ビアンエッセイ♪

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■10720 / ResNo.40)  和美のBlue 33
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(961回)-(2005/07/06(Wed) 08:28:14)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    見上げる顔が。


    彫りの深い横顔が…。
    何て言うのかな。


    “思わず抱き締めたくなる”


    顔。


    図々しいかなぁ。


    だって…。
    切ない顔なんだもん。


    「閉店なんだ。」


    え?


    「…………。」


    「今日で店じまい。」


    ナツさんは。


    フッと消えた電飾を。


    長い指でそっと撫でた。


    「そうなんですか…。」


    確かに、
    おばぁちゃん…。
    待ってたみたいだった。


    「………。」


    「食べれて良かったです。」


    とってもとっても。


    美味しいハンバーグ。


    「行こうか。」


    「…はい。」



    ビルの谷間を。
    また二人で歩く。


    長いコンパス。


    すぐに差がつく。


    あ…。


    ナツさんの背中の、人魚。


    泣いてるみたいに、


    見えたのは。









    眩しすぎる街の、
    せいだったのかな。









    帰りの車中─


    今までのドキドキは。


    ちょっと変化していた。


    私を包むのは。


    心から一緒にいたいと。
    思える人が。


    側にいる、安心感。


    暖かい何かが。
    産まれてて。


    隣のナツさんは。


    何も言わずに。


    タバコをくわえて。


    ほんの少し開いた窓から入る、風に前髪が揺れていた。


    「カズ。それ。」


    ナツさんは後部座席を。
    親指で差した。


    「はい?」


    取ってって事かな。


    振り返って。


    CDがたくさん入った、ケースを取った。


    「好きなのかけて。」


    「はい。」


    ペラペラと捲ると。


    ボサノバ、


    レゲエ、


    ラテン…。


    「ダイアナロス、ない?」


    「え。」


    「違った?」


    いつもかけるから、と。
    ナツさん。


    うん。


    好き。



    ……すごく。






    私。




    「……好きです。」




    「…………。」




    「すごく。」







    手を止めて。


    ナツさんを見た。


    ナツさんは変わらずに。


    左手でタバコを持ったまま。


    前を見ていた。




    ナツさん。









    「…一番後ろ。」


    「え?」


    「ダイアナロス。」


    「……あ。はい。」




    ペラペラとめくると。


    手書きのCDR。


    ダイアナロス、と。
    筆記体の綺麗な文字。


    オーディオにセットすると。





    切ないダイアナの声が。





    聞こえて来た。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10741 / ResNo.41)  和美のBlue 34
□投稿者/ つちふまず 大御所(963回)-(2005/07/07(Thu) 08:52:31)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    帰って来た頃には。
    もう日付を回っていて。


    「すみません。」


    「ん?」


    遠いのに…。


    「送って貰っちゃって。」


    「大丈夫。」


    アパートの前に。


    車は停まった。


    サイドブレーキを引いた瞬間。


    「泊まるから。」


    珍しく。
    少し大きな声。


    え?


    何、今なん…、


    「泊めて。」


    こちらを見て。


    ナツさんは真っ直ぐに。


    私を見た。


    「……………。」


    見つめる、目。


    おばぁちゃんを見てた時と。


    ちょっと違う。


    なんだろう。


    艶が、ある。みたいな。


    「…え、……あ。」


    そんな目で。


    見ないでナツさん。


    見れない。


    「駄目?」


    甘い声に。


    顔を上げると。


    微笑むナツさんがいた。


    「…………。」


    プルプルと。


    頭を左右に。


    私は振った。





    「どうぞ。」


    「ん。」


    部屋に入ると。


    ドキドキ復活。


    でも不思議。


    “一日一緒”


    にいると。


    親近感?


