ビアンエッセイ♪

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■10601 / ResNo.20)  和美のBlue 15
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(941回)-(2005/06/30(Thu) 11:39:56)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ん〜っと…。


    暗い部屋。


    光る携帯。


    〉今日はありがとうございました。


    出だしはこれでいっか。


    後は…、


    〉今日はありがとうございました。また連れてって下さいね!


    ………。


    んー。


    違う気がする…。


    何か図々しくない?


    カタカタ、とクリア。


    えーと。


    〉今日はありがとうございました。これからも頑張ります!売り上げアーップ!


    …。


    違うなぁ(涙)


    あーん何て書けばいいの〜!


    「うーっ!!」


    ジタバタと。


    またベッドの上を泳いだ。






    その時。


    〜♪〜♪


    ………。


    突然の、メール着信。


    慌てて携帯を持ち直した。


    ま、まさか。


    ゴクリ。


    震える指で、


    メールを確認するボタン。


    ピ、と押すと。







    差出人─




    『村上 奈津』




    ぎゃあ!!


    ナツさん!




    顔、が。
    にやける。




    さらにドキドキして…。


    メールを開く。







    〉ネギミソ気に入ったかな?今日はお疲れ様。

    〉カズさ。土曜日、出来たら早く出勤出来ないかな?

    〉新しいユニフォームを試着して貰いたいんだ。

    〉来れたら来てねヾ(*'-'*)






    ………。





    え。


    あ、あの。


    土曜日…は。


    もちろん早く行くけど…、


    最後の。


    これ。


    ヾ(*'-'*)


    これよ。


    ナツさん…。


    顔文字とか、使うんだ。


    意外………。


    っていうか…ね?




    「かわいいーっ!!」





    ジタバタジタバタと。


    また泳いだ。




    好き。
    本当に好き。


    こんなに好きになった人。


    今までいない。


    メールの返信を、急ぐ。







    〉はい!行きます!
    〉ご馳走様でした♪(^人^)♪







    送信完了。





    携帯を見ては。


    閉じては。


    見ては。


    ウフフと。


    ニヤニヤと。


    ナツさんからのメールを表示したまま。







    握ったまま眠った。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10619 / ResNo.21)  和美のBlue 16
□投稿者/ つちふまず 大御所(942回)-(2005/06/30(Thu) 20:41:24)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    金曜日─


    作戦その四。


    “自分を磨く”


    まずは…。


    ここから。


    ─いらっしゃいませ


    「17:00に予約してます…。相川です。」


    “はい、承っております…お荷物、お預かりしますね?”


    まずは。


    美容院。


    「いらっしゃい。」


    小さく頭を下げながら。


    私の頭の形から、


    髪質まで知り尽した…。


    美容師のマイさん。


    ベリーショートの銀髪が。
    色白の肌に。
    キマってる人。


    「今日はどうする?」


    私の背後に回って、


    手を後ろ髪に差し入れる。


    どれ位伸びたか確認してくれている。


    「あの…マイさん。」

    「ん?」

    「ガラっと変えちゃって下さい。」


    あの人に。


    あの人にもっと、


    気付いてもらえる位…。


    「ガラっと?」


    「お願いします…。時間がないんですよ〜。」


    「あれ、今日は急ぎ?」


    背の高いマイさんは、
    私の顔を覗き込んだ。


    「あ、ううん今日は急いでは…ないけど。」


    「そう?んーガラっと。ガラっとか…。」


    そうだなぁとマイさんは。
    苦笑いした。


    「はい。イメージチェンジってやつ、したいんです。」


    「イメチェンか。…ばっさり切る?」


    似合うと思うよ、と。


    マイさんは私の肩に乗った髪を。持ち上げた。


    「ショート…は。幼く見えそうだから、ちょっと…。」


    ただでさえチビっ子だし(涙)


    だから怖くて、


    ショートにした事ない。


    「短くした事ないよね?」


    いつも毛先だけだもんね、
    と、マイさんは手ぐしで。
    私の髪を整えた。


    「うん。ないです。」


    似合うのかな〜。


    全然想像つかない。


    「切っちゃダメ?」


    ふふん、とマイさん。


    え。


    本当にショート?


