ビアンエッセイ♪

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■11277 / ResNo.10)  I'm so into you 4
  
□投稿者/ ハチャル 一般♪(8回)-(2005/07/24(Sun) 22:48:59)

    生徒名簿。
    いつもは、"/"がついている長谷山汐梨の欄。


    今日は、ついていない。



    「それでは授業を始めます。」


    3Bの授業。



    汐梨の出席に、心臓が高鳴った。




    「でさ〜」
    「えっ!まぢ!?」
    「ありえね〜」



    授業開始をはっきりと告げているにも関わらず、相変わらずのうるささに嫌気がさす。
    特に6時間目の授業は、寝てるかおしゃべりかで。
    チョークの音も無意味にかき消されてしまう。


    悪い子達ではない。
    ただ、あまり頭の良いクラスではないから、"数学"と聞いただけで始めからあきらめてしまっているのだ。
    それをどうにかするのも私の仕事なんだけど。



    「ですから、x=は‥」


    努力はしているのに報われない事が多い。
    優しくすればケジメが無くなるし、恐くすれば文句を言われて無視される。



    「ってか何で長谷山さん来てるの?」
    「知らな〜い。」
    「確か長谷山さんってさ‥」
    「え、何なに!?」



    いつしか話題は長谷山汐梨のものとなっていた。
    私に聞こえてるのだ、汐梨にも聞こえているだろう。


    彼女達にはxが何であろうと関係ないのだろう。まぁそんなもんだ。
    ‥けれど、その話題は気に入らないな。



    「なんかね、結構ヤバいことしてるらしいよ〜!」
    「え、どんな?」
    「聞いた話なん‥」




    バン――ッ!!


    教卓を力一杯叩いた。
    それ以上は聞きたくなかったから。



    「いい加減にしなさい。今は授業中よ、わかってる?
    そんなに喋りたいのなら出ていきなさい。」



    勢いのまま喋り続ける自分がいた。
    何故かこんな時も、口調は冷静なまま。
    癖って、恐いね。



    「・・・」



    静まり返ったクラス中を見渡す。


    顔を上げているのは数人。
    その中でも一際は熱い視線を感じた。



    『‥すごく可愛い。』



    汐梨だ。



    その視線に思わず昨日のコトを思い出してしまう。


    いや、ダメだ。忘れろ、と。
    そう自分に言い聞かせ、その視線から目を逸らした。


    そのまま授業の終わりを告げるチャイムが鳴るまで、教科書通りのつまらない授業を続けていった。
    私なりの、精一杯の強がりで。







    (携帯)
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■11283 / ResNo.11)  NO TITLE
□投稿者/ ャマ 一般♪(1回)-(2005/07/24(Sun) 23:51:48)
    ぁたしは先生…
    好きになった事があるのですが
    このぉ話を読んでいると、なんだかその時のあたたかい気持ちを思い出しました(*'∀')ノ
    幸せな気持ちになりました♪
    続きよろしくです♪

    (携帯)
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■11309 / ResNo.12)  ャマさん
□投稿者/ ハチャル 一般♪(9回)-(2005/07/25(Mon) 18:46:48)
    初めまして☆
    あたたかい気持ちに、なって頂けたんですか?
    とても光栄です(^O^)ありがとうございます。
    先生って、憧れますよね。ハチャルもよくキャーキャー騒いで‥ときめいていました(笑)

    宜しければ最後までお付き合いくださいね☆
    感想、ありがとうございました(^^)

    (携帯)
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■11310 / ResNo.13)  I'm so into you 5
□投稿者/ ハチャル 一般♪(10回)-(2005/07/25(Mon) 18:47:50)

    あー疲れた。
    何だかすごく力を使った気分。


    6時間目の授業が終わっても、まだまだ仕事はたくさんあるのに。



    めんどくさい。





    「ねぇ!」


    下りようとした階段の一歩手前。いきなり、後ろから腕を強く引っ張られた。


    慌てて振り向くと。



    あっ!!!



    「何で目合ったのに無視したの?」



    汐梨だ。
    ちょっと怒ってるみたいだけど。


    相変わらずその耳元にはキラキラとシルバーのピアスが光っている。


    って、それより‥



    「無視?」

    したつもりはない。


    「そう、無視したでしょ。せっかく目が合ったのに。」


    汐梨はそのままジッと私を見つめると、口の端を微妙にあげた。


    また、からかわれているのか。


    「別に、授業中に目が合うのは特別だとは思わないけど。」


    そうでしょ?と私は掴まれていた腕を、そっと振り払う。


    馬鹿にされて堪るものか。



    「うそ。目合った時、ドキドキしてたくせに。」


    何だその自信。
    そりゃ少しはドキドキしたよ。でもソレは昨日の不意打ちのせいだし、特別なコトじゃない、はず。



    「いいわ、勝手に言ってなさい。」


    話していてもどうにもならないと思ったから、その切れ長の目を睨んで去ろうとした。


    「気付いてないの?顔、赤くなってたよ。
    ‥昨日みたいに。」


    そう言って彼女は小さく笑った。


    その言葉に思わず私は振り返る。
    やっぱり見られていたんだ‥。


    振り返った私を見て、汐梨は無邪気に笑った。
    そりゃあもう、満足そうな笑顔で‥。


    「馬鹿にしてるの?」


    何だかその笑顔で一気に気が抜けた。
    この子はこんな顔もできるのか‥と少し感心。


    だから少しため息交じりで笑いながらそう言う。


    「してないよ。
    あっ!それが言いたかったわけじゃないの。」

    「何?」

    「今日の夜、暇ありませんか?」



    改まって汐梨はそう言うと、やはりまた。
    口の端だけを上げて、微笑んだ。






    (携帯)
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■11356 / ResNo.14)  I'm so into you 6
□投稿者/ ハチャル 一般♪(11回)-(2005/07/26(Tue) 23:35:11)

