ビアンエッセイ♪

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■10671 / ResNo.30)  和美のBlue 24
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(950回)-(2005/07/03(Sun) 13:12:45)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    月曜日─


    雨じゃなくて良かった〜。


    快晴!
    サンサンと。
    照り付ける太陽。


    梅雨時とは思えない、強い日差し。


    アパートからお店までは。
    歩いて五分。


    海で行われるバーベキューの為に、ビーサンを履いて。


    お店までペタペタと走った。




    「おはよーございます!」


    テラスを駆け上がりながら。


    勢い良く店内に入ると。


    ヤスさんを始め、


    キッチンの人。
    フロアの人。


    合わせて八人位が。


    バーベキューの準備をしてた。


    「おーカズ、手伝え〜!」


    兎がたくさん跳ねているアロハシャツを着たヤスさんが、


    クーラーボックスにザラザラと、製氷器から氷を移していた。


    「は〜い!」


    お店の目の前は海だから、


    夏のハイシーズン前には。


    よくこうしてバーベキューをする。


    クルーの親睦を深める為に、ヤスさんが毎年。


    企画するんだって。


    いつも突然だから、全員は集まれないみたいだけど(笑)


    下ごしらえをキッチンで。


    クーラーボックスを抱えて。


    テラスの階段を降りようとした時。


    一台の車が。


    お店に入って来た。




    あ。


    ナツさん、だ。


    車が違ったから。
    一瞬わからなくて。


    黒のマセラティ。


    セクシーな車…。


    一瞬だけ見えた。


    白のノースリーブに。


    サングラス。


    か。


    カッコいい…。


    思わず地下に入る車を。
    目で追い掛けてしまった。




    階段を全部降りて。


    地下に続くスロープを見ると。


    バタン、と。
    ドアを閉めるナツさんが見えた。


    スタスタ、と。


    白いベルトをした。


    ベージュの細身のパンツの足が、こちらに向かって来る。




    「おはよう、ございます。」


    何だか会うたび。


    緊張しちゃう。


    「おはよ。」


    サングラスを外さずに、


    ナツさんは私の前を通り過ぎて。


    トントン、とテラスの階段を登って行った。


    背中を見ると。


    パンツを腰履きしている為か。


    腰の辺りに地肌が見えた。


    あ。


    …タトゥー。


    チラッとでもわかった。


    結構大きな、
    タトゥーが入ってる。


    ナ、ナツさんらしい…。


    きゃあ〜っ。


    ドキドキしながら。





    クーラーボックスを持ち直して。海へと向かった。


    (携帯)
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■10672 / ResNo.31)  和美のBlue 25
□投稿者/ つちふまず 大御所(951回)-(2005/07/03(Sun) 13:16:37)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ズンチャ、ズンチャ、と。
    レゲエのリズム。


    砕ける波音。


    「始めるぞ〜!」


    「カンパーイ!」


    イエーと。
    グラスを片手に。


    BBQスタート。


    タープ(日陰を作る為の屋根ね)の下で。


    即席とは思えない位。
    豪華なバーベキュー。


    食べ物と飲み物のプロが集まってるから…。


    とっても美味しい♪


    私はメンバーの中では、
    一番歳下という事もあり。


    お肉を焼いたり、ヤスさんを手伝ったりと。


    そんな中でもやっぱり…。


    目で追ってしまう。


    折り畳みのビーチチェアに座って、料理長と目を細めて話してる。


    やっぱりいいなぁ♪


    ナツさん…。


    目が離せない。


    「カズよそ見しなーい!ほら、氷!」


    「あ、す、すみません。」


    金髪のモヒカンで。モミアゲと髭が繋がっている、ヤスさん。


    シェイカーを振る腕は。


    ポパイみたい♪


    ブラックフライの緑のサングラスをしてるけど。


    本当は人の良さそうな優しい目をしてるんだよね。


    「オーナーにこれ、持ってって!」


    トン、と即席で設置した木製のバーカウンターに。


    ヤスさんはグラスを置いた。


    「はーい。あ、これ何ていうカクテルですか?きれーい。」


    ヤスさんはふふんと笑うと。


    「セックスオンザビーチ!」


    「す、すごいカクテル…。」


    何てハレンチな…。


    「ちゃんとオーナーに、カクテルの名前言ってから出すんだぞ!」


    イヒヒ、とヤスさんは嬉しそうに笑った。


    「ええっやだ〜!」


    「ほらほら温くなる!」


    「ひ〜ん。」


    グラスを持って。


    チェアに座るナツさんに近付く。


    ヤスさんを見ると。


    “言え、言え、”


