ビアンエッセイ♪

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■11438 / ResNo.10)  image 10
  
□投稿者/ つちふまず 大御所(1074回)-(2005/07/28(Thu) 22:24:01)
    夢。


    そういえば私の卒論は。


    夢分析に関する物だった。





    見る夢。


    望む夢。


    叶える夢。







    彼女には夢があった。


    彩子の持っている語学力。


    それは日本の一企業では持て余す程で。




    正直私も。


    正確に彼女が何ヶ国語話せるかは知らない。




    彼女の実家は大きな農園を持っていて。




    日本の田園や畑は比にならない。




    私も実際にこの目で見て来た。





    彼女はその、


    眼下一杯に広がるコーヒー園を見て。



    目を細めてたね。











    彼女の語学力。
    経済知識。
    そして商品。




    ビジネスとして成功する条件は、揃ってた。







    いつか、と。







    私も思った事があるよ。







    けれど伝える事はしなかったね。






    それは後悔してるよ。



    でも。



    彩子の口から。


    その夢の話を聞いたのは。




    一回きりだった。


    だから。







    リアルには感じていなかったんだよ。








    本当は確実に。







    その夢に向かってたんだよね。







    “アンディーと走ろう”




    の最後は。




    成田で見送る私そのままに。


    帰りの車は。







    霞んで前が良く見えなかったのを、覚えてるよ。







    馬鹿だよね。







    私の小さな頃の夢は。







    “イルカの調教師”


    だったっけかな。










    すっかり忘れてたよ。


    (携帯)
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■11439 / ResNo.11)  image 11
□投稿者/ つちふまず 大御所(1075回)-(2005/07/28(Thu) 22:26:35)
    別れた理由は。


    方法として。


    それしかなかった。


    でも。


    「戻ろうと思って。」


    「……どこに?」


    聞かなくても。
    何と無く。


    「両親の所。」


    想像はついていた。


    「…………。」


    「聞いてる?」


    「聞いてる。…だから?」





    素直じゃなかった。


    なれなかった。





    「どういう意味かは…。」


    「わかるよ。」


    「……そう。」





    実感がなかったから。


    即答出来たんだよ。


    だって私達は、


    どうあったって。




    さよならは存在しないはずだと。


    「いつ?」


    「七月には戻るわ。」


    「……仕事は。」


    「もう、辞表は出した。」


    「………そう。」




    あるはずがないと。


    さよならなんて。




    名古屋と東京。


    それだけでも、


    無理があったんだよね。


    だから。





    海を越え、


    国境を越え。


    時差を越えて、


    帰るという事は。


    それしか道は、なかった。


    でも。


    実感はなかった。


    ────────────


    「あの時どう言えば、なんて。考えたくないよね。」


    「ん?」


    「相手に…もう別れようって言われた時。」


    「うーん。」


    「思うんだけどさ。別れようって言われた時って…選択の余地、ないよね?」


    「まぁ、確かにね。」


    「だったら何も言わずに…。いなくなればいいのに。」


    「でもそれじゃ、自分自身に対してのけじめが付かないんじゃない?」


    「………かな。」


    「辛いよ、言う方もね。」


    わからなかった。


    だって。


    お互い好きなのに。


    何で別れる必要があるのか。





    わからなかった。


    それさえも。




    思い違いだったのだと。







    後から気付いた。










    ごめんね。

    (携帯)
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■11441 / ResNo.12)  image 12
□投稿者/ つちふまず 大御所(1076回)-(2005/07/28(Thu) 22:29:42)
    それでも。



    徐々に実感を。



    いい加減。




    焦り始める。




    「遠いね…。」





    「遠いわね。」





    「行った事あるから余計にわかる…。遠い。」





    「……そうね。」





    「すぐに行ける距離じゃないね。」





    「…………そうね。」





    距離は大切だと思う。





    努力して伝えられるだけの、





    ぬくもりを伝えられる距離。





    彼女と私の距離は。


    多分この時点でもう。






    離れ過ぎてた。



    ─────────────


    人は都合がいい。




    「耐えられない。苦しくて。」





    「…………。」





    「せめて…。東京と名古屋位だったら良かったのにね。」





    人は都合がいい。





    「そうだね。」





    「ここから掘ったら…会えるかな。」





    「………。ぷっ。」





    「裏側だし。スコップ買って来ようかな。」





    「買っとくよ。」





    「本当に?」





    「うん。」





    「固いやつね。」





    「わかったわかった。」






    人は都合がいい。




    忘れる生き物だから、と。


    色んな人が言うけど。




    多分そうじゃない。







    都合がいいのは。












    忘れる方法を他人に求めるからだと思う。


    (携帯)
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■11442 / ResNo.13)  image 13
□投稿者/ つちふまず 大御所(1077回)-(2005/07/28(Thu) 22:32:43)
    もうダメだと。




