ビアンエッセイ♪

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■10567 / 親記事)  和美のBlue
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(924回)-(2005/06/29(Wed) 23:16:00)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    私の好きな人を…。
    紹介します。


    歳は六つ上です。


    バイト先のオーナーです。


    多忙の為か、一週間に一度位しか会えません。


    背が高くて。


    頭のサイズはこれくらい(掌を広げます)しかありません。


    大抵スーツで現れます。


    滅多に笑う人じゃないし、


    仕事に厳しい人みたいだし。


    (社員さんはよく怒られています。)


    全然読めないというか、


    住んでいる世界の次元が違うとしても。


    でも好きなんです。


    どうしようもなく好きなんです。


    届かない想いだとしても。


    絶対に諦められない予感があるから。


    計画を練ります。


    あの人の中で私は少しでも。


    素敵に映りたいから。


    だから。


    この夏。


    ちょっと頑張ろうと思います。


    近付きたい。


    伝えたい。


    この海と。


    空の青さに。







    私の想いを乗せたいです。


    ※御意見感想は、下記HPまで。宜しくお願いします(^O^)

    (携帯)
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■10568 / ResNo.1)  和美のBlue 1
□投稿者/ つちふまず 大御所(925回)-(2005/06/29(Wed) 23:19:35)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    p.m 20:00



    「カズ、一番テーブルね。」


    「はーい。」


    海沿いのレストランバー。


    R134沿いの。
    鎌倉と逗子の中間に。


    私のバイト先はある。


    ウッドのテラスと。
    大きなオウムがいるお店。


    店内はアジアンな家具でまとめられている。


    御要望があれば、


    奥に個室もある。ゆったりしたソファで、寛げる。


    「お待たせしました。」


    料理をテラス席のカップルへと。


    海風が心地良くて、


    だからこのお店で働いているって言っても…。


    過言ではないんだけど。


    特に夏場には。


    このテラス席からは花火も楽しむ事が出来る。


    もっとも私は。


    花火なんて見る暇もないんだろうな…。


    「和美、ちょっと5番。」


    「あ、うんわかった。」


    和美、が私の名前。


    カズ、と呼ばれる事も多い。好きなように呼んで下さい。


    「お待たせしました。」


    オーダーを取る為に。


    サロンのポッケから、
    ボールペンを取り出して。


    かち、と芯を出した。


    「はい。シャンディーガフを御一つ…、コロナ…、」


    ふと目に。


    車道から店へと入る。
    赤いアルファロメオ。





    …来た。


    「あ、すみません…。もう一度お願いします。」


    ボーッとしてしまった。


    だめだめ。


    「…はい。」


    オーダーされたメニューを。


    一つ一つなぞる。


    一品一品確かめる毎に。


    胸が。


    ドキドキしてくる。


    「お待ち下さいませ。」


    ボールペンをノックして。


    サロンにしまって。


    伝票を裏にして。


    テーブルに静かに置いた。






    聞こえる。


    バタンと地下で、


    ドアの閉まる音。


    うちのお店は裏口はないから、


    トントン、と。


    ウッドの階段を歩く音。


    ブラウンのショート。毛先に緩いウェーブ。


    大きめのサングラス。


    パンツにインされた体にフィットされた七分丈の白いシャツ。


    細身のパンツに巻かれた、ヴィトンのベルト。




    全てがナツさんを彩るラグジュアリーで。


    ナツさんの歩く道は、


    日本ではないような。


    デッキに座る全ての客が。


    振り返る瞬間。




    「おはようございます。」


    頭を下げると。


    足早にナツさんは。
    私の声に。


    小さく右手を上げて。





    何も言わずに店内へと入った。


    (携帯)
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■10569 / ResNo.2)  和美のBlue 2
□投稿者/ つちふまず 大御所(926回)-(2005/06/29(Wed) 23:22:20)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ナツさんは同性愛者だという事は。