    と。ニヤニヤしてる(涙)


    「あ…飲み、物です。」


    座るナツさんに屈んで。
    グラスを渡すと。


    「何?これ。」


    ナツさんもニヤニヤと。
    やりとりを聞いていたのか。


    「あ、セッ、セッ、」


    「せ?」


    「セックスオンザビー…チで、す。」


    ボソボソと言う。


    恥ずかし〜(涙)


    ナツさんはクックと笑った後、


    グラスに口を付けて。


    「カズ。…これはロングアイランドアイスティーだよ。」


    ふっとナツさんは笑った。


    「たまってんなーカズ!」


    ワハハと料理長は笑った。





    んもうヤスさん!!(怒)

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10674 / ResNo.32)  ちびさん
□投稿者/ つちふまず 大御所(952回)-(2005/07/03(Sun) 14:44:26)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    はいどうも(^O^)
    つちふまずです。

    良かったらHPに感想板がありますので、そちらにもお越しくださいね〜♪

    和美は書いていてとても楽しい一人です。
    今回は恋に対して前向きで、無器用な女の子が…。
    書きたかったんですが。
    いかがでしょう。

    走り回る女の子は、書いていて私も元気になれます。

    辛い恋も。
    書けばドラマになるんでしょうけれど…。

    やっぱり明るい物が、
    つちふまずは好きなので。
    皆さんが笑ってくれたら、
    つちふまずは嬉しいです。

    今後もカズを。
    応援してやってくださいね!


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10676 / ResNo.33)  和美のBlue 26
□投稿者/ つちふまず 大御所(953回)-(2005/07/04(Mon) 08:07:31)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    「ワハハハ!」
    「キャー!!」


    お酒も回って来て。
    みんないいカンジ。


    私はというと…。
    みんなに飲まされて。


    ヘロヘロ。


    うい〜。


    「よーっし今年も禊、するぞ〜!!」


    上半身裸のヤスさんが。


    気合いだーっ!と。
    叫んでる。


    背中から腕にかけて。
    ファイアーパターンの、
    いかついタトゥー。


    おおっ来たな〜!
    とみんな大騒ぎ。


    ミソギ?


    って…なんだろ?


    「今年は…。カズ!お前だぁー!!」


    ザッザッと砂を舞い上がらせて。


    向かってくる熊…。
    間違えたヤスさん。


    えっ。


    「あ〜和美!頑張って!」


    可哀想に、と。
    みんなパーッと散ってく。


    え!?


    ……きゃあ!!


    アッと言う間に。
    ヤスさんに抱えあげられて。


    「いやー!!」


    ジタバタジタバタと。


    バシバシ叩いて見たけれど。


    アッという間に。


    波打ち際。


    ま、まさか!!


    「カズ。覚悟せい。」


    「いやいやいやー!!」


    ザブザブと。
    海に入るヤスさん。


    浜の向こう。


    ナツさんを見ると。


    クックッといつも以上に、口を抑えて笑ってる。


    「和美のミソギー!おりゃ!」


    「きゃあっ!!」


    ふわっと体が浮いた後。




    ─ザブン。


    多少加減されたのか。


    ヤスさんのほぼ真下に。


    落下。


    「ぷわっ!!」


    顔を上げると。


    「今年の夏はいい事あるぜ。」


    ニッとヤスさんは。


    全身濡れた私に。


    笑顔。



    ワッハッハと。
    浜の向こうでは。
    大爆笑。


    「んもー!ヤスさん!!」


    体を起こして。


    後ろから大きなヤスさんの背中に。


    思いっきりしがみついて、


    引っ張った。


    「うわっ!!」


    ─ザブン。


    「ふふーんだ。」


    「このやろ〜!」


    「きゃあー!!」


    真夏日だったから良かったけど。


    良かったけどさ?(涙)