    これはいよいよ終わりだと。




    実感したなら。





    「行かないで。」




    「…………。」




    「行かないでよ。」




    「…………。」




    「苦しいよ。こんなに苦しいの…嫌だよ。」




    「…………。」




    「…彩子!」




    「一人じゃないんだから。」




    「…………やめてよ。」




    「ね、聞いて。」




    「離して。」




    「あなたの周りには。」




    「…………。」




    「人が集まるの。」




    「…何でそんな事。」




    「大好き。」




    「………嫌だ。」




    「大好きよ。」






    「……嫌だよ!」






    あがいて。


    あがいて。


    泣いて。


    泣いて。


    またあがいて…。





    ─────────────




    「また泣いてる。」




    「………ごめん。」




    「いいよ。」




    「どうすれば…止まるかな。」




    「今はまだ無理でしょう。」




    「かなぁ。」




    「食べなさい。とりあえず。」




    「お約束みたいにお腹が減らない。」




    「でも食べるの。」




    「…………。」







    朝食は。










    食べなくなったよ。








    (携帯)
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■11443 / ResNo.14)  image 14
□投稿者/ つちふまず 大御所(1078回)-(2005/07/28(Thu) 22:35:59)
    彩子がいなくなってから。




    割と私も普通の人間だった。




    認識した。





    酒。


    夜遊び。


    男。


    女。


    既婚。


    未婚。




    『手辺り次第』は。
    いい日本語だと思う。




    寝る必要がなかったから、




    体重が1kgずつ、


    減って行くごとに。







    不可解なモノを見るようになる。


    見えないはずのもの。


    床が歪む感覚。


    手足の痺れ。




    ある日耳なりが止まない事に気付いて。




    初めて耳鼻科に行った。







    ショックだった。


    ここじゃないと。


    “精神科”だと。




    学生時代に学んだ事は。


    一体なんだったんだろうと。



    帰宅途中。





    空っぽだった胃の中の液体を吐いた。







    けれど。


    医者ってやっぱり凄い。


    詳しくは書かないけど。







    耳なりが止んで来た頃。







    彩子の友人から。


    連絡を貰った。




    肝臓もやられていたので。


    もううんざりしていたから。





    正直彼女と。


    どうこう、とは。


    考えていなかった。


    彩子を思い出させる、


    モノは。人は。




    何モノにも触れたくなくて。


    でも。







    人は都合がいい。



    彼女の。


    心配を愛情へと。


    変化させるまで。







    そんなに時間はかからなかった気がする。






    …ひどいよね。




    けれど彼女は。







    私から離れようとは、
    しなかった。







    むしろ踏み込むタイミングを。


    充分に心得ている大人で。







    細い肩も。


    鼻にかかる声も。


    知的な口調も。







    魅力に見えた。







    失恋は。










    人にしか癒せない物だと。







    いつか言ってくれたね。


    (携帯)
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■11444 / ResNo.15)  image 15
□投稿者/ つちふまず 大御所(1079回)-(2005/07/28(Thu) 22:38:50)
    友人に会った。


    ただし失恋の相手を。



    『女』とは言わずに。



    「ふーん。」



    「ふーんて…。もうちょっと慰めるとか…ないのかな。」



    「言葉のかけようがない。」



    「確かにそうかもね。」



    「やめなよ、そういうの。」



    「え?」



    「見ててあんまり良くない。」



    「………。」



    「ヤケになって働いて、呑んで、暴れて。」



    「暴れてはないって。」



    「ボロボロなんでしょ?」



    「今は平気。」



    「何ていうかさー。」



    「ん?」



    「本にでもしちゃえば?仮にも文章書いてるんだから。」



    彼女は物書きだ。


    いわゆるプロ。



    「……やだよそんなの。」



    私の仕事は構成だし。


    それに。



    「意外と面白いかもよ。」



    「アンハッピーエンドなのに?」


    「悲しい方がウケるのよ。今の時代。」



    「うーん。私文章力ないし…。」


    「口は上手いくせに。」



    「…………。」



    彼女の思い付きは。


    意外な方向性へと。




    「うーん。」



    書いてみる、か。


    考えもしなかった。


    けど…。


    意味があるのかな?





    余計辛くないかな。




    “人が集まるのよ”





    「………。」


    そうかな。










    プロの彼女に。


    何と無くネタを取られそうな気がして。


    ちょっと悔しかった。







    彼女は私の気まぐれで、


    『桜子』と名前を変えて、


    イメージそのままに。




    後に書く事になる。






    …………あ。




    …もしかしたら。




    …書いてみるか。




    ふとした思い付き。








    これが始まりだった。







    テレビよりも。


    新聞よりも。


    電車男よりも。







    リアルな物を。







    時間軸を。







    私が操っている事に気付いたのは。










    二つの作品を書いた後だった。

    (携帯)
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■11445 / ResNo.16)  image 16
□投稿者/ つちふまず 大御所(1080回)-(2005/07/28(Thu) 22:40:57)
    この子を書いたのは。