    「ショートですか?」


    「うん。絶対似合う。前からずーっとそう思ってたよ。」


    「本当ですか?」


    ショートかぁ。


    うーん。


    「任せて。大人っぽくしてあげる。」


    どうぞ、とシャンプー台に。


    案内された。


    大丈夫なのかな…。


    ううん。


    マイさんの腕、信じようっと。


    だってマイさんの言った…、


    “大人っぽい”


    これ。


    作戦その四の…。


    キーワードだもん。






    超重要!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10620 / ResNo.22)  和美のBlue 17
□投稿者/ つちふまず 大御所(943回)-(2005/06/30(Thu) 20:57:18)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    シャンプーが終わり。


    「でもまた何でイメチェン?」


    シャキシャキと。


    マイさんのハサミは。


    テンポ良く私の髪を切る。


    「んー。んー。」


    「恋かね?」


    確信してます、とばかりに。鏡越しのマイさんは微笑んだ。


    「あい。ふふ。」


    「いいねーいいねー。」


    切りがいがある、と。
    マイさんはまた笑った。


    「すっっごい大人なんです。」


    生きてる世界さえも…。
    きっと違うんだけど。


    「大人、かぁ。」


    「うん。でもやっと…少しだけ。ほんのちょっとだけ近付いたような気がして。」


    ほんのちょぴっとだけど。


    「あら、まあ。」


    「わかんないですけどね?」


    「大丈夫。可愛く仕上げましょう。」


    鏡越しに。
    またマイさんは微笑んだ。


    「大人になりたーい。」


    「動かない動かない。」


    「はーい。」


    どんどん減っていく、
    髪を見て。


    ちょっと不安になったけど。


    「伝わるといいね。」


    「うん。伝わるといいな。」


    胸の中に。


    暖めていた小さな想い。


    少しずつでいいから。


    伝えて行きたい。







    二時間後─


    「はい、終了…。」


    タオルで服に付いた、
    小さな毛を。
    マイさんは払ってくれた。


    「…………。」


    「どう?」


    「………。」


    初めて見た。


    私のショート。


    こんな感じになるんだ。


    ………っていうか。


    いい。


    いいじゃん!!


    長い前髪を残して。


    オレンジ系のカラーを入れて。


    重く見えない。


    「小悪魔ショートボブ。」


    いっちょ上がり、と。
    マイさんは鼻を擦った。


    「小悪魔…。」


    す、素敵な響き。


    「柔らかい上に細いから、ペッタンコにならないようにね。」


    内側からドライヤーかけて、と。マイさん。


    「仕上げにスプレーワックス軽くかけたらツヤが出るから。」


    かけますかけます!


    「お疲れ様でした。」


    「あ、ありがとうマイさん!」


    「いいえ。」


    小悪魔…、


    いい♪


    会計を済ませて─


    「ありがとうございました。」


    閉まる自動ドア。




    小悪魔でも…。


    相手は多分。







    閻魔様なんだけど★


    でも。


    頑張ろうって気になった。







    早くナツさんに見せたいな。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10628 / ResNo.23)  和美のBlue 18
□投稿者/ つちふまず 大御所(944回)-(2005/07/01(Fri) 07:57:52)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    土曜日─


    シフトは17:00からだったけれど、一時間早めて。


    ドキドキしながら出勤。


    「おはようございま〜す。」


    バーカウンターの近くで。


    リキュールの入った段ボールを抱える人影。


    「おはよ、…あ!カズ?」


    髪切ったね、と。
    ヤスさんは両手をチョキの形にして。チョキチョキと。


    「はい〜ふふ。」


    「いいじゃねぇか。ダハハ。」


    照れながら厨房へ。


    「おはようございまーす。」


    と、誰もいない…。


    休憩時間か。


    ナツさんは…と。


    いないなぁ。


    まだ来てないのかな。


    厨房を抜けた先に。


    スタッフルーム。


    その向かいに。


    オーナールーム。


    現場主義のナツさんは店内にいる事が多いから、


    このオーナールームに居る事は少ない。


    でもドアが少し、


    開いている事に気付いて。


    コンコン、と。


    ノックして。


    「おはよう…ございま、」


    あ。


    あらら。


    ナツさんがいた。


    でも。


    来客用のレザーのソファに。


    もたれるように。


    寝てる。


    寝てる…。


    きゃーっ!!


