| 「乗って。」
真っ赤な。
アルファロメオ。
これに乗る日が来るなんて…。
思わなかったよー!!
わ〜ん(涙)
「……カズ?早く。」
不思議そうな顔で。
ナツさんは中々車に乗らない私を見ていた。
「あ、失礼します…。」
バタン、バタン、と。 二人で車に乗り込む。
レザーの匂いが。 鼻をかすめた。
外の波音と喧騒が。 無くなる瞬間。
何も言わずにナツさんは、キーを差して車にエンジンをかけた。
発進しながらシートベルトをスルスルと絞める動作を見て。
私も慌ててベルトを付ける。
海沿いの国道に。 車はスムーズに合流した。
「…………。」
何。
話せば…。
いいのかな、なんて…。
ドキドキが。
聞こえちゃいそう。
恥ずかしくて嬉しくて。
窓の外の海しか見えない…。
「クックッ。」
「え?」
笑い声が聞こえて。
運転席を見た。
「カズ、変な顔してたね…。」
雑誌の事…(涙)
「CG加工、とかしてくれないですかね…。」
くすん。 悲しい…。
「売り上げ上がる。きっと。」
クックッと。 ナツさんは口の端を持ち上げて。また少し笑った。
「ああもう…海に飛び込みたいです…。」
「大丈夫。可愛いよ。」
「……………。」
今。
可愛いって聞こえた。
可愛いって…。
「……カズ?また変な顔。」
可愛いって言われちゃった…。
いやーんどうしよう!!
ドキドキするよ〜!
「何が食べたい?」
「え?」
「好きな物でいい。」
運転席を見ると。
ナツさんは前を向いたまま。
口の端を持ち上げた。
好きな物…。
ハンバーグ?
やだやだ。子どもみたい。
カレーライス?
違うよもう〜(涙)
好きな物…。 かつナツさんに、 ふさわしい食べ物…。
ダメ。
ぜんっぜん思い付かない。
ふるふると。 頭を振って。 泣きそうになっていると。
「ラーメン食べようか。」
甘い声が。
また車内に響いた。
ラーメン!?
ナツさんが?
い、意外…。
「嫌い?」
「すっ好きです大好きです三食ラーメンでも生きられる位…。」
「…………。」
クックッと。 またナツさんは笑った。
(携帯)
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