| ─土曜日。
ナツさんの来る日。
予定通り…。
ドキドキ。
でもこういう日に限って…。
混む(涙)
ホールを汗だくになりながら、右へ左へ…。
「お待たせしました。」
大皿に盛られた料理を運ぶ。
ふう…。
今何時だろ。
時計を見ると、22時。
クェッと店内のオウムが、 一回鳴いた。
ナツさん…。来ないな。
どうしたんだろう…。
事故、とかじゃないよね。 縁起でもない…。
プルプルと頭を振る。
「カズ!持ってって!」
「あ、はい!」
ヤスさんの声に。 またフロアを駆けた。
日付が変わる間近に。
ナツさんのアルファロメオ。
到着。
きたぁ〜♪
ドキドキする胸。
私の頭には。 月曜日のキスがよぎって。
体が熱くなった。
好きな人が。 現れる瞬間。
高揚感。
トントントン…。
テラスを上がる、
ナツ、さ、
え。
「………。」
思わず、目を凝らした。
ブラックのスーツ。
手にはアタッシュケース。
それはいつも通り。
でも。
違った。
目の下に、クマ。
ツヤのあるブラウンの髪も、水分を失っていて。
しっかり歩いてるのにも関わらず、私には。
今にも倒れそうに見えた。
ナツさん…。
「お疲れ様です。」
すれ違い様。
「ん。」
間近で見ると。 リアルに分かる。
疲れた、顔。
フッと一瞬見えた。
こめかみの辺りに、
白髪…。
「どうし…、」
たんですか?
と言い切る前に。
ナツさんは店内に入って行った。
ふと視線の先に。
ヤスさん。
目が合った。
ヤスさんもナツさんを。 目で追った後。
私に顔を向けて、
“来い来い”と。
手招き。
急いでバーカウンターに向かうと。
ヤスさんは手を動かしていた。
「これ、オーナーに。」
トン、と白色の液体。
「あ、はい。」
「あんまーいチャイだ。」
持ってけ、とヤスさん。
うん。
やっぱりヤスさんも、 ちゃんと気付いてた。
「わかりました。」
バンブートレイに乗せて、
オーナー室へ向かった。
何があったんだろう。
ナツさん。
(携帯)
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