だった。

    その拍手につられて 会場中が 大きな拍手の渦を作った。

    最初に拍手をした人は 主賓挨拶をしてくれた 南郷さんの上司だった。

    「こんなに心が暖かくなる披露宴に招いてくれて 本当にありがとう」 のひとことは列席者全員の気持ちを代弁してくれたと思う。

    「ブーケトス…あれ…坂本クンのアイディアだったんです」

    南郷さんが 2次会の時 こっそり教えてくれた。

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22341 / 1階層)  すこしづつ…V-13
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(56回)-(2018/07/21(Sat) 14:05:34)
    「打ち合わせの時も ガンとして 『持たない』 と言う香織に 『じゃ トスは止めましょう』 と 声をかけたのはそれまで 黙って聞いていた坂本クンでした。
     『投げる代わりに ミカさんが 持って行くってことにしたらどうです?』の意味が理解出来なくて(笑)
     みんな ポカーンとしたんです…僕も そうでした(笑)」

    南郷さんの言葉は続く…

     「『南郷さんのご両親のお墓に届けるというのは?…』と言って 坂本クン ニコッと笑ったんです…
     それを見た香織の表情が緩みました。
     『それなら 持つ』…そのひとことで 固まっていた空気が 動き始めました(笑)
     香織は 『坂本マジックにひっかかった』 って言ってましたが…坂本クンから 聞いてます?」

    「話す人に見えます?(笑)」

    「やっぱり…香織もそう言ってました。『坂本クンは 自分から喋る人じゃない』 って…だから(笑) 代表で 報告にきましたっ(^^♪」


    「もっとベストな方法はあったと思いますが…
     ミカさんだけでなく 来てくれた人たちにも納得してもらえたんなら よかったです(^^;」

    「それとね…」

    「ん?」

    「今日 カッコよかった(^^♪ 後輩たちが ザワザワしてた(笑)」

    「恭子さんも 写真撮りに来てましたね(笑) あらっ?って思いましたもん」

    「だって…後輩に声かけられて 断れなかったんだもん(>_<) でもね…」

    「なに?」

    「心の中で… 『この人と一緒に暮らしてるんだぞ〜 羨ましいだろ〜』 って…自慢してた( *´艸`)」

    「それは…ありがとうございます(笑)」

    「2次会でも コウちゃんの話題で 盛り上がって…ミカに直接 『司会してた人 紹介して!』 って
     頼み込んでる子もいて…けど ミカは 『あの子は 彼女いるからダメ』 って気持ちいいくらいバッサリ切ってた(笑)」

    コウちゃんは おかしそうに笑っている。

    「彼女持ち って…(笑) そんなこと言って ミカさん 大丈夫だったんですか?」

    「あたしも ちょっとビックリした(笑) でも 言われた子は 何も言ってなかったら いいんじゃない?」

    そう言いながら コウちゃんに ピッタリくっついた。

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22342 / 1階層)  すこしづつ…V-14
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(57回)-(2018/07/21(Sat) 14:09:12)
    「コウちゃん 暑い?」

    「ぜんぜん…」

    「でも…これからあつくなるよね?」

    「季節は 夏に向かいますからねぇ…」

    コウちゃんの素の反応に 思わず 吹き出してしまった。

    「バカっ…そうじゃなくて…」

    「…あっ! うわっ!あちゃ〜(>_<)」 
      
    「今の… 今日いちばんの ビックリだわ(笑)」

    「すみません…」

    「今夜は お預けね(笑)」

    「マジっすか?」

    「マジ マジ(笑) だって 笑い過ぎて…(笑)
     でも 何も無し は 可愛そうだから(笑) これで おとなしく寝なさいっ( *´艸`)」

    コウちゃんの額に デコキスをした。

    「はい…」

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22343 / 1階層)  すこしづつ…V-15
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(58回)-(2018/07/21(Sat) 14:12:29)
    翌朝 仕事だった私は コウちゃんに見送られて 家を出た。