    ちょっと違うかな。


    “一体感”みたいな…。


    錯覚しちゃう。


    あ。


    でも一つ。


    問題発見。


    テレビの前のクッションに、ナツさんはちょこんと座った。


    「あの……ですね。」


    「ん?」


    何?とナツさんは見上げた。


    「あの、えっと…。」


    小さい頭を。
    ナツさんは傾げた。


    「来客用の…お布団、ない、んですよね…。」


    うちにはシングルベッドのみ。


    するとナツさんは。
    いつもの如く。


    クックッと笑った。


    「いえ!あの!床で私、寝ます!はい。」


    「一緒じゃ駄目なの。」


    ここで、と。
    ナツさんはベッドを見た。


    「いえっ、駄目、ダメじゃ、ないです、けど…。」


    「じゃ、そうしよう。」


    ナツさんは立ち上がると。


    シルバーのチェーンのベルトと。フランクミューラーを外して。


    テーブルの上に置いた。


    その足で、
    ベッドにドサ、と。


    寝転んでしまった。


    一連の動作…。


    私はただ。


    見てるだけ(涙)


    「シャワー…は。」


    「さっき浴びたからいい。」


    クア、と一つ。
    ナツさんは欠伸。


    「で、すよね…。歯、磨いてきます…。」


    トボトボと。


    バスルームへ。


    この展開…。




    急展開!?

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10742 / ResNo.42)  和美のBlue 35
□投稿者/ つちふまず 大御所(964回)-(2005/07/07(Thu) 09:02:22)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    電気を消して。


    ベッドに入ると。


    さすがはシングル。


    ナツさんと私。




    超近い(赤面)


    恥ずかしくて。


    背中を向けていた。


    ナツさんの寝息は。


    聞こえない位、静かで…。


    「カズ。」


    起きてた。


    …びっくりした。


    「…はい。」


    体に力が入る。


    「何でもない。」


    「………。」


    寝返りを打つような。


    気配を感じた。


    「な、なんですか。」


    思わず私も。


    体を反転させた。


    あ。


    タトゥー。


    背中を向けていたナツさんの。


    人魚が目に入って。


    見とれた。


    綺麗。


    マジマジと。


    見るのは初めてで。


    「今日はありがとう。」


    え。


    あ……。


    ナツさん…。


    優しい声。



    「……いいえ。」



    思わず私の。


    顔が緩んだ。


    それから直ぐに。


    静かな寝息が聞こえて。


    ナツさんは眠った。




    ナツさん…。


    知らなかった面。


    一杯見せてくれた。


    ありがとう。


    凄く嬉しいです。









    ……でもね?







    っていうかね。







    私眠れないし!
    眠れる訳ないじゃん!
    んも〜。

    そりゃ、ね。
    期待してなかったって言ったら、嘘になるよ?
    だってナツさん。
    100人斬り?200人斬り?
    わかんないけど…。


    手出して来ないって事は。
    やっぱダメって事?


    は〜。
    そういう対象じゃないのかな…。


    あ、だったら何で。
    キスしたの!?
    っていうか。
    この前のデザイナーさんは?


    あ〜もうわかんない。







    多分この夜は。
    ずーっとこんな感じで。







    羊なんて数える暇さえなかった。






    頑張れ私……(涙)


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10760 / ResNo.43)  和美のBlue 36
□投稿者/ つちふまず 大御所(965回)-(2005/07/07(Thu) 23:14:51)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    翌朝─


    眩し…。


    今日は、学校。


    起きなきゃ…。


    「いて。」


    え!?


    パッと目を開けると。


    ナツさん。


    の顔の上に。
    私の右手。


    わわわわ!


    「す、すみません!」


    慌てて手を引っ込めた。


    そうだナツさん。
    泊まったんじゃん!


