ビアンエッセイ♪

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■10577 / ResNo.10)  和美のBlue 9
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(933回)-(2005/06/29(Wed) 23:58:16)
    「乗って。」


    真っ赤な。


    アルファロメオ。


    これに乗る日が来るなんて…。


    思わなかったよー!!


    わ〜ん(涙)


    「……カズ?早く。」


    不思議そうな顔で。


    ナツさんは中々車に乗らない私を見ていた。


    「あ、失礼します…。」


    バタン、バタン、と。
    二人で車に乗り込む。


    レザーの匂いが。
    鼻をかすめた。


    外の波音と喧騒が。
    無くなる瞬間。


    何も言わずにナツさんは、キーを差して車にエンジンをかけた。


    発進しながらシートベルトをスルスルと絞める動作を見て。


    私も慌ててベルトを付ける。


    海沿いの国道に。
    車はスムーズに合流した。


    「…………。」


    何。


    話せば…。


    いいのかな、なんて…。


    ドキドキが。


    聞こえちゃいそう。


    恥ずかしくて嬉しくて。


    窓の外の海しか見えない…。


    「クックッ。」


    「え?」


    笑い声が聞こえて。


    運転席を見た。


    「カズ、変な顔してたね…。」


    雑誌の事…(涙)


    「CG加工、とかしてくれないですかね…。」


    くすん。
    悲しい…。


    「売り上げ上がる。きっと。」


    クックッと。
    ナツさんは口の端を持ち上げて。また少し笑った。


    「ああもう…海に飛び込みたいです…。」


    「大丈夫。可愛いよ。」


    「……………。」


    今。


    可愛いって聞こえた。


    可愛いって…。


    「……カズ?また変な顔。」


    可愛いって言われちゃった…。


    いやーんどうしよう!!


    ドキドキするよ〜!


    「何が食べたい?」


    「え?」


    「好きな物でいい。」


    運転席を見ると。


    ナツさんは前を向いたまま。


    口の端を持ち上げた。


    好きな物…。


    ハンバーグ?

    やだやだ。子どもみたい。

    カレーライス?

    違うよもう〜(涙)


    好きな物…。
    かつナツさんに、
    ふさわしい食べ物…。


    ダメ。


    ぜんっぜん思い付かない。


    ふるふると。
    頭を振って。
    泣きそうになっていると。


    「ラーメン食べようか。」


    甘い声が。


    また車内に響いた。


    ラーメン!?


    ナツさんが?


    い、意外…。


    「嫌い?」


    「すっ好きです大好きです三食ラーメンでも生きられる位…。」


    「…………。」





    クックッと。
    またナツさんは笑った。

    (携帯)
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■10579 / ResNo.11)  和美のBlue 10
□投稿者/ つちふまず 大御所(934回)-(2005/06/30(Thu) 00:03:53)
    割と小汚い(お店の人ごめんなさい)ラーメン屋さんに。


    入った瞬間─


    注がれる視線。


    男女共に…。
    注目を浴びる、ナツさん。


    め、目立つ…。


    気付いているのかいないのか。


    ナツさんはカウンターの丸椅子に、すぐに着席した。


    「ネギミソチャーシューと餃子一つ。」


    甘い声で。


    言わないで〜(涙)


    しかもそんな濃いメニュー!


    「カズは?」


    「あ、私もそれで。」


    ああ。


    流されやすい私…(涙)