    水を吸って重くなった服を引きずりながら。


    「おーカズ最高!!」


    みんな盛り上がり過ぎ。


    ふぇ〜ん(涙)


    「シャワー浴びて来いや。カズ近いんだから。」


    料理長がワッハッハと。
    豪快に笑った。


    「ふぁーい。」


    ビーサンを片手に。


    一旦おうちに戻る事になった。


    和美のミソギ……。




    いい事あるかなぁ(涙)

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10677 / ResNo.34)  和美のBlue 27
□投稿者/ つちふまず 大御所(954回)-(2005/07/04(Mon) 08:10:28)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    うう〜。


    ち、ちべたい。


    ペタペタと。
    上から下まで水分を含んだ体を引きずって。


    ゴーホーム。


    まぁ近いからいいけど。


    いいけどさ(涙)
    ふぇ〜ん。


    よれよれと。
    アパートの階段を上がり、


    鍵穴にキーを差し込んだ時。


    「男前。」


    下から声が聞こえた。


    え?


    下を見ると、


    トントンと。


    階段を登る…。


    外人さん。
    間違えた。


    ナツさんじゃん!


    「あ。」


    「シャワー貸して。」


    スタスタと。


    私の正面に立つ。


    「え。」


    「カズの次でいいから。」


    ひどい頭、と。
    ナツさんは長い指で。
    私の前髪を撫でた。


    「あ……はい!」


    慌てて鍵を開ける。


    シャワー?


    シャワーって!!


    「どどどどうぞ。」


    「ん。」


    ナツさんが。


    うち。


    うちにーっ!!


    パタンと閉めると。

    ナツさんはサンダルを脱いで、

    中に入って行った。


    「す、すみません散らかって…、」


    慌てて私も。


    ビーサンを脱いで、
    部屋に入ろうとすると。


    「そのまま。ゴー。」


    バスルームを指差して。


    ナツさんは口の端を持ち上げた。


    「ははは、はい!」


    また慌てて。


    バスルームへ入る。


    濡れた服を。
    最速で脱いで。


    すぐにお湯を出した。


    ちょ、


    ちょっと待って。


    変な物なかったかな…。
    部屋の中。


    ああっ!
    食べかけのピザ…。
    そのまんまだ(涙)


    トリートメントもそこそこに。


    多分8分位で、
    バスルームを出た。


    あ。


    やば。服…。


    着替えがない(涙)


    うぇ〜ん。


    バスタオルを巻いて。


    「失礼、します…。」


    自分の部屋なのに。


    無茶苦茶緊張して。
    ドアを開けると。


    わわっ!!


    ベッドに寝そべる、
    ナツさんがいた。


    何かをジッと見て。


    「あ、シャワー、どうぞ、」


    ナツさんを見ずに。


    前屈みで。


    クローゼットを開けると。


    「ん。」


    ナツさんは体を起こして。


    私の横を通り過ぎようとした時。


    「可愛いパンツ。」


    ええっ!!


    ナツさんを見ると。


    あれ、と。


    指を差した先に。


    下着干し。


    水玉のパンツが。


    そこにはあった。




    撃沈↓


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10678 / ResNo.35)  和美のBlue 28
□投稿者/ つちふまず 大御所(955回)-(2005/07/04(Mon) 08:13:26)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    サー、サーと。


    水が流れる音。


    「…………。」


    服を着た私。


    ベッドであぐらをかいて。


    考え中…。


    ナツさんが。


    シャワーを浴びてる。


    いやナツさんだって人間だから…汗ばんだらシャワー位。


    浴びるんだろうけど。


    うわ〜っ!!


    バタン、とベッドに横たわると。


    クンクン。


    あ。これ、


    ここに寝てたから…。


    いい匂い。
    甘いようでいて。
    柑橘系。


    あーこのまま。


    死んでも…、


    「眠いの?」


    えっ!