    「‥どうして?」


    突然の質問に驚いた。
    何だろ、一体。


    すると汐梨は、少し私に近付き、周りの生徒に聞こえないような小さく。


    「一緒にご飯食べに行こ?」

    笑みを帯びた声でそっと言った。



    や、待って。
    生徒に食事誘われちゃったよ。



    「どうして私が行かなきゃならないの?」


    もう6年教師をやっているけど。この性格でしょ?
    卒業生にすら誘われた事もなかった。
    別に、仲良くする気もないし‥と、生徒との交流は勉強以外に全くしていかなった。


    それなのに突然の展開。
    少し焦る。



    「いいじゃん、行こうよ!」


    わざと冷たく言っているにも関わらず、汐梨は引こうとしない。
    逆に‥はしゃいでいるみたい。


    「だから何で‥」

    私なのよ。昨日初めてしゃべったばかりじゃない。



    ため息混じりにそう言うと、汐梨は困ったように笑ってから。


    「先生と仲良くなりたいの。」


    照れたようにそう言った。




    見たことないようなその表情に。
    何故か胸が高鳴った。



    だって今まで。
    お説教されてキレてるか、ダルそうにしている汐梨しか見たことがなかったから。


    「やっぱりダメ、ですか?」

    改めて私に問うその瞳は、少しだけ不安の色が混ざっていた。




    (携帯)
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■11423 / ResNo.15)  I'm so into you 7
□投稿者/ ハチャル 一般♪(12回)-(2005/07/28(Thu) 12:50:31)

    「うーん‥でもねぇ」


    すごく嬉しかった。
    だってこの子が、だよ?
    汐梨が他の先生にこんな風に話かけているのなんて、見たことがないし。


    好かれるのは、悪くないから。


    だから、嬉しかった。



    「‥無理?」

    「まずいと思うのよね。こう‥」


    特定の生徒と必要以上に仲良くするのは。
    他の生徒に見られたら、問題になりそうだし。



    「あ、そうだ。うち来ない?それならいいよ。」


    あっ!と思いついた。問題は、他の人にバレなきゃいいだけなのだから。
    うん。我ながらナイスアイディア。



    私の答えを聞いた汐梨は何故かキョトンとしている。


    そのまましばらく沈黙が続いて。



    「え、本当に!?」

    驚いたようにそう言った。


    「嫌?なら別にいいけど。」

    「ううん、行く!行きます!」


    汐梨の顔がパッと明るくなる。それは高校生の笑顔だった。
    思わず私も小さく微笑む。



    「あっ‥でも条件付きだよ。」


    ちょっと意地悪してみようか。
    何だか気分が上がってきたから。


    そう言いながら私は、汐梨お得意の笑顔で笑ってみせた。





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■11657 / ResNo.16)  I'm so into you 8
□投稿者/ ハチャル 一般♪(13回)-(2005/08/03(Wed) 00:37:59)

    「え、何?」

    「もう学校にピアスつけてきちゃダメ。それ守ってくれるなら、いいよ。」


    そう言いながら、耳元のそのピアスに触れる。
    高そうなピアスだな‥。


    「‥ピアスは無理‥」


    くすぐったそうな素振りを見せてから汐梨は少し悩むと、うつむきながらそう言った。


    「じゃあ化粧。」

    「うっ‥それも無理ぃ。」


    分かり切っている答えだけどちょっと期待していた。
    私が言えば‥直してくれるかなって。


    「じゃ、今の話は無し。」


    キッパリと言ってみた。
    そのまま方向転換して階段を降りる。


    「‥はっ?え、まじ!?」


    慌てる汐梨の声をバックに、軽快に歩く。
    そりゃあもう、ルンルンと。


    歩く、歩く。


    歩く、あ‥?