    「おはよ。」


    フッと口の端を持ち上げて。


    て、照れる。


    「おはよう、ござい、ます。」


    「ん。」


    スルッとナツさんは。
    ベッドから抜けて。


    んーっと一つ。
    私の前に立って伸びをした。


    「カズ、学校?」


    「あ、はい。二限からですけど…。」


    時計を見た。
    まだ六時を過ぎた頃で。


    「そう。まだ寝てたら。」


    布団から出ない私の。
    ベッドの端にナツさんは座った。


    「いえ、起き、ます…。」


    ナツさんすぐに帰ってしまいそうだし。


    「ん。タオル借りるよ。」


    ナツさんはまた立ち上がると。バスルームへ向かった。


    仕事、だよね。


    そりゃそうだ。


    シャワーを浴びて。


    再びナツさん。


    その間に私は。


    アイスコーヒーを入れた。
    (インスタントだけど。)


    「どうぞ。」


    「ん、サンキュ。」


    見るとナツさんは。
    昨日の昼間の格好に。


    戻ってた。


    白いノースリーブに。


    全く変幻自在…。


    「あ、と。灰皿、が確か。」


    ゴソゴソと。
    竹で出来た物入れを探る。


    「煙草、どうぞ。」


    ナツさんの前にある、
    テーブルに。
    小さな灰皿を置いた。


    「さすがホール。気が効く。」


    ナツさんは満足したように、煙草を一本取り出した。


    「あ、いえ…。」


    朝から褒められちゃった♪


    私もアイスコーヒーに。
    口を付けた。





    ナツさんの朝の一服時間。


    凄くゆったりしてて。


    何だか幸せ♪




    一本吸い終わって。


    「行くよ。ありがとう。」


    長い足を伸ばして。
    ナツさんは立ち上がった。


    「いえ…。」


    玄関に向かうナツさんの背中を追って。


    「じゃ。」


    サンダルを履いたナツさん。


    「はい。気を付けて。」


    寂しい気持ちは。


    とりあえず我慢…。


    「忘れてた。」


    パチンと指を鳴らせて。


    ナツさんはまたこちらを見た。


    「え。」


    「久しぶりだから。」




    はい?


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10761 / ResNo.44)  和美のBlue 37
□投稿者/ つちふまず 大御所(966回)-(2005/07/07(Thu) 23:22:57)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    忘れてた?


    久しぶり?


    何が?


    すると─


    私の右手を取って。
    いつかみたいに。


    スッと胸の中に。
    収まった。


    訂正。


    抱き寄せられた。


    わわわわわ。


    と思ったら。


    頬に手を沿えられて。


    ナツさんの顔が超近い…。


    訂正。


    キス、


    「目、いつも開けてるの。」


    じゃなかった。
    寸止めで言われた。


    「だって…突然、なんだもん。」


    ひゃ〜。
    顔が熱い(涙)


    「……ふっ。」


    口角が上がるのが。
    いつもより近くで見えて。


    目を閉じた。


    と同時に。


    ちゃんと唇が合わさった。





    今回は、
    目を瞑るだけの間が。


    私には与えられたから。




    「…………。」




    私からも。


    ぎこちないけど。


    唇を動かして。


    ゆっくり。
    ナツさんを求めた。


    うちのシャンプーの匂いと。


    ナツさんの服に付いた。
    香水の残り香。


    あいまって。


    ナツさんは私の唇の動きに合わせてくれてるみたい。


    上唇から。


    下唇。


    の間から、


    感じる舌。



    「………ふ。」



    膝が…。


    震えちゃうよ。


    知ってか知らずか。


    ナツさんは。
    私の背中に手を回して。


    しっかり支えてくれた。


    胸から下が。


    熱いものに覆われるような。


    感覚。







    先に唇を離したのは。
    ナツさんで。


    「じゃ。」


    それだけ言うと。


    ナツさんはとびっきり。
    優しい顔で微笑んでくれた。


    「あ、は、はい…。」


    アッと言う間に現実。
    同時に来る恥じらい。


    慌ててナツさんの体から離れた。


    でも。
    今日は。


    「ナツさん…。」


    ナツさんの背中に。


    “私の事…どう思ってるんですか?”