    「カズ、学校は?」


    ナツさんはジャケットのポッケから、カラフルなパッケージの煙草を取り出した。


    「あ、はい。楽しいです、すごく。」


    「そう。良かった。」


    一つを取り出して、


    トントン、と先っぽをカウンターに。煙草を鳴らした。


    「はい。ありがとうございます。」


    「早いね。もう二年生か。」


    うちのお店のマッチを。
    早い動作で。
    すぐに火が着く。


    「そうですね…早いです。」


    ナツさんには。
    返しても返しきれない。
    恩が実はある。


    「今年は好きに使いなさい。去年と同じ金額が振り込んであるから。」


    「そういう訳には…行かないです。」


    ナツさんには。
    学費を借りていて。


    それには訳がある。


    私には両親がいない。


    正確にはいるけれど。
    いないのと同じ。


    ここでは詳しくは言わないね。


    どうしても大学に行きたかった私は。


    バイト先のオーナーであるナツさんに。


    「学費を稼がせて下さい。」


    と、相談した。


    私にしてみれば、シフトを増やして欲しい、という意味で言ったんだけれど。


    ナツさんの答えは違った。


    「学費の面倒は見る。その代わり、卒業までは働いて欲しい。」


    という答えだった。


    それからはバイト代から少しずつ、学費を返している。


    私の住む小さなアパートも。
    住宅手当てという形で。


    半額に近い値段で借りていて。


    普通のバイトなら。
    ありえない位の待遇。


    私はバイトでどんなに疲れていても。


    絶対に単位を落とす事がないように、学校に通っている。


    今年一年終れば。


    栄養士の資格が取れる。


    「本当にありがとうございます。」


    頭を深く下げると。


    「……食べよう。」


    運ばれたネギミソチャーシューからは。




    とってもいい匂いがしてた。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10580 / ResNo.12)  和美のBlue 11
□投稿者/ つちふまず 大御所(935回)-(2005/06/30(Thu) 00:09:02)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    「美味しかった…ネギミソチャーシュー。」


    お腹いっぱい。


    苦しいくらい…。


    帰りの車中。


    隣のナツさんを見た。


    満足したように、口の端を持ち上げている。


    んー。


    やっぱりやっぱり。


    素敵…。


    綺麗?カッコいい?


    全部当てはまってしまう。


    こんな人がいる事自体。


    何だかやっぱり信じられない。


    また海沿いの道に出る。


    「口の中が…。ネギ。」


    ぼそ、と。


    ナツさんが呟いたので。


    「ふふっ。アハハ。」


    思わず笑った。


    確かに口の中が。


    ちょっとネギ臭い(笑)


    「あ、そうだ。」


    確かガムが…。


    バッグの中を探った。


    板ガムを見付けて。


    「いりますか?」


    「ん。」


    はい、と手渡そうと思ったら。


    ………。


    手は差し出されてなくて。


    ナツさんはハンドルを握ったまま。


    小さな口を開けていた。


    これは…。その。


    「頂戴。」


    あ、とまた口を開ける。


    入れてって事ですか!?


    きゃあー!!


    慌ててガムのパッケージを、ペリペリと捲って。


    おそるおそる。


    端を持って。


    ナツさんの口に入れた。


    「サンキュ。」


    モグモグと。
    形のいい口が動いて。


    ああ。


    もう…。


    め、めまいが。


    「どうしようか。…まだ七時だ。」


    ナツさんは右手にしていたフランクミューラーを見た。


    え!?


    まだ。


    まだいて、いいのかな。


    どうしようどうしよう。


    またドキドキしてきた…。


    「うっ。」


    「カズ?どうした?」


    「す、すみません。」


    「食べ過ぎたかな。」


    「いえ、何か…。めまいが起こり過ぎて気持ち悪くなりました。」


    体が付いて行かない〜。


    「そうか。帰ろうか。」


    「えっ!!違います違います!元気ですー!」


    「クックッ。…ふっ。」


    ナツさんから見たら…。


    私絶対変な女だ。


    間違いない(涙)


    ナツさんの。


    含み笑いと。


    私の溜め息が。


    アルファロメオの中で響いた。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10581 / ResNo.13)  かなさん&読者の皆さんへ
□投稿者/ つちふまず 大御所(936回)-(2005/06/30(Thu) 00:16:19)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    はい初めまして(^O^)
    つちふまずです。

    珊瑚礁、じゃないんですよ(笑)
    おしいですけどね!

    でも実在するお店です。

    今は神奈川に住んではいませんが、近い内に戻ります。

    良かったらHPにも遊びに来て下さいね♪(下にアドがあります)

    さてさて…。
    フライング?
    いやいやすみません。

    本来なら七月から…、
    始めようと思ってたんですが。

    バトンが回されたので(笑)
    始めちゃいます!

    そう、今回は…。
    ナツさんでーす!
    来ると思わなかったですか?
    いやいや書いちゃいます!