    ドキドキと。
    ウキウキが。


    混じり合った心で。


    そっとオーナールームに。


    入って後ろ手にドアを閉めた。


    とても低くて、
    大きなソファ。


    店内と同じ物。


    肘置きの部分に。
    もたれるように。


    体にフィットした、
    黒のロンT。


    ビンテージ物かな。
    色褪せた細身のジーンズ。


    シンプルが。
    高級に見える人。


    ホントに本当に。


    素敵な人…。


    吸い込まれるように。


    ソファの下に敷かれたラグの上に、ちょこんと座って。


    その寝顔を見つめた。


    スースーと。


    聞こえるか聞こえないかの。


    寝息…。


    白い頬に、細い顎。


    あ、ソバカス発見(笑)


    二重の瞳。
    長い長い睫毛。


    外人さんみたいな…。
    ゆるゆるパーマのかかった、


    ショートカット。


    疲れてるのかな…。


    ふふ。


    寝顔は意外と、幼いかも。


    普段はギラギラ、


    してる感じだけどね…。




    触っても、いいかな。


    触りたい、な。


    そーっと。


    手を伸ばして…。


    短い前髪に。


    触れ、


    「…………!」


    スッとナツさんの右手が伸びて。




    私の手首を掴んだ。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10629 / ResNo.24)  和美のBlue 19
□投稿者/ つちふまず 大御所(945回)-(2005/07/01(Fri) 08:00:51)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    あ……。


    え。


    掴まれた右手が。
    熱い。


    「ナツ、さん…。」


    目を少しだけ開けて。


    「ん………。」


    眠そう、な、顔。


    視線が絡まって。
    思わず目を反らした。


    やだ。


    ナツさん。


    無防備は見たことないから。


    恥ずかしくて見れない。


    「………誰。」


    えっ。


    あ、そうか。
    髪、切ったから…。


    「…私です、カズ、です。」


    「………。」


    「え。」


    グッと手を引かれた、


    と思ったら。





    ナツさんの上にいた。


    訂正。


    ナツさんの上に重なるように。


    乗ってた(涙)




    う、


    うわーっ!!


    ちょ、ちょっと。


    これ。


    どしたら…。


    グッとナツさんの手に。
    力が込もって。


    抱き締め…られて、る。


    っていうか、


    ほそっ、細いーっ!


    ちゃんと食べてるのかな?


    それ、
    どころじゃないけど。


    ナツさんの腕の中。


    暖かい腕の中。


    いい匂い…。


    顔が首筋に、
    埋まるように。


    ナツさんの跳ねた短い髪が。私の鼻をくすぐる。


    「な、…ナツさん。」


    出来るだけ小さい声で。


    呼んだ。


    「ん………。」


    寝惚けてる。


    完全に。


    誰と…。


    間違えてるのかな。


    ひーん(涙)


    でも…、


    間違いでもいいや。


    もうちょっと…、


    こうして…。






    「髪…切ったの…。」


    え。


    閉じていた目を開けた。


    体を起こすと。
    眠そうな目をしたナツさん。


    手を伸ばして。


    私の前髪に触れた。


    「あ、切りまし、た。」


    目を反らして、
    体を離そうとしたら。


    「いいね。」


    触れていた手は。


    両手に増えて。


    前髪と。


    私の耳にかかっていた髪に。


    そっと触れた。


    ………。


    顔、に。
    血が登る。


    「お、起きてたんですか。」


    上から見下ろす。


    ナツさんの彫りの深い顔。


    「起きてた。」


    よ、とナツさんは言った。


    「おはよう、ござい、ます。」


    なんでこんな体制で(涙)
    私が押し倒したみたい…。


    「カズ。」


    え。


    髪に触れていた両手に、


    力が込もって。


    上から下に。


    頭が移動したと思ったら。


    ナツさんの顔が超近い…、


    訂正。





    唇が重なった。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10633 / ResNo.25)  すみません、
□投稿者/ ちび 一般♪(6回)-(2005/07/01(Fri) 15:49:26)
    鼻血出そうです、私!!

    私の初めての人も『奈津子』と言いました。


    ちびも小悪魔になりたい!!!



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10655 / ResNo.26)  和美のBlue 20
□投稿者/ つちふまず 大御所(946回)-(2005/07/02(Sat) 09:41:18)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    目の前に─


    綺麗な鼻筋。
    長い睫毛。
    形のいい耳。


    柔らかい、唇。


    あ。


    う。


    キス、してる。


    キスだ。


    リアルに。





    何秒かして─


    ナツさんの顔が離れた。


    「ユニフォーム、着ようか。」


    いつものように、


    口の端を持ち上げて。


    しかも。
    ちょっと意地悪そうに。


    左の眉だけが上がってた。


    「あ、は、はい。」


    何がなんだか。


    パニック状態。


    慌ててナツさんから。
    体を離して、


    ソファから降りた。


    キス…。


    しちゃった。


    っていうかされちゃった。


    きゃあ〜!!!