    「私の…事。」


    言おう。


    「どう……。」


    「カズ。」


    え。


    顔を上げた。


    振り返っていた、
    ナツさんは。
    まだ優しい目を。


    してくれていた。


    「私も好きだよ。」


    ……え。


    あ。


    今、なん、て


    「ダイアナロス。」


    もう一度私の頬に触れて。


    チュッと軽く。


    私の頬にキスをした後。


    「じゃ。土曜に。」


    ナツさんはパタンと。


    ドアを閉めて。


    帰って行った。







    へなへな、ペタン。


    擬音語です。


    玄関に一人。






    呆然。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10762 / ResNo.45)  つちよりみなさまへ
□投稿者/ つちふまず 大御所(967回)-(2005/07/07(Thu) 23:27:20)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    2005/07/07(Thu) 23:28:56 編集(投稿者)

    ぶちゅ〜♪

    きゃっ失礼しました(^O^)

    連日更新かけて参りましたが、金土日おやすみしまーす☆

    なので七夕の夜。
    久しぶりに夜に更新しときました。

    明日は分刻みのスケジュールで、彼女の所へダイビング(>_<)

    月曜日にお会いしましょう。

    ※感想等、HPまでよろしくですのん!!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10803 / ResNo.46)  和美のBlue 38
□投稿者/ つちふまず 大御所(968回)-(2005/07/11(Mon) 08:07:11)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    水曜日─


    暑かった月曜日から一転。


    梅雨に逆戻り…。


    学校から帰り、ポツポツと小降りになった雨を見て。


    梅雨明けはまだ先かなぁと、一つ溜め息を着いた。


    時間はまだ18時前なのに。
    外はすっかり暗くて。


    部屋の中に干していた洗濯物をたたんで、クローゼットにしまった。


    あれからナツさんとは、特に連絡を取っていない。


    朝の電車。
    学校での実習中。
    帰りの電車。
    夜のテレビ。


    思い出してはニヤニヤと。


    …ちょっと気持ち悪いかな。


    恋をすると不思議な物で。


    例えば電車から眺める、
    広い車道に。


    赤いアルファロメオが視界に入ると、ナツさんが乗っているんじゃないかと。


    目で追ってしまったり。


    目の前にどんなに綺麗な人が座っても。


    ナツさんの方が綺麗だな、と。比べてしまったり。


    テレビでラーメン特集が流れた時は。


    ネギミソチャーシューの味を思い出したりして。


    多分私の五感の持つ全てが、ナツさんに関連づけようとしてる。


    思い出さない時はない。


    改めて私は。


    人を好きになったと実感出来る。


    「……さて、と。」


    夕飯、の前に。


    今日は行きたい所があった。


    外を見ると。


    雨は止んでいて。


    束の間かもしれないから、


    「今がチャンスかなぁ。」


    自転車の鍵を取り。


    アパートを出た。





    私の住む鎌倉は。


    歴史と文化は深い土地である事はもちろんの事。


    割とお金を持っている都会人が移り住む、ちょっとした別荘地としても、人気のある場所で。


    良く考えたら凄い場所で、一人暮らしさせてもらってる。


    自転車を飛ばして、
    海沿いを走った。


    雨上がりの生温さと、潮風が混じって。


    湿気の高さを感じる。


    由比ヶ浜から、稲村ヶ崎。
    七里ヶ浜から、腰越へ。


    自転車でおよそ。
    15分もかからない位。


    江ノ島が大きくなった頃。


    私はそのお店の前で止めた。


    「こんにちは〜。」


    客は見当たらない。雨上がりを狙って良かった。


    混んでたら迷惑だしね。


    ウォン!と。
    奥から慣れた声。


    「やっほージュニア。」


    ラブラドールのジュニアの頭を撫でると。


    ふんふんと私のTシャツのお腹の辺りの匂いをかいだ。


    「あ、いらっしゃい。」


    トン、と奥から。
    店長さんが出てきてくれた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10804 / ResNo.47)  和美のBlue 39
□投稿者/ つちふまず 大御所(969回)-(2005/07/11(Mon) 08:10:53)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    私の趣味は。とは言っても結構忙しいから…。