    夏。海。空。
    そしてナツさん。

    皆さんも。
    恋しちゃってくれたら…、
    嬉しいつちふまずです!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10583 / ResNo.14)  初めましてm(_ _)m
□投稿者/ ちび 一般♪(5回)-(2005/06/30(Thu) 01:02:17)
    ちびと申します。

    私事ですが、今、ラーメン屋さんで働いているので、思わず『ネギミソチャーシュー』、反応してしまいました(^^;)

    それと、『ナツ』という名前。

    これにも反応してしまいます…。


    チャイナブルーは今の相方が好きで、ちびも好きになったカクテルで。

    反応しまくりの、お話です(笑)

    なんだか、心が、あったかくなりました。



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10591 / ResNo.15)  NO TITLE
□投稿者/ 由兎魔 一般♪(27回)-(2005/06/30(Thu) 10:00:52)
    新作ですよね!?待ってましよ〜♪やっぱ、夏・海・空と言ったらナツさんですよね〜続きが待ちどうしいです!!つちふまずさんにはつねに応援してますんで、頑張ってさい★♪
引用返信/返信 削除キー/
■10597 / ResNo.16)  由兎魔さん
□投稿者/ つちふまず 大御所(937回)-(2005/06/30(Thu) 11:25:59)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    つちふまずです(^O^)

    はい、今回はナツさんです。
    ブラックナツさんしか…、
    今まで書いて来なかったんですけどね。

    改めて書く機会が出来て良かったです。

    最後までお付き合いよろしくです!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10598 / ResNo.17)  和美のBlue 12
□投稿者/ つちふまず 大御所(938回)-(2005/06/30(Thu) 11:29:41)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    車はお店を通り過ぎて。
    逗子から葉山へと。


    海沿いを走る。


    音を抑えたBGM。


    こんなチャンスない。


    絶対ない…。


    急遽変更して。


    作戦その弐─


    “ナツさんを知る”


    「ナツさん。」


    「ん。」


    「あの…彼女さんとは上手く行ってるんですか?」


    小さなテーマ。


    “彼女とはどうですか?”


    「彼女?」


    「はい。去年連れて来てたじゃないですか…綺麗な人。」


    忘れもしない。


    そういう人に限って。


    細かく覚えてる。


    「去年…。」


    ふむ、と長い指で頬に触れた。


    これ、ナツさんのクセ。


    すっごい好き…。


    「彼女はいないよ。」


    ハンドルを握り直す。


    右に大きく、
    車は曲がった。


    「え?」


    何!?


    「多分カズが見たのも…彼女ではないと思う。」


    言いながらナツさんは。


    防波堤近くまで車を寄せると。


    サイドブレーキを引いて。


    エンジンを止めた。


    「彼女じゃないんですか!?」


    「違う。…降りよう。ここは綺麗だから。」


    「え……あ。」


    慌てて車から降りる。


    「飲み物買ってくる。」


    スタスタと。


    自販機に向かうナツさん。


    え、あ。


    待って〜。





    アイスコーヒーを二本買って。


    ナツさんは防波堤の上に。


    ヒラリと登った。


    見上げると。


    ………高い。


    無理だよナツさん(涙)


    うーん、とうなだれると。


    「おいで。」


    手を差しのべられた。


    か。


    カッコいい…。


    だめだめ。


    めまいしないように…。


    「んっ……と。」


    ナツさんの手を取ると。


    強い力で防波堤の上に。


    すぐに持ち上げられた。


    「やーっ綺麗〜!!」


    右手に。
    私達が辿って来た海沿いの国道。


    小さく何台も、車のテールランプが流れて…。


    正面に。
    小さな江ノ島。


    「ん。」


    ポン、とアイスコーヒーが渡されて。


    ナツさんはスーツなのもおかまいなしに。


    防波堤に座った。


    「あ、りがとう、ございます…。」


    ナツさんは答えずに。


    煙草を取り出して。


    それに火を着けた。


    ナツさんの一つ一つの動作は。ゆっくりだから。


    すごく見とれる。


    あ、いけない。


    作戦その弐。


    まだ途中だったっけ…。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10599 / ResNo.18)  和美のBlue 13
□投稿者/ つちふまず 大御所(939回)-(2005/06/30(Thu) 11:33:36)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    「彼女さんじゃなかったんですね…。」


    じゃあの人は一体…。


    トイレで泣いたんだけどな。


    っていうか暫く、


    バイトするのも辛かった位…。


    「と、言うよりは…。」


    「はい?」


    「カズが…どの娘の事を言ってるのか、見当が付かない。」


    え。


    本当に!?


    隣のナツさんを見ると。


    『普通』の顔。


    「あの、今まで、何人位…いるんでしょうか。」


    一体…。


    「ん?ん〜。」


    ナツさんは。


    小さな頭を傾けた。


    やだ…。


    変な質問するんじゃなかった。


    胸が滅茶苦茶痛い。


    そりゃそうだよ…。


    こんな素敵な人だもん。


    彼女の100人や200人…。


    「そういうの、もういい。」


    小さく呟くのが聞こえた。


    「………え。」


    「無理してたし。」


    “無理?”