    間違いではなかったと思う。



    「相変わらずですね。」


    「そう?」



    彼女の特徴。


    モデルを職としていた学生時代。


    細くてしなやかな体。


    細いだけでなく。


    “匂い”があった。



    「おいしい〜!」


    「だね♪」


    顔の傷は。


    きっと彼女の心にも、
    傷を残したはずなのに。


    おいしい物はおいしいと。


    楽しい事は楽しいと。


    寂しい時は寂しいと。


    そして甘え上手。



    駅ビルのポスターだけでは、多分見えない事だったんじゃないかな。


    写真の知識はあったから。


    何枚か撮らせて貰ったね。




    「大丈夫ですか?」




    そう。


    この子はするどい子だった。


    レンズ越しに見る目は。


    柔らかな視線だったけど。




    「……大丈夫だよ。」




    そう答えるしかなくて。


    それでも。


    「無理はダメですよ。」


    お約束なセリフでも、


    例えば一度は愛した人なら。




    心に響く。



    単純に思った。




    まずはこの子から書いてみようか。




    好きではないと言ったら嘘になる。




    彩子と彩子の間に。


    愛したこの子。







    多少の誇張は。


    許してね。




    まだあの写真は。







    私の部屋にあるよ。




    失敗は。







    自分を。










    主人公にした事かな。


    (携帯)
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■11446 / ResNo.17)  image 17
□投稿者/ つちふまず 大御所(1081回)-(2005/07/28(Thu) 22:42:50)
    意外な事がわかった。




    記憶を辿り。




    多少の誇張や、




    シチュエーションを加えて。




    書いた私の物語。




    “続きが読みたいです”




    “すごく面白いです”




    マジで。


    うーん。






    ここまでは…。
    良かった。




    調子に乗った私は。




    「それなら。」




    続きを、


    書いてしまった。




    breakfastと。
    題を打ち。




    彼女と私が。


    一番大切にしていた時間。







    朝食、の時。




    書き終えて。


    またたくさんの反響。




    びっくりした。


    自分の過去が、


    ここまで誰かに…。







    さて。


    この時は確か…。


    ああそうか。


    去年の冬は。




    彼女の実家へ。


    遊びに行ったっけ。




    行ってもらおう。


    その方が。














    リアリティがある。


    (携帯)
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■11447 / ResNo.18)  image 18
□投稿者/ つちふまず 大御所(1082回)-(2005/07/28(Thu) 22:44:47)
    思い出から抜け出せないのなら、いっその事。




    そこにいればいい。




    少なくとも。


    生き続けるには。


    想いを思いのままに。


    遠く離れた。






    戻らない恋人へ。







    年が明け。


    私が書いたのは。


    “冬のエトランジェ”


    タイトルはいつも、
    適当に当てはめる。




    このタイトルにした理由は。私の置き忘れたCD。




    いつもかけてたよね。


    「この曲いい。」


    と、その一言で。


    その日の内に。




    タイトルを決めた。







    結構影響力があるんだと。


    書き終えた後に感じたよ。


    あなたの言葉。






    愛してないと思ってたのに。


    小説の中にも。


    あなたを。








    結構人気があったよ。







    悔しかったのかな。


    何故か私と彩子も。
    お遊びで登場させた。






    不思議だったね。


    書いてて面白くなった。







    思い出の中に生きようとした私は。




    自分自身の書いた物の中に。




    錯覚し始めた。


    その渦に入る心を。


    必死に食い止めてた。





    結局は逃げだったんだね。




    それに気付いて。


    フィクションにする為に。












    割と書き変えたよ。


    (携帯)
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■11448 / ResNo.19)  image 19
□投稿者/ つちふまず 大御所(1083回)-(2005/07/28(Thu) 22:47:32)
    それから─




    「元気そうじゃない。」


    「冬は半分位だけどね。」




    車椅子に乗った友人は。
    古い付き合いで。




    以前公共のプールでバイトしてた時に知り合った。




    「ご飯奢ってね。」


    「ええっまた?」



    「稼ぎが違うんだからいいでしょ。」


    「ううーむ。よし!」




    何でも言い合える友人は少ない。


    年下なんだけどいつも…。


    私の方が彼女の説教を存分に聞いて。




    何故か私がご馳走する。





    不思議な関係。
    でも。




    「笑える。」




    と、言ってくれるたび。
    何処かで癒されていた。




    私は彼女の生きる姿勢。


    その何もかもが。


    カッコ良くて。


    素敵で。


    儚げで。





    凄く凄く尊敬している。





    「肩に乗ってそうだから。」




    と、彼女が連れて来たリスは。随分大きくなったよ。


    小説にも書いたね。




    その後の言葉は書かなかったけど。




    彼女をモデルに。


    “アンディーと走ろう”


    を書いた。


    これはかなり短時間で書いたと思う。





    ケイへの尊敬の気持ちを。
    そのまま文字に起こした。





    大人になってしまうと、友情を伝える事は少ない。




    けれど。





    こういう表現の仕方もありかなと思うんだよ。







    リスを貰った本当の理由は。





    「失恋祝い」





    だったね。







    今では大分、










    私になついてるよ。


    (携帯)
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