    いつのまにか走ってきた汐梨が、私の前へと立ちはだかった。


    「何?」

    「髪‥黒くする。」


    ポツリ、とそう聞こえた。


    「え?聞こえないけど?」

    ほんとはばっちり聞こえていた。


    「もぉ!髪、黒くします!それならいいでしょ!!」


    汐梨は拳を握り締めて、一際大きな声で。
    どうにでもなれ!みたいな勢い。



    「よし、いいよ。」


    だから素直に。
    そのヒヨコみたいな天辺の髪を撫でながら、誉めてあげた。






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■11911 / ResNo.17)  I'm so into you 9
□投稿者/ ハチャル 一般♪(14回)-(2005/08/08(Mon) 22:59:10)

    「高橋先生、何かいい事ありました?」

    「え?」

    「顔、ニヤけてますよ(笑)」


    放課後の職員室。
    となりの席の佐伯先生に絡まれた。


    「んあッ!?本当ですか。」


    思わず両手で自分の頬を触る。
    言われるまで気付かなかった。すぐにいつもの表情を取り戻そうと、意識を集中させた。


    「‥あはははは!それじゃ逆に恐いですって!」


    一分くらい、そんな私を見ていた佐伯先生は我慢が切れたように笑い出した。
    失礼なくらいに大笑い‥。


    「‥そんなに笑わないでくださいよ。」

    少し冷めた視線を彼女に送る。


    けれど。
    自分でもわかるくらいに、顔の筋肉が弛んでしまっていて。なかなかいつもの表情が戻ってこない。


    「はは、すみません。
    けど、そんな高橋先生見るの初めてだったから‥つい。」


    言いながら彼女はまだ笑っている。
    確かに、佐伯先生と席が隣になってから3ヵ月程たつが、今までは事務的にしか話したことがなかった。
    と言うより私は、学校で笑うことは少ない。


    「やっぱ、何かいいことあったんですか?」


    左腕で頬杖をつきながら、私を見つめる瞳はまさに好奇心そのもの。


    佐伯先生は私より年上で、明るく気さくな女性だ。
    生徒からも絶大な人気を得ている。要するに、私とは真逆の"教師"。
    で、私は彼女が受け持っているクラスの副担任をしている。


    「や、別に何もないですよ。」

    「本当に?」


    言いながらパソコンに視線を戻した私に、彼女はなおも聞いてくる。


    「佐伯先生‥しつこいですよ。」


    何で今日はこんなに絡んでくるのだろう、と不思議に思いながら、再び視線だけを彼女に向けた。


    「はは!すみません。
    でも興味あるな。高橋先生ってクールだからさ、何考えてるのかなーって。」


    絶えず笑顔の彼女に。
    一瞬だけ、色気‥のような。
    射ぬかれる、そんな視線が見えた気がした。


    「いたって普通の人間ですよ。
    佐伯先生も授業プリント作らなくて大丈夫なんですか?来週はPTAもあるし‥帰れなくなっちゃいますよ?」


    その視線を振り払うように彼女に仕事を勧めた。


    だって、正直‥ドキッとしてしまったから。



    「あはは!はぁーい」


    なんて、返事はしてくれたものの。
    私の仕事が終わるまで、彼女の質問攻撃は止まなかった。






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■12503 / ResNo.18)  I'm so into you 10
□投稿者/ ハチャル 一般♪(15回)-(2005/08/29(Mon) 01:37:41)

    何とか今日中にやらなければならない仕事が終わり、すでに時計は午後六時を回っていた。


    帰り支度を整え、隣の佐伯先生に挨拶して職員室を出ると、真っ先に汐梨のクラスへと向かう。


    「‥お待たせ。」


    ドアのガラス越しに汐梨の姿を確認してから、ガラっと扉を開け。



    赤い光が差し込む放課後の教室。
    一番後ろの窓際に座る汐梨に声をかけた。




    ふと、外へ向けていた彼女の視線が私へと移り
    一瞬、表情が強ばった。
    なんて言うか‥驚いたような嬉しいような、いろんな感情が混ざった感じ。


    「遅いよー!待ちくたびれちゃった」


    でもそれは一瞬だけで、はにかんだ笑顔で彼女はそう言った。


    「ごめんね。思った以上に時間かかっちゃった。
    あたしの車、わかる?」


    「んーわかんないかも。」


    「駐車場の一番端にある、赤い車。確か赤はあたししかいないから、わかると思うよ。」


    「ん、わかった。」


    生徒玄関と職員玄関は別々だから、先に自分の車を伝えておく。
    まぁ、今の時間に帰る先生も少ないし、駐車場で誰かに見られることはないだろう。


    「じゃ、先に行ってるね。」

    「はーい」


    私はそう言い、教室を後にした。
    今夜の夕食、何にしようかな。なんて考えながら。





    先についた駐車場。
    車に乗り込み、エンジンをかける。



    ラジオでもつけようか?
    いや、音楽のほうがいいかな。



    なんて。
    何故か、妙に悩んでしまっていて。


    やっぱり今日の自分は変だ。調子がおかしい。





    だから


    「お待たせしました。」


    と、突然の汐梨の声に心底驚いた。


    私が悩んでいる間に、ちゃっかり助手席に腰をおろし、しっかりドアまで閉めていたらしい。



    気付かなかった‥。




    「じゃ、行こっか。」


    「はーい」


    いつもの調子を取り戻すかのように冷静さを保つ声で言ってから、私はアクセルを踏みこんだ。






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■12513 / ResNo.19)  感想
□投稿者/ えりか 一般♪(5回)-(2005/08/29(Mon) 10:38:18)
    待ってましたぁ〜(≧▽≦*)♪
    良い展開になってきましたね!!
    続き、ヨロシクお願いしまーす☆★

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