    顔を上げると。


    いつの間にバスルームを出たのか。


    バスタオルを頭から被って。


    黒のフレアパンツ。


    上も。黒。


    ホルターネックタイプの。
    キャミソール。


    シルバーのチェーンタイプの、ベルトをしてる。


    「あ、あれ?」


    服が違う…。


    良く見ると手に。
    白い袋があった。


    「さっぱりした。」


    化粧水、借りるよ、と。


    小さな鏡台の前に。
    ナツさんは立った。


    「は、はい。……あ。」


    背中が大胆に開いているデザイン。


    初めて見る、
    背中のタトゥー。


    「すご…い。綺麗…。」


    鏡越しにナツさんは。
    ん?と眉を上げた。


    「人魚、ですね。」


    こちらを振り返るような、
    姿勢の。
    セクシーなマーメイド。


    「ああ…これ。」


    ナツさんも背中の人魚みたいに。こちらを振り返った。


    「はい。」

    「ん。」


    とだけ言うと。
    私の隣に。


    ゆっくり近付いて。
    座った。


    わわわわ。


    「焼けたね。」


    頬の辺りを。
    長い指の腹で。


    触れられた。


    「あ、は、はい…。」


    恥ずかしくて。
    うつ向いた。


    だって凄く凄く。


    湯上がりで。


    かっこいい服で。


    全然なんだか、


    違うんだもん。


    「あの、どこか…行くんですか?」


    ナツさんの格好は。
    さながら。
    パーティー仕様。


    「うん。ちょっとね。」


    外していたフランクミューラーを。右手にした。


    「そうですか…。」


    寂しいな。


    今日は夜まで一緒に…。


    いられるかなって、


    ちょっと期待…。


    「カズ。」


    「え?」


    「カズも行くか。」


    だな、という顔。


    「ええっ!」


    「行こう。」


    ど。







    何処行くんですか??


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10687 / ResNo.36)  和美のBlue 29
□投稿者/ つちふまず 大御所(957回)-(2005/07/05(Tue) 08:05:53)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    夕陽に染まった。
    海岸線。


    静かに進むマセラティ。


    窓を開けていたから、
    風になびくのがわかる、
    私の髪。


    口に入った長い前髪を、頭を振って払った。


    「私です。…はい。」


    ナツさんはハンドル片手に。電話中。


    「ええ。カズ、連れて行きます。…はい。」


    相手は…ヤスさんみたい。


    それにしても。


    道路交通法なんて。
    ナツさんには。
    関係ないんだろうなぁ。


    だけどね?ナツさん。


    マセラティ。


    外車ってよくない。


    すれ違う、車、車。


    みんなこっちを見るのが。
    助手席からありありと。


    「はい、失礼します。」


    ヤスさん…。


    ニヤニヤ顔が。
    目に浮かぶ(涙)


    ナツさんはBGMの音量を。
    少し上げた。


    なんか。


    え、映画みたい…。


    感動(涙)


    「少し走るよ。」


    見るとナツさんはサングラスをしてるので、


    口の端が持ち上がるのだけ。確認出来た。


    「あの…何処に行くんですか?」


    「ん。レストラン。」


    レストラン。


    って…。


    ナツさんが言う、
    レストラン、とは?


    ガストじゃないよね…。


    「こ、こんな格好で、いいんですか?」


    私の格好。
    裾を絞れるタイプの。
    楽なカーキ色の綿パンと。


    青いタンクトップ、と。
    サンダル。


    「いい。カズらしい。」


    よ、と。
    こちらを見ながら。


    ナツさんは煙草をくわえた。


    う。


    うわわわわわ。


    まためまい、が。


    私最近こればっかり(涙)


    「どこまで、行くんですか?」


    車は海岸線から離れて。


    大きな道路へ。
    合流していく。


    「都内。」


    とだけナツさんは言った。


    都内…。


    こ、これはもしや。


    デートというやつでは。


    「お腹は空いてる?」


    「空いてます!」


    ミソギのせいで全然食べてないし(涙)