    「バイトは 11時から?」

    「はい…今日は ラストまでっす… 連休なのにどこにも遊びに行けず…ごめん…」

    「それは お互い様でしょ(笑) 仕事終わったら 『駅裏』 に顔出すね♪」

    「待ってます(^^♪」

    「がんばってね(^^♪」

    「はい(^^♪ 恭子さんも 居眠りしないようにね(笑)」

    「昨夜 しっかり寝たから 大丈夫!(笑) いってきます(^^♪」

    「いってらっしゃい(^^♪」

    コウちゃんのハグとキスのセットは 1日のエネルギーの源だ(笑)


    「おはよう! 昨日は ホントにありがとう(^o^) 世間は 連休だといのに出勤?」

    ミカに声をかけられた。

    「おはよう!そっちこそ 結婚式の翌日から仕事って…今日くらい休み取ればよかったのに」

    「ちょっとは考えたんだけどさっ…やっぱ この時期はねぇ…(笑) それに…」

    「もしかして 南郷さんも仕事?」

    「うん…あっちも しばらくはいろいろ忙しいみたい(笑)」


    連休中の図書館は 普段より 学生さんが多い。

    学生さんたちの後ろ姿を見ながら 3年前の今頃を思い出していた。

    1年生だった坂本クンが バイトしているカフェに入って…

    今は その坂本クンと一緒に暮らしている…

    あの頃 今の生活は 想像も出来なかった…
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■22344 / 1階層)  すこしづつ…V-16
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(59回)-(2018/07/21(Sat) 16:53:01)
    お昼休み コウちゃんから Lineが入った。


       バイトに向かいます。
       今夜は カレーです(^^♪


    相変わらず シンプルな文面だ(笑)

    卒論にとりかかると言いながら バイトに行くって…コウちゃんらしいと言えばコウちゃんらしい… 


    閉店間際の『駅裏』は 連休だからか いつもよりお客さんが多かった。

    カウンターに座ると コウちゃんが 他人の顔で接客してくれた(笑)

    こちらも他人行儀に

    「カフェオレをひとつお願いします」

    「少々お待ちください」

    何の変哲もないやりとりが 可笑しかった。


    午後7時『駅裏』の閉まる時間だ。

    私は 最後のお客を装って立ち上がった。

    「ありがとうございました」

    コウちゃんが 笑顔で 送り出してくれた。

    外で待つこと15分

    「お待たせしました」

    「お疲れ様(^^♪」

    「恭子さんもね(^^♪」

    2人で帰るのは 久し振りだ。

    「カレーありがとね そろそろ食べたいと思ってたんだ(^^♪」

    「でも…サラダは間に合いませんでした(^^;」

    「それは 帰ってからでも大丈夫!」

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■22345 / 1階層)  すこしづつ…V-17
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(60回)-(2018/07/21(Sat) 16:54:39)
    翌日は 連休最終日だった。

    出勤する私に コウちゃんが切り出した。

    「今夜 ちょっと付き合ってほしいところがあるんですけど…恭子さん 今日 早番ですよね?
     仕事の後 時間 大丈夫っすか?」

    「うん 大丈夫…」

    「終わる頃 図書館にお迎えに行きますっ」

    「わかった…」

    ハグとキスは いつも通りだったから…コウちゃん 何を考えているのかな…と思いながら 部屋を出た。

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■22346 / 1階層)  すこしづつ…V-18
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(61回)-(2018/07/21(Sat) 16:56:20)
    「どうした? 眉間にシワが寄ってるよ? 寝不足?(笑)」

    ミカに声をかけられた。

    「寝不足になるようなことは 何もしてません(笑)」

    「そうなんだぁ(笑) でも ホント どうした? 何かあった?」

    「まだ 何も…起こるとしたら 夜…かな?」

    「坂本クン絡み?」

    「うん…」

    「だったら 話は 明後日訊くわ(笑) 恭子 明日 休みでしょ(笑)」

    「なにそれ…」

    「だって…夫婦のことは夫婦で解決しなくちゃ…(笑)」


    資料室へ向かうミカの背中を見ながら…

    ふと(夫婦って…ウチの場合 どっちが妻なんだろう…)と 考えてしまった…

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■22347 / 1階層)  すこしづつ…V-19
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(62回)-(2018/07/21(Sat) 17:00:27)
    閉館後