    結構前から知ってる。


    「ナツさんならアリだよね…。」


    バイト仲間はいつかそう言ってた。


    私にしてみれば。


    同性愛など。
    考えた事もなければ、


    人生の内で意識するはずもないと、思っていた。




    何故、好きになったのか。





    …そんなのわかんない。


    いろんな事が理由として上げられるけれど。


    どれも取ってつけたような理由になりそうで。


    口にしたくない。


    でも何処か浮き世離れした雰囲気と。


    ビジュアル的なものと。


    あまりにも完璧な存在として、私の中に入り込んで来たから。


    好きにならずにはいられなかった、と言うのが…、


    私なりのイイワケ、かな。





    いつか聞いた事がある。


    凄くドキドキしながら。


    「オーナーみたいな人って…いるんですね。」


    って。


    確か開店三周年の、
    打ち上げの時だったと思う。


    ナツさんはその時。


    テキーラを口にしていた覚えがある。


    グラスに口を付けながら。


    「一県に一人は、いるよ。」


    と。


    口の端を持ち上げながら。


    その言葉を聞いた。


    “一県に一人”


    どういう基準かはわからないけれど。


    ナツさんの交遊範囲が想像出来てしまう気がして。


    ほんのちょっと寂しかった。


    完璧にナツさんを意識したのは。


    去年の夏だった。


    その日は金曜日で。


    ナツさんが現れるとは思っていなくて…。


    嬉しかった。


    でも悲しかった。


    何故なら。


    「個室空いてるよね。」


    「……はい。どうぞ。」


    ナツさんの隣には。


    見たことのない。


    でも何処かナツさんと同じ雰囲気を纏った。


    綺麗な女性。


    “彼女”


    の存在を初めて実感した夜。


    料理やドリンクを。
    運ぶたび。


    重なり合った指。


    絡まっていた視線。


    目に入らない訳がなかった。


    私はデザートを運んだ後に。


    トイレに入って、
    鍵をかけて泣いた。


    好きなんだと。


    実感した夜だった。




    あれから一年─







    私は勝負に出ようと思う。

    (携帯)
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■10570 / ResNo.3)  和美のBlue 3
□投稿者/ つちふまず 大御所(927回)-(2005/06/29(Wed) 23:26:33)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    作戦その壱─


    テーマ。


    “まずはコミュニケーション”


    「お疲れ様です。」


    店内のフードとドリンクが全て配膳済みである事を確認して。


    ナツさんの座る、


    店内では奥まったテーブルに。


    私はアイスティーを置いた。


    竹で出来たトレイを持ちながら。


    「サンキュ。」


    売り上げのデータが入力されている、端末のPCを。


    ナツさんはジッと見て。


    目を反らす事はない。


    やっぱり…。


    素敵だな。


    私はこの人の。


    目尻が凄く好き。


    鋭いようで、でも…。


    「どうした。」


    フッと私を見上げた。


    PCを睨んでいた目と同じ。


    鋭い目。


    凄く濃い睫毛…。


    思わず目を反らした。


    「あ、あの…。」


    言わなきゃ。


    「?」


    手を休めてナツさんは。


    頭を傾けた。


    「あの、オーナー?」


    「何?」


    「オーナー、時間のある時でいいんですけど…。」


    「ん?」


    鋭い目が。


    ふと優しくなった気がして。


    ほら、やっぱり。


    この目尻が好きなの。


    睫毛が触れるか触れないかの。


    「カクテル、教えて頂けませんか?」


    作戦の具体的内容─


    小さなテーマその壱。


    “教えを乞う”


    ナツさんはうちの店では。
    客が多い時に。
    シェイカーを振る。


    その技術には。
    バーテンダーも舌を巻いていて。


    「カクテル?」


    「はい。私もフロアだけじゃなくて…、ドリンクも手伝えたらなって。」


    これは本心。


    「ん。」


    ナツさんは腕を組んで。


    バリ製のチェアに背をもたれた。


    だめ、かな。


    やっぱり…。


    するとナツさんは、


    背もたれから体を離して。


    「カズ。」


    「は、はい。」


    「フロアも大事。ほら。」


    ナツさんは外の。


    テラスを指差した。


    「あ…すみません!」


    見ると男性客が。


    手を挙げていた。


    「すみません。失礼します…。」


    私の言葉には答えずに。


    ナツさんはまた、


    PCに目を向けた。


    作戦その壱─


    さっそく失敗(涙)