    顔を両手で抑えて。
    興奮を落ち着かせようと。


    「………と。これね。」


    振り返るとナツさんは。


    いつの間にか、
    デスクの横にあった段ボールから、ラップされた袋を手にしていた。


    「カズ。ほら。」


    着て、と。


    手を伸ばして。


    あの、


    ナツさん?


    なんでそんな、普通…、


    あのー…。


    「あの、ナツさん?」


    キスって。


    どうして。


    「ん。」


    何?という顔。


    その時─


    コンコン、と。
    背後にノック音。


    「あ、もう来た。どうぞ。」


    あれれ。


    「ハイ、ナツ。」


    振り返ると。


    ガチャ、と開くのと同時に。


    背が高くて。


    髪が長くて。


    いわゆる美人が。


    そこにいた。


    ジーンズにノースリーブを、二枚重ね着して。


    華奢な腕がすっごく白い。


    カラーのエクステンションが、よく似合う。


    「これから着る所。待ってて。」


    かけて、と。
    ナツさんは。
    ソファに促した。


    「どうも。」


    小さく頭を下げられたので。


    「あ、ど、どうも…。」


    私もぎこちなく挨拶。


    「カズ、着替えて。」


    袋を立っていた私に。
    ポンと差し出されて。


    「あ、はい。」


    慌てて部屋を、


    出ようとした時。


    ドアの取っ手を回して、


    また閉めようとした時。


    「………」
    「………」


    何かを囁き合う声がして。


    そこに視線を向けると。


    デスクにもたれて立つナツさんの首に。


    美人さんの腕が絡まって。







    キスしてた。


    こちらに体を向けた、


    ナツさんの目が、


    私の目と合った。


    ナツさんは。







    笑ってた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10656 / ResNo.27)  和美のBlue 21
□投稿者/ つちふまず 大御所(947回)-(2005/07/02(Sat) 09:45:08)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    何。


    何………?


    なんで。


    どうして?


    ナツさん笑ってた。


    意味がわかんない。





    更衣室に入って。


    荷物をロッカーに入れる。


    ラッピングされたそれを。
    カサカサと開ける。


    中には。


    ベージュのパンツと、スリットの入った細身の麻のロンスカ。


    2パターン出来るのかな。


    そしてサロン。


    上は…。


    ノースリーブの。
    アジアンな模様、
    綺麗なオレンジと紫の。
    ラインが無数に入った、


    ノースリーブのサマーニットだった。


    かっこいい。


    夏っぽい。


    ナツっぽい?


    ナツさんのセンスかな。


    着てみよう。


    手早く服を脱いで。


    ロンスカに手をかけた。


    全てを身に付けて。


    鏡の前に立った。


    アジアンだ。


    うん、可愛い…。


    靴はサンダルにするのかな。


    上から下まで。


    見てみた。


    あ。


    顔。


    私…。


    見ると私の顔は。


    涙で溢れそうに。


    情けない顔をしてた。


    「う。」


    何でキスなんか。


    あの人は…。


    誰?



    鏡の前で。


    混乱した胸の内が爆発しそうに。


    なったけれど。


    「…………だめ。」


    泣かない。


    泣かないもん。


    まだ泣かない。


    ゴシゴシ、と。
    両方の瞼をこすって。


    私は更衣室を出た。




    ─コンコン、


    「失礼します。」


    恐る恐る開けたドア。


    ホッとした。


    ナツさんはソファに。
    例の美人さんは。


    向かい合うように別の椅子に。
    二人は離れて座ってた。


    「やっぱり私の腕、いいのね〜。」


    美人さんは立ち上がると。
    嬉しそうに私に近付いて。


    肩の辺りや、
    スカートの出来を。
    確かめていた。


    あ、わかった。


    デザイナーさんだ、この人。


    「カズ。こっち。」


    来て、とナツさんは。


    手招きをして。


    私はデザイナーさんから離れて、ナツさんの前に立った。


    腕を組んで。


    私の体を。
    上から下までチェック。


    「うん……。」


    真剣な目。


    ナツさん。


    ね、ナツさん。


    何でキスしたの?


    ただの挨拶?


