| 「何?いきなり」
突然の汐梨の問い掛けに、思わず声が上ずる。 ‥全く、この子には驚かされてばかりだ。
そんな気持ちを隠しつつ、いつものように冷静を装った声で、隣に座る彼女に聞き返した。
すると汐梨はクッションにギュッと顔を埋めて。
「んー‥」
少し考え込んでいる様子。
そして、クッションに埋まった顔から目だけをコチラに向け
「‥もっと先生と仲良くなりたいんだもんー‥」
なんて飛び切り甘えたような声を出した。
「‥何か嘘っぽいんですけど。」
まぁそれが正直な感想で。 だけど同時に。
生徒相手に。 胸が高鳴った。
汐梨に聞こえてしまいそうな程、脈打つ鼓動。
ってそれより‥ 何か他に理由があるんだろう、家に帰りたくないような理由が。 無理強いをしてまで聞きはしないけど。
だけど嘘は好きじゃない、だから汐梨からクッションを取り上げキッと横目で見やる。
睨まれても汐梨は萎縮する様子もなく
「あー!本当だって!ほら、明日土曜日だし♪」
丁度いいじゃん、なんて言いながら私からクッションを取り返してニッコリと笑った。
どうしようか、なんて結構悩んだ末に
「家に帰りたくない理由でもあるの?言いたくないなら別にいいけどさ。」
なんてありきたりな質問。 だって他に言葉が思い浮かばなかった。
思い浮かぶ、 余裕が無かった。
(携帯)
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