    教訓─


    『コミュニケーションはタイミングを考える。』


    全然駄目じゃん私…。


    はぁ……。

    (携帯)
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■10571 / ResNo.4)  和美のBlue 4
□投稿者/ つちふまず 大御所(928回)-(2005/06/29(Wed) 23:31:08)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    作戦その壱─


    『教えを乞う』─×


    ふう。


    やっぱりダメ、か。


    ふに(涙)


    どうやって近付けばいいんだろう…。


    困ったなぁ。


    早いな、くじけるの。


    ─11時を過ぎて。


    客もまばらに。


    静かな店内へと。


    私は土曜日はラストまで。
    (ナツさんが来るから)


    でもナツさんは。
    日付が変わる前には。


    大抵帰って行く。


    でもこの日は。


    新メニューの確認もあったせいか。


    ナツさんは日付が変わっても。


    厨房にいた。


    私にしてみれば…。


    ラッキー♪


    話せなくたっていいの。


    同じ空間に居るだけで…。


    ドキドキする。


    凄く嬉しい。




    テラスをクローズにして。


    店内のお客だけを、


    接客していた。


    サウンドをアップテンポな物から、メローな物に変える。


    私はお気に入りの、


    ダイアナロスのベストをオーディオにセットした。


    「好きだな、それ。」


    バーテンダーのヤスさんが、ニコニコしながら話し掛けて来る。


    「はい。すんごい好きなんです。ダイアナロス。」


    「若い子からそういう言葉が出るのは…いいね。」


    モミアゲと繋がったヒゲを。


    ヤスさんは撫でた。


    店内に流れる、


    古き良きラブソング。


    ふとナツさんが、


    厨房から出てきた。


    店内をグルっと見渡して。


    長い足を優雅に。


    こちらに向かって来る。


    …なんだろ。


    「ヤスさん。もう上がっていいですよ。」


    ナツさんの。


    低くて良く通る声。


    「ん、いいの?」


    ヤスさんは磨いていたグラスを、棚に戻した。


    「後は私が。お疲れ様でした。」


    ナツさんはそれだけ言うと。


    頭を小さく下げて、テラスに出た。


    「ふっふ。やったね。」


    ヤスさんは嬉しそうに。
    私に笑いかけた。


    「お疲れ様でした。」


    「珍しいな…。オーナー残るのか?」


    あ、そっか。
    確かに珍しい…。


    「ですね…。」


    「言葉に甘えて。お先に。」


    ヤスさんは私に手を振りながら、カウンターから姿を消した。


    店内にはあと一組…。


    外に目をやると。


    ナツさんは店の看板である、


    オウムに餌をやっていた。


    (携帯)
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■10572 / ResNo.5)  和美のBlue 5
□投稿者/ つちふまず 大御所(929回)-(2005/06/29(Wed) 23:37:19)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    ─am1:00


    「ありがとうございました。」


    最後のお客を見送って。


    テーブルの食器を厨房へと下げる。


    あれ?
    電気が…消えてる。


    見るとキッチンには誰もいなくて、


    ウォッシャーの電源だけが着いていた。


    帰っちゃったんだ。


    クスン。


    ひどいな…もう。


    カチャカチャと。


    食器をウォッシャーの中に入れて、スイッチをオンにした。


    あとは放って置けば、


    乾燥もやってくれるから…、


    「カズ、おいで。」


    ウォッシャーの向こうから。


    声がした。


    え。


    あ、そうだ…。


    オーナー。


    帰ってなかったんだ。


    って事は…。


    ぐるっと。
    周りを見渡した。


    ふ、ふたりっきり!!


    「…カズ!」


    ホールの向こうから。


    さっきより大きな声。


    「はい!い、今行きます!」


    パタパタとサロンを揺るがせて。厨房を走る。


    ガチャン─


    「いた!…い。」


    カランカランと。


    大きなボウルを。


    ひっくり返してしまった。


    ひゃあ〜(涙)


    痛い痛い、と。
    スネをさすりながら。


    ホールへと出ると。


    バーカウンターに。


    ナツさんがいた。


    私を見ずに、リキュールのボトルを片手に。


    “来い来い”


    と、白いシャツの手が。
    揺れていた。


    あ……。


    もしかして。


    「おいで。」


    カウンターの中を指差した。


    教えて…くれるのかな!