    「うん。これで注文する。」


    ナツさんは立ち上がると。


    「お疲れ様。戻って。」


    私の肩をポンと叩いた。




    リセットボタンを。









    押されたみたいだった。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10669 / ResNo.28)  和美のBlue 22
□投稿者/ つちふまず 大御所(948回)-(2005/07/03(Sun) 12:32:58)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    p.m20:00─


    「いらっしゃいませ…。」


    ナツさんは。


    デザイナーさんとの打ち合わせを済ませた後。


    “出かけてくる”


    と言って。


    お店を去ってしまった。


    「お待たせしました…。」


    どんな動作も。


    なんだか手に付かなくて。


    自分で言うのも何だけど。


    上の空。


    「ありがとうございました…。」


    顔が。


    どんどん。


    歪んでくのがわかる。




    ナツさんとキスした。


    ナツさんは違う人と、


    キスしてた。


    ナツさんにとっては。


    多分キスは。


    「いらっしゃいませ。」


    と同じ位の。


    コミュニケーションの一つ。


    …なのかな。


    …やだ。


    やだな。


    はぁ……。


    テラスで。
    夜の闇の中。


    小さく砕ける波音を聞いた。


    今頃ナツさん…。


    あの人と。




    ………あ。


    ダメ。
    抑えてたものが…。


    出ちゃう。


    「…ちょっと、抜けます。」


    パタパタと。


    更衣室に駆け込んだ。




    ナツさん。


    好きだよ。


    すっごい好き。


    滅茶苦茶好き。


    でもナツさんのレベルに。


    中々付いてけない。


    ナツさんの、


    “当たり前”


    が、私には…。


    “当たり前じゃない”


    全てが基準外で。


    全てが大人。


    ダメなのかな。


    やっぱり私は、


    子どもかな。


    こんなに泣けちゃう位…。


    好きになっちゃうなんて。




    「うぇ……。」







    泣いて泣いて。



    フロアに立つのは。







    30分経った後だった。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10670 / ResNo.29)  和美のBlue 23
□投稿者/ つちふまず 大御所(949回)-(2005/07/03(Sun) 12:36:10)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    作戦その伍…。


    家に帰って。
    日記を開く。


    今日の日付と。
    お天気を書いたけど。


    その先が進まない。


    作戦その伍。


    その伍、は…。


    ダメ(涙)


    バッテンを書いて。


    作戦その伍を消去。


    完全に。
    ふりだしにリターン。


    作戦なんて…、


    もう立てられないよ〜!


    ジタバタと。
    またベッドの上で泳いだ。


    はぁ…何やってんだろ。


    馬鹿みたい…。


    手を伸ばして。
    バッグから携帯を出した。


    ナツさんが入れてくれた、
    この前のメール。


    何度も読み返してみる。


    「ふぇ〜ん。」


    バサ、と枕に撃沈。


    今頃ナツさんは…。


    あのデザイナーさんと。


    …ダメ。想像すると頭おかしくなる。


    考えないようにしよう。


    ベッドから降りて。
    キッチンまで歩く。


    小さな冷蔵庫を開いて。


    ミネラルウォーターのペットボトルに口を付けた。


    ふぅ…。おいし。


    シャワー浴びて、
    寝ようかな…。




    〜♪〜♪


    携帯。メールだ。


    開いて中身を確認する。


    あ、ヤスさんだ。


    件名:ブルーポイントクルーの皆様へ。


    “今度の月曜日。急遽BBQ開催。用事ない人は来てね〜♪(余り物処分&リキュール再搬入の為)”


    バーベキュー。


    か。どうしよう。


    月曜日は授業はない。


    だから土曜日と日曜日は。


    大抵ラストまでバイト。


    んー。
    でもなぁ。


    何かバーベキューなんて行く気分じゃ…。


    ん?


    カタカタ、と。


    画面を下へと移動した。


    転送された文章に。
    ヤスさんが付け足したのか。


    “オーナーも来るよ、カズ☆”


    とだけあった。


    ………。


    あ。


    ほ、本当に?


    「くーっ!!」


    またジタバタジタバタと。


    ベッドで遊泳。


    ナツさん来るんだ!
    珍しい〜!


    絶対行く!!




    …っていうかヤスさん。


    知ってるのかな(汗)


    バーテンダーには。


    人を見る目が。


    すごーく備わってなきゃ出来ない仕事だって…。


    いつかヤスさん言ってたけど。




    ……よし。


    作戦は、やめよう。


    サラサラと。


    日記にペンを走らせた。






    “嫌な事は気にしない”






    その一行をでっかく書いて。




    「むん!」




    バスルームに入った。


    (携帯)
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