    「期待していい。」


    と言って。


    灰皿にトントン、と。
    灰を落として。


    またそれをくわえた。


    何処まで行くんだろう。


    流れて行く景色。


    静かに流れるサウンド。







    何処までも連れてって。







    なーんて言えるはずもないけど。







    大・興・奮!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10688 / ResNo.37)  和美のBlue 30
□投稿者/ つちふまず 大御所(958回)-(2005/07/05(Tue) 08:09:39)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    車は高速に入り。


    チャカ・カーンが静かに響く。


    暫く沈黙だったけど。


    「カズさ。」


    ナツさんが口を開いた。


    「はい?」


    なんでしょう。


    「卒業したら、どうする?」


    あ。…進路かな。


    「ん…それ話そうと思ってました。」


    そうだ。


    ナツさんには話さなきゃ、と思ってた。


    「ん?」


    「今のお店で…働いちゃダメですか?」


    栄養士の資格を取ったら。
    フロアだけじゃなくてキッチンもやってみたい。


    「…………。」


    ナツさんは長い指を。
    頬に当てた。


    「やっぱダメ、ですか…。」


    「…いや、そうじゃない。」


    「え?」


    ナツさんを見た。


    「やりたい事、やりなさい。」


    「…………。」


    「うちに縛られる事はない。」


    学費の事…かな。


    「違います。働きたいんです。ダメですか?」


    私あのお店、
    凄く凄く。
    好きだもん。


    「そうか。」


    ナツさんはフフ、と。
    一つ笑った。


    「はい。…ふふ。」


    「ありがとう。」


    え…。


    “ありがとう”


    やだ。


    なんか凄く。


    嬉しい…。


    「頑張ります。」


    もっともっと。


    「ん。」


    ナツさんは満足したように、微笑んだ。


    「あ、ナツさん。ナツさんのお店って…、他にもあるんですよね?」


    あと二店、あるって聞いた。


    「ん。中目黒…。恵比寿。…と、鎌倉。」


    中目黒。
    お洒落っぽーい。


    「行ったみたいです。」


    どんなお店なんだろ。


    「………ん。」


    あれ。


    ナツさんの答えが。


    一瞬遅れた、ような。


    「今度ね。」


    「はい!」


    やったぁ。






    車はいつの間にか、


    高速を降りて。


    市街地へと入った。




    海とは違う。


    人の波と。


    たくさんの車。


    ナツさんは本当は。


    こっちがホームなんだよね。


    海も似合う人だけど…。




    「何処に停めるかな。」


    少しスピードダウンして。


    ナツさんはタイムズを見付けて、そこに入った。


    「到着。」


    ナツさんはすっかり暮れた回りを眺めた後。


    サングラスを外しながら、


    車を降りた。


    ビルの谷間。


    黒いセクシーな服に、


    身を包んだナツさん。


    やっぱり何処でも。







    カッコいい。


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10717 / ResNo.38)  和美のBlue 31
□投稿者/ つちふまず 大御所(959回)-(2005/07/06(Wed) 08:19:09)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ビルの谷間から。
    一本入ると。


    そこはびっくりする位。
    古い民家が立ち並ぶ。


    下町。


    歩いていた私達の前を。
    三毛猫が横切った。


    こんな所にレストラン…。
    どんな店だろ。


    それにしても。
    ナツさん…。


    コンパスが長い!
    ひえ〜。


    少し小走りに、
    ナツさんの後に続くと。


    突然ナツさんが止まった。


    トン、と背中に。
    ぶつかってしまった。


    「…あ、すみません。」


    「ここだよ。」


    「え……。」


    これ!?


    ナツさんを見ると。
    赤いレンガの建物。


    古ぼけた電飾の、
    看板があった。


    電球が切れかけているのか。点滅してる…。


    “ブランカ”


    と。片仮名で書いてあった。



    「来て。」


    カランカランと。
    古いドアを開けた。


    店内には、


    誰もいない。


    赤茶気た革の椅子。
    明るみを抑えた照明。


    あ、南野陽子のポスター(笑)


    うん、すごく…。
    なんていうんだろ。


    古き良き、洋食屋さん。


    「いないな。」


    ナツさんはキョロキョロと、見渡すと。


    キッチンかな。
    奥から小さな人影。


    「いた。…ママ!」


    ママ!?