    きゃーっ!!


    どどどどうしよう。


    ドキドキドキドキ。


    「は、…はい。」


    緊張しながら。


    ナツさんの隣に立った。


    何本かのボトルを。


    テンポ良くトントンと。


    そしてシェイカーを。


    用意する。


    ナツさんは私よりも。


    頭一つ分位背が高い。


    私はチビッ子。


    見上げると彫りの深い綺麗な横顔。


    形のいい耳に。


    薄いピンクの石。
    綺麗なピアス…。


    「カズ。」


    見上げていた横顔が突然。
    こちらを見た。


    「えっ!あ!…はい!」


    「まずは…。」


    ナツさんは指を自分の頬に当てた。考えている時の癖なのは。


    私も良く見ているから知ってる。


    「でも…。」


    「…はい?」


    「カズ、小さいね。」


    カウンターの高さと。私の頭を交互に見て。


    「フッ。」


    小さく笑った。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10573 / ResNo.6)  和美のBlue 6
□投稿者/ つちふまず 大御所(930回)-(2005/06/29(Wed) 23:41:54)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    そんなぁ。
    もー。


    クックッと。


    ナツさんは笑いを堪えるように。


    「チビッ子は無理ですか…?」


    悲しい…。


    「そんな事ない。教える。」


    流台の蛇口をひねって、
    ナツさんは手を洗っていた。


    良かった…。


    ホッ。


    「まずは…と。簡単な物から。」


    綺麗なブルーのボトルと。


    透明の液体が入ったボトル。


    それと冷蔵庫から。


    グレープフルーツジュース。


    「何ていうカクテルですか?」


    テキパキと。


    分量を計り、


    手早くシェイカーの中に。


    それを注ぐ。


    「チャイナブルー。」


    小さな声で。


    ナツさんは手を休める事なく。


    作業を進めた。


    「チャイナブルー。飲んだ事あります。ふふ。」


    「分量は後でメモ取って。」


    「はい。」


    全てを注がれたシェイカーに。


    キャップをして。


    ゆっくりそれを持ち上げた後。


    「これが知りたいんでしょ。」


    と一言言った後。


    上下に。


    リズムよく。


    ナツさんの腕がしなって。


    シェイカーが振られた。


    か。


    か、


    カッコいい…。


    クラクラしてきた。


    もう、なんていうか。


    「振ってごらん。」


    「え。」


    はい、とシェイカーを。
    手渡された。


    びっくりする位冷たい。


    「こう…ですか。」


    見よう見まねで。


    振ってみる。


    「もうちょい。」


    スッとナツさんは。
    私の背後に回って。


    後ろから手を回す形で。


    私の両手に手を沿えた。


    「ん。そう。」


    密着する体。


    白いシャツから伸びた腕。


    肘の辺りに、


    小さなかさぶた。


    傷なのかな。


    ちょっともう…。


    振られるシェイカー。


    その中で踊るのは。


    氷じゃなくて。







    私の心臓そのもの、かな。

    (携帯)
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■10574 / ResNo.7)  和美のBlue 7
□投稿者/ つちふまず 大御所(931回)-(2005/06/29(Wed) 23:50:29)
http://www.hamq.jp/i.cfm?i=tsuchifumazu
    シャカ、シャカ、と。
    店内に響く。


    すごくすごく。
    一秒一秒が、
    ゆっくりな気がする。


    好きな人が、
    真後ろで私を包んでる。


    リアルに思えない程、
    胸が高まった。


    「もう、いいよ。」


    ナツさんの手が離れて。


    私はキャップを外した。


    「……注いで。」


    声を合図に。
    グラスに注ぐ。


    トポトポトポ…、



    「わぁ…綺麗…。」





    海の色?