    聞いた事のない。


    溜め息が聞こえた。


    「疲れちゃったんだよ。」


    フッとこちらを見て。




    ナツさんは微笑んだ。


    彫りの深い二重が、
    細く。


    あ。


    あ……。


    なんか。


    悔しい。


    見た事のない表情を見る事が。


    余計に。


    “好き”


    を感じさせる事に。


    気付いた気がして…。


    私はうつ向いた。


    「もうすぐ夏だ。」


    ナツさんの声の後に。
    また煙を吐いた気配。


    言葉が…。


    出ないよう(涙)


    でも。


    あんな顔見ちゃったら…。


    「あの…なんていうか。」


    「ん。」


    「うまく…言えないんですけど。」


    いや、まだ早いよね。


    これを言うのは。


    作戦立ててないし。


    「ん?」


    えーとえーと。


    どうしよどうしよ(涙)


    作戦…作戦。


    作戦その参は何だっけ?


    えーと。


    あ、そうだ!


    「カズ?」


    「あの!番号…教えて下さい!」


    「え?」


    あ、あれ。


    やだ私…。


    ああ…んもう。


    何言って、


    「教えてなかった?」


    そうか、と。


    ナツさんはジャケットのポケットから、携帯を取り出した。


    え。


    ホント?


    「赤外線で送る。携帯出して。」


    はい、とナツさんは。
    携帯を私に向けた。


    う、嘘でしょ…。


    こんな簡単に。


    「早く。」


    「あ、は、はい。」


    慌ててバッグから携帯を取り出した。


    赤外線。





    アドレスもゲット(歓喜)

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10600 / ResNo.19)  和美のBlue 14
□投稿者/ つちふまず 大御所(940回)-(2005/06/30(Thu) 11:36:25)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    「じゃ。」


    「はい、土曜日に…。」


    私のアパートの前で。


    アルファロメオは止まった。


    車のエンジン音は静かだったけれど。


    私のテンションは上がりっぱなしだった。


    …だって。


    ナツさんの車に乗れた事。


    ラーメンを食べた事。


    綺麗な夜景が見れた事。


    携帯の番号とアドレスを、
    聞けた事。


    嬉し過ぎて。


    「ありがとうございました。」


    「ん。」


    煙草を右手の指に、
    挟んだまま。


    ナツさんは口の端を持ち上げた。


    車から降りると─


    ナツさんのアルファロメオは静かに、去って行った。


    はー。


    胸を抑えて。


    天を見た。


    心臓が…。


    口から出るかと思った。


    よろよろと。
    アパートの階段を登る。


    なんか。


    なんか…。


    凄い日だった。


    “好きな人”と。


    一緒に居る事が…。


    こんなに…。


    ─カチャ、バタン、と。


    部屋に入る。


    「ふふっ。…ふふ。」


    電気も付けずに。


    何故だか笑えて来て。


    すごくすごく、
    嬉しすぎて。


    「は〜。」


    トコトコ、ドサ、と。


    そのままベッドに。
    倒れこんだ。


    ナツさん…。


    やっぱり好きだよー。


    「う〜っ!!」


    バタバタと。
    ベッドの上で泳いでみた。


    ふう…。


    寝返りをして。


    天井を見上げる。


    今日は…。
    いわゆる夢みたいな一日。


    だったな…。


    けど。


    さっきまで一緒に居たのに。


    あ。


    …あれ。


    あれれれ。


    “もう会いたい”


    会いたい(涙)


    私…こんなに好きなんだ。


    改めて感じてしまった。


    途端に。


    切なくなる。





    ─作戦その壱。


    “まずはコミュニケーション”


    …クリア?


    ─作戦その弐。


    “ナツさんを知る”


    一応クリアかな?


    ─作戦その参。


    “携帯の番号を聞く”


    …クリア!


    じゅ、順調過ぎて…。


    何だか怖いかも。


    いいのかな、なんか。


    でも、


    ─バッグに手を伸ばして、


    携帯を開いた。


    さっき赤外線で受信したデータを、表示させた。


    んー。


    うん。


    聞いたからには…。


    やっぱり今日のお礼をしよう。







    メール新規作成、
    の画面を表示した。


    (携帯)
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