| 「…ん、あぁ」
時計に背を向けた私は
正確な時間を、もう計ることは出来ない。
彼女を招き入れてから、まだ数分?
けれどもう、この空間は普段とはまるで違うモノになってしまったかのようだった。
「ひ…ぁんん…」
彼女の指の的確さは衰えてはいなかった。
むしろもっと深い感覚が、身体の芯を捕らえて放さない。
慣れているはずのシーツの手触りまでもが
いつもより滑らかに感じるのは、何故だろう。
「あ…あぁ…」
強く、弱く。
優しく、激しく。
高められていく波と共に。
日常が消え去っていく。
「んっ…ぁ、もう…」
もう、何も考えさせないで。
今だけでいいから…
宙に伸ばした手が、強く包まれる。
「名前、呼んで?」
ゆら…
ゆら。
「ゆら。もう…あぁ…っ」
ゆら。
ゆら。
ただ名前だけを呼び続ける声が。
掠れて出なくなるまで。
|