    空の色。


    どっちだろう…。


    私を守るように、


    カウンターにもたれていたナツさんの腕の存在も…。


    忘れる位。


    とっても綺麗だった。


    「飲んでごらん。」


    「はい。」


    恐る恐る。
    グラスを持ち上げて。
    口に含んだ。


    「おいしー…。」


    ライチの甘みと。
    ちょっとのアルコール。


    「ん。」


    頭上からナツさんの声。


    今更ながらに…。


    ドキドキ。


    店内に優しく響く。


    ダイアナ・ロス。


    「ナツさんも、どう、ぞ。」


    遠慮がちに。


    前を向いたまま。


    グラスを持ち上げた。


    「…私は車だから。」


    フッと耳に。


    息がかかったのは。


    気のせいだったのかな。




    you're everything …


    everything is you…


    優しく響く。


    ダイアナの声に混じって。


    「もう遅いね。」


    頭上で響く、


    ナツさんの声。


    「…はい。」


    このままでいたい。


    もっと話したい…。


    「今日はおしまい。」


    フッと頭のてっぺんを。


    左手で撫でられた。


    それと同時に、


    割と近い位置にあった。


    ナツさんの体が離れた。









    ドキドキの夜。


    ナツさん。









    眠れる訳が、なかったよ。


    (携帯)
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■10575 / ResNo.8)  和美のBlue 8
□投稿者/ つちふまず 大御所(932回)-(2005/06/29(Wed) 23:54:34)
    “教えを乞う”


    とりあえず…○?


    これを期に。
    ステップアップしたい。


    作戦その弐─


    “ナツさんを知る”


    とりあえず。
    この前のお礼をしよう♪


    次の木曜日─


    いきなりチャンス到来☆


    雑誌の取材があったので。ナツさんがお店に現れた。


    土曜日の事もあり。


    ナツさんがお店に来た瞬間。やっぱり胸がドキドキして。


    全然集中出来ません。


    「ええ。じゃ、写真はそちらで。」


    料理を並べたテーブルに、ナツさんは案内した。


    なんていうのかな。
    ナツさんって…。
    見た目怖そうなんだよね。


    笑わない人だからかな。


    出版社の人とのやりとりを。オープンの準備をしながら。


    私は見ていた。


    パシャ、パシャ、と。
    フラッシュがたかれる。


    「ええ。そうですか。あ、それなら…。」


    背中に聞こえる。


    ナツさんの声。


    どうやってお礼…。
    なんてったってナツさんだし。


    どんなお礼をすればいいか…。


    想像つかないなぁ(涙)


    「カズ。おいで。」


    「え?あっはい!」


    いきなり名前を呼ばれて。


    びっくりした。


    「写真取るよ。」


    「ええっ!?」


    「すみません…スタッフの顔写真も欲しいので。」


    出版社の人は。
    少し申し訳なさそうに。


    「カズ、テラスで。」


    ナツさんは出版社の人を無視して、私の背中を両手で押した。


    「えっ!ちょっ!オーナー?」


    やだやだ。


    写真なんてー!


    恥ずかしいよ!!


    「頼むよ。オウムじゃダメだって言うからさ…。」


    甘い声が。


    耳元で聞こえて。


    「えー…。」


    「看板娘。お願い。」


    「オーナーが写った方がいいですよ〜。ううー。」


    言いつつも体を押されて、


    夕陽の差し込むテラスへと。


    「…写真は苦手。」


    正面にナツさんは向き合った。


    今私の手に。


    カメラが有ったら。


    写したい。


    夕陽と。海と。ナツさん。


    「カズ?」


    「え…あ、はい。」


    「お礼するよ。今日の仕事はこれで終わりでいい。」


    ポン、と。


    肩を軽く叩かれて。


    ナツさんは店内へと。


    入って行った。


    え?今…。


    なんて?


    お礼?


    今日の仕事は終わり?


    本当に?







    変なニヤケ顔で。
    雑誌に写ってしまったのは。


    言うまでもない。


    (携帯)
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■10576 / ResNo.9)  はじめまして。
□投稿者/ かな 一般♪(1回)-(2005/06/29(Wed) 23:56:25)
    こんばんわ。すごくいいおはなしなので頑張って書いてくださいね。つちふまずさんは神奈川の人ですか?私は神奈川在住でよく鎌倉方面にいきます!この話のレストランは珊○礁ですか?違うかな?この話は実話ですか?知りたいです。

    (携帯)
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