    あまり行けないんだけど。


    「ジュニアにおみやげ。」


    はい、と。“籠せい”のちくわを渡すと。


    「ふがふがふが。」


    夢中で食べてる。
    ふふっ。


    「ありがとう。今日は学校は?」


    もう終わり?
    と店長は小さく幾重にも三編みにされた長い髪に手を触れた。


    「やっと試験が終わったんで〜。真っ先に来ました。」


    「そっかそっか〜。板の具合いはどう?」


    「いいです♪今日はそのお礼で。」


    鳩サブレを店長さんに渡すと。


    「わお♪大好きこれ。」


    嬉しい〜と。
    真っ黒に焼けた顔から、
    白い歯が見えた。


    サーフィンを始めたのは。
    実はヤスさんの影響で。


    ヤスさんと店長さんは、かなり前からの波乗り仲間だったらしい。


    去年、オープンした際に。ヤスさんはお店の売り上げに貢献する意味もあって。


    私に板を買ってくれた。


    『お前は現金ボーナスないからな!これはその代わり!ウハハハ!!』


    と問答無用だったんだけど。


    後から値段を聞いて、本当にびっくりしちゃった。


    どうやら私の板は。


    ちゃんと私の身長や体重に合わせてカスタムメイドしてくれたロングボードだったらしく。


    それ以来、ヤスさんの休みと、私の休みが重なる時は。


    海に行く事が多い。


    「ヤスさんこの前来たよ?」


    パリパリと店長さんは鳩サブレに口を付ける。


    「うるさくなかったですか?」


    「ふふ。ジュニアは拉致されちゃったんだよね。」


    ね?とジュニアを見ると。
    ジュニアはまだもの足りないのか。


    私の顔をジッと見た。


    「可哀想にジュニア…。」


    またウハハハ!とか言って連れ回したんだろうなぁ。


    「今日はケイさんは…いないんですか?」


    このお店には。
    実は二人店長がいて。


    その人は、ジュニアの御主人様。足が不自由なんだけど…、


    「ケイ?んーまたどっか行っちゃったんだよね…。」


    どこ行ったのやら。と。


    ケイさんはフットワークが軽い。


    ケイさんとこの店長さん…。冴子さんって言うんだけど。


    この二人は凄く仲が良くて。


    彼女達の経営するこのサーフショップは。


    すごく雰囲気がいい。


    ジュニアの効果もあるんだけど。


    女の子一人でも入れちゃう。


    すごくいいお店だと思う。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10805 / ResNo.48)  和美のBlue 40
□投稿者/ つちふまず 大御所(970回)-(2005/07/11(Mon) 08:14:52)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    「そうそう。花火大会の日さー。和美ちゃんのとこ、まだ予約取れる?」


    ジュニアを囲んで。
    しばしの団らん。


    花火大会…。


    「まだ取れると思いますよ?」


    「本当!?良かった〜!じゃお願いします。」


    うちのお店は。
    花火大会の日だけは、
    完全予約制になる。


    目の前の海で、
    花火が上がるので。


    毎年ベスポジで見たい人達で満席になる。


    「じゃ、予約入れますね♪」


    「うん。三人ね!」


    「あれ?冴子さんとケイさんと…。あと一人は…。」


    「この子♪」


    ジュニアを見下ろした。


    あ、そうか。


    「ふふ、ですよね。」


    うちはテラス席だから。
    ペットもオッケー。


    「それより和美ちゃんさ。」


    「はい?」


    「髪切ったよね?」


    最初誰かわからなかった、と。冴子さんは目を細めて。


    「ふふ、そうなんです。」


    「何か大人っぽくなった〜。」


    「本当ですか!?」


    う、嬉しい…。


    「うんうん。すごく似合うよ。」


    「良かった〜。」


    「失恋、とかじゃないよね…。そうだったら悪いなと思って。」


    言えなかったんだけど、
    と冴子さん。


    「違いますって。ふふ。」


    「だよね。何そのふふって。」


    「いえ…ふふ。」


    「ふふっ何?何?」


    「なんでもないですー。」


    顔が緩むのがわかる。


    「教えて教えて〜。」


    ジュニアが交互に。
    私と冴子さんの顔を見て。


    頭を傾げていたのは。


    私は気付かなかったんだけど。


    ちょっと話すのはもったいないというか。


    とても恥ずかしかったので。


    笑ってごまかしちゃった(笑)







    帰り際─


    「じゃあ予約入れときますね。」


    「うん。お願い。」


    ありがとう、と。冴子さんは鳩サブレの箱を持ち上げた。


    一回頭を下げて。


    「じゃね、ジュニア。」


    バイバイと手を振ると。


    ジュニアは太いシッポを、パタパタと左右に振った。


    外に出て、


    海風を一回大きく吸って。


    また私は自転車をこいで。


    帰路に着いた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10806 / ResNo.49)  和美のBlue 41
□投稿者/ つちふまず 大御所(971回)-(2005/07/11(Mon) 08:18:35)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ─木曜日


    23時。お店にはもうお客さんがいなかったのを狙って。


    シャカ、シャカ。
    シャカ、シャカ。


    「おーカズ。大分慣れたな。」


    カウンターにもたれる、


    ポパイの腕。
    ファイアーパターンの、
    タトゥー。


    「ええ。ちょっとだけ。」


    シェイカーのキャップを取って。カクテルグラスに注ぐ。


    「どれどれ。」


    ヤスさんはグラスに口を付けると、一口で。


    「どうですか?」


    うまく出来たかな〜。


    ヤスさんは口の中で転がした後。ゴクンと飲み干した。


    「ん〜。バカラ?」


    「そうです。」


    「ホワイトキュラソー。もうちょい。」


    「はーい。」


    カクテルは。
    ナツさんに教わったあの夜から。少しずつ勉強して。


    今は、チャイナブルー、シーサイド、ブルーハワイ、ブルーダイキリと…、


    「なんだよ、ブルーばっかだな。」


    カクテルグラスに注がれた、いくつもの青い液体。


    「ふふ。」


    「ブルー系が好きなのか。」


    ふうんとヤスさんは。
    髭を撫でる。


    「だって綺麗なんですもん。」


    ブルーのボトルを持って。
    照明に透かして見る。


    青。


    空みたいな、海みたいな。


    カクテルならではの。


    「作ってやろう。」


    ヤスさんはカウンターの内側に入ると。


    手早くいくつかのボトルを片手で持って。冷蔵庫から勢いよく。


    レモンジュースを出した。


    「やれ〜ばでき〜るよ〜♪♪」


    クレイジーケンバンドを。
    エコーを聞かせて歌いながら。


    シャカシャカシャカシャカ。


    さすがプロ。
    あっという間に。


    トポトポトポ。


    マラスキーノチェリーを添えて。


    「出来上がり!」


    御賞味あれ、と。


    私にグラスを。


    少しだけブルー。


    口を付けると。
    ジンの香りと…。
    グリーンペパーミント?


    「おいし。何てカクテルですか?」


    「カンガルージャンプ!」


    手を胸の辺りに当てて。ヤスさんは大きな体に似合わない位、


    可愛くピョンと。
    ジャンプして見せた。


    「カンガルー♪」


    「おうよ。カズはカンガルーみたいだもんな。」


    「え?」


    「ポッケに入ってる小さいやつ。」


    「ひどい…。」


    ワハハハと。ヤスさんの笑い声。


    カンガルージャンプ。


    あの人にも。





    飲んでもらおっと。


    (携帯)
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