    ナツさんは笑顔で。


    その人影に。


    駆け寄った。


    そこには、小さな小さな。


    ─おばぁちゃんがいた。


    ナツさんを見て。
    たくさんの皺を、
    抱えた顔を。


    もっとくしゃくしゃにした。


    ナツさんはしゃがんで。


    「元気だった?」


    「…………。」


    おばぁちゃんは。


    うんうんと頷くだけで。
    言葉はなかった。


    「食べに来たよ。」


    ナツさんの目は。
    すごーくすごーく優しくて。


    まるで娘を見る母親みたいで。


    何故かすごく。
    胸がグッとなった。


    おばぁちゃんはナツさんの肩を、二、三回擦った後。


    静かに、
    ゆっくりと。
    また奥へと。
    下がって行った。



    ナツさんは振り返ると。


    「かけて。」


    そこに、と。
    促してくれた。


    「ママ、って…。」


    まさか母親じゃ、ないですよよね。


    「ああ…。」


    ナツさんはまた、懐かしい目をした後に。


    「昔、お金が無かった。いつもここで…。」


    「食べてたんですか。」


    なるほど。


    「ん。中学生の時。」


    …………。


    そうなんだ。


    でも。


    聞く事はしなかった。

    (携帯)
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■10718 / ResNo.39)  和美のBlue 32
□投稿者/ つちふまず 大御所(960回)-(2005/07/06(Wed) 08:22:31)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    15分程して─


    おばぁちゃんは二つ。
    お皿を持って。


    私達のテーブルに。


    「わぁ……。」


    トン、と置かれたお皿には。


    デミグラスソース。


    綺麗な目玉焼き。


    人参のグラッセと。
    手作りかな?…ポテト。


    とっても美味しそうな。


    ハンバーグだった。


    「ハンバーグだぁ。」


    大好き♪


    おばぁちゃんはウンウン、と頷いた後に。


    また下がって行った。


    ハンバーグから。
    ゆらゆらと上がる湯気。


    「よだれが出てきました。」


    「ん。」


    ナツさんも目を細めた。


    おばぁちゃんは。
    今度はライスのお皿を二つ持って。再び、テーブルへ。


    「たくさんお食べ。」


    おばぁちゃんの。
    しゃがれた声。


    「はい…頂きます。」


    「頂きます。」


    二人で手を合わせて。


    ナイフとフォークを手に。


    いざ…。


    ………あれ。


    見るとナツさんは。


    手にフォークとナイフを持ったまま。


    ハンバーグを見つめていた。


    「…ナツさん?」


    どうしたんだろ。


    「あ……。いや。」


    食べよう、と。


    思い直したように。
    ハンバーグにナイフを入れた。





    「おいしーい!!」


    こんな美味しいハンバーグ。食べた事なーい!


    見るとナツさんも。


    一口一口。
    味わうように。


    笑顔で食べてた。


    「このソース、どうやって作るんでしょう…。」


    デミグラスソースが。
    とにかく特徴的で。


    「これで昔はご飯食べてた。」


    ナツさんは。
    苦笑いで。


    「何杯でも行けそうですね…。」


    見るとおばぁちゃんは。
    ニコニコしながら、


    私達が食べる姿を。
    満足そうに見てた。








    「ママ、ご馳走様。」


    ぴったり\1400。
    ナツさんは払って。


    またしゃがんでおばぁちゃんの、肩を抱いた。


    口元をモグモグしながら。
    おばぁちゃんも笑顔で。


    「ありがとね。」


    おばぁちゃんは。
    しっかりそう言った。


    「…………ん。」


    ナツさんはまた立ち上がって。


    「ご馳走様でした。」


    私が頭を下げると。
    ウンウンと笑った。


    カランカランと。


    また夜のネオンが目に飛び込む。


    ナツさんは外に出た後に。


    ブランカの外観を。







    ジッと見つめてた。


    (携帯)
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