    コウちゃんの運転で向かったのは ショッピングモールの中のジュエリーショップだった。

    訝る私に

    「今度は2人で…って言ったの覚えてます?」

    コウちゃんが 小声で囁いた。

    「もしかして…?」

    「はい(^^♪ 左手用を…」

    「そんな言い方って…」

    軽くケリを入れてしまった…

    「どれにします?」

    「私が選んでいいの?」

    「他に誰かいます?(笑) お店の人に決めてもらいます?」

    「あたしが決めますっ(笑)」


    案内をしてくれた店員さんに いくつか出してもらい 最終的に 右手のリングより 少しボリュームのあるリングに決めた。

    コウちゃんと私のサイズは 在庫があったので 当日持ち帰りすることにした。


    「ケースにお入れしますので 少々お待ちください」

    その場を離れようとした店員さんに コウちゃんが何やら囁いた。

    店員さんは にっこり微笑んで お店の奥に下がった。

    「何 話したの?」

    「フフフ内緒っす(笑) あっ 支払いしてきますね」

    レジに向かったコウちゃんの背中を見ていたら 別の店員さんが

    「ステキなご主人ですね」と 声をかけてくれた。

    「ありがとうございます」

    洒落たペーパーバッグを持ったコウちゃんが戻ってきた。

    「お待たせしました 行きますか…」

    「うん」


    駐車場に向かう途中で コウちゃんが

    「今日 レストラン予約してあるんです」と言った。

    「えっ?」

    「ちょっとカッコつけです(笑)」


    お店は…コウちゃんに告白した夜のレストランだった。

    コウちゃんが エントランスで名前を告げる。

    席に案内される…

    オーダーは ディナーコース…

    アルコールのメニューが渡されなかったのは 最初からそう告げていたのだろう…

    あの日と違って 今夜は 気持ちに余裕がある分 食事を楽しむことが出来た。

    「予約 大変だったんじゃない?」

    「3月の終わりには もう一杯だったそうです」

    「コウちゃん いつ?…」

    「ミカさん達の結婚式の司会をお引き受けした翌日(笑)」

    「全然知らなかった…」

    「ガッコで電話しましたから(^^♪」

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■22348 / 1階層)  すこしづつ…V-20
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(63回)-(2018/07/21(Sat) 17:04:46)
    部屋に戻った私達は コウちゃんが淹れてくれたホットミルクを飲みながら ソファで寛いだ。

    私の左薬指には 真新しいリングがはめられている。

    「ねぇ…どうして今日だったの?」

    コウちゃんの肩に頭を乗せながら訊いた。

    「ずっと 今年の恭子さんのお誕生日に…って決めてたんです…
     その頃には 卒業後の進路も決まっているだろうって思って…」

    「そうだったんだ…言ってくれたらよかったのに…」

    「いやぁ…ミカさん達のお祝いに集中できたほうがいいなって思って 延期してました」

    「もし…結婚式が無かったら?」

    「それは もう 最初の予定通り…(笑)」

    「フフフ…いつから決めてたの?」

    「右手にはめた時くらいっす(^o^)」

    「そんなに前から?」

    「はい…」

    「別れるかも とかは考えなかった?」

    「はい…少なくとも自分には 理由がありません」

    「あたしにも 理由なんてない…」

    「恭子さん…結婚式も入籍もないけど…」

    「そんなこと気にしたことないって言うと ウソっぽく聞こえるかもしれないけど(笑)
     あたしは 隣にコウちゃんがいてくれたら それでいいの!コウちゃんも同じでしょ?」

    最後のひとことは ちょっと強気に出た(笑)

    「はい」

    コウちゃんの答えは 短い…
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■22349 / 1階層)  すこしづつ…V-21
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(64回)-(2018/07/21(Sat) 17:07:02)
    しばらく そのまま 指輪を見ていた…

    「コウちゃん 一緒にお風呂入ろう!」

    「先 入っててください。カップ洗ったら スグ行きます(^^♪」

    「うん わかった…」

    でも…

    お風呂から出て リビングに戻ったら コウちゃんは ソファでうたた寝をしていた。

    「そんなところで寝てたら 風邪引くよ!」

    「うん…」

    コウちゃんは 起きない…

    「ほらほら ちゃんと起きて!お風呂入るか寝るか どっちかにしないと…」

    「はい…」

    返事はするが 目が開かない(笑)

    「今夜も デコキスだけ?」

    コウちゃんの耳元で囁いた。

    コウちゃんは 飛び起きて 私の顔を見た。

    「すみません(^^; お風呂入ってきますっ」

    走り出すような勢いで 浴室に向かった。 
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■22350 / 1階層)  すこしづつ…V-22
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(65回)-(2018/07/21(Sat) 17:10:42)
    30分後

    サッパリした顔で コウちゃんが寝室に戻ってきた。

    「お待たせしました」

    「お待たせされました(笑) コウちゃん ちょっと座って」

    「はい」

    コウちゃんは 私の隣に腰かけた。

    「指輪 ホントにありがとう…すごく嬉しい…でも…ちょっと淋しい気もしてる…
     だって…あたし…まだ…」

    話しているうちに 涙が出てきて 自分でも 何が言いたかったのか わからなくなってしまった。

    コウちゃんは 私の肩を抱き 回した手を私の手に重ねた。

    「恭子さん 大丈夫っすか?」

    「大丈夫じゃないっ…」

    黙り込んだコウちゃんに

    「あたし…いつになったら『恭子』って呼んでもらえるの?
     いつになったら 敬語じゃなくなるの?」

    最悪の八つ当たりをしてしまった。

    もっと穏やかに…可愛く甘えながら 言いたかったのに…
    こんなヒステリックになってしまうとは…

    記念の夜を台無しにしてしまった後悔で涙が止まらなくなった。


    いくらコウちゃんでも こんなことになるとは思っていなかったに違いない…

    嫌われることはなくても 呆れられてしまったのは確かだろう…

    取り繕うことも出来ず 泣くだけだった…

    手の甲に重なったコウちゃんの手が離れなかったことが嬉しく その優しさに また泣いた。

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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22351 / 1階層)  すこしづつ…V-23
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(66回)-(2018/07/21(Sat) 22:40:33)
    ようやく涙が止まった。

    「ごめんね…」

    「Don't worry No problem (^^♪」

    コウちゃんのひとことに 思わず 吹き出してしまった。

    「寝よっか」

    「うん」

    コウちゃんの右腕に頭を乗せて ピッタリとくっつく。

    コウちゃんは 何も言わない。

    「呆れた?」

    「何が?」

    「あたしのこと…」

    「なんで?」

    「だって…指輪もらった夜に 泣いて 喚き散らして…」

    「呆れた って言った方がいい?」

    「言われても仕方ないって思ってる…」

    「呆れてなんかない…むしろ…」

    「なに?」

    「ずっとガマンさせてたんだ…って反省してた…それと…泣いてくれてよかった…
     それがなかったら 自分 気付かないままだった…」

    「全然気づいてなかったの?」

    「全然ってことは…『恭子さん』って呼ぶ時 時々 淋しそうな顔してたから…
     そう呼ばれるの好きじゃないんだろうなっていうのは なんとなく…」

    「だったら…」

    「でも…勇気が無くて…」


    急にコウちゃんが 私を強く抱きしめた。

    ひとことひとこと 区切るように耳元で囁かれた言葉は

    「き ょ う こ…」

    そのひとことに舞い上がった私は 両手をコウちゃんの首に回して 全身で抱きついた。

    「体…熱くなってる…」と言うコウちゃんに

    「鎮めてくれる?」

    「善処します…(笑)」


    コウちゃんのキス・愛撫は いつもより 静かに激しくクールに熱かった。

    私の体は 鎮まるどころか ますます火照り 体の中心から流れるマグマは収まることなく溢れ続けた。

    何度達したかわからないほど 私はコウちゃんを求め コウちゃんも 私を求めてくれた 。

    身も心も満たされたと思った時には 空は 朝を迎える準備に入っていた。

    「明るくなってきましたね(^^♪」

    「あたしは 休みだけど コウちゃん 授業でしょ?…」

    「今日は 午後からなんで ちょっと寝ます(笑)」
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▲[ 22329 ] / 返信無し
■22352 / 1階層)  すこしづつ…V-24
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(67回)-(2018/07/21(Sat) 22:47:41)
    目が覚めた時 ベッドに コウちゃんの姿は無かった。

    リビングのテーブルに メモがあった。

          2度寝すると 起きられなくなるので…(笑) 大学に行きます。
         授業の後は『駅裏』です。
         帰宅時間は7時半頃です。
         恭子さん ずっと忙しかったから 今日はゆっくりした休日になりますように…


    コウちゃんは 予定時間通りに帰ってきた。


    食事中

    「昨日 ミカに 『夫婦のことは夫婦で…』 って言われて… ウチの場合 どっちが妻なのかなって思っちゃた…
     ジュエリーショップの店員さんは コウちゃんのこと 『ステキなご主人』 って言うし…
     やっぱり あたしが奥さんなのかな?」

    と切り出した。

    「自分は 奥さんの掌の上で転がされているダンナさん ってカンジですよねぇ(笑)」

    「それって かかあ天下 ってこと?」

    「そこまでは言ってませんっ(笑)」

    「案外 コウちゃんの方が亭主関白 かも(笑)」

    「それこそ そうかなぁ〜ですよ(笑)」

    「でも…あたしの方が コウちゃんに甘えてるでしょ…」

    「そんなことはないと思いますが…」


    どちらが どちらに甘えているかの結論は出なかった(笑) が どうやら 役割は決まっているらしい…


    ソファで食後のコーヒーを飲みながら コウちゃんの肩に頭を乗せた。

    「コウちゃん…」

    「はい」

    「昨日 店員さんに囁いていた内緒話 わかったよ(^^♪」

    「もう?」

    「うん…朝の洗い物をする前に 指輪 外したの‥後片付けが終わって はめようとした時…
     あれ?内側に何か書いてある!って思って…見てみたら… 『Forever』 って…」

    「まぁ…そういうことで…(^^;」

    「嬉しかった…なのに…あたし 昨夜 あんな八つ当たりして…ホントごめん…」

    「でも…そのあと 濃〜い時間を過ごしたじゃないですか(笑)」

    「バカっ…」

    「ひょっとして 今ので 今夜もお預けっすか?(笑)」

    「どうしようかな( *´艸`)」

    「ならば 実力で…(笑)」

    「えっ?」

    コウちゃんの両手が 私の頬を挟んだ。

    不意打ちだった…

    お互いの唇が離れるのに時間がかかった。
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■22353 / 1階層)  すこしづつ…V-25
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(68回)-(2018/07/21(Sat) 22:52:11)
    「びっくりした…」

    「キス…初めて?(笑)」

    「バカ…」

    「たまにはね(笑)」

    「うん…ねぇ コウちゃん…指輪…」

    言葉が繋がらない私に コウちゃんが話してくれた。

    「ずっと…待たせてるなぁって思ってました
     でも…恭子さん 自分にプレッシャーがかかるようなことひとことも 言わないでいてくれたから…
     ちゃんと 進路を考えることができました…
     これからも贅沢は出来ないし…社会的安定感も無いけど…それでも…」

    「コウちゃんの隣は ずっとあたしでしょ?(^^♪」

    「もちろんですっ」

    そのひとことに勝る安定なんて 何処にも無い…


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■22354 / 1階層)  すこしづつ…V-26
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(69回)-(2018/07/21(Sat) 23:02:10)
    翌日

    出勤した私を見て ミカは 「大丈夫だったみたいだね(^^♪」 と笑った。

    昼の休憩時間には 待ち構えていたかのように

    「いつ もらったの?」

    「えっ?」

    「ひ・だ・り…」

    「相変わらず よく見てるわねぇ(笑)」

    「そっちこそ 相変わらずポーカーフェイスで 仕事してるよねぇ(笑)」

    「もらったのは 一昨日の夜」

    「一昨日って…眉間にシワの日?( *´艸`)」

    「うん…仕事終わってから 2人でお店に行って 2人で選んだ…」

    「楽しいデートのお誘いに あんなシワ作ってたんだ(笑)」

    「シワ シワって…(>_<) だって…コウちゃん 何も言わなかったんだよ。
     仕事が終わる頃迎えに行きますってだけで…あたし 心の準備 何も出来てなかったんだから…」

    「それ…あたしに言われても‥(笑)」

    「ゴメン(^^;」

    「で…どうだった?」

    「どうって?」

    「もう?とか やっと…とか いろいろあるじゃない( *´艸`)」

    「嬉しかった…
     今までも 迷ってたわけじゃないけど…ホントにこの人と一緒に居ていいんだ…って…
     でも…同時に あたしでいいのかなぁ って…」

    「責任感じた?」

    「うん…だって コウちゃん まだ 21歳だよ…それなのに…こんな決断していいのかな…」

    「いつだったらよかったの?(笑)」

    「えっ?」

    「だって…坂本クンと恭子の差は ずっと縮まらないんだよ(笑)」

    「それはそうだけど…」

    「上手く言えないけど…あたし達は 選んでくれたパートナーに ありがとう でいいんじゃないかな?
     あとは ずっと一緒に居られるように 自分の出来ることをしていくだけでしょ!」

    「ミカも そうだった?」

    「指輪交換の時 『ちょっと待って!』 って言いそうになった(笑) で 式が終わって 披露宴が始まる
     前に 『帰っていい?』 って訊いたら…南郷君 全然慌てずに 『ひとりで帰れる?』 だって…
     それで 肩の力が抜けて(笑) 『この人とだったら大丈夫』 って…」
     
    「そっか…」

    「これが うわさの “マリッジブルー” ってやつ?( *´艸`)」

    「ちょっとタイミング ずれてるよね( *´艸`)」

    「坂本クンや南郷君が聞いたら 呆れるよね(笑)」

    「絶対 聞かせられないけどね(笑)」

    あたしの あの八つ当たりも “マリッジブルー” の一種だったのだろうか…

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■22355 / 1階層)  すこしづつ…V-27
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(70回)-(2018/07/21(Sat) 23:05:11)
    「いずれにせよ(笑) あたし達も 人妻 になれてよかったよねぇ(^^♪」

    「あたしは 式も入籍もないけどね( *´艸`)」

    「あたしが言うのもヘンだけど…世間には そういう夫婦 たくさんいるんじゃない?
     それに 恭子と坂本クンには “見届け人” が 大勢いるじゃない!
     恭子のご両親・マスター夫婦・坂本クンのお兄さん・お姉さん・あたしと南郷君・南郷君の兄弟夫婦…
     十分じゃない? ついでに ウチの両親も数に入れてあげて(笑)」

    「うん ほんと ミカの言う通りだね…ありがと(^o^)」

    「なんのなんの( *´艸`) さっ 午後からも もうひと踏ん張りするよ〜(笑)」



    バイトから帰ってきたコウちゃんに ミカの言葉を伝えた。

    「みんなのこと裏切らないようにしなくちゃね」

    コウちゃんが 優しい顔で言った。

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■22356 / 1階層)  すこしづつ…V-28
□投稿者/ 桃子 ちょと常連(71回)-(2018/07/21(Sat) 23:09:48)
    「ミカさん達の 新婚旅行はいつ?」

    「来月の初め 1週間イギリスだって」

    「南国じゃないんだ(笑)」

    「水着になる勇気は無いって言ってた(笑) 博物館とか美術館巡りするみたいよ」

    「そうなんだ…」

    「ウチはどうする? ハワイとか行っちゃう?(笑)」

    「プライベートビーチで日焼け三昧しちゃいます?( *´艸`) って 恭子さん 休みは大丈夫っすか?」

    「ミカに続いて スグに休みを取るのは ちょっと無理だけど 時期をずらしてなら なんとかなる(^^♪」

    「どっか行きたいところあります?」

    「フランス ドイツ ベルギー フィンランド…スイス…アメリカ カナダ…(^^♪」

    「全部は無理っすよ(笑)」

    「あら そう